刑事訴訟法

昭和二十三年法律第百三十一号
略称 : 刑訴法 
分類 法律
カテゴリ   刑事
@ 施行日 : 令和六年二月十五日 ( 2024年 2月15日 )
@ 最終更新 : 令和五年法律第六十六号による改正
最終編集日 : 2024年 03月12日 02時50分

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  • 第一編 総則

    • 第一章 裁判所の管轄

    • 第二章 裁判所職員の除斥及び忌避

    • 第三章 訴訟能力

    • 第四章 弁護及び補佐

    • 第五章 裁判

    • 第六章 書類及び送達

    • 第七章 期間

    • 第八章 被告人の召喚、勾引及び勾留

    • 第九章 押収及び捜索

    • 第十章 検証

    • 第十一章 証人尋問

    • 第十二章 鑑定

    • 第十三章 通訳及び翻訳

    • 第十四章 証拠保全

    • 第十五章 訴訟費用

    • 第十六章 費用の補償

  • 第二編 第一審

    • 第一章 捜査

    • 第二章 公訴

    • 第三章 公判

      • 第一節 公判準備及び公判手続
      • 第二節 争点及び証拠の整理手続
        • 第一款 公判前整理手続
          • 第一目 通則
          • 第二目 争点及び証拠の整理
          • 第三目 証拠開示に関する裁定
        • 第二款 期日間整理手続
        • 第三款 公判手続の特例
      • 第三節 被害者参加
      • 第四節 証拠
      • 第五節 公判の裁判
    • 第四章 証拠収集等への協力及び訴追に関する合意

      • 第一節 合意及び協議の手続
      • 第二節 公判手続の特例
      • 第三節 合意の終了
      • 第四節 合意の履行の確保
    • 第五章 即決裁判手続

      • 第一節 即決裁判手続の申立て
      • 第二節 公判準備及び公判手続の特例
      • 第三節 証拠の特例
      • 第四節 公判の裁判の特例
  • 第三編 上訴

    • 第一章 通則

    • 第二章 控訴

    • 第三章 上告

    • 第四章 抗告

  • 第四編 再審

  • 第五編 非常上告

  • 第六編 略式手続

  • 第七編 裁判の執行

    • 第一章 裁判の執行の手続

    • 第二章 裁判の執行に関する調査

第一編 総則

1項

この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。

第一章 裁判所の管轄

1項

裁判所の土地管轄は、犯罪地 又は被告人の住所、居所 若しくは現在地による。

○2項

国外に在る日本船舶内で犯した罪については、前項に規定する地の外、その船舶の船籍の所在地 又は犯罪後その船舶の寄泊した地による。

○3項

国外に在る日本航空機内で犯した罪については、第一項に規定する地の外、犯罪後その航空機の着陸(着水を含む。)した地による。

1項

事物管轄を異にする数個の事件が関連するときは、上級の裁判所は、併せてこれを管轄することができる。

○2項

高等裁判所の特別権限に属する事件と他の事件とが関連するときは、高等裁判所は、併せてこれを管轄することができる。

1項

事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、上級の裁判所は、決定で管轄権を有する下級の裁判所にこれを移送することができる。

1項

数個の関連事件が各別に上級の裁判所 及び下級の裁判所に係属するときは、事物管轄にかかわらず、上級の裁判所は、決定で下級の裁判所の管轄に属する事件を併せて審判することができる。

○2項

高等裁判所の特別権限に属する事件が高等裁判所に係属し、これと関連する事件が下級の裁判所に係属するときは、高等裁判所は、決定で下級の裁判所の管轄に属する事件を併せて審判することができる。

1項

土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、併せて他の事件を管轄することができる。


但し、他の法律の規定により特定の裁判所の管轄に属する事件は、これを管轄することができない

1項

土地管轄を異にする数個の関連事件が同一裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、その裁判所は、決定で管轄権を有する他の裁判所にこれを移送することができる。

1項

数個の関連事件が各別に事物管轄を同じくする数個の裁判所に係属するときは、各裁判所は、検察官 又は被告人の請求により、決定でこれを一の裁判所に併合することができる。

○2項

前項の場合において各裁判所の決定が一致しないときは、各裁判所に共通する直近上級の裁判所は、検察官 又は被告人の請求により、決定で事件を一の裁判所に併合することができる。

1項

数個の事件は、左の場合に関連するものとする。

一 号

一人が数罪を犯したとき。

二 号

数人が共に同一 又は別個の罪を犯したとき。

三 号

数人が通謀して各別に罪を犯したとき。

○2項

犯人蔵匿の罪、証憑湮滅の罪、偽証の罪、虚偽の鑑定通訳の罪 及び贓物に関する罪とその本犯の罪とは、共に犯したものとみなす。

1項

同一事件が事物管轄を異にする数個の裁判所に係属するときは、上級の裁判所が、これを審判する。

○2項

上級の裁判所は、検察官 又は被告人の請求により、決定で管轄権を有する下級の裁判所にその事件を審判させることができる。

1項

同一事件が事物管轄を同じくする数個の裁判所に係属するときは、最初に公訴を受けた裁判所が、これを審判する。

○2項

各裁判所に共通する直近上級の裁判所は、検察官 又は被告人の請求により、決定で後に公訴を受けた裁判所にその事件を審判させることができる。

1項

裁判所は、事実発見のため必要があるときは、管轄区域外で職務を行うことができる。

○2項

前項の規定は、受命裁判官にこれを準用する。

1項

訴訟手続は、管轄違の理由によつては、その効力を失わない。

1項

裁判所は、管轄権を有しないときでも、急速を要する場合には、事実発見のため必要な処分をすることができる。

○2項

前項の規定は、受命裁判官にこれを準用する。

1項

検察官は、左の場合には、関係のある第一審裁判所に共通する直近上級の裁判所に管轄指定の請求をしなければならない。

一 号

裁判所の管轄区域が明らかでないため管轄裁判所が定まらないとき。

二 号

管轄違を言い渡した裁判が確定した事件について他に管轄裁判所がないとき。

1項

法律による管轄裁判所がないとき、又はこれを知ることができないときは、検事総長は、最高裁判所に管轄指定の請求をしなければならない。

1項

検察官は、左の場合には、直近上級の裁判所に管轄移転の請求をしなければならない。

一 号

管轄裁判所が法律上の理由 又は特別の事情により裁判権を行うことができないとき。

二 号

地方の民心、訴訟の状況 その他の事情により裁判の公平を維持することができない虞があるとき。

○2項

前項各号の場合には、被告人も管轄移転の請求をすることができる。

1項

犯罪の性質、地方の民心 その他の事情により管轄裁判所が審判をするときは公安を害する虞があると認める場合には、検事総長は、最高裁判所に管轄移転の請求をしなければならない。

1項

裁判所は、適当と認めるときは、検察官 若しくは被告人の請求により 又は職権で、決定を以て、その管轄に属する事件を事物管轄を同じくする他の管轄裁判所に移送することができる。

○2項

移送の決定は、被告事件につき証拠調を開始した後は、これをすることができない

○3項

移送の決定 又は移送の請求を却下する決定に対しては、その決定により著しく利益を害される場合に限り、その事由を疎明して、即時抗告をすることができる。

第二章 裁判所職員の除斥及び忌避

1項

裁判官は、次に掲げる場合には、職務の執行から除斥される

一 号

裁判官が被害者であるとき。

二 号

裁判官が被告人 又は被害者の親族であるとき、又はあつたとき。

三 号

裁判官が被告人 又は被害者の法定代理人後見監督人保佐人保佐監督人補助人 又は補助監督人であるとき。

四 号

裁判官が事件について証人 又は鑑定人となつたとき。

五 号

裁判官が事件について被告人の代理人弁護人 又は補佐人となつたとき。

六 号

裁判官が事件について検察官 又は司法警察員の職務を行つたとき。

七 号

裁判官が事件について第二百六十六条第二号の決定、略式命令、前審の裁判、第三百九十八条乃至第四百条第四百十二条 若しくは第四百十三条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決 又はこれらの裁判の基礎となつた取調べに関与したとき。


ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。

1項

裁判官が職務の執行から除斥されるべきとき、又は不公平な裁判をする虞があるときは、検察官 又は被告人は、これを忌避することができる。

○2項

弁護人は、被告人のため忌避の申立をすることができる。


但し、被告人の明示した意思に反することはできない。

1項

事件について請求 又は陳述をした後には、不公平な裁判をする虞があることを理由として裁判官を忌避することはできない


但し、忌避の原因があることを知らなかつたとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。

1項

合議体の構成員である裁判官が忌避されたときは、その裁判官所属の裁判所が、決定をしなければならない。


この場合において、その裁判所が地方裁判所であるときは、合議体で決定をしなければならない。

○2項

地方裁判所の一人の裁判官 又は家庭裁判所の裁判官が忌避されたときはその裁判官所属の裁判所が、簡易裁判所の裁判官が忌避されたときは管轄地方裁判所が、合議体で決定をしなければならない。


ただし、忌避された裁判官が忌避の申立てを理由があるものとするときは、その決定があつたものとみなす。

○3項

忌避された裁判官は、前二項の決定に関与することができない

○4項

裁判所が忌避された裁判官の退去により決定をすることができないときは、直近上級の裁判所が、決定をしなければならない。

1項

訴訟を遅延させる目的のみでされたことの明らかな忌避の申立は、決定でこれを却下しなければならない


この場合には、前条第三項の規定を適用しない。


第二十二条の規定に違反し、又は裁判所の規則で定める手続に違反してされた忌避の申立を却下する場合も、同様である。

○2項

前項の場合には、忌避された受命裁判官、地方裁判所の一人の裁判官 又は家庭裁判所 若しくは簡易裁判所の裁判官は、忌避の申立てを却下する裁判をすることができる。

1項

忌避の申立を却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

この章の規定は、第二十条第七号の規定を除いて、裁判所書記にこれを準用する。

○2項

決定は、裁判所書記所属の裁判所がこれをしなければならない。


但し第二十四条第一項の場合には、裁判所書記の附属する受命裁判官が、忌避の申立を却下する裁判をすることができる。

第三章 訴訟能力

1項

被告人 又は被疑者が法人であるときは、その代表者が、訴訟行為についてこれを代表する。

○2項

数人が共同して法人を代表する場合にも、訴訟行為については、各自が、これを代表する。

1項

刑法明治四十年法律第四十五号第三十九条 又は第四十一条の規定を適用しない罪に当たる事件について、被告人 又は被疑者が意思能力を有しないときは、その法定代理人(二人以上あるときは、各自。以下同じ。)が、訴訟行為についてこれを代理する。

1項

前二条の規定により被告人を代表し、又は代理する者がないときは、検察官の請求により 又は職権で、特別代理人を選任しなければならない。

○2項

前二条の規定により被疑者を代表し、又は代理する者がない場合において、検察官、司法警察員 又は利害関係人の請求があつたときも、前項同様である。

○3項

特別代理人は、被告人 又は被疑者を代表し 又は代理して訴訟行為をする者ができるまで、その任務を行う。

第四章 弁護及び補佐

1項

被告人 又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。

○2項

被告人 又は被疑者の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族 及び兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができる。

1項

弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。

○2項

簡易裁判所 又は地方裁判所においては、裁判所の許可を得たときは、弁護士でない者を弁護人に選任することができる


ただし、地方裁判所においては、他に弁護士の中から選任された弁護人がある場合に限る

1項

弁護人を選任しようとする被告人 又は被疑者は、弁護士会に対し、弁護人の選任の申出をすることができる。

○2項

弁護士会は、前項の申出を受けた場合は、速やかに、所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を紹介しなければならない。

○3項

弁護士会は、前項の弁護人となろうとする者がないときは、当該申出をした者に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。


同項の規定により紹介した弁護士が被告人 又は被疑者がした弁護人の選任の申込みを拒んだときも、同様とする。

1項

公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においても その効力を有する。

○2項

公訴の提起後における弁護人の選任は、審級ごとにこれをしなければならない。

1項

被告人に数人の弁護人があるときは、裁判所の規則で、主任弁護人を定めなければならない。

1項

前条の規定による主任弁護人の権限については、裁判所の規則の定めるところによる。

1項

裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、被告人 又は被疑者の弁護人の数を制限することができる。


但し、被告人の弁護人については、特別の事情のあるときに限る

1項

被告人が貧困 その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。


但し、被告人以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。

1項

この法律により弁護人を要する場合を除いて、被告人が前条の請求をするには、資力申告書その者に属する現金、預金 その他政令で定めるこれらに準ずる資産の合計額(以下「資力」という。)及びその内訳を申告する書面をいう。以下同じ。)を提出しなければならない。

1項

この法律により弁護人を要する場合を除いて、その資力が基準額標準的な必要生計費を勘案して一般に弁護人の報酬 及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額をいう。以下同じ。)以上である被告人が第三十六条の請求をするには、あらかじめ、その請求をする裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。

○2項

前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所 又は当該被告事件が係属する裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。

1項

左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。

一 号

被告人が未成年者であるとき。

二 号

被告人が年齢七十年以上の者であるとき。

三 号

被告人が耳の聞えない者 又は口のきけない者であるとき。

四 号

被告人が心神喪失者 又は心神耗弱者である疑があるとき。

五 号
その他必要と認めるとき。
1項

被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困 その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。


ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合 又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。

○2項

前項の請求は、勾留を請求された被疑者も、これをすることができる。

1項

前条第一項の請求をするには、資力申告書を提出しなければならない。

○2項

その資力が基準額以上である被疑者が前条第一項の請求をするには、あらかじめ、その勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。

○3項

前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。

1項

裁判官は、被疑者に対して勾留状が発せられ、かつ、これに弁護人がない場合において、精神上の障害 その他の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがある被疑者について必要があると認めるときは、職権で弁護人を付することができる。


ただし、被疑者が釈放された場合は、この限りでない。

1項

裁判官は、死刑 又は無期の懲役 若しくは禁錮に当たる事件について第三十七条の二第一項 又は前条の規定により弁護人を付する場合 又は付した場合において、特に必要があると認めるときは、職権で更に弁護人一人を付することができる。


ただし、被疑者が釈放された場合は、この限りでない。

1項

この法律の規定に基づいて裁判所 若しくは裁判長 又は裁判官が付すべき弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。

○2項

前項の規定により選任された弁護人は、旅費、日当、宿泊料 及び報酬を請求することができる。

1項

裁判官による弁護人の選任は、被疑者がその選任に係る事件について釈放されたときは、その効力を失う。


ただし、その釈放が勾留の執行停止によるときは、この限りでない。

1項

裁判所は、次の各号いずれかに該当すると認めるときは、裁判所 若しくは裁判長 又は裁判官が付した弁護人を解任することができる。

一 号

第三十条の規定により弁護人が選任されたこと その他の事由により弁護人を付する必要がなくなつたとき。

二 号

被告人と弁護人との利益が相反する状況にあり弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。

三 号

心身の故障 その他の事由により、弁護人が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となつたとき。

四 号

弁護人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。

五 号

弁護人に対する暴行、脅迫 その他の被告人の責めに帰すべき事由により弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。

○2項

弁護人を解任するには、あらかじめ、その意見を聴かなければならない。

○3項

弁護人を解任するに当たつては、被告人の権利を不当に制限することがないようにしなければならない。

○4項

公訴の提起前は、裁判官が付した弁護人の解任は、裁判官がこれを行う。


この場合においては、前三項の規定を準用する。

1項

裁判所 又は裁判官の判断を誤らせる目的で、その資力について虚偽の記載のある資力申告書を提出した者は、十万円以下の過料に処する。

1項

身体の拘束を受けている被告人 又は被疑者は、弁護人 又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る)と立会人なくして接見し、又は書類 若しくは物の授受をすることができる。

○2項

前項の接見 又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人 又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅 又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。

○3項

検察官、検察事務官 又は司法警察職員司法警察員 及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見 又は授受に関し、その日時、場所 及び時間を指定することができる。


但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。

1項

弁護人は、公訴の提起後は、裁判所において、訴訟に関する書類 及び証拠物を閲覧し、且つ謄写することができる。


但し、証拠物を謄写するについては、裁判長の許可を受けなければならない。

○2項

前項の規定にかかわらず第百五十七条の六第四項に規定する記録媒体は、謄写することができない

1項

弁護人は、この法律に特別の定のある場合に限り、独立して訴訟行為をすることができる。

1項

被告人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族 及び兄弟姉妹は、何時でも補佐人となることができる。

○2項

補佐人となるには、審級ごとにその旨を届け出なければならない。

○3項

補佐人は、被告人の明示した意思に反しない限り、被告人がすることのできる訴訟行為をすることができる。


但し、この法律に特別の定のある場合は、この限りでない。

第五章 裁判

1項

判決は、この法律に特別の定のある場合を除いては、口頭弁論に基いてこれをしなければならない。

○2項

決定 又は命令は、口頭弁論に基いてこれをすることを要しない。

○3項

決定 又は命令をするについて必要がある場合には、事実の取調をすることができる。

○4項

前項の取調は、合議体の構成員にこれをさせ、又は地方裁判所、家庭裁判所 若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。

1項

裁判には、理由を附しなければならない。

○2項

上訴を許さない決定 又は命令には、理由を附することを要しない。


但し第四百二十八条第二項の規定により異議の申立をすることができる決定については、この限りでない。

1項

判決以外の裁判は、判事補が一人でこれをすることができる。

1項

被告人 その他訴訟関係人は、自己の費用で、裁判書 又は裁判を記載した調書の謄本 又は抄本の交付を請求することができる。

第六章 書類及び送達

1項

訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない


但し、公益上の必要 その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。

1項

公判期日における訴訟手続については、公判調書を作成しなければならない。

○2項

公判調書には、裁判所の規則の定めるところにより、公判期日における審判に関する重要な事項を記載しなければならない。

○3項

公判調書は、各公判期日後 速かに、遅くとも判決を宣告するまでにこれを整理しなければならない。


ただし、判決を宣告する公判期日の調書は当該公判期日後七日以内に、公判期日から判決を宣告する日までの期間が十日に満たない場合における当該公判期日の調書は当該公判期日後十日以内判決を宣告する日までの期間が三日に満たないときは、当該判決を宣告する公判期日後七日以内)に、整理すれば足りる。

1項

被告人に弁護人がないときは、公判調書は、裁判所の規則の定めるところにより、被告人も、これを閲覧することができる。


被告人は、読むことができないとき、又は目の見えないときは、公判調書の朗読を求めることができる。

1項

公判調書が次回の公判期日までに整理されなかつたときは、裁判所書記は、検察官、被告人 又は弁護人の請求により、次回の公判期日において 又はその期日までに、前回の公判期日における証人の供述の要旨を告げなければならない。


この場合において、請求をした検察官、被告人 又は弁護人が証人の供述の要旨の正確性につき異議を申し立てたときは、その旨を調書に記載しなければならない。

○2項

被告人 及び弁護人の出頭なくして開廷した公判期日の公判調書が、次回の公判期日までに整理されなかつたときは、裁判所書記は、次回の公判期日において 又はその期日までに、出頭した被告人 又は弁護人に前回の公判期日における審理に関する重要な事項を告げなければならない。

1項

検察官、被告人 又は弁護人は、公判調書の記載の正確性につき異議を申し立てることができる。


異議の申立があつたときは、その旨を調書に記載しなければならない。

○2項

前項異議の申立ては、遅くとも当該審級における最終の公判期日後十四日以内にこれをしなければならない。


ただし第四十八条第三項ただし書の規定により判決を宣告する公判期日後に整理された調書については、整理ができた日から十四日以内にこれをすることができる。

1項

公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによつてこれを証明することができる。

1項

何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。


但し、訴訟記録の保存 又は裁判所 若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。

○2項

弁論の公開を禁止した事件の訴訟記録 又は一般の閲覧に適しないものとしてその閲覧が禁止された訴訟記録は、前項の規定にかかわらず、訴訟関係人 又は閲覧につき正当な理由があつて特に訴訟記録の保管者の許可を受けた者でなければ、これを閲覧することができない

○3項

日本国憲法第八十二条第二項但書に掲げる事件については、閲覧を禁止することはできない

○4項

訴訟記録の保管 及びその閲覧の手数料については、別に法律でこれを定める。

1項

訴訟に関する書類 及び押収物については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律平成十一年法律第四十二号)及び独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成十三年法律第百四十号)の規定は、適用しない

○2項

訴訟に関する書類 及び押収物に記録されている個人情報については、個人情報の保護に関する法律平成十五年法律第五十七号第五章第四節の規定は、適用しない

○3項

訴訟に関する書類については、公文書等の管理に関する法律平成二十一年法律第六十六号第二章の規定は、適用しない


この場合において、訴訟に関する書類についての同法第四章の規定の適用については、

同法第十四条第一項
国の機関(行政機関を除く。以下この条において同じ。)」とあり、
及び同法第十六条第一項第三号
国の機関(行政機関を除く。)」とあるのは、
「国の機関」

とする。

○4項

押収物については、公文書等の管理に関する法律の規定は、適用しない

1項

書類の送達については、裁判所の規則に特別の定のある場合を除いては、民事訴訟に関する法令の規定(公示送達に関する規定を除く)を準用する。

第七章 期間

1項

期間の計算については、時で計算するものは、即時からこれを起算し、日、月 又は年で計算するものは、初日を算入しない。


但し、時効期間の初日は、時間を論じないで一日としてこれを計算する。

○2項

月 及び年は、暦に従つてこれを計算する。

○3項

期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日 又は十二月二十九日から十二月三十一日までの日に当たるときは、これを期間に算入しない。


ただし、時効期間については、この限りでない。

1項

法定の期間は、裁判所の規則の定めるところにより、訴訟行為をすべき者の住居 又は事務所の所在地と裁判所 又は検察庁の所在地との距離 及び交通通信の便否に従い、これを延長することができる。

○2項

前項の規定は、宣告した裁判に対する上訴の提起期間には、これを適用しない

第八章 被告人の召喚、勾引及び勾留

1項

裁判所は、裁判所の規則で定める相当の猶予期間を置いて、被告人を召喚することができる。

1項

裁判所は、次の場合には、被告人を勾引することができる。

一 号
被告人が定まつた住居を有しないとき。
二 号

被告人が、正当な理由がなく、召喚に応じないとき、又は応じないおそれがあるとき。

1項

勾引した被告人は、裁判所に引致した時から二十四時間以内にこれを釈放しなければならない。


但し、その時間内に勾留状が発せられたときは、この限りでない。

1項

裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。

一 号

被告人が定まつた住居を有しないとき。

二 号

被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

三 号

被告人が逃亡し 又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

○2項

勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。


特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。


但し第八十九条第一号第三号第四号 又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。

○3項

三十万円刑法暴力行為等処罰に関する法律大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円以下の罰金、拘留 又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。

1項

被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げ これに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。


但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。

1項

被告人の召喚、勾引 又は勾留は、召喚状、勾引状 又は勾留状を発してこれをしなければならない。

1項

召喚状には、被告人の氏名 及び住居、罪名、出頭すべき年月日時 及び場所 並びに正当な理由がなく出頭しないときは勾引状を発することがある旨 その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長 又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。

1項

勾引状 又は勾留状には、被告人の氏名 及び住居、罪名、公訴事実の要旨、引致すべき場所 又は勾留すべき刑事施設、有効期間 及びその期間経過後は執行に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨 並びに発付の年月日 その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長 又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。

○2項

被告人の氏名が明らかでないときは、人相、体格 その他被告人を特定するに足りる事項で被告人を指示することができる。

○3項

被告人の住居が明らかでないときは、これを記載することを要しない。

1項

召喚状は、これを送達する。

○2項

被告人から期日に出頭する旨を記載した書面を差し出し、又は出頭した被告人に対し口頭で次回の出頭を命じたときは、召喚状を送達した場合と同一の効力を有する。


口頭で出頭を命じた場合には、その旨を調書に記載しなければならない。

○3項

裁判所に近接する刑事施設にいる被告人に対しては、刑事施設職員刑事施設の長 又はその指名する刑事施設の職員をいう。以下同じ。)に通知してこれを召喚することができる。


この場合には、被告人が刑事施設職員から通知を受けた時に召喚状の送達があつたものとみなす。

1項

裁判所は、被告人の現在地の地方裁判所、家庭裁判所 又は簡易裁判所の裁判官に被告人の勾引を嘱託することができる。

○2項

受託裁判官は、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所 又は簡易裁判所の裁判官に転嘱することができる。

○3項

受託裁判官は、受託事項について権限を有しないときは、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所 又は簡易裁判所の裁判官に嘱託を移送することができる。

○4項

嘱託 又は移送を受けた裁判官は、勾引状を発しなければならない。

○5項

第六十四条の規定は、前項の勾引状についてこれを準用する。


この場合においては、勾引状に嘱託によつてこれを発する旨を記載しなければならない。

1項

前条の場合には、嘱託によつて勾引状を発した裁判官は、被告人を引致した時から二十四時間以内にその人違でないかどうかを取り調べなければならない。

○2項

被告人が人違でないときは、速やかに且つ直接これを指定された裁判所に送致しなければならない。


この場合には、嘱託によつて勾引状を発した裁判官は、被告人が指定された裁判所に到着すべき期間を定めなければならない。

○3項

前項の場合には、第五十九条の期間は、被告人が指定された裁判所に到着した時からこれを起算する。

1項

裁判所は、必要があるときは、指定の場所に被告人の出頭 又は同行を命ずることができる。


被告人が正当な理由がなくこれに応じないときは、その場所に勾引することができる。


この場合には、第五十九条の期間は、被告人をその場所に引致した時からこれを起算する。

1項

裁判長は、急速を要する場合には、第五十七条乃至第六十二条第六十五条第六十六条 及び前条に規定する処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。

1項

勾引状 又は勾留状は、検察官の指揮によつて、検察事務官 又は司法警察職員がこれを執行する。


但し、急速を要する場合には、裁判長、受命裁判官 又は地方裁判所、家庭裁判所 若しくは簡易裁判所の裁判官は、その執行を指揮することができる。

○2項

刑事施設にいる被告人に対して発せられた勾留状は、検察官の指揮によつて、刑事施設職員がこれを執行する。

1項

検察事務官 又は司法警察職員は、必要があるときは、管轄区域外で、勾引状 若しくは勾留状を執行し、又はその地の検察事務官 若しくは司法警察職員にその執行を求めることができる。

1項

被告人の現在地が判らないときは、裁判長は、検事長にその捜査 及び勾引状 又は勾留状の執行を嘱託することができる。

○2項

嘱託を受けた検事長は、その管内の検察官に捜査 及び勾引状 又は勾留状の執行の手続をさせなければならない。

1項

勾引状を執行するには、これを被告人に示した上、できる限り速やかに且つ直接、指定された裁判所 その他の場所に引致しなければならない。


第六十六条第四項の勾引状については、これを発した裁判官に引致しなければならない。

○2項

勾留状を執行するには、これを被告人に示した上、できる限り速やかに、かつ、直接、指定された刑事施設に引致しなければならない。

○3項

勾引状 又は勾留状を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、前二項の規定にかかわらず、被告人に対し公訴事実の要旨 及び令状が発せられている旨を告げて、その執行をすることができる。


但し、令状は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。

1項

勾引状 又は勾留状の執行を受けた被告人を護送する場合において必要があるときは、仮に最寄りの刑事施設にこれを留置することができる。

1項

勾引状の執行を受けた被告人を引致した場合において必要があるときは、これを刑事施設に留置することができる。

1項

被告人を勾引したときは、直ちに被告人に対し、公訴事実の要旨 及び弁護人を選任することができる旨 並びに貧困 その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。


ただし、被告人に弁護人があるときは、公訴事実の要旨を告げれば足りる。

○2項

前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、弁護士、弁護士法人(弁護士・外国法事務弁護士共同法人を含む。以下同じ。) 又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨 及び その申出先を教示しなければならない。

○3項

第一項の告知 及び前項の教示は、合議体の構成員 又は裁判所書記官にこれをさせることができる。

○4項

第六十六条第四項の規定により勾引状を発した場合には、第一項の告知 及び第二項の教示は、その勾引状を発した裁判官がこれをしなければならない。


ただし、裁判所書記官にその告知 及び教示をさせることができる。

1項

被告人を勾留するには、被告人に対し、弁護人を選任することができる旨 及び貧困 その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。


ただし、被告人に弁護人があるときは、この限りでない。

○2項

前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、勾留された被告人は弁護士、弁護士法人 又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨 及びその申出先を教示しなければならない。

○3項

第六十一条ただし書の場合には、被告人を勾留した後直ちに、第一項に規定する事項 及び公訴事実の要旨を告げるとともに、前項に規定する事項を教示しなければならない。


ただし、被告人に弁護人があるときは、公訴事実の要旨を告げれば足りる。

○4項

前条第三項の規定は、第一項の告知、第二項の教示 並びに前項の告知 及び教示についてこれを準用する。

1項

勾引 又は勾留された被告人は、裁判所 又は刑事施設の長 若しくはその代理者に弁護士、弁護士法人 又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる。


ただし、被告人に弁護人があるときは、この限りでない。

○2項

前項の申出を受けた裁判所 又は刑事施設の長 若しくはその代理者は、直ちに被告人の指定した弁護士、弁護士法人 又は弁護士会にその旨を通知しなければならない。


被告人が二人以上の弁護士 又は二以上の弁護士法人 若しくは弁護士会を指定して前項の申出をしたときは、そのうちの一人の弁護士 又は一の弁護士法人 若しくは弁護士会にこれを通知すれば足りる。

1項

被告人を勾留したときは、直ちに弁護人にその旨を通知しなければならない。


被告人に弁護人がないときは、被告人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族 及び兄弟姉妹のうち被告人の指定する者一人にその旨を通知しなければならない。

1項

勾留されている被告人は、第三十九条第一項に規定する者以外の者と、法令の範囲内で、接見し、又は書類 若しくは物の授受をすることができる。


勾引状により刑事施設に留置されている被告人も、同様である。

1項

裁判所は、逃亡し 又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により 又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類 その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。


但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない

1項

勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。

○2項

勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹 その他利害関係人も、前項の請求をすることができる。

○3項

前二項の請求は、保釈、勾留の執行停止 若しくは勾留の取消があつたとき、又は勾留状の効力が消滅したときは、その効力を失う。

1項

勾留の理由の開示は、公開の法廷でこれをしなければならない。

○2項

法廷は、裁判官 及び裁判所書記が列席してこれを開く。

○3項

被告人 及び その弁護人が出頭しないときは、開廷することはできない


但し被告人の出頭については、被告人が病気 その他やむを得ない事由によつて出頭することができず且つ被告人に異議がないとき、弁護人の出頭については、被告人に異議がないときは、この限りでない。

1項

法廷においては、裁判長は、勾留の理由を告げなければならない。

○2項

検察官 又は被告人 及び弁護人 並びにこれらの者以外の請求者は、意見を述べることができる。


但し、裁判長は、相当と認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を差し出すべきことを命ずることができる。

1項

勾留の理由の開示は、合議体の構成員にこれをさせることができる。

1項

同一の勾留について第八十二条の請求が二以上ある場合には、勾留の理由の開示は、最初の請求についてこれを行う。


その他の請求は、勾留の理由の開示が終つた後、決定でこれを却下しなければならない。

1項

勾留の理由 又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人 若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族 若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。

○2項

第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

1項

勾留されている被告人 又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族 若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。

○2項

第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

1項

保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。

一 号

被告人が死刑 又は無期 若しくは短期一年以上の懲役 若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。

二 号

被告人が前に死刑 又は無期 若しくは長期十年を超える懲役 若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。

三 号

被告人が常習として長期三年以上の懲役 又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。

四 号

被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

五 号

被告人が、被害者 その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。

六 号

被告人の氏名 又は住居が分からないとき。

1項

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し 又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上 又は防御の準備上の不利益の程度 その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

1項

勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。

○2項

第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

1項

裁判所は、保釈を許す決定 又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。

○2項

検察官の請求による場合を除いて、勾留を取り消す決定をするときも、前項同様である。


但し、急速を要する場合は、この限りでない。

1項

保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。

○2項

保証金額は、犯罪の性質 及び情状、証拠の証明力 並びに被告人の性格 及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。

○3項
保釈を許す場合には、被告人の住居を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。
4項

裁判所は、前項の規定により被告人の住居を制限する場合において、必要と認めるときは、裁判所の許可を受けないでその指定する期間を超えて当該住居を離れてはならない旨の条件を付することができる。

5項

前項の期間は、被告人の生活の状況 その他の事情を考慮して指定する。

6項

第四項の許可をする場合には、同項の住居を離れることを必要とする理由 その他の事情を考慮して、当該住居を離れることができる期間を指定しなければならない。

7項

裁判所は、必要と認めるときは、前項の期間を延長することができる。

8項

裁判所は、第四項の許可を受けた被告人について、同項の住居を離れることができる期間として指定された期間の終期まで当該住居を離れる必要がなくなつたと認めるときは、当該期間を短縮することができる。

1項

保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない

○2項

裁判所は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。

○3項

裁判所は、有価証券 又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる。

1項

裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体 その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。


この場合においては、適当と認める条件を付することができる。

2項

前項前段の決定をする場合には、勾留の執行停止をする期間を指定することができる。

3項

前項の期間を指定するに当たつては、その終期を日時をもつて指定するとともに、当該日時に出頭すべき場所を指定しなければならない。

4項

裁判所は、必要と認めるときは、第二項の期間を延長することができる。


この場合においては、前項の規定を準用する。

5項

裁判所は、期間を指定されて勾留の執行停止をされた被告人について、当該期間の終期として指定された日時まで勾留の執行停止を継続する必要がなくなつたと認めるときは、当該期間を短縮することができる。


この場合においては、第三項の規定を準用する。

6項

第九十三条第四項から第八項までの規定は、第一項前段の規定により被告人の住居を制限する場合について準用する。

1項

期間を指定されて勾留の執行停止をされた被告人が、正当な理由がなく、当該期間の終期として指定された日時に、出頭すべき場所として指定された場所に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。

1項

裁判所の許可を受けないで指定された期間を超えて制限された住居を離れてはならない旨の条件を付されて保釈 又は勾留の執行停止をされた被告人が、当該条件に係る住居を離れ、当該許可を受けないで、正当な理由がなく、当該期間を超えて当該住居に帰着しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。

2項

前項の被告人が、裁判所の許可を受けて同項の住居を離れ、正当な理由がなく、当該住居を離れることができる期間として指定された期間を超えて当該住居に帰着しないときも、同項と同様とする。

1項

裁判所は、被告人の逃亡を防止し、又は公判期日への出頭を確保するため必要があると認めるときは、保釈を許す決定 又は第九十五条第一項前段の決定を受けた被告人に対し、その住居、労働 又は通学の状況、身分関係 その他のその変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上 又は身分上の事項として裁判所の定めるものについて、次に掲げるところに従つて報告をすることを命ずることができる。

一 号
裁判所の指定する時期に、当該時期における当該事項について報告をすること。
二 号
当該事項に変更が生じたときは、速やかに、その変更の内容について報告をすること。
2項

裁判所は、前項の場合において、必要と認めるときは、同項の被告人に対し、同項の規定による報告を裁判所の指定する日時 及び場所に出頭してすることを命ずることができる。

3項

裁判所は、第一項の規定による報告があつたときは その旨 及びその報告の内容を、同項第一号に係る部分に限る)の規定による報告がなかつたとき 又は同項第二号に係る部分に限る)の規定による報告がなかつたことを知つたときは その旨 及びその状況を、それぞれ速やかに検察官に通知しなければならない。

1項

裁判所は、次の各号いずれかに該当する場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈 又は勾留の執行停止を取り消すことができる。

一 号

被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき

二 号

被告人が逃亡し 又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

三 号

被告人が罪証を隠滅し 又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

四 号

被告人が、被害者 その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。

五 号

被告人が、正当な理由がなく前条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。

六 号

被告人が住居の制限 その他裁判所の定めた条件に違反したとき。

○2項

前項の規定により保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で、保証金の全部 又は一部を没取することができる。

○3項

保釈を取り消された者が、第九十八条の二の規定による命令を受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときも、前項と同様とする。

4項

拘禁刑以上の刑に処する判決(拘禁刑の全部の執行猶予の言渡しをしないものに限る。以下同じ。)の宣告を受けた後、保釈 又は勾留の執行停止をされている被告人が逃亡したときは、裁判所は、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈 又は勾留の執行停止を取り消さなければならない。

5項

前項の規定により保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で、保証金の全部 又は一部を没取しなければならない。

6項

保釈を取り消された者が、第九十八条の二の規定による命令を受け正当な理由がなく出頭しない場合 又は逃亡した場合において、その者が拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告を受けた者であるときは、裁判所は、決定で、保証金の全部 又は一部を没取しなければならない。


ただし第四項の規定により保釈を取り消された者が 逃亡したときは、
この限りでない。

7項

保釈された者が、拘禁刑以上の刑に処する判決 又は拘留に処する判決の宣告を受けた後、第三百四十三条の二第四百四条第四百十四条において準用する場合を含む。第九十八条の十七第一項第二号 及び第四号において同じ。)において準用する場合を含む。)の規定による命令を受け正当な理由がなく出頭しないとき 又は逃亡したとき(保釈されている場合 及び保釈を取り消された後、逃亡した場合を除く)は検察官の請求により 又は職権で、刑の執行のため呼出しを受け正当な理由がなく出頭しないときは検察官の請求により、決定で、保証金の全部 又は一部を没取しなければならない。

1項

上訴の提起期間内の事件でまだ上訴の提起がないものについて、勾留の期間を更新し、勾留を取り消し、又は保釈 若しくは勾留の執行停止をし、若しくはこれを取り消すべき場合には、原裁判所が、その決定をしなければならない。

○2項

上訴中の事件で訴訟記録が上訴裁判所に到達していないものについて前項の決定をすべき裁判所は、裁判所の規則の定めるところによる。

○3項

前二項の規定は、勾留の理由の開示をすべき場合にこれを準用する。

1項

保釈 若しくは勾留の執行停止を取り消す決定があつたとき、又は勾留の執行停止の期間が満了したときは、検察事務官、司法警察職員 又は刑事施設職員は、検察官の指揮により、勾留状の謄本 及び保釈 若しくは勾留の執行停止を取り消す決定の謄本 又は期間を指定した勾留の執行停止の決定の謄本を被告人に示してこれを刑事施設に収容しなければならない。

○2項

前項の書面を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、同項の規定にかかわらず、検察官の指揮により、被告人に対し保釈 若しくは勾留の執行停止が取り消された旨 又は勾留の執行停止の期間が満了した旨を告げて、これを刑事施設に収容することができる。


ただし、その書面は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。

○3項

第七十一条の規定は、前二項の規定による収容についてこれを準用する。

1項
検察官は、保釈 又は勾留の執行停止を取り消す決定があつた場合において、被告人が刑事施設に収容されていないときは、被告人に対し、指定する日時 及び場所に出頭することを命ずることができる。
1項

保釈 又は勾留の執行停止を取り消され、検察官から出頭を命ぜられた被告人が、正当な理由がなく、指定された日時 及び場所に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。

第九章 押収及び捜索

1項

裁判所は、必要があるときは、証拠物 又は没収すべき物と思料するものを差し押えることができる。


但し、特別の定のある場合は、この限りでない。

○2項

差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成 若しくは変更をした電磁的記録 又は当該電子計算機で変更 若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機 又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機 又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。

○3項

裁判所は、差し押えるべき物を指定し、所有者、所持者 又は保管者にその物の提出を命ずることができる。

1項

裁判所は、必要があるときは、記録命令付差押え電磁的記録を保管する者 その他電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて必要な電磁的記録を記録媒体に記録させ、又は印刷させた上、当該記録媒体を差し押さえることをいう。以下同じ。)をすることができる。

1項

裁判所は、被告人から発し、又は被告人に対して発した郵便物、信書便物 又は電信に関する書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するものを差し押え、又は提出させることができる。

○2項

前項の規定に該当しない郵便物、信書便物 又は電信に関する書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するものは、被告事件に関係があると認めるに足りる状況のあるものに限り、これを差し押え、又は提出させることができる。

○3項

前二項の規定による処分をしたときは、その旨を発信人 又は受信人に通知しなければならない。


但し、通知によつて審理が妨げられる虞がある場合は、この限りでない。

1項

被告人 その他の者が遺留した物 又は所有者、所持者 若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。

1項

裁判所は、必要があるときは、被告人の身体、物 又は住居 その他の場所に就き、捜索をすることができる。

○2項

被告人以外の者の身体、物 又は住居 その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができる。

1項

公務員 又は公務員であつた者が保管し、又は所持する物について、本人 又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、当該監督官庁の承諾がなければ、押収をすることはできない


但し、当該監督官庁は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない

1項

左に掲げる者が前条の申立をしたときは、第一号に掲げる者についてはその院第二号に掲げる者については内閣の承諾がなければ、押収をすることはできない

一 号

衆議院 若しくは参議院の議員 又はその職に在つた者

二 号

内閣総理大臣 その他の国務大臣 又はその職に在つた者

○2項

前項の場合において、衆議院、参議院 又は内閣は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない

1項

医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、公証人、宗教の職に在る者 又はこれらの職に在つた者は、業務上委託を受けたため、保管し、又は所持する物で他人の秘密に関するものについては、押収を拒むことができる


但し、本人が承諾した場合、押収の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合(被告人が本人である場合を除く)その他裁判所の規則で定める事由がある場合は、この限りでない。

1項

公判廷外における差押え、記録命令付差押え 又は捜索は、差押状、記録命令付差押状 又は捜索状を発してこれをしなければならない。

1項

差押状、記録命令付差押状 又は捜索状には、被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ 若しくは印刷させるべき電磁的記録 及びこれを記録させ 若しくは印刷させるべき者 又は捜索すべき場所、身体 若しくは物、有効期間 及びその期間経過後は執行に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨 並びに発付の年月日 その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長が、これに記名押印しなければならない。

○2項

第九十九条第二項の規定による処分をするときは、前項の差押状に、同項に規定する事項のほか、差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。

○3項

第六十四条第二項の規定は、第一項の差押状、記録命令付差押状 又は捜索状についてこれを準用する。

1項

差押状、記録命令付差押状 又は捜索状は、検察官の指揮によつて、検察事務官 又は司法警察職員がこれを執行する。


ただし、裁判所が被告人の保護のため必要があると認めるときは、裁判長は、裁判所書記官 又は司法警察職員にその執行を命ずることができる。

○2項

裁判所は、差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行に関し、その執行をする者に対し書面で適当と認める指示をすることができる。

○3項

前項の指示は、合議体の構成員にこれをさせることができる。

○4項

第七十一条の規定は、差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行についてこれを準用する。

1項

検察事務官 又は裁判所書記官は、差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行について必要があるときは、司法警察職員に補助を求めることができる。

1項

差押状、記録命令付差押状 又は捜索状は、処分を受ける者にこれを示さなければならない。

1項

差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは、差押状の執行をする者は、その差押えに代えて次に掲げる処分をすることができる。


公判廷で差押えをする場合も、同様である。

一 号

差し押さえるべき記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写し、印刷し、又は移転した上、当該他の記録媒体を差し押さえること。

二 号

差押えを受ける者に差し押さえるべき記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写させ、印刷させ、又は移転させた上、当該他の記録媒体を差し押さえること。

1項

差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。


公判廷で差押え、記録命令付差押え 又は捜索をする場合も、同様である。

○2項

前項の処分は、押収物についても、これをすることができる。

1項

差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは、差押状 又は捜索状の執行をする者は、処分を受ける者に対し、電子計算機の操作 その他の必要な協力を求めることができる。


公判廷で差押え 又は捜索をする場合も、同様である。

1項

差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行中は、何人に対しても、許可を得ないでその場所に出入りすることを禁止することができる

○2項

前項の禁止に従わない者は、これを退去させ、又は執行が終わるまでこれに看守者を付することができる。

1項

検察官、被告人 又は弁護人は、差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行に立ち会うことができる。


ただし、身体の拘束を受けている被告人は、この限りでない。

○2項

差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行をする者は、あらかじめ、執行の日時 及び場所を前項の規定により立ち会うことができる者に通知しなければならない。


ただし、これらの者があらかじめ裁判所に立ち会わない意思を明示した場合 及び急速を要する場合は、この限りでない。

○3項

裁判所は、差押状 又は捜索状の執行について必要があるときは、被告人をこれに立ち会わせることができる。

1項

公務所内で差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行をするときは、その長 又はこれに代わるべき者に通知してその処分に立ち会わせなければならない。

○2項

前項の規定による場合を除いて、人の住居 又は人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶内で差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行をするときは、住居主 若しくは看守者 又はこれらの者に代わるべき者をこれに立ち会わせなければならない。


これらの者を立ち会わせることができないときは、隣人 又は地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。

1項

女子の身体について捜索状の執行をする場合には、成年の女子をこれに立ち会わせなければならない。


但し、急速を要する場合は、この限りでない。

1項

日出前日没後には、令状に夜間でも執行することができる旨の記載がなければ、差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行のため、人の住居 又は人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶内に入ることはできない

○2項

日没前に差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行に着手したときは、日没後でも、その処分を継続することができる。

1項

次に掲げる場所で差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行をするについては、前条第一項に規定する制限によることを要しない。

一 号

賭博、富くじ 又は風俗を害する行為に常用されるものと認められる場所

二 号

旅館、飲食店 その他夜間でも公衆が出入りすることができる場所。


ただし、公開した時間内に限る

1項

差押状、記録命令付差押状 又は捜索状の執行を中止する場合において必要があるときは、執行が終わるまでその場所を閉鎖し、又は看守者を置くことができる。

1項

捜索をした場合において証拠物 又は没収すべきものがないときは、捜索を受けた者の請求により、その旨の証明書を交付しなければならない。

1項

押収をした場合には、その目録を作り、所有者、所持者 若しくは保管者(第百十条の二の規定による処分を受けた者を含む。)又はこれらの者に代わるべき者に、これを交付しなければならない。

1項

運搬 又は保管に不便な押収物については、看守者を置き、又は所有者 その他の者に、その承諾を得て、これを保管させることができる。

○2項

危険を生ずる虞がある押収物は、これを廃棄することができる。

○3項

前二項の処分は、裁判所が特別の指示をした場合を除いては、差押状の執行をした者も、これをすることができる。

1項

没収することができる押収物で滅失 若しくは破損の虞があるもの 又は保管に不便なものについては、これを売却してその代価を保管することができる。

1項

押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付しなければならない。

○2項

押収物は、所有者、所持者、保管者 又は差出人の請求により、決定で仮にこれを還付することができる。

○3項

押収物が第百十条の二の規定により電磁的記録を移転し、又は移転させた上差し押さえた記録媒体で留置の必要がないものである場合において、差押えを受けた者と 当該記録媒体の所有者、所持者 又は保管者とが異なるときは、被告事件の終結を待たないで、決定で、当該差押えを受けた者に対し、当該記録媒体を交付し、又は当該電磁的記録の複写を許さなければならない。

○4項

前三項の決定をするについては、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴かなければならない。

1項

押収した贓物で留置の必要がないものは、被害者に還付すべき理由が明らかなときに限り、被告事件の終結を待たないで、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、決定でこれを被害者に還付しなければならない。

○2項

前項の規定は、民事訴訟の手続に従い、利害関係人がその権利を主張することを妨げない。

1項

押収 又は捜索は、合議体の構成員にこれをさせ、又はこれをすべき地の地方裁判所、家庭裁判所 若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。

○2項

受託裁判官は、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所 又は簡易裁判所の裁判官に転嘱することができる。

○3項

受託裁判官は、受託事項について権限を有しないときは、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所 又は簡易裁判所の裁判官に嘱託を移送することができる。

○4項

受命裁判官 又は受託裁判官がする押収 又は捜索については、裁判所がする押収 又は捜索に関する規定を準用する。


但し第百条第三項の通知は、裁判所がこれをしなければならない。

1項

検察事務官 又は司法警察職員は、勾引状 又は勾留状を執行する場合において必要があるときは、人の住居 又は人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶内に入り、被告人の捜索をすることができる。


この場合には、捜索状は、これを必要としない。

1項

第百十一条第百十二条第百十四条 及び第百十八条の規定は、前条の規定により検察事務官 又は司法警察職員がする捜索についてこれを準用する。


但し急速を要する場合は、第百十四条第二項の規定によることを要しない。

第十章 検証

1項

裁判所は、事実発見のため必要があるときは、検証することができる。

1項

検証については、身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊 その他必要な処分をすることができる。

1項

日出前、日没後には、住居主 若しくは看守者 又はこれらの者に代るべき者の承諾がなければ、検証のため、人の住居 又は人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶内に入ることはできない


但し、日出後では検証の目的を達することができない虞がある場合は、この限りでない。

○2項

日没前検証に着手したときは、日没後でも その処分を継続することができる。

○3項

第百十七条に規定する場所については、第一項に規定する制限によることを要しない。

1項

身体の検査については、これを受ける者の性別、健康状態 その他の事情を考慮した上、特にその方法に注意し、その者の名誉を害しないように注意しなければならない。

○2項

女子の身体を検査する場合には、医師 又は成年の女子をこれに立ち会わせなければならない。

1項

裁判所は、身体の検査のため、被告人以外の者を裁判所 又は指定の場所に召喚することができる。

1項

前条の規定により召喚を受けた者が正当な理由がなく出頭しないときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、出頭しないために生じた費用の賠償を命ずることができる。

○2項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

第百三十二条の規定により召喚を受け正当な理由がなく出頭しない者は、十万円以下の罰金 又は拘留に処する。

○2項

前項の罪を犯した者には、情状により、罰金 及び拘留を併科することができる。

1項

第百三十二条の規定による召喚に応じない者は、更にこれを召喚し、又はこれを勾引することができる。

1項

第六十二条第六十三条 及び第六十五条の規定は、第百三十二条 及び前条の規定による召喚について、第六十二条第六十四条第六十六条第六十七条第七十条第七十一条 及び第七十三条第一項の規定は、前条の規定による勾引についてこれを準用する。

1項

被告人 又は被告人以外の者が正当な理由がなく身体の検査を拒んだときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、その拒絶により生じた費用の賠償を命ずることができる。

○2項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

正当な理由がなく身体の検査を拒んだ者は、十万円以下の罰金 又は拘留に処する。

○2項

前項の罪を犯した者には、情状により、罰金 及び拘留を併科することができる。

1項

裁判所は、身体の検査を拒む者を過料に処し、又はこれに刑を科しても、その効果がないと認めるときは、そのまま、身体の検査を行うことができる。

1項

裁判所は、第百三十七条の規定により過料を科し、又は前条の規定により身体の検査をするにあたつては、あらかじめ、検察官の意見を聴き、且つ、身体の検査を受ける者の異議の理由を知るため適当な努力をしなければならない。

1項

検証をするについて必要があるときは、司法警察職員に補助をさせることができる。

1項

第百十一条の二から第百十四条まで第百十八条 及び第百二十五条の規定は、検証についてこれを準用する。

第十一章 証人尋問

1項

裁判所は、この法律に特別の定のある場合を除いては、何人でも証人としてこれを尋問することができる。

1項

裁判所は、裁判所の規則で定める相当の猶予期間を置いて、証人を召喚することができる。

1項

公務員 又は公務員であつた者が知り得た事実について、本人 又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、当該監督官庁の承諾がなければ証人としてこれを尋問することはできない


但し、当該監督官庁は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない

1項

左に掲げる者が前条の申立をしたときは、第一号に掲げる者についてはその院第二号に掲げる者については内閣の承諾がなければ、証人としてこれを尋問することはできない

一 号

衆議院 若しくは参議院の議員 又はその職に在つた者

二 号

内閣総理大臣 その他の国務大臣 又はその職に在つた者

○2項

前項の場合において、衆議院、参議院 又は内閣は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない

1項

何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる

1項

何人も、左に掲げる者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる

一 号

自己の配偶者、三親等内の血族 若しくは二親等内の姻族 又は自己と これらの親族関係があつた者

二 号

自己の後見人、後見監督人 又は保佐人

三 号

自己を後見人、後見監督人 又は保佐人とする者

1項

共犯 又は共同被告人の一人 又は数人に対し前条の関係がある者でも、他の共犯 又は共同被告人のみに関する事項については、証言を拒むことはできない

1項

医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、公証人、宗教の職に在る者 又はこれらの職に在つた者は、業務上委託を受けたため知り得た事実で他人の秘密に関するものについては、証言を拒むことができる


但し、本人が承諾した場合、証言の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合(被告人が本人である場合を除く)その他裁判所の規則で定める事由がある場合は、この限りでない。

1項

召喚を受けた証人が正当な理由がなく出頭しないときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、出頭しないために生じた費用の賠償を命ずることができる。

○2項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

証人として召喚を受け正当な理由がなく出頭しない者は、一年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。

1項

裁判所は、証人が、正当な理由がなく、召喚に応じないとき、又は応じないおそれがあるときは、その証人を勾引することができる。

1項

第六十二条第六十三条 及び第六十五条の規定は、証人の召喚について、第六十二条第六十四条第六十六条第六十七条第七十条第七十一条 及び第七十三条第一項の規定は、証人の勾引についてこれを準用する。

1項

勾引状の執行を受けた証人を護送する場合 又は引致した場合において必要があるときは、一時最寄の警察署 その他の適当な場所にこれを留置することができる。

1項

証人には、この法律に特別の定のある場合を除いて、宣誓をさせなければならない。

1項

宣誓の趣旨を理解することができない者は、宣誓をさせないで、これを尋問しなければならない。

○2項

前項に掲げる者が宣誓をしたときでも、その供述は、証言としての効力を妨げられない。

1項

証人には、その実験した事実により推測した事項を供述させることができる。

○2項

前項の供述は、鑑定に属するものでも、証言としての効力を妨げられない。

1項

検察官、被告人 又は弁護人は、証人の尋問に立ち会うことができる。

○2項

証人尋問の日時 及び場所は、あらかじめ前項の規定により尋問に立ち会うことができる者にこれを通知しなければならない。


但し、これらの者があらかじめ裁判所に立ち会わない意思を明示したときは、この限りでない。

○3項

第一項に規定する者は、証人の尋問に立ち会つたときは、裁判長に告げて、その証人を尋問することができる。

1項

検察官は、証人が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある事項についての尋問を予定している場合であつて、当該事項についての証言の重要性、関係する犯罪の軽重 及び情状 その他の事情を考慮し、必要と認めるときは、あらかじめ、裁判所に対し、当該証人尋問を次に掲げる条件により行うことを請求することができる。

一 号

尋問に応じてした供述 及びこれに基づいて得られた証拠は、証人が当該証人尋問においてした行為が第百六十一条 又は刑法第百六十九条の罪に当たる場合に当該行為に係るこれらの罪に係る事件において用いるときを除き、証人の刑事事件において、これらを証人に不利益な証拠とすることができないこと。

二 号

第百四十六条の規定にかかわらず、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができないこと。

○2項

裁判所は、前項の請求を受けたときは、その証人に尋問すべき事項に証人が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある事項が含まれないと明らかに認められる場合を除き、当該証人尋問を同項各号に掲げる条件により行う旨の決定をするものとする。

1項

検察官は、証人が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある事項について証言を拒んだと認める場合であつて、当該事項についての証言の重要性、関係する犯罪の軽重 及び情状 その他の事情を考慮し、必要と認めるときは、裁判所に対し、それ以後の当該証人尋問を前条第一項各号に掲げる条件により行うことを請求することができる。

○2項

裁判所は、前項の請求を受けたときは、その証人が証言を拒んでいないと認められる場合 又はその証人に尋問すべき事項に証人が刑事訴追を受け、若しくは有罪判決を受けるおそれのある事項が含まれないと明らかに認められる場合を除き、それ以後の当該証人尋問を前条第一項各号に掲げる条件により行う旨の決定をするものとする。

1項

裁判所は、証人を尋問する場合において、証人の年齢、心身の状態 その他の事情を考慮し、証人が著しく不安 又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、その不安 又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官 若しくは訴訟関係人の尋問 若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、その証人の供述中、証人に付き添わせることができる。

○2項

前項の規定により証人に付き添うこととされた者は、その証人の供述中、裁判官 若しくは訴訟関係人の尋問 若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。

1項

裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係 その他の事情により、証人が被告人の面前(次条第一項 及び第二項に規定する方法による場合を含む。)において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて、相当と認めるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、被告人と その証人との間で、一方から 又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。


ただし、被告人から証人の状態を認識することができないようにするための措置については、弁護人が出頭している場合に限り、採ることができる。

○2項

裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響 その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、傍聴人とその証人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。

1項

裁判所は、次に掲げる者を証人として尋問する場合において、相当と認めるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、裁判官 及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所以外の場所であつて、同一構内これらの者が在席する場所と同一の構内をいう。次項において同じ。)にあるものにその証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によつて、尋問することができる。

一 号

刑法第百七十六条第百七十七条第百七十九条第百八十一条 若しくは第百八十二条の罪、同法第二百二十五条 若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ 又は結婚の目的に係る部分に限る。以下 この号において同じ。)、同法第二百二十七条第一項同法第二百二十五条 又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇ほう助する目的に係る部分に限る)若しくは第三項わいせつの目的に係る部分に限る)の罪 若しくは同法第二百四十一条第一項 若しくは第三項の罪 又はこれらの罪の未遂罪の被害者

二 号

児童福祉法昭和二十二年法律第百六十四号第六十条第一項の罪 若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律平成十一年法律第五十二号第四条から第八条までの罪 又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律令和五年法律第六十七号第二条から第六条までの罪の被害者

三 号

前二号に掲げる者のほか、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係 その他の事情により、裁判官 及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者

○2項

裁判所は、証人を尋問する場合において、次に掲げる場合であつて、相当と認めるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、同一構内以外にある場所であつて裁判所の規則で定めるものに証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によつて、尋問することができる。

一 号

犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係 その他の事情により、証人が同一構内に出頭するときは精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認めるとき。

二 号

同一構内への出頭に伴う移動に際し、証人の身体 若しくは財産に害を加え 又は証人を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるとき。

三 号

同一構内への出頭後の移動に際し尾行 その他の方法で証人の住居、勤務先 その他その通常所在する場所が特定されることにより、証人 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるとき。

四 号

証人が遠隔地に居住し、その年齢、職業、健康状態 その他の事情により、同一構内に出頭することが著しく困難であると認めるとき。

○3項

前二項に規定する方法により証人尋問を行う場合(前項第四号の規定による場合を除く)において、裁判所は、その証人が後の刑事手続において同一の事実につき再び証人として供述を求められることがあると思料する場合であつて、証人の同意があるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、その証人の尋問 及び供述 並びにその状況を記録媒体(映像 及び音声を同時に記録することができるものに限る)に記録することができる。

○4項

前項の規定により証人の尋問 及び供述 並びにその状況を記録した記録媒体は、訴訟記録に添付して調書の一部とするものとする。

1項

裁判所は、証人の重要性、年齢、職業、健康状態 その他の事情と事案の軽重とを考慮した上、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、必要と認めるときは、裁判所外にこれを召喚し、又はその現在場所でこれを尋問することができる。

○2項

前項の場合には、裁判所は、あらかじめ、検察官、被告人 及び弁護人に、尋問事項を知る機会を与えなければならない。

○3項

検察官、被告人 又は弁護人は、前項の尋問事項に附加して、必要な事項の尋問を請求することができる。

1項

裁判所は、検察官、被告人 又は弁護人が前条の証人尋問に立ち会わなかつたときは、立ち会わなかつた者に、証人の供述の内容を知る機会を与えなければならない。

○2項

前項の証人の供述が被告人に予期しなかつた著しい不利益なものである場合には、被告人 又は弁護人は、更に必要な事項の尋問を請求することができる。

○3項

裁判所は、前項の請求を理由がないものと認めるときは、これを却下することができる。

1項

証人が正当な理由がなく宣誓 又は証言を拒んだときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、その拒絶により生じた費用の賠償を命ずることができる。

○2項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

正当な理由がなく宣誓 又は証言を拒んだ者は、一年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。

1項

裁判所は、必要があるときは、決定で指定の場所に証人の同行を命ずることができる。


証人が正当な理由がなく同行に応じないときは、これを勾引することができる

1項

裁判所外で証人を尋問すべきときは、合議体の構成員にこれをさせ、又は証人の現在地の地方裁判所、家庭裁判所 若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。

○2項

受託裁判官は、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所 又は簡易裁判所の裁判官に転嘱することができる。

○3項

受託裁判官は、受託事項について権限を有しないときは、受託の権限を有する他の地方裁判所、家庭裁判所 又は簡易裁判所の裁判官に嘱託を移送することができる。

○4項

受命裁判官 又は受託裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所 又は裁判長に属する処分をすることができる。


但し第百五十条 及び第百六十条の決定は、裁判所もこれをすることができる。

○5項

第百五十八条第二項 及び第三項 並びに第百五十九条に規定する手続は、前項の規定にかかわらず、裁判所がこれをしなければならない。

1項

証人は、旅費、日当 及び宿泊料を請求することができる。


但し、正当な理由がなく宣誓 又は証言を拒んだ者は、この限りでない。

○2項

証人は、あらかじめ旅費、日当 又は宿泊料の支給を受けた場合において、正当な理由がなく、出頭せず 又は宣誓 若しくは証言を拒んだときは、その支給を受けた費用を返納しなければならない。

第十二章 鑑定

1項

裁判所は、学識経験のある者に鑑定を命ずることができる。

1項

鑑定人には、宣誓をさせなければならない。

1項

被告人の心神 又は身体に関する鑑定をさせるについて必要があるときは、裁判所は、期間を定め、病院 その他の相当な場所に被告人を留置することができる。

○2項

前項の留置は、鑑定留置状を発してこれをしなければならない。

○3項

第一項の留置につき必要があるときは、裁判所は、被告人を収容すべき病院 その他の場所の管理者の申出により、又は職権で、司法警察職員に被告人の看守を命ずることができる。

○4項

裁判所は、必要があるときは、留置の期間を延長し 又は短縮することができる。

○5項

勾留に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、第一項の留置についてこれを準用する。


但し、保釈に関する規定は、この限りでない。

○6項

第一項の留置は、未決勾留日数の算入については、これを勾留とみなす。

1項

勾留中の被告人に対し鑑定留置状が執行されたときは、被告人が留置されている間、勾留は、その執行を停止されたものとする。

○2項

前項の場合において、前条第一項の処分が取り消され 又は留置の期間が満了したときは、第九十八条の規定を準用する。

1項

鑑定人は、鑑定について必要がある場合には、裁判所の許可を受けて、人の住居 若しくは人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶内に入り、身体を検査し、死体を解剖し、墳墓を発掘し、又は物を破壊することができる。

○2項

裁判所は、前項の許可をするには、被告人の氏名、罪名 及び立ち入るべき場所、検査すべき身体、解剖すべき死体、発掘すべき墳墓 又は破壊すべき物 並びに鑑定人の氏名 その他裁判所の規則で定める事項を記載した許可状を発して、これをしなければならない。

○3項

裁判所は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。

○4項

鑑定人は、第一項の処分を受ける者に許可状を示さなければならない。

○5項

前三項の規定は、鑑定人が公判廷でする第一項の処分については、これを適用しない

○6項

第百三十一条第百三十七条第百三十八条 及び第百四十条の規定は、鑑定人の第一項の規定によつてする身体の検査についてこれを準用する。

1項

裁判所は、合議体の構成員に鑑定について必要な処分をさせることができる。


但し第百六十七条第一項に規定する処分については、この限りでない。

1項

検察官 及び弁護人は、鑑定に立ち会うことができる。


この場合には、第百五十七条第二項の規定を準用する。

1項

前章の規定は、勾引に関する規定を除いて、鑑定についてこれを準用する。

1項

身体の検査を受ける者が、鑑定人の第百六十八条第一項の規定によつてする身体の検査を拒んだ場合には、鑑定人は、裁判官にその者の身体の検査を請求することができる。

○2項

前項の請求を受けた裁判官は、第十章の規定に準じ身体の検査をすることができる。

1項

鑑定人は、旅費、日当 及び宿泊料の外、鑑定料を請求し、及び鑑定に必要な費用の支払 又は償還を受けることができる。

○2項

鑑定人は、あらかじめ鑑定に必要な費用の支払を受けた場合において、正当な理由がなく、出頭せず又は宣誓 若しくは鑑定を拒んだときは、その支払を受けた費用を返納しなければならない。

1項

特別の知識によつて知り得た過去の事実に関する尋問については、この章の規定によらないで、前章の規定を適用する。

第十三章 通訳及び翻訳

1項

国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない。

1項

耳の聞えない者 又は口のきけない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせることができる。

1項

国語でない文字 又は符号は、これを翻訳させることができる。

1項

前章の規定は、通訳 及び翻訳についてこれを準用する。

第十四章 証拠保全

1項

被告人、被疑者 又は弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第一回の公判期日前に限り、裁判官に押収、捜索、検証、証人の尋問 又は鑑定の処分を請求することができる。

○2項

前項の請求を受けた裁判官は、その処分に関し、裁判所 又は裁判長と同一の権限を有する。

1項

検察官 及び弁護人は、裁判所において、前条第一項の処分に関する書類 及び証拠物を閲覧し、且つ謄写することができる。


但し、弁護人が証拠物の謄写をするについては、裁判官の許可を受けなければならない。

○2項

前項の規定にかかわらず第百五十七条の六第四項に規定する記録媒体は、謄写することができない

○3項

被告人 又は被疑者は、裁判官の許可を受け、裁判所において、第一項の書類 及び証拠物を閲覧することができる。


ただし、被告人 又は被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。

第十五章 訴訟費用

1項

刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部 又は一部を負担させなければならない。


但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときは、この限りでない。

○2項

被告人の責に帰すべき事由によつて生じた費用は、刑の言渡をしない場合にも、被告人にこれを負担させることができる。

○3項

検察官のみが上訴を申し立てた場合において、上訴が棄却されたとき、又は上訴の取下げがあつたときは、上訴に関する訴訟費用は、これを被告人に負担させることができない


ただし、被告人の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、この限りでない。

○4項

公訴が提起されなかつた場合において、被疑者の責めに帰すべき事由により生じた費用があるときは、被疑者にこれを負担させることができる。

1項

共犯の訴訟費用は、共犯人に、連帯して、これを負担させることができる。

1項

告訴、告発 又は請求により公訴の提起があつた事件について被告人が無罪 又は免訴の裁判を受けた場合において、告訴人、告発人 又は請求人に故意 又は重大な過失があつたときは、その者に訴訟費用を負担させることができる。

○2項

告訴、告発 又は請求があつた事件について公訴が提起されなかつた場合において、告訴人、告発人 又は請求人に故意 又は重大な過失があつたときも、前項同様とする。

1項

検察官以外の者が上訴 又は再審 若しくは正式裁判の請求を取り下げた場合には、その者に上訴、再審 又は正式裁判に関する費用を負担させることができる。

1項

裁判によつて訴訟手続が終了する場合において、被告人に訴訟費用を負担させるときは、職権でその裁判をしなければならない。


この裁判に対しては、本案の裁判について上訴があつたときに限り、不服を申し立てることができる。

1項

裁判によつて訴訟手続が終了する場合において、被告人以外の者に訴訟費用を負担させるときは、職権で別にその決定をしなければならない。


この決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

裁判によらないで訴訟手続が終了する場合において、訴訟費用を負担させるときは、最終に事件の係属した裁判所が、職権でその決定をしなければならない。


この決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

公訴が提起されなかつた場合において、訴訟費用を負担させるときは、検察官の請求により、裁判所が決定をもつてこれを行う。


この決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

訴訟費用の負担を命ずる裁判にその額を表示しないときは、執行の指揮をすべき検察官が、これを算定する。

第十六章 費用の補償

1項

無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であつた者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。


ただし、被告人であつた者の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、補償をしないことができる。

○2項

被告人であつた者が、捜査 又は審判を誤らせる目的で、虚偽の自白をし、又は他の有罪の証拠を作ることにより、公訴の提起を受けるに至つたものと認められるときは、前項の補償の全部 又は一部をしないことができる。

○3項

第百八十八条の五第一項の規定による補償の請求がされている場合には、第百八十八条の四の規定により補償される費用については、第一項の補償をしない。

1項

前条第一項の補償は、被告人であつた者の請求により、無罪の判決をした裁判所が、決定をもつてこれを行う。

○2項

前項の請求は、無罪の判決が確定した後 六箇月以内にこれをしなければならない。

○3項

補償に関する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

検察官のみが上訴をした場合において、上訴が棄却され 又は取り下げられて当該上訴に係る原裁判が確定したときは、これによつて無罪の判決が確定した場合を除き、国は、当該事件の被告人 又は被告人であつた者に対し、上訴によりその審級において生じた費用の補償をする。


ただし、被告人 又は被告人であつた者の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、補償をしないことができる。

1項

前条の補償は、被告人 又は被告人であつた者の請求により、当該上訴裁判所であつた最高裁判所 又は高等裁判所が、決定をもつてこれを行う。

○2項

前項の請求は、当該上訴に係る原裁判が確定した後 二箇月以内にこれをしなければならない。

○3項

補償に関する決定で高等裁判所がしたものに対しては、第四百二十八条第二項の異議の申立てをすることができる。


この場合には、即時抗告に関する規定をも準用する。

1項

第百八十八条の二第一項 又は第百八十八条の四の規定により補償される費用の範囲は、被告人 若しくは被告人であつた者 又はそれらの者の弁護人であつた者が公判準備 及び公判期日に出頭するに要した旅費、日当 及び宿泊料 並びに弁護人であつた者に対する報酬に限るものとし、その額に関しては、刑事訴訟費用に関する法律の規定中、被告人 又は被告人であつた者については証人、


弁護人であつた者については弁護人に関する規定を準用する。

○2項

裁判所は、公判準備 又は公判期日に出頭した弁護人が二人以上あつたときは、事件の性質、審理の状況 その他の事情を考慮して、前項の弁護人であつた者の旅費、日当 及び宿泊料を主任弁護人 その他一部の弁護人に係るものに限ることができる。

1項

補償の請求 その他補償に関する手続、補償と他の法律による損害賠償との関係、補償を受ける権利の譲渡 又は差押え 及び被告人 又は被告人であつた者の相続人に対する補償については、この法律に特別の定めがある場合のほか、刑事補償法昭和二十五年法律第一号第一条に規定する補償の例による。

第二編 第一審

第一章 捜査

1項

警察官は、それぞれ、他の法律 又は国家公安委員会 若しくは都道府県公安委員会の定めるところにより、司法警察職員として職務を行う。

○2項

司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人 及び証拠を捜査するものとする。

1項

森林、鉄道 その他特別の事項について司法警察職員として職務を行うべき者 及びその職務の範囲は、別に法律でこれを定める。

1項

検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる。

○2項

検察事務官は、検察官の指揮を受け、捜査をしなければならない。

1項

検察官と都道府県公安委員会 及び司法警察職員とは、捜査に関し、互に協力しなければならない。

1項

検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。


この場合における指示は、捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する一般的な準則を定めることによつて行うものとする。

○2項

検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮をすることができる。

○3項

検察官は、自ら犯罪を捜査する場合において必要があるときは、司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができる。

○4項

前三項の場合において、司法警察職員は、検察官の指示 又は指揮に従わなければならない。

1項

検事総長、検事長 又は検事正は、司法警察職員が正当な理由がなく検察官の指示 又は指揮に従わない場合において必要と認めるときは、警察官たる司法警察職員については、国家公安委員会 又は都道府県公安委員会に、警察官たる者以外の司法警察職員については、その者を懲戒し 又は罷免する権限を有する者に、それぞれ懲戒 又は罷免の訴追をすることができる。

○2項

国家公安委員会、都道府県公安委員会 又は警察官たる者以外の司法警察職員を懲戒し 若しくは罷免する権限を有する者は、前項の訴追が理由のあるものと認めるときは、別に法律の定めるところにより、訴追を受けた者を懲戒し 又は罷免しなければならない。

1項

検察官 及び検察事務官は、捜査のため必要があるときは、管轄区域外で職務を行うことができる。

1項

検察官、検察事務官 及び司法警察職員 並びに弁護人 その他職務上捜査に関係のある者は、被疑者 その他の者の名誉を害しないように注意し、且つ、捜査の妨げとならないように注意しなければならない。

1項

捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。


但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。

○2項

捜査については、公務所 又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

○3項

検察官、検察事務官 又は司法警察員は、差押え 又は記録命令付差押えをするため必要があるときは、電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者 又は自己の業務のために不特定 若しくは多数の者の通信を媒介することのできる電気通信を行うための設備を設置している者に対し、その業務上記録している電気通信の送信元、送信先、通信日時 その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定し、三十日を超えない期間を定めて、これを消去しないよう、書面で求ることができる。


この場合において、当該電磁的記録について差押え 又は記録命令付差押えをする必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない。

○4項

前項の規定により消去しないよう求める期間については、特に必要があるときは、三十日を超えない範囲内で延長することができる。


ただし、消去しないよう求める期間は、通じて六十日を超えることができない。

○5項

第二項 又は第三項の規定による求めを行う場合において、必要があるときは、みだりにこれらに関する事項を漏らさないよう求めることができる。

1項

検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。


但し、被疑者は、逮捕 又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

○2項

前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。

○3項

被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。

○4項

前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。

○5項

被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。


但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

1項

検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。


ただし三十万円刑法暴力行為等処罰に関する法律 及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円以下の罰金、拘留 又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合 又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る

○2項

裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官 又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会 又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る次項 及び第二百一条の二第一項において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。


ただし、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。

○3項

検察官 又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求 又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。

1項

逮捕状には、被疑者の氏名 及び住居、罪名、被疑事実の要旨、引致すべき官公署 その他の場所、有効期間 及びその期間経過後は逮捕をすることができず令状はこれを返還しなければならない旨 並びに発付の年月日 その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。

○2項

第六十四条第二項 及び第三項の規定は、逮捕状についてこれを準用する。

1項

逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。

○2項

第七十三条第三項の規定は、逮捕状により被疑者を逮捕する場合にこれを準用する。

1項

検察官 又は司法警察員は、次に掲げる者の個人特定事項(氏名 及び住所 その他の個人を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)について、必要と認めるときは、第百九十九条第二項本文の請求と同時に、裁判官に対し、被疑者に示すものとして、当該個人特定事項の記載がない逮捕状の抄本 その他の逮捕状に代わるものの交付を請求することができる。

一 号
次に掲げる事件の被害者

刑法第百七十六条第百七十七条第百七十九条第百八十一条 若しくは第百八十二条の罪、同法第二百二十五条 若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ 又は結婚の目的に係る部分に限る。以下 このにおいて同じ。)、同法第二百二十七条第一項同法第二百二十五条 又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る)若しくは第三項わいせつの目的に係る部分に限る)の罪 若しくは同法第二百四十一条第一項 若しくは第三項の罪 又はこれらの罪の未遂罪に係る事件

児童福祉法第六十条第一項の罪 若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第四条から第八条までの罪 又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第二条から第六条までの罪に係る事件

及びに掲げる事件のほか、犯行の態様、被害の状況 その他の事情により、被害者の個人特定事項が被疑者に知られることにより次に掲げるおそれがあると認められる事件

(1)

被害者等(被害者 又は被害者が死亡した場合 若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族 若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)の名誉 又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ

(2)

(1)に掲げるもののほか、被害者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれ

二 号

前号に掲げる者のほか、個人特定事項が被疑者に知られることにより次に掲げるおそれがあると認められる者

その者の名誉 又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ

に掲げるもののほか、その者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれ

2項

裁判官は、前項の規定による請求を受けた場合において、第百九十九条第二項の規定により逮捕状を発するときは、これと同時に、被疑者に示すものとして、当該請求に係る個人特定事項を明らかにしない方法により被疑事実の要旨を記載した逮捕状の抄本 その他の逮捕状に代わるものを交付するものとする。


ただし、当該請求に係る者が前項第一号 又は第二号に掲げる者に該当しないことが明らかなときは、この限りでない。

3項

前項の規定による逮捕状に代わるものの交付があつたときは、前条第一項の規定にかかわらず、逮捕状により被疑者を逮捕するに当たり、当該逮捕状に代わるものを被疑者に示すことができる。

4項

第二項の規定による逮捕状に代わるものの交付があつた場合において、当該逮捕状に代わるものを所持しないためこれを示すことができない場合であつて、急速を要するときは、前条第一項の規定 及び同条第二項において準用する第七十三条第三項の規定にかかわらず、被疑者に対し、逮捕状に記載された個人特定事項のうち当該逮捕状に代わるものに記載がないものを明らかにしない方法により被疑事実の要旨を告げるとともに、逮捕状が発せられている旨を告げて、逮捕状により被疑者を逮捕することができる。


ただし、当該逮捕状に代わるものは、できる限り速やかに示さなければならない。

1項

検察事務官 又は司法巡査が逮捕状により被疑者を逮捕したときは、直ちに、検察事務官はこれを検察官に、司法巡査はこれを司法警察員に引致しなければならない。

1項

司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨 及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類 及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

○2項

前項の場合において、被疑者に弁護人の有無を尋ね、弁護人があるときは、弁護人を選任することができる旨は、これを告げることを要しない。

○3項

司法警察員は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、弁護士、弁護士法人 又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨 及び その申出先を教示しなければならない。

○4項

司法警察員は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困 その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨 並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨 及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ弁護士会第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。

○5項

第一項の時間の制限内に送致の手続をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

1項

検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者(前条の規定により送致された被疑者を除く)を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨 及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。


但し、その時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。

○2項

検察官は、前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、弁護士、弁護士法人 又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨 及び その申出先を教示しなければならない。

○3項

検察官は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困 その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨 並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨 及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ弁護士会第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。

○4項

第一項の時間の制限内に勾留の請求 又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

○5項

前条第二項の規定は、第一項の場合にこれを準用する。

1項

検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。

○2項

前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない

○3項

前二項の時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。

○4項

第一項 及び第二項の時間の制限内に勾留の請求 又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

1項

検察官 又は司法警察員がやむを得ない事情によつて前三条の時間の制限に従うことができなかつたときは、検察官は、裁判官にその事由を疎明して、被疑者の勾留を請求することができる。

○2項

前項の請求を受けた裁判官は、その遅延がやむを得ない事由に基く正当なものであると認める場合でなければ、勾留状を発することができない

1項

前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所 又は裁判長と同一の権限を有する。


但し、保釈については、この限りでない。

○2項

前項の裁判官は、勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げる際に、被疑者に対し、弁護人を選任することができる旨 及び貧困 その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。


ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。

○3項

前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、勾留された被疑者は弁護士、弁護士法人 又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨 及び その申出先を教示しなければならない。

○4項

第二項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を告げるに当たつては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨 及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ弁護士会第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。

○5項

裁判官は、第一項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。


ただし、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。

1項

検察官は、第二百一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者の個人特定事項について、必要と認めるときは、前条第一項の勾留の請求と同時に、裁判官に対し、勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げるに当たつては当該個人特定事項を明らかにしない方法によること 及び被疑者に示すものとして当該個人特定事項の記載がない勾留状の抄本 その他の勾留状に代わるものを交付することを請求することができる。

2項

裁判官は、前項の規定による請求を受けたときは、勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げるに当たつては、当該請求に係る個人特定事項を明らかにしない方法によるとともに、前条第五項本文の規定により勾留状を発するときは、これと同時に、被疑者に示すものとして、当該個人特定事項を明らかにしない方法により被疑事実の要旨を記載した勾留状の抄本 その他の勾留状に代わるものを交付するものとする。


ただし、当該請求に係る者が第二百一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者に該当しないことが明らかなときは、この限りでない。

1項

裁判官は、前条第二項の規定による措置をとつた場合において、次の各号いずれかに該当すると認めるときは、被疑者 又は弁護人の請求により、当該措置に係る個人特定事項の全部 又は一部を被疑者に通知する旨の裁判をしなければならない。

一 号

又はに掲げる個人特定事項の区分に応じ、当該 又はに定める場合であるとき。

被害者の個人特定事項 当該措置に係る事件に係る罪が第二百一条の二第一項第一号イ 及びに規定するものに該当せず、かつ、当該措置に係る事件が同号ハに掲げるものに該当しないとき。

被害者以外の者の個人特定事項 当該措置に係る者が第二百一条の二第一項第二号に掲げる者に該当しないとき。

二 号
当該措置により被疑者の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき。
2項

裁判官は、前項の請求について裁判をするときは、検察官の意見を聴かなければならない。

3項

裁判官は、第一項の裁判(前条第二項の規定による措置に係る個人特定事項の一部を被疑者に通知する旨のものに限る)をしたときは、速やかに、検察官に対し、被疑者に示すものとして、当該個人特定事項(当該裁判により通知することとされたものを除く)を明らかにしない方法により被疑事実の要旨を記載した勾留状の抄本 その他の勾留状に代わるものを交付するものとする。

4項

第七十条第一項本文 及び第二項の規定は、第一項の裁判の執行について準用する。

5項

第一項の裁判を執行するには、前条第二項の規定による措置に係る個人特定事項の全部について当該裁判があつた場合にあつては勾留状を、当該個人特定事項の一部について当該裁判があつた場合にあつては第三項の勾留状に代わるものを、被疑者に示さなければならない。

1項

前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

○2項

裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。


この期間の延長は、通じて十日を超えることができない

1項

裁判官は、刑法第二編第二章乃至第四章 又は第八章の罪にあたる事件については、検察官の請求により、前条第二項の規定により延長された期間を更に延長することができる。


この期間の延長は、通じて五日を超えることができない

1項

期間を指定されて勾留の執行停止をされた被疑者が、正当な理由がなく、当該期間の終期として指定された日時に、出頭すべき場所として指定された場所に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。

1項

裁判所の許可を受けないで指定された期間を超えて制限された住居を離れてはならない旨の条件を付されて勾留の執行停止をされた被疑者が、当該条件に係る住居を離れ、当該許可を受けないで、正当な理由がなく、当該期間を超えて当該住居に帰着しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。

2項

前項の被疑者が、裁判所の許可を受けて同項の住居を離れ、正当な理由がなく、当該住居を離れることができる期間として指定された期間を超えて当該住居に帰着しないときも、同項と同様とする。

1項

勾留の執行停止を取り消され、検察官から出頭を命ぜられた被疑者が、正当な理由がなく、指定された日時 及び場所に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。

1項

第七十四条第七十五条 及び第七十八条の規定は、逮捕状による逮捕についてこれを準用する。

1項

検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、死刑 又は無期 若しくは長期三年以上の懲役 若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。


この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。


逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

○2項

第二百条の規定は、前項の逮捕状についてこれを準用する。

1項

前条の規定により被疑者が逮捕された場合には、第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。

1項

現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。

○2項

左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。

一 号
犯人として追呼されているとき。
二 号

贓物 又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器 その他の物を所持しているとき。

三 号
身体 又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 号
誰何されて逃走しようとするとき。
1項

現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

1項

検察官、検察事務官 及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁 若しくは区検察庁の検察官 又は司法警察職員に引き渡さなければならない。

1項

司法巡査は、現行犯人を受け取つたときは、速やかにこれを司法警察員に引致しなければならない。

○2項

司法巡査は、犯人を受け取つた場合には、逮捕者の氏名、住居 及び逮捕の事由を聴き取らなければならない。


必要があるときは、逮捕者に対しともに官公署に行くことを求めることができる。

1項

現行犯人が逮捕された場合には、第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。

1項

三十万円刑法暴力行為等処罰に関する法律 及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円以下の罰金、拘留 又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居 若しくは氏名が明らかでない場合 又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第二百十三条から前条までの規定を適用する。

1項

検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索 又は検証をすることができる。


この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。

○2項

差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成 若しくは変更をした電磁的記録 又は当該電子計算機で変更 若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機 又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機 又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。

○3項

身体の拘束を受けている被疑者の指紋 若しくは足型を採取し、身長 若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り第一項の令状によることを要しない。

○4項

第一項の令状は、検察官、検察事務官 又は司法警察員の請求により、これを発する。

○5項

検察官、検察事務官 又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由 及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態 その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。

○6項

裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。

1項

前条の令状には、被疑者 若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ 若しくは印刷させるべき電磁的記録 及びこれを記録させ 若しくは印刷させるべき者、捜索すべき場所、身体 若しくは物、検証すべき場所 若しくは物 又は検査すべき身体 及び身体の検査に関する条件、有効期間 及び その期間経過後は差押え、記録命令付差押え、捜索 又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨 並びに発付の年月日 その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。

○2項

前条第二項の場合には、同条の令状に、前項に規定する事項のほか、差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。

○3項

第六十四条第二項の規定は、前条の令状についてこれを準用する。

1項

検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、第百九十九条の規定により被疑者を逮捕する場合 又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、左の処分をすることができる。


第二百十条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。

一 号

人の住居 又は人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。

二 号

逮捕の現場で差押、捜索 又は検証をすること。

○2項

前項後段の場合において逮捕状が得られなかつたときは、差押物は、直ちにこれを還付しなければならない。


第百二十三条第三項の規定は、この場合についてこれを準用する。

○3項

第一項の処分をするには、令状は、これを必要としない。

○4項

第一項第二号 及び前項の規定は、検察事務官 又は司法警察職員が勾引状 又は勾留状を執行する場合にこれを準用する。


被疑者に対して発せられた勾引状 又は勾留状を執行する場合には、第一項第一号の規定をも準用する。

1項

検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、被疑者 その他の者が遺留した物 又は所有者、所持者 若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。

1項

第九十九条第一項第百条第百二条から第百五条まで第百十条から第百十二条まで第百十四条第百十五条 及び第百十八条から第百二十四条までの規定は、検察官、検察事務官 又は司法警察職員が第二百十八条第二百二十条 及び前条の規定によつてする押収 又は捜索について、第百十条第百十一条の二第百十二条第百十四条第百十八条第百二十九条第百三十一条 及び第百三十七条から第百四十条までの規定は、検察官、検察事務官 又は司法警察職員が第二百十八条 又は第二百二十条の規定によつてする検証についてこれを準用する。


ただし、司法巡査は、第百二十二条から第百二十四条までに規定する処分をすることができない

○2項

第二百二十条の規定により被疑者を捜索する場合において急速を要するときは、第百十四条第二項の規定によることを要しない。

○3項

第百十六条 及び第百十七条の規定は、検察官、検察事務官 又は司法警察職員が第二百十八条の規定によつてする差押え、記録命令付差押え 又は捜索について、これを準用する。

○4項

日出前、日没後には、令状に夜間でも検証をすることができる旨の記載がなければ、検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、第二百十八条の規定によつてする検証のため、人の住居 又は人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶内に入ることができない


但し第百十七条に規定する場所については、この限りでない。

○5項

日没前検証に着手したときは、日没後でも その処分を継続することができる。

○6項

検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、第二百十八条の規定により差押、捜索 又は検証をするについて必要があるときは、被疑者をこれに立ち会わせることができる。

○7項

第一項の規定により、身体の検査を拒んだ者を過料に処し、又はこれに賠償を命ずべきときは、裁判所にその処分を請求しなければならない。

1項

通信の当事者のいずれの同意も得ないで電気通信の傍受を行う強制の処分については、別に法律で定めるところによる。

1項

検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、又はこれに鑑定、通訳 若しくは翻訳を嘱託することができる。

○2項

第百九十八条第一項但書 及び第三項乃至第五項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

1項

前条第一項の規定により鑑定を嘱託する場合において第百六十七条第一項に規定する処分を必要とするときは、検察官、検察事務官 又は司法警察員は、裁判官にその処分を請求しなければならない。

○2項

裁判官は、前項の請求を相当と認めるときは、第百六十七条の場合に準じてその処分をしなければならない。


この場合には、第百六十七条の二の規定を準用する。

3項

第二百七条の二 及び第二百七条の三の規定は、第一項の請求について準用する。


この場合において、

第二百七条の二
勾留を」とあるのは
第百六十七条第一項に規定する処分を」と、

同条 並びに第二百七条の三第三項 及び第五項
勾留状」とあるのは
「鑑定留置状」と、

第二百七条の二第二項
前条第五項本文の規定により」とあるのは
第二百二十四条第二項前段の規定により第百六十七条の場合に準じて」と

読み替えるものとする。

1項

第二百七条の二第二項の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合における前条第二項後段において準用する第百六十七条の二第二項において準用する第九十八条の規定の適用については、

同条第一項
勾留状の謄本」とあるのは、
第二百七条の二第二項本文の勾留状に代わるもの」と

する。

1項

第二百二十三条第一項の規定による鑑定の嘱託を受けた者は、裁判官の許可を受けて、第百六十八条第一項に規定する処分をすることができる。

○2項

前項の許可の請求は、検察官、検察事務官 又は司法警察員からこれをしなければならない。

○3項

裁判官は、前項の請求を相当と認めるときは、許可状を発しなければならない。

○4項

第百六十八条第二項乃至第四項 及び第六項の規定は、前項の許可状についてこれを準用する。

1項

犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が、第二百二十三条第一項の規定による取調に対して、出頭 又は供述を拒んだ場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。

1項

第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官 又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日においては前にした供述と異なる供述をするおそれがあり、かつ、その者の供述が犯罪の証明に欠くことができないと認められる場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。

○2項

前項の請求をするには、検察官は、証人尋問を必要とする理由 及びそれが犯罪の証明に欠くことができないものであることを疎明しなければならない。

1項

前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所 又は裁判長と同一の権限を有する。

○2項

裁判官は、捜査に支障を生ずる虞がないと認めるときは、被告人、被疑者 又は弁護人を前項の尋問に立ち会わせることができる。

1項

変死者 又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁 又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。

○2項

検察官は、検察事務官 又は司法警察員に前項の処分をさせることができる。

1項

犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。

1項

被害者の法定代理人は、独立して告訴をすることができる。

○2項

被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族 又は兄弟姉妹は、告訴をすることができる。


但し、被害者の明示した意思に反することはできない

1項

被害者の法定代理人が被疑者であるとき、被疑者の配偶者であるとき、又は被疑者の四親等内の血族 若しくは三親等内の姻族であるときは、被害者の親族は、独立して告訴をすることができる。

1項

死者の名誉を毀損した罪については、死者の親族 又は子孫は、告訴をすることができる。

○2項

名誉を毀損した罪について被害者が告訴をしないで死亡したときも、前項同様である。


但し、被害者の明示した意思に反することはできない

1項

親告罪について告訴をすることができる者がない場合には、検察官は、利害関係人の申立により告訴をすることができる者を指定することができる。

1項

親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。


ただし刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴 及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条 又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う告訴については、この限りでない。

1項

告訴をすることができる者が数人ある場合には、一人の期間の徒過は、他の者に対しその効力を及ぼさない。

1項

告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができる。

○2項

告訴の取消をした者は、更に告訴をすることができない

○3項

前二項の規定は、請求を待つて受理すべき事件についての請求についてこれを準用する。

1項

親告罪について共犯の一人 又は数人に対してした告訴 又はその取消は、他の共犯に対しても、その効力を生ずる。

○2項

前項の規定は、告発 又は請求を待つて受理すべき事件についての告発 若しくは請求 又はその取消についてこれを準用する。

1項

何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。

○2項

官吏 又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。

1項

告訴は、代理人によりこれをすることができる。


告訴の取消についても、同様である。

1項

告訴 又は告発は、書面 又は口頭で検察官 又は司法警察員にこれをしなければならない。

○2項

検察官 又は司法警察員は、口頭による告訴 又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。

1項

司法警察員は、告訴 又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類 及び証拠物を検察官に送付しなければならない。

1項

前二条の規定は、告訴 又は告発の取消についてこれを準用する。

1項

刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴 又はその取消は、第二百四十一条 及び前条の規定にかかわらず、外務大臣にこれをすることができる。


日本国に派遣された外国の使節に対する刑法第二百三十条 又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う告訴 又はその取消も、同様である。

1項

第二百四十一条 及び第二百四十二条の規定は、自首についてこれを準用する。

1項

司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類 及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。


但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。

第二章 公訴

1項

公訴は、検察官がこれを行う。

1項

犯人の性格、年齢 及び境遇、犯罪の軽重 及び情状 並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

1項

公訴は、検察官の指定した被告人以外の者にその効力を及ぼさない。

1項

時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

一 号

無期の懲役 又は禁錮に当たる罪については三十年

二 号

長期二十年の懲役 又は禁錮に当たる罪については二十年

三 号

前二号に掲げる罪以外の罪については十年

○2項

時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

一 号

死刑に当たる罪については二十五年

二 号

無期の懲役 又は禁錮に当たる罪については十五年

三 号

長期十五年以上の懲役 又は禁錮に当たる罪については十年

四 号

長期十五年未満の懲役 又は禁錮に当たる罪については七年

五 号

長期十年未満の懲役 又は禁錮に当たる罪については五年

六 号

長期五年未満の懲役 若しくは禁錮 又は罰金に当たる罪については三年

七 号

拘留 又は科料に当たる罪については一年

3項

前項の規定にかかわらず次の各号に掲げる罪についての時効は、当該各号に定める期間を経過することによつて完成する。

一 号

刑法第百八十一条の罪(人を負傷させたときに限る)若しくは同法第二百四十一条第一項の罪 又は盗犯等の防止及び処分に関する法律昭和五年法律第九号第四条の罪(同項の罪に係る部分に限る

二十年

二 号

刑法第百七十七条 若しくは第百七十九条第二項の罪 又はこれらの罪の未遂罪

十五年

三 号

刑法第百七十六条 若しくは第百七十九条第一項の罪 若しくはこれらの罪の未遂罪 又は児童福祉法第六十条第一項の罪(自己を相手方として淫行をさせる行為に係るものに限る

十二年

4項

前二項の規定にかかわらず前項各号に掲げる罪について、その被害者が犯罪行為が終わつた時に十八歳未満である場合における時効は、当該各号に定める期間に当該犯罪行為が終わつた時から当該被害者が十八歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間を経過することによつて完成する。

1項

二以上の主刑を併科し、又は二以上の主刑中 その一を科すべき罪については、その重い刑に従つて、前条の規定を適用する。

1項

刑法により刑を加重し、又は減軽すべき場合には、加重し、又は減軽しない刑に従つて、第二百五十条の規定を適用する。

1項

時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。

○2項

共犯の場合には、最終の行為が終つた時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算する。

1項

時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違 又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。

○2項

共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。


この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める。

1項

犯人が国外にいる場合 又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達 若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時効は、その国外にいる期間 又は逃げ隠れている期間 その進行を停止する

○2項

犯人が国外にいること 又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達 若しくは略式命令の告知ができなかつたことの証明に必要な事項は、裁判所の規則でこれを定める。

1項

公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。

○2項

起訴状には、左の事項を記載しなければならない。

一 号

被告人の氏名 その他被告人を特定するに足りる事項

二 号
公訴事実
三 号
罪名
○3項

公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。


訴因を明示するには、できる限り日時、場所 及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。

○4項

罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。


但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。

○5項

数個の訴因 及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。

○6項

起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類 その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。

1項

検察官は、公訴の提起と同時に、被告人に送達するものとして、起訴状の謄本を裁判所に提出しなければならない。


ただし、やむを得ない事情があるときは、公訴の提起後速やかにこれを提出すれば足りる。

1項

公訴は、第一審の判決があるまでこれを取り消すことができる。

1項

検察官は、事件がその所属検察庁の対応する裁判所の管轄に属しないものと思料するときは、書類 及び証拠物とともにその事件を管轄裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。

1項

検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。

1項

検察官は、告訴、告発 又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人 又は請求人に通知しなければならない。


公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。

1項

検察官は、告訴、告発 又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人 又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人 又は請求人にその理由を告げなければならない。

1項

刑法第百九十三条から第百九十六条まで 又は破壊活動防止法昭和二十七年法律第二百四十号第四十五条 若しくは無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律平成十一年法律第百四十七号第四十二条 若しくは第四十三条の罪について告訴 又は告発をした者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官所属の検察庁の所在地を管轄する地方裁判所に事件を裁判所の審判に付することを請求することができる。

○2項

前項の請求は、第二百六十条の通知を受けた日から七日以内に、請求書を公訴を提起しない処分をした検察官に差し出してこれをしなければならない。

1項

前条第一項の請求は、第二百六十六条の決定があるまでこれを取り下げることができる。

○2項

前項の取下をした者は、その事件について更に前条第一項請求をすることができない

1項

検察官は、第二百六十二条第一項の請求を理由があるものと認めるときは、公訴を提起しなければならない。

1項

第二百六十二条第一項の請求についての審理 及び裁判は、合議体でこれをしなければならない。

○2項

裁判所は、必要があるときは、合議体の構成員に事実の取調をさせ、又は地方裁判所 若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。


この場合には、受命裁判官 及び受託裁判官は、裁判所 又は裁判長と同一の権限を有する。

1項

裁判所は、第二百六十二条第一項の請求を受けたときは、左の区別に従い、決定をしなければならない。

一 号

請求が法令上の方式に違反し、若しくは請求権の消滅後にされたものであるとき、又は請求が理由のないときは、請求を棄却する。

二 号

請求が理由のあるときは、事件を管轄地方裁判所の審判に付する。

1項

前条第二号の決定があつたときは、その事件について公訴の提起があつたものとみなす。

1項

裁判所は、第二百六十六条第二号の決定をした場合において、同一の事件について、検察審査会法昭和二十三年法律第百四十七号第二条第一項第一号に規定する審査を行う検察審査会 又は同法第四十一条の六第一項の起訴議決をした検察審査会(同法第四十一条の九第一項の規定により公訴の提起 及び その維持に当たる者が指定された後は、その者)があるときは、これに当該決定をした旨を通知しなければならない。

1項

裁判所は、第二百六十六条第二号の規定により事件がその裁判所の審判に付されたときは、その事件について公訴の維持にあたる者を弁護士の中から指定しなければならない。

○2項

前項の指定を受けた弁護士は、事件について公訴を維持するため、裁判の確定に至るまで検察官の職務を行う。


但し、検察事務官 及び司法警察職員に対する捜査の指揮は、検察官に嘱託してこれをしなければならない。

○3項

前項の規定により検察官の職務を行う弁護士は、これを法令により公務に従事する職員とみなす。

○4項

裁判所は、第一項の指定を受けた弁護士がその職務を行うに適さないと認めるときその他特別の事情があるときは、何時でも その指定を取り消すことができる。

○5項

第一項の指定を受けた弁護士には、政令で定める額の手当を給する。

1項

裁判所は、第二百六十二条第一項の請求を棄却する場合 又はその請求の取下があつた場合には、決定で、請求者に、その請求に関する手続によつて生じた費用の全部 又は一部の賠償を命ずることができる。


この決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

検察官は、公訴の提起後は、訴訟に関する書類 及び証拠物を閲覧し、且つ謄写することができる。

○2項

前項の規定にかかわらず第百五十七条の六第四項に規定する記録媒体は、謄写することができない

第三章 公判

第一節 公判準備及び公判手続

1項

裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。

○2項

公訴の提起があつた日から二箇月以内に起訴状の謄本が送達されないときは、公訴の提起は、さかのぼつてその効力を失う。

1項

検察官は、起訴状に記載された次に掲げる者の個人特定事項について、必要と認めるときは、裁判所に対し、前条第一項の規定による起訴状の謄本の送達により当該個人特定事項が被告人に知られないようにするための措置をとることを求めることができる。

一 号
次に掲げる事件の被害者

刑法第百七十六条第百七十七条第百七十九条第百八十一条 若しくは第百八十二条の罪、同法第二百二十五条 若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ 又は結婚の目的に係る部分に限る。以下 このにおいて同じ。)、同法第二百二十七条第一項同法第二百二十五条 又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る)若しくは第三項わいせつの目的に係る部分に限る)の罪 若しくは同法第二百四十一条第一項 若しくは第三項の罪 又はこれらの罪の未遂罪に係る事件

児童福祉法第六十条第一項の罪 若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第四条から第八条までの罪 又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第二条から第六条までの罪に係る事件

及びに掲げる事件のほか、犯行の態様、被害の状況 その他の事情により、被害者の個人特定事項が被告人に知られることにより次に掲げるおそれがあると認められる事件

(1)
被害者等の名誉 又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ
(2)

(1)に掲げるもののほか、被害者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれ

二 号

前号に掲げる者のほか、個人特定事項が被告人に知られることにより次に掲げるおそれがあると認められる者

その者の名誉 又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ

に掲げるもののほか、その者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれ

2項

前項の規定による求めは、公訴の提起において、裁判所に対し、起訴状とともに、被告人に送達するものとして、当該求めに係る個人特定事項の記載がない起訴状の抄本 その他の起訴状の謄本に代わるもの(以下「起訴状抄本等」という。)を提出して行わなければならない。

3項

前項の場合には、起訴状抄本等については、その公訴事実を第二百五十六条第三項に規定する公訴事実とみなして、同項の規定を適用する。


この場合において、

同項
できる限り日時、場所 及び方法を以て罪となるべき事実」とあるのは、
「罪となるべき事実」と

する。

4項

裁判所は、第二項の規定による起訴状抄本等の提出があつたときは、前条第一項の規定にかかわらず、遅滞なく起訴状抄本等を被告人に送達しなければならない。


この場合において、

第二百五十五条 及び前条第二項
起訴状の謄本」とあるのは、
起訴状抄本等」と

する。

1項

検察官は、前条第二項の規定により起訴状抄本等を提出する場合において、被告人に弁護人があるときは、裁判所に対し、弁護人に送達するものとして、起訴状の謄本を提出しなければならない。

2項

裁判所は、前項の規定による起訴状の謄本の提出があつたときは、遅滞なく、弁護人に対し、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものを被告人に知らせてはならない旨の条件を付して起訴状の謄本を送達しなければならない。

3項

検察官は、第一項に規定する場合において、前項の規定による措置によつては、前条第一項第一号ハ(1)若しくは第二号イに規定する名誉 若しくは社会生活の平穏が著しく害されること 又は同項第一号ハ(2)若しくは第二号ロに規定する行為を防止できないおそれがあると認めるときは、裁判所に対し、起訴状の謄本に代えて弁護人に送達するものとして、起訴状抄本等を提出することができる。

4項

裁判所は、前項の規定による起訴状抄本等の提出があつたときは、遅滞なく、弁護人に対し、起訴状抄本等を送達しなければならない。

1項

裁判所は、第二百七十一条の二第二項の規定による起訴状抄本等の提出があつた後に弁護人が選任されたときは、速やかに、検察官に その旨を通知しなければならない。

2項

検察官は、前項の規定による通知を受けたときは、速やかに、裁判所に対し、弁護人に送達するものとして、起訴状の謄本を提出しなければならない。

3項

裁判所は、前項の規定による起訴状の謄本の提出があつたときは、遅滞なく、弁護人に対し、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものを被告人に知らせてはならない旨の条件を付して起訴状の謄本を送達しなければならない。

4項

検察官は、第二項に規定する場合において、前項の規定による措置によつては、第二百七十一条の二第一項第一号ハ(1)若しくは第二号イに規定する名誉 若しくは社会生活の平穏が著しく害されること 又は同項第一号ハ(2)若しくは第二号ロに規定する行為を防止できないおそれがあると認めるときは、裁判所に対し、起訴状の謄本に代えて弁護人に送達するものとして、起訴状抄本等を提出することができる。

5項

裁判所は、前項の規定による起訴状抄本等の提出があつたときは、遅滞なく、弁護人に対し、起訴状抄本等を送達しなければならない。

1項

裁判所は、第二百七十一条の二第四項の規定による措置をとつた場合において、次の各号いずれかに該当すると認めるときは、被告人 又は弁護人の請求により、当該措置に係る個人特定事項の全部 又は一部を被告人に通知する旨の決定をしなければならない。

一 号

又はに掲げる個人特定事項の区分に応じ、当該 又はに定める場合であるとき。

被害者の個人特定事項 当該措置に係る事件に係る罪が第二百七十一条の二第一項第一号イ 及びに規定するものに該当せず、かつ、当該措置に係る事件が同号ハに掲げるものに該当しないとき。

被害者以外の者の個人特定事項 当該措置に係る者が第二百七十一条の二第一項第二号に掲げる者に該当しないとき。

二 号
当該措置により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき。
2項

裁判所は、第二百七十一条の三第四項 又は前条第五項の規定による措置をとつた場合において、次の各号いずれかに該当すると認めるときは、被告人 又は弁護人の請求により、弁護人に対し、当該措置に係る個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付して当該個人特定事項の全部 又は一部を通知する旨の決定をしなければならない。

一 号

第二百七十一条の三第二項 又は前条第三項の規定による措置によつて、第二百七十一条の二第一項第一号ハ(1)及び第二号イに規定する名誉 又は社会生活の平穏が著しく害されること 並びに同項第一号ハ(2)及び第二号ロに規定する行為を防止できるとき。

二 号
当該措置により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき。
3項

裁判所は、前二項の請求について決定をするときは、検察官の意見を聴かなければならない。

4項

第一項 又は第二項の決定に係る通知は、裁判所が、当該決定により通知することとした個人特定事項を記載した書面によりするものとする。

5項

第一項 又は第二項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

裁判所は、第二百七十一条の三第一項 又は第二百七十一条の四第二項の規定による起訴状の謄本の提出があつた事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないもの(前条第一項の決定により通知することとされたものを除く。以下 この条 及び第二百七十一条の八第一項において同じ。)が第二百七十一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、検察官 及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、弁護人が第四十条第一項の規定により訴訟に関する書類 又は証拠物を閲覧し 又は謄写するに当たり、これらに記載され 又は記録されている当該個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期 若しくは方法を指定することができる。


ただし、当該個人特定事項に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

2項

裁判所は、第二百七十一条の三第三項 又は第二百七十一条の四第四項の規定による起訴状抄本等の提出があつた事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものが第二百七十一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、検察官 及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、弁護人が第四十条第一項の規定により訴訟に関する書類 又は証拠物を閲覧し 又は謄写するについて、これらのうち当該個人特定事項が記載され 若しくは記録されている部分の閲覧 若しくは謄写を禁じ、又は当該個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、若しくは被告人に知らせる時期 若しくは方法を指定することができる。


ただし、当該個人特定事項に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

3項

裁判所は、第一項本文に規定する事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものが第二百七十一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、弁護人から第四十六条の規定による請求があつた場合であつて、検察官 及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、弁護人に裁判書 又は裁判を記載した調書の謄本 又は抄本を交付するに当たり、これらに記載されている当該個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期 若しくは方法を指定することができる。


ただし、当該個人特定事項に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

4項

裁判所は、第二項本文に規定する事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものが第二百七十一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、弁護人から第四十六条の規定による請求があつた場合であつて、検察官 及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、裁判書 若しくは裁判を記載した調書の抄本であつて当該個人特定事項の記載がないものを交付し、又は弁護人に裁判書 若しくは裁判を記載した調書の謄本 若しくは抄本を交付するに当たり、当該個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、若しくは被告人に知らせる時期 若しくは方法を指定することができる。


ただし、当該個人特定事項に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

5項

裁判所は、第二百七十一条の二第二項の規定による起訴状抄本等の提出があつた事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものが同条第一項第一号 又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、被告人 その他訴訟関係人(検察官 及び弁護人を除く)から第四十六条の規定による請求があつた場合であつて、検察官 及び当該請求をした被告人 その他訴訟関係人の意見を聴き、相当と認めるときは、裁判書 又は裁判を記載した調書の抄本であつて当該個人特定事項の記載がないものを交付することができる。


ただし、当該個人特定事項に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

6項

裁判所は、前項本文に規定する事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものが第二百七十一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、検察官 及び被告人の意見を聴き、相当と認めるときは、被告人が第四十九条の規定により公判調書を閲覧し 又はその朗読を求めるについて、このうち当該個人特定事項が記載され 若しくは記録されている部分の閲覧を禁じ、又は当該部分の朗読の求めを拒むことができる。


ただし、当該個人特定事項に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

1項

裁判所は、第二百七十一条の三第二項第二百七十一条の四第三項第二百七十一条の五第二項 若しくは前条第一項から第四項までの規定により付した条件に弁護人が違反したとき、又は同条第一項から第四項までの規定による時期 若しくは方法の指定に弁護人が従わなかつたときは、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会 又は日本弁護士連合会に通知し、適当な処置をとるべきことを請求することができる。

2項

前項の規定による請求を受けた者は、そのとつた処置を その請求をした裁判所に通知しなければならない。

1項

裁判所(第一号 及び第四号にあつては裁判長 及び合議体の構成員を、第二号 及び第三号にあつては第六十六条第四項の裁判官 並びに裁判長 及び合議体の構成員を含み、第五号にあつては裁判官とする。)は、第二百七十一条の二第二項の規定による起訴状抄本等の提出があつた事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち 起訴状抄本等に記載がないものが同条第一項第一号 又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、相当と認めるときは、次に掲げる措置をとることができる。

一 号

当該個人特定事項を明らかにしない方法により第六十一条の規定による被告事件の告知をすること。

二 号

勾引状 又は勾留状を発する場合において、これと同時に、被告人に示すものとして、当該個人特定事項を明らかにしない方法により公訴事実の要旨を記載した勾引状の抄本 その他の勾引状に代わるもの 又は勾留状の抄本 その他の勾留状に代わるものを交付すること。

三 号

当該個人特定事項を明らかにしない方法により第七十六条第一項の規定による公訴事実の要旨の告知をし、又はこれをさせること。

四 号

当該個人特定事項を明らかにしない方法により第七十七条第三項の規定による公訴事実の要旨の告知をし、又はこれをさせること。

五 号

当該個人特定事項を明らかにしない方法により第二百八十条第二項の規定による被告事件の告知をすること。

2項

前項第二号に係る部分に限る)の規定による勾引状に代わるものの交付があつた場合における第七十三条第一項 及び第三項の規定の適用については、

同条第一項前段中
これ」とあり、
同条第三項
勾引状 又は勾留状」とあり、
及び同項ただし書中
令状」とあるのは
第二百七十一条の八第一項第二号の勾引状に代わるもの」と、

同項
公訴事実の要旨 及び」とあるのは
「勾引状に記載された個人特定事項のうち第二百七十一条の八第一項第二号の勾引状に代わるものに記載がないものを明らかにしない方法により公訴事実の要旨を告げるとともに、」と

する。

3項

第一項第二号に係る部分に限る)の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合における第七十三条第二項 及び第三項の規定の適用については、

同条第二項
これ」とあり、
同条第三項
勾引状 又は勾留状」とあり、
及び同項ただし書中
令状」とあるのは
第二百七十一条の八第一項第二号の勾留状に代わるもの」と、

同項
公訴事実の要旨 及び」とあるのは
「勾留状に記載された個人特定事項のうち第二百七十一条の八第一項第二号の勾留状に代わるものに記載がないものを明らかにしない方法により公訴事実の要旨を告げるとともに、」と

する。

4項

裁判長 又は合議体の構成員は、第一項第二号に係る部分に限る)の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合 又は第二百七条の二第二項の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合において、勾留状に記載された個人特定事項のうちこれらの勾留状に代わるものに記載がないもの(第二百七十一条の五第一項の決定 又は第二百七条の三第一項の裁判により通知することとされたものを除く)が第二百七十一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合であつて、検察官 及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、勾留の理由の開示をするに当たり、当該個人特定事項を明らかにしない方法により被告事件を告げることができる。

5項

第一項第二号に係る部分に限る)の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合 又は第二百七条の二第二項の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合における第九十八条の規定の適用については、

同条第一項
勾留状の謄本」とあるのは、
第二百七十一条の八第一項第二号の勾留状に代わるもの 又は第二百七条の二第二項本文の勾留状に代わるもの」と

する。

6項

前項の規定は、第一項第二号に係る部分に限る)の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合 又は第二百七条の二第二項の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合であつて、第百六十七条の二第二項に規定するときにおける同項において準用する第九十八条の規定の適用について準用する。

1項

裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく被告人に対し、弁護人を選任することができる旨 及び貧困 その他の事由により弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を知らせなければならない。


但し、被告人に弁護人があるときは、この限りでない。

○2項

裁判所は、この法律により弁護人を要する場合を除いて前項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を知らせるに当たつては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨 及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ弁護士会第三十六条の三第一項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。

1項

裁判長は、公判期日を定めなければならない。

○2項

公判期日には、被告人を召喚しなければならない。

○3項

公判期日は、これを検察官、弁護人 及び補佐人に通知しなければならない。

1項

裁判所の構内にいる被告人に対し公判期日を通知したときは、召喚状の送達があつた場合と同一の効力を有する。

1項

第一回の公判期日と被告人に対する召喚状の送達との間には、裁判所の規則で定める猶予期間を置かなければならない。

1項

裁判所は、検察官、被告人 若しくは弁護人の請求により又は職権で、公判期日を変更することができる。

○2項

公判期日を変更するには、裁判所の規則の定めるところにより、あらかじめ、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴かなければならない。


但し、急速を要する場合は、この限りでない。

○3項

前項但書の場合には、変更後の公判期日において、まず、検察官 及び被告人 又は弁護人に対し、異議を申し立てる機会を与えなければならない。

1項

裁判所がその権限を濫用して公判期日を変更したときは、訴訟関係人は、最高裁判所の規則 又は訓令の定めるところにより、司法行政監督上の措置を求めることができる。

1項

公判期日に召喚を受けた者が病気 その他の事由によつて出頭することができないときは、裁判所の規則の定めるところにより、医師の診断書 その他の資料を提出しなければならない。

1項

保釈 又は勾留の執行停止をされた被告人が、召喚を受け正当な理由がなく公判期日に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。

1項

裁判所は、必要と認めるときは、検察官 又は弁護人に対し、公判準備 又は公判期日に出頭し、かつ、これらの手続が行われている間在席し 又は在廷することを命ずることができる。

○2項

裁判長は、急速を要する場合には、前項に規定する命令をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。

○3項

前二項の規定による命令を受けた検察官 又は弁護人が正当な理由がなく これに従わないときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、その命令に従わないために生じた費用の賠償を命ずることができる。

○4項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

○5項

裁判所は、第三項の決定をしたときは、検察官については当該検察官を指揮監督する権限を有する者に、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会 又は日本弁護士連合会に通知し、適当な処置をとるべきことを請求しなければならない。

○6項

前項の規定による請求を受けた者は、そのとつた処置を裁判所に通知しなければならない。

1項

裁判所は、検察官、被告人 若しくは弁護人の請求により又は職権で、公務所 又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

1項

公訴の提起があつた後 第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。

○2項

第百九十九条 若しくは第二百十条の規定により逮捕され、又は現行犯人として逮捕された被疑者でまだ勾留されていないものについて第二百四条 又は第二百五条の時間の制限内に公訴の提起があつた場合には、裁判官は、速やかに、被告事件を告げ、これに関する陳述を聴き、勾留状を発しないときは、直ちにその釈放を命じなければならない。

○3項

前二項の裁判官は、その処分に関し、裁判所 又は裁判長と同一の権限を有する。

1項

証人については、裁判所は、第百五十八条に掲げる事項を考慮した上、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き必要と認めるときに限り、公判期日外においてこれを尋問することができる。

1項

裁判所は、公判期日外における証人尋問に被告人が立ち会つた場合において、証人が被告人の面前(第百五十七条の五第一項に規定する措置を採る場合 並びに第百五十七条の六第一項 及び第二項に規定する方法による場合を含む。)においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めるときは、弁護人が立ち会つている場合に限り、検察官 及び弁護人の意見を聴き、その証人の供述中 被告人を退席させることができる。


この場合には、供述終了後 被告人に証言の要旨を告知し、その証人を尋問する機会を与えなければならない。

1項

弁護人は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧 又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等複製 その他証拠の全部 又は一部をそのまま記録した物 及び書面をいう。以下同じ。)を適正に管理し、その保管をみだりに他人にゆだねてはならない。

1項

被告人 若しくは弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。)又はこれらであつた者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧 又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続 又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。

一 号

当該被告事件の審理 その他の当該被告事件に係る裁判のための審理

二 号
当該被告事件に関する次に掲げる手続

第一編第十六章の規定による費用の補償の手続

第三百四十九条第一項の請求があつた場合の手続

第三百五十条の請求があつた場合の手続

上訴権回復の請求の手続
再審の請求の手続
非常上告の手続

第五百条第一項の申立ての手続

第五百二条の申立ての手続

刑事補償法の規定による補償の請求の手続

○2項

前項の規定に違反した場合の措置については、被告人の防御権を踏まえ、複製等の内容、行為の目的 及び態様、関係人の名誉、その私生活 又は業務の平穏を害されているかどうか、当該複製等に係る証拠が公判期日において取り調べられたものであるかどうか、その取調べの方法 その他の事情を考慮するものとする。

1項

被告人 又は被告人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧 又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、前条第一項各号に掲げる手続 又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときは、一年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。

○2項

弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。以下 この項において同じ。)又は弁護人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧 又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、対価として財産上の利益 その他の利益を得る目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときも、前項と同様とする。

1項

裁判所は、審理に二日以上を要する事件については、できる限り、連日開廷し、継続して審理を行わなければならない。

○2項

訴訟関係人は、期日を厳守し、審理に支障を来さないようにしなければならない。

1項

公判期日における取調は、公判廷でこれを行う。

○2項

公判廷は、裁判官 及び裁判所書記が列席し、且つ検察官が出席してこれを開く。

1項

被告人が法人である場合には、代理人を出頭させることができる。

1項

五十万円刑法暴力行為等処罰に関する法律 及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円以下の罰金 又は科料に当たる事件については、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。


ただし、被告人は、代理人を出頭させることができる。

1項

拘留にあたる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。


その他の場合には、裁判所は、被告人の出頭がその権利の保護のため重要でないと認めるときは、被告人に対し公判期日に出頭しないことを許すことができる。

○2項

長期三年以下の懲役 若しくは禁錮 又は五十万円(刑法暴力行為等処罰に関する法律 及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円)を超える罰金に当たる事件の被告人は、第二百九十一条の手続をする場合 及び判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。


その他の場合には、前項後段の例による。

1項

前三条に規定する場合の外、被告人が公判期日に出頭しないときは、開廷することはできない。

1項

被告人が出頭しなければ開廷することができない場合において、勾留されている被告人が、公判期日に召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、刑事施設職員による引致を著しく困難にしたときは、裁判所は、被告人が出頭しないでも、その期日の公判手続を行うことができる。

1項

公判廷においては、被告人の身体を拘束してはならない。


但し、被告人が暴力を振い又は逃亡を企てた場合は、この限りでない。

○2項

被告人の身体を拘束しない場合にも、これに看守者を附することができる。

1項

被告人は、裁判長の許可がなければ、退廷することができない

○2項

裁判長は、被告人を在廷させるため、又は法廷の秩序を維持するため相当な処分をすることができる。

1項

死刑 又は無期 若しくは長期三年を超える懲役 若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない

○2項

弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないとき若しくは在廷しなくなつたとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。

○3項

弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。

1項

第三十七条各号の場合に弁護人が出頭しないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。

1項

裁判所は、次に掲げる事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者等 若しくは当該被害者の 法定代理人 又はこれらの者から委託を受けた弁護士から申出があるときは、被告人 又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項(氏名 及び住所 その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。

一 号

刑法第百七十六条第百七十七条第百七十九条第百八十一条 若しくは第百八十二条の罪、同法第二百二十五条 若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ 又は結婚の目的に係る部分に限る。以下 この号において同じ。)、同法第二百二十七条第一項同法第二百二十五条 又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る)若しくは第三項わいせつの目的に係る部分に限る)の罪 若しくは同法第二百四十一条第一項 若しくは第三項の罪 又はこれらの罪の未遂罪に係る事件

二 号

児童福祉法第六十条第一項の罪 若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第四条から第八条までの罪 又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第二条から第六条までの罪に係る事件

三 号

前二号に掲げる事件のほか、犯行の態様、被害の状況 その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者等の名誉 又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認められる事件

○2項

前項の申出は、あらかじめ検察官にしなければならない。


この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

○3項

裁判所は、第一項に定めるもののほか、犯行の態様、被害の状況 その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる事件を取り扱う場合において、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。

○4項

裁判所は、第一項 又は前項の決定をした事件について、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至つたとき、第三百十二条の規定により罰条が撤回 若しくは変更されたため第一項第一号 若しくは第二号に掲げる事件に該当しなくなつたとき又は同項第三号に掲げる事件 若しくは前項に規定する事件に該当しないと認めるに至つたときは、決定で、第一項 又は前項の決定を取り消さなければならない。

1項

裁判所は、次に掲げる場合において、証人、鑑定人、通訳人、翻訳人 又は供述録取書等供述書、供述を録取した書面で供述者の署名 若しくは押印のあるもの又は映像 若しくは音声を記録することができる記録媒体であつて供述を記録したものをいう。以下同じ。)の供述者(以下 この項において「証人等」という。)から申出があるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、証人等特定事項氏名 及び住所 その他の当該証人等を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。

一 号

証人等特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより証人等 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるとき。

二 号

前号に掲げる場合のほか、証人等特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより証人等の名誉 又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認めるとき。

○2項

裁判所は、前項の決定をした事件について、証人等特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至つたときは、決定で、同項の決定を取り消さなければならない。

1項

検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。

○2項

第二百九十条の二第一項 又は第三項の決定があつたときは、前項の起訴状の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。


この場合においては、検察官は、被告人に起訴状を示さなければならない。

○3項

前条第一項の決定があつた場合における第一項の起訴状の朗読についても、前項同様とする。


この場合において、

同項
被害者特定事項」とあるのは、
「証人等特定事項」と

する。

○4項

第二百七十一条の二第四項の規定による措置がとられた場合においては、第二項後段(前項前段の規定により第二項後段と同様とすることとされる場合を含む。以下 この項において同じ。)の規定は、当該措置に係る個人特定事項の全部 又は一部について第二百七十一条の五第一項の決定があつた場合に限り、適用する。


この場合において、

第二項後段中
起訴状」とあるのは、
第二百七十一条の二第四項の規定による措置に係る個人特定事項の全部について第二百七十一条の五第一項の決定があつた場合にあつては起訴状を、第二百七十一条の二第四項の規定による措置に係る個人特定事項の一部について当該決定があつた場合にあつては起訴状抄本等 及び第二百七十一条の五第四項に規定する書面」と

する。

5項

裁判長は、第一項の起訴状の朗読が終わつた後、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨 その他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げた上、被告人 及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。

1項

被告人が、前条第五項の手続に際し、起訴状に記載された訴因について有罪である旨を陳述したときは、裁判所は、検察官、被告人 及び弁護人の意見を聴き、有罪である旨の陳述のあつた訴因に限り、簡易公判手続によつて審判をする旨の決定をすることができる。


ただし、死刑 又は無期 若しくは短期一年以上の懲役 若しくは禁錮に当たる事件については、この限りでない。

1項

裁判所は、前条の決定があつた事件が簡易公判手続によることができないものであり、又はこれによることが相当でないものであると認めるときは、その決定を取り消さなければならない。

1項

証拠調べは、第二百九十一条の手続が終つた後、これを行う。


ただし次節第一款に定める公判前整理手続において争点 及び証拠の整理のために行う手続については、この限りでない。

1項

裁判所は、被害者等 又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情 その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。

○2項

前項の規定による意見の陳述の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。


この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

○3項

裁判長 又は陪席の裁判官は、被害者等 又は当該被害者の法定代理人が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、これらの者に質問することができる。

○4項

訴訟関係人は、被害者等 又は当該被害者の法定代理人が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、裁判長に告げて、これらの者に質問することができる。

○5項

裁判長は、被害者等 若しくは当該被害者の法定代理人の意見の陳述 又は訴訟関係人の被害者等 若しくは当該被害者の法定代理人に対する質問が既にした陳述 若しくは質問と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、これを制限することができる。

○6項

第百五十七条の四第百五十七条の五並びに第百五十七条の六第一項 及び第二項の規定は、第一項の規定による意見の陳述について準用する。

○7項

裁判所は、審理の状況 その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。

○8項

前項の規定により書面が提出された場合には、裁判長は、公判期日において、その旨を明らかにしなければならない。


この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、その書面を朗読し、又はその要旨を告げることができる。

○9項

第一項の規定による陳述 又は第七項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない

1項

証拠調が終つた後、検察官は、事実 及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。

○2項

被告人 及び弁護人は、意見を陳述することができる。

1項

公判期日における訴訟の指揮は、裁判長がこれを行う。

1項

裁判長は、訴訟関係人のする尋問 又は陳述が既にした尋問 若しくは陳述と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、訴訟関係人の本質的な権利を害しない限り、これを制限することができる。


訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても同様である。

○2項

裁判長は、証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人を尋問する場合において、証人、鑑定人、通訳人 若しくは翻訳人 若しくはこれらの親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあり、これらの者の住居、勤務先 その他その通常所在する場所が特定される事項が明らかにされたならば証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人が十分な供述をすることができないと認めるときは、当該事項についての尋問を制限することができる。


ただし、検察官のする尋問を制限することにより犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがあるとき、又は被告人 若しくは弁護人のする尋問を制限することにより被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

○3項

裁判長は、第二百九十条の二第一項 又は第三項の決定があつた場合において、訴訟関係人のする尋問 又は陳述が被害者特定事項にわたるときは、これを制限することにより、犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがある場合 又は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、当該尋問 又は陳述を制限することができる。


訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても、同様とする。

○4項

第二百九十条の三第一項の決定があつた場合における訴訟関係人のする尋問 若しくは陳述 又は訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても、前項同様とする。


この場合において、

同項中
被害者特定事項」とあるのは、
「証人等特定事項」と

する。

○5項

裁判所は、前各項の規定による命令を受けた検察官 又は弁護士である弁護人がこれに従わなかつた場合には、検察官については当該検察官を指揮監督する権限を有する者に、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会 又は日本弁護士連合会に通知し、適当な処置をとるべきことを請求することができる。

○6項

前項の規定による請求を受けた者は、そのとつた処置を裁判所に通知しなければならない。

1項

証拠調のはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない。


但し、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調を請求する意思のない資料に基いて、裁判所に事件について偏見 又は予断を生ぜしめる虞のある事項を述べることはできない

1項

裁判所は、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、証拠調の範囲、順序 及び方法を定めることができる。

○2項

前項の手続は、合議体の構成員にこれをさせることができる。

○3項

裁判所は、適当と認めるときは、何時でも、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、第一項の規定により定めた証拠調の範囲、順序 又は方法を変更することができる。

1項

検察官、被告人 又は弁護人は、証拠調を請求することができる。

○2項

裁判所は、必要と認めるときは、職権で証拠調をすることができる。

1項

検察官、被告人 又は弁護人が証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人の尋問を請求するについては、あらかじめ、相手方に対し、その氏名 及び住居を知る機会を与えなければならない。


証拠書類 又は証拠物の取調を請求するについては、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。


但し、相手方に異議のないときは、この限りでない。

○2項

裁判所が職権で証拠調の決定をするについては、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴かなければならない。

1項

検察官 又は弁護人は、前条第一項の規定により証人、鑑定人、通訳人 若しくは翻訳人の氏名 及び住居を知る機会を与え 又は証拠書類 若しくは証拠物を閲覧する機会を与えるに当たり、証人、鑑定人、通訳人 若しくは翻訳人 若しくは証拠書類 若しくは証拠物にその氏名が記載され 若しくは記録されている者 若しくはこれらの親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、相手方に対し、その旨を告げ、これらの者の住居、勤務先 その他その通常所在する場所が特定される事項が、犯罪の証明 若しくは犯罪の捜査 又は被告人の防御に関し必要がある場合を除き、関係者(被告人を含む。)に知られないようにすること その他これらの者の安全が脅かされることがないように配慮することを求めることができる。

1項

検察官は、第二百九十九条第一項の規定により証人の氏名 及び住居を知る機会を与え 又は証拠書類 若しくは証拠物を閲覧する機会を与えるに当たり、被害者特定事項が明らかにされることにより、被害者等の名誉 若しくは社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認めるとき、又は被害者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 若しくはこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、その旨を告げ、被害者特定事項が、被告人の防御に関し必要がある場合を除き、被告人 その他の者に知られないようにすることを求めることができる。


ただし第二百七十一条の二第二項の規定により起訴状抄本等を提出した場合を除き、被告人に知られないようにすることを求めることについては、被害者特定事項のうち 起訴状に記載された事項以外のものに限る

1項

検察官は、第二百九十九条第一項の規定により証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人の氏名 及び住居を知る機会を与えるべき場合において、その者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、当該氏名 及び住居を知る機会を与えた上で、当該氏名 又は住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期 若しくは方法を指定することができる。


ただし、その証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

○2項

第二百九十九条第一項の規定により証人の氏名 及び住居を知る機会を与えるべき場合において、第二百七十一条の二第二項の規定により起訴状抄本等を提出した場合 又は第三百十二条の二第二項の規定により訴因変更等請求書面抄本等(同項に規定する訴因変更等請求書面抄本等をいう。以下 この条 及び次条第二項第一号において同じ。)を提出した場合(第三百十二条第一項の請求を却下する決定があつた場合を除く第七項において同じ。)であつて、当該氏名 又は住居が起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないもの 又は訴因変更等請求書面(第三百十二条第四項に規定する訴因変更等請求書面をいう。以下 この条 及び同号において同じ。)に記載された個人特定事項のうち 訴因変更等請求書面抄本等に記載がないもの(いずれも第二百七十一条の五第一項第三百十二条の二第四項において 読み替えて準用する場合を含む。)の決定により通知することとされたものを除く第七項 及び同号において同じ。)に該当し、かつ、第二百七十一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者のものに該当すると認めるときも、前項と同様とする。


この場合において、

同項ただし書中
証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人」とあるのは、
「証人」と

する。

○3項

検察官は、第一項本文の場合において、同項本文の規定による措置によつては同項本文に規定する行為を防止できないおそれがあると認めるとき(被告人に弁護人がないときを含む。)は、その証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなる場合 その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、被告人 及び弁護人に対し、その証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人の氏名 又は住居を知る機会を与えないことができる。


この場合において、被告人 又は弁護人に対し、氏名にあつてはこれに代わる呼称を、住居にあつてはこれに代わる連絡先を知る機会を与えなければならない。

○4項

第二百九十九条第一項の規定により証人の氏名 及び住居を知る機会を与えるべき場合において、第二百七十一条の三第三項 又は第二百七十一条の四第四項これらの規定を第三百十二条の二第四項において準用する場合を含む。第九項において同じ。)の規定により起訴状抄本等 又は訴因変更等請求書面抄本等を提出した場合(第三百十二条第一項の請求を却下する決定があつた場合を除く第九項において同じ。)であつて、当該氏名 又は住居が起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないもの 又は訴因変更等請求書面に記載された個人特定事項のうち 訴因変更等請求書面抄本等に記載がないもの(いずれも第二百七十一条の五第一項 又は第二項これらの規定を第三百十二条の二第四項において準用する場合を含む。)の決定により通知することとされたものを除く第九項において同じ。)に該当し、かつ、第二百七十一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者のものに該当すると認めるときも、前項と同様とする。


この場合において、

同項
証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人の供述」とあるのは
「証人の供述」と、

その証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人の氏名」とあるのは
「当該氏名」と

する。

○5項

第二項前段に規定する場合において、被告人に弁護人がないときも、第三項と同様とする。


この場合において、

同項
証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人の供述」とあるのは
「証人の供述」と、

その証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人の氏名」とあるのは
「当該氏名」と

する。

6項

検察官は、第二百九十九条第一項の規定により証拠書類 又は証拠物を閲覧する機会を与えるべき場合において、証拠書類 若しくは証拠物に氏名 若しくは住居が記載され 若しくは記録されている者であつて検察官が証人、鑑定人、通訳人 若しくは翻訳人として尋問を請求するもの 若しくは供述録取書等の供述者(以下 この項 及び第八項において「検察官請求証人等」という。)若しくは検察官請求証人等の親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、証拠書類 又は証拠物を閲覧する機会を与えた上で、その検察官請求証人等の氏名 又は住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期 若しくは方法を指定することができる。


ただし、その検察官請求証人等の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

7項

第二百九十九条第一項の規定により証拠書類 又は証拠物を閲覧する機会を与えるべき場合において、第二百七十一条の二第二項の規定により起訴状抄本等を提出した場合 又は第三百十二条の二第二項の規定により訴因変更等請求書面抄本等を提出した場合であつて、起訴状に記載された個人特定事項のうち 起訴状抄本等に記載がないもの 又は訴因変更等請求書面に記載された個人特定事項のうち訴因変更等請求書面抄本等に記載がないものが第二百七十一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者のものに該当すると認めるときも、前項と同様とする。


この場合において、

同項
その検察官請求証人等の氏名 又は住居」とあるのは
「これらに記載され 又は記録されているこれらの個人特定事項」と、

同項ただし書中
その検察官請求証人等」とあるのは
「これらの個人特定事項に係る証人」と

する。

8項

検察官は、第六項本文の場合において、同項本文の規定による措置によつては同項本文に規定する行為を防止できないおそれがあると認めるとき(被告人に弁護人がないときを含む。)は、その検察官請求証人等の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなる場合 その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、被告人 及び弁護人に対し、証拠書類 又は証拠物のうち その検察官請求証人等の氏名 又は住居が記載され 又は記録されている部分について閲覧する機会を与えないことができる。


この場合において、被告人 又は弁護人に対し、氏名にあつてはこれに代わる呼称を、住居にあつてはこれに代わる連絡先を知る機会を与えなければならない。

9項

第二百九十九条第一項の規定により証拠書類 又は証拠物を閲覧する機会を与えるべき場合において、第二百七十一条の三第三項 又は第二百七十一条の四第四項の規定により起訴状抄本等 又は訴因変更等請求書面抄本等を提出した場合であつて、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないもの 又は訴因変更等請求書面に記載された個人特定事項のうち訴因変更等請求書面抄本等に記載がないものが第二百七十一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者のものに該当すると認めるときも、前項と同様とする。


この場合において、

同項
その検察官請求証人等の供述」とあるのは
「これらの個人特定事項に係る証人の供述」と、

その検察官請求証人等の氏名 又は住居」とあるのは
「これらの個人特定事項」と

する。

10項

第七項前段に規定する場合において、被告人に弁護人がないときも、第八項と同様とする。


この場合において、

同項
その検察官請求証人等の供述」とあるのは
「これらの個人特定事項に係る証人の供述」と、

その検察官請求証人等の氏名 又は住居」とあるのは
「これらの個人特定事項」と

する。

11項

検察官は、前各項の規定による措置をとつたときは、速やかに、裁判所に その旨を通知しなければならない。

1項

裁判所は、検察官が前条第一項第三項第六項 又は第八項の規定による措置をとつた場合において、次の各号いずれかに該当すると認めるときは、被告人 又は弁護人の請求により、決定で、当該措置の全部 又は一部を取り消さなければならない。

一 号

当該措置に係る者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがないとき。

二 号

当該措置により、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき。

三 号

検察官のとつた措置が前条第三項 又は第八項の規定によるものである場合において、同条第一項本文 又は第六項本文の規定による措置によつて第一号に規定する行為を防止できるとき。

○2項

検察官が前条第二項第四項第五項第七項第九項 又は第十項の規定による措置をとつた場合において、次の各号いずれかに該当すると認めるときも、前項と同様とする。

一 号

当該措置に係る氏名 若しくは住居 又は個人特定事項が起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないもの 又は訴因変更等請求書面に記載された個人特定事項のうち訴因変更等請求書面抄本等に記載がないもの(第三百十二条第一項の請求を却下する決定があつた場合における当該請求に係るものを除く)に該当しないとき。

二 号

又はに掲げる個人特定事項の区分に応じ、当該 又はに定める場合であるとき。

被害者の個人特定事項

当該措置に係る事件に係る罪が第二百七十一条の二第一項第一号イ 及びに規定するものに該当せず、かつ、当該措置に係る事件が同号ハに掲げるものに該当しないとき。

被害者以外の者の個人特定事項

当該措置に係る者が第二百七十一条の二第一項第二号に掲げる者に該当しないとき。

三 号

検察官のとつた措置が前条第四項第五項第九項 又は第十項の規定によるものである場合において、当該措置に係る個人特定事項が第二百七十一条の五第二項第三百十二条の二第四項において準用する場合を含む。)の決定により通知することとされたものに該当するとき。

四 号
当該措置により、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき。
五 号

検察官のとつた措置が前条第四項第五項第九項 又は第十項の規定によるものである場合において、同条第二項 又は第七項の規定による措置によつて第二百七十一条の二第一項第一号ハ(1)及び第二号イに規定する名誉 又は社会生活の平穏が著しく害されること 並びに同項第一号ハ(2)及び第二号ロに規定する行為を防止できるとき。

○3項

裁判所は、第一項第二号 又は第三号に該当すると認めて検察官がとつた措置の全部 又は一部を取り消す場合において、同項第一号に規定する行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、当該措置に係る者の氏名 又は住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期 若しくは方法を指定することができる。


ただし、当該条件を付し、又は当該時期 若しくは方法の指定をすることにより、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

○4項

第二項第三号から第五号までに該当すると認めて検察官がとつた措置の全部 又は一部を取り消す場合において、第二百七十一条の二第一項第一号ハ(1)若しくは第二号イに規定する名誉 若しくは社会生活の平穏が著しく害されるおそれ 又は同項第一号ハ(2)若しくは第二号ロに規定する行為がなされるおそれがあると認めるときも、前項と同様とする。


この場合において、

同項
者の氏名 又は住居」とあるのは、
「個人特定事項」と

する。

5項

裁判所は、第一項 又は第二項の請求について決定をするときは、検察官の意見を聴かなければならない。

6項

第一項 又は第二項の請求についてした決定(第三項 又は第四項の規定により条件を付し、又は時期 若しくは方法を指定する裁判を含む。)に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

裁判所は、検察官がとつた第二百九十九条の四第一項 若しくは第六項の規定による措置に係る者 若しくは裁判所がとつた前条第三項の規定による措置に係る者 若しくはこれらの親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認める場合において、検察官 及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、弁護人が第四十条第一項の規定により訴訟に関する書類 又は証拠物を閲覧し 又は謄写するに当たり、これらに記載され 又は記録されている当該措置に係る者の氏名 又は住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期 若しくは方法を指定することができる。


ただし、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

○2項

裁判所は、検察官がとつた第二百九十九条の四第三項 若しくは第八項の規定による措置に係る者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認める場合において、検察官 及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、弁護人が第四十条第一項の規定により訴訟に関する書類 又は証拠物を閲覧し 又は謄写するについて、これらのうち当該措置に係る者の氏名 若しくは住居が記載され 若しくは記録されている部分の閲覧 若しくは謄写を禁じ、又は当該氏名 若しくは住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、若しくは被告人に知らせる時期 若しくは方法を指定することができる。


ただし、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

○3項

裁判所は、検察官がとつた 第二百九十九条の四第一項 若しくは第六項の規定による措置に係る者 若しくは裁判所がとつた前条第三項の規定による措置に係る者 若しくはこれらの親族の身体 若しくは財産に害を加え 又は これらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認める場合において、弁護人から第四十六条の規定による請求があつた場合であつて、検察官 及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、弁護人に裁判書 又は裁判を記載した調書の謄本 又は抄本を交付するに当たり、これらに記載されている当該措置に係る者の氏名 又は住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期 若しくは方法を指定することができる。


ただし、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

4項

裁判所は、検察官がとつた第二百九十九条の四第三項 若しくは第八項の規定による措置に係る者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認める場合において、弁護人から第四十六条の規定による請求があつた場合であつて、検察官 及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、裁判書 若しくは裁判を記載した調書の抄本であつて当該措置に係る者の氏名 若しくは住居の記載がないものを交付し、又は弁護人に裁判書 若しくは裁判を記載した調書の謄本 若しくは抄本を交付するに当たり、当該氏名 若しくは住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、若しくは被告人に知らせる時期 若しくは方法を指定することができる。


ただし、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

5項

裁判所は、検察官がとつた 第二百九十九条の四第一項第三項第六項 若しくは第八項の規定による措置に係る者 若しくは裁判所がとつた前条第三項の規定による措置に係る者 若しくはこれらの親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認める場合において、被告人 その他訴訟関係人(検察官 及び弁護人を除く)から第四十六条の規定による請求があつた場合であつて、検察官 及び当該請求をした被告人 その他訴訟関係人の意見を聴き、相当と認めるときは、裁判書 又は裁判を記載した調書の抄本であつて当該措置に係る者の氏名 又は住居の記載がないものを交付することができる。


ただし、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

6項

裁判所は、検察官がとつた第二百九十九条の四第一項第三項第六項 若しくは第八項の規定による措置に係る者 若しくは裁判所がとつた前条第三項の規定による措置に係る者 若しくはこれらの親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認める場合において、検察官 及び被告人の意見を聴き、相当と認めるときは、被告人が第四十九条の規定により公判調書を閲覧し 又はその朗読を求めるについて、このうち当該措置に係る者の氏名 若しくは住居が記載され 若しくは記録されている部分の閲覧を禁じ、又は当該部分の朗読の求めを拒むことができる。


ただし、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人 その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるとき その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。

1項

検察官は、第二百九十九条の四第一項第二項第六項 若しくは第七項の規定により付した条件に弁護人が違反したとき、又はこれらの規定による時期 若しくは方法の指定に弁護人が従わなかつたときは、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会 又は日本弁護士連合会に通知し、適当な処置をとるべきことを請求することができる。

○2項

裁判所は、第二百九十九条の五第三項 若しくは第四項 若しくは前条第一項から第四項までの規定により付した条件に弁護人が違反したとき、又はこれらの規定による時期 若しくは方法の指定に弁護人が従わなかつたときは、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会 又は日本弁護士連合会に通知し、適当な処置をとるべきことを請求することができる。

○3項

前二項の規定による請求を受けた者は、そのとつた処置をその請求をした検察官 又は裁判所に通知しなければならない。

1項

第三百二十一条第一項第二号後段の規定により証拠とすることができる書面については、検察官は、必ずその取調を請求しなければならない。

1項

第三百二十二条 及び第三百二十四条第一項の規定により証拠とすることができる被告人の供述が自白である場合には、犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後でなければ、その取調を請求することはできない

1項

次に掲げる事件については、検察官は、第三百二十二条第一項の規定により証拠とすることができる書面であつて、当該事件についての第百九十八条第一項の規定による取調べ(逮捕 又は勾留されている被疑者の取調べに限る第三項において同じ。)又は第二百三条第一項第二百四条第一項 若しくは第二百五条第一項第二百十一条 及び第二百十六条においてこれらの規定を準用する場合を含む。第三項において同じ。)の弁解の機会に際して作成され、かつ、被告人に不利益な事実の承認を内容とするものの取調べを請求した場合において、被告人 又は弁護人が、その取調べの請求に関し、その承認が任意にされたものでない疑いがあることを理由として異議を述べたときは、その承認が任意にされたものであることを証明するため、当該書面が作成された取調べ 又は弁解の機会の開始から終了に至るまでの間における被告人の供述 及びその状況を第四項の規定により記録した記録媒体の取調べを請求しなければならない。


ただし同項各号のいずれかに該当することにより同項の規定による記録が行われなかつたこと その他やむを得ない事情によつて当該記録媒体が存在しないときは、この限りでない。

一 号

死刑 又は無期の懲役 若しくは禁錮に当たる罪に係る事件

二 号

短期一年以上の有期の懲役 又は禁錮に当たる罪であつて故意の犯罪行為により被害者を死亡させたものに係る事件

三 号

司法警察員が送致し 又は送付した事件以外の事件(前二号に掲げるものを除く

○2項

検察官が前項の規定に違反して同項に規定する記録媒体の取調べを請求しないときは、裁判所は、決定で、同項に規定する書面の取調べの請求を却下しなければならない。

○3項

前二項の規定は、第一項各号に掲げる事件について、第三百二十四条第一項において準用する第三百二十二条第一項の規定により証拠とすることができる被告人以外の者の供述であつて、当該事件についての第百九十八条第一項の規定による取調べ 又は第二百三条第一項第二百四条第一項 若しくは第二百五条第一項の弁解の機会に際してされた被告人の供述(被告人に不利益な事実の承認を内容とするものに限る)をその内容とするものを証拠とすることに関し、被告人 又は弁護人が、その承認が任意にされたものでない疑いがあることを理由として異議を述べた場合にこれを準用する。

○4項

検察官 又は検察事務官は、第一項各号に掲げる事件(同項第三号に掲げる事件のうち、関連する事件が送致され 又は送付されているものであつて、司法警察員が現に捜査していること その他の事情に照らして司法警察員が送致し又は送付することが見込まれるものを除く)について、逮捕 若しくは勾留されている被疑者を第百九十八条第一項の規定により取り調べるとき 又は被疑者に対し第二百四条第一項 若しくは第二百五条第一項第二百十一条 及び第二百十六条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定により弁解の機会を与えるときは、次の各号いずれかに該当する場合を除き、被疑者の供述 及びその状況を録音 及び録画を同時に行う方法により記録媒体に記録しておかなければならない。


司法警察職員が、第一項第一号 又は第二号に掲げる事件について、逮捕 若しくは勾留されている被疑者を第百九十八条第一項の規定により取り調べるとき 又は被疑者に対し第二百三条第一項第二百十一条 及び第二百十六条において準用する場合を含む。)の規定により弁解の機会を与えるときも、同様とする。

一 号

記録に必要な機器の故障 その他のやむを得ない事情により、記録をすることができないとき。

二 号

被疑者が記録を拒んだこと その他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。

三 号

当該事件が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律平成三年法律第七十七号第三条の規定により都道府県公安委員会の指定を受けた暴力団の構成員による犯罪に係るものであると認めるとき。

四 号

前二号に掲げるもののほか、犯罪の性質、関係者の言動、被疑者がその構成員である団体の性格 その他の事情に照らし、被疑者の供述 及びその状況が明らかにされた場合には被疑者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあることにより、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。

1項

第三百二十一条乃至第三百二十三条 又は第三百二十六条の規定により証拠とすることができる書面が捜査記録の一部であるときは、検察官は、できる限り他の部分と分離してその取調を請求しなければならない。

1項

公判準備においてした証人 その他の者の尋問、検証、押収 及び捜索の結果を記載した書面 並びに押収した物については、裁判所は、公判期日において証拠書類 又は証拠物としてこれを取り調べなければならない。

1項

証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人は、裁判長 又は陪席の裁判官が、まず、これを尋問する。

○2項

検察官、被告人 又は弁護人は、前項の尋問が終つた後、裁判長に告げて、その証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人を尋問することができる。


この場合において、その証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人の取調が、検察官、被告人 又は弁護人の請求にかかるものであるときは、請求をした者が、先に尋問する。

○3項

裁判所は、適当と認めるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、前二項の尋問の順序を変更することができる。

1項

裁判所は、証人を尋問する場合において、証人が被告人の面前(第百五十七条の五第一項に規定する措置を採る場合 並びに第百五十七条の六第一項 及び第二項に規定する方法による場合を含む。)においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めるときは、弁護人が出頭している場合に限り、検察官 及び弁護人の意見を聴き、その証人の供述中被告人を退廷させることができる。


この場合には、供述終了後 被告人を入廷させ、これに証言の要旨を告知し、その証人を尋問する機会を与えなければならない。

1項

検察官、被告人 又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させなければならない。


ただし、裁判長は、自らこれを朗読し、又は陪席の裁判官 若しくは裁判所書記官にこれを朗読させることができる。

○2項

裁判所が職権で証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、自らその書類を朗読し、又は陪席の裁判官 若しくは裁判所書記官にこれを朗読させなければならない。

○3項

第二百九十条の二第一項 又は第三項の決定があつたときは、前二項の規定による証拠書類の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。

○4項

第二百九十条の三第一項の決定があつた場合における第一項 又は第二項の規定による証拠書類の朗読についても、前項同様とする。


この場合において、

同項中
被害者特定事項」とあるのは、
「証人等特定事項」と

する。

○5項

第百五十七条の六第四項の規定により記録媒体がその一部とされた調書の取調べについては、第一項 又は第二項の規定による朗読に代えて、当該記録媒体を再生するものとする。


ただし、裁判長は、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、当該記録媒体の再生に代えて、当該調書の取調べを請求した者、陪席の裁判官 若しくは裁判所書記官に当該調書に記録された供述の内容を告げさせ、又は自らこれを告げることができる。

○6項

裁判所は、前項の規定により第百五十七条の六第四項に規定する記録媒体を再生する場合において、必要と認めるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、第百五十七条の五に規定する措置を採ることができる。

1項

検察官、被告人 又は弁護人の請求により、証拠物の取調をするについては、裁判長は、請求をした者をしてこれを示させなければならない。


但し、裁判長は、自らこれを示し、又は陪席の裁判官 若しくは裁判所書記にこれを示させることができる。

○2項

裁判所が職権で証拠物の取調をするについては、裁判長は、自らこれを訴訟関係人に示し、又は陪席の裁判官 若しくは裁判所書記にこれを示させなければならない。

1項

証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについては、前条の規定による外、第三百五条の規定による。

1項

第二百九十一条の二の決定があつた事件については、第二百九十六条第二百九十七条第三百条乃至第三百二条及び第三百四条乃至前条の規定は、これを適用せず、証拠調は、公判期日において、適当と認める方法でこれを行うことができる。

1項

裁判所は、検察官 及び被告人 又は弁護人に対し、証拠の証明力を争うために必要とする適当な機会を与えなければならない。

1項

検察官、被告人 又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。

○2項

検察官、被告人 又は弁護人は、前項に規定する場合の外、裁判長の処分に対して異議を申し立てることができる。

○3項

裁判所は、前二項の申立について決定をしなければならない。

1項

証拠調を終つた証拠書類 又は証拠物は、遅滞なくこれを裁判所に提出しなければならない。


但し、裁判所の許可を得たときは、原本に代え、その謄本を提出することができる。

1項

被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。

○2項

被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。

○3項

陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人 又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。

1項

裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因 又は罰条の追加、撤回 又は変更を許さなければならない。

○2項

裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因 又は罰条を追加 又は変更すべきことを命ずることができる。

○3項

第一項の請求は、書面を提出してしなければならない。

○4項

検察官は、第一項の請求と同時に、被告人に送達するものとして、前項の書面(以下「訴因変更等請求書面」という。)の謄本を裁判所に提出しなければならない。

5項

裁判所は、前項の規定による訴因変更等請求書面の謄本の提出があつたときは、遅滞なくこれを被告人に送達しなければならない。

6項

第三項の規定にかかわらず、被告人が在廷する公判廷においては、第一項の請求は、口頭ですることができる。


この場合においては、第四項の規定は、適用しない

7項

裁判所は、訴因 又は罰条の追加 又は変更により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるときは、被告人 又は弁護人の請求により、決定で、被告人に十分な防御の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。

1項

検察官は、訴因変更等請求書面に記載された 第二百七十一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者の個人特定事項について、必要と認めるときは、裁判所に対し、前条第五項の規定による訴因変更等請求書面の謄本の送達により当該個人特定事項が被告人に知られないようにするための措置をとることを求めることができる。

2項

前項の規定による求めは、裁判所に対し、訴因変更等請求書面とともに、被告人に送達するものとして、当該求めに係る個人特定事項の記載がない訴因変更等請求書面の抄本 その他の訴因変更等請求書面の謄本に代わるもの(以下この条において「訴因変更等請求書面抄本等」という。)を提出して行わなければならない。

3項

裁判所は、前項の規定による訴因変更等請求書面抄本等の提出があつたときは、前条第五項の規定にかかわらず、遅滞なく訴因変更等請求書面抄本等を被告人に送達しなければならない。

4項

第二百七十一条の三から第二百七十一条の八までの規定は、第二項の規定による訴因変更等請求書面抄本等の提出がある場合について準用する。


この場合において、

第二百七十一条の三第三項
前条第一項第一号ハ(1)」とあるのは
第二百七十一条の二第一項第一号ハ(1)」と、

第二百七十一条の五第一項
第二百七十一条の二第四項」とあるのは
第三百十二条の二第三項」と、

第二百七十一条の六第五項 及び第二百七十一条の八第一項
同条第一項第一号」とあるのは
第二百七十一条の二第一項第一号」と

読み替えるものとする。

1項

裁判所は、適当と認めるときは、検察官、被告人 若しくは弁護人の請求により又は職権で、決定を以て、弁論を分離し若しくは併合し、又は終結した弁論を再開することができる。

○2項

裁判所は、被告人の権利を保護するため必要があるときは、裁判所の規則の定めるところにより、決定を以て弁論を分離しなければならない。

1項

この法律の規定に基づいて裁判所 若しくは裁判長 又は裁判官が付した弁護人の選任は、弁論が併合された事件についても その効力を有する。


ただし、裁判所がこれと異なる決定をしたときは、この限りでない。

○2項

前項ただし書の決定をするには、あらかじめ、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴かなければならない。

1項

被告人が心神喪失の状態に在るときは、検察官 及び弁護人の意見を聴き、決定で、その状態の続いている間公判手続を停止しなければならない。


但し、無罪、免訴、刑の免除又は公訴棄却の裁判をすべきことが明らかな場合には、被告人の出頭を待たないで、直ちにその裁判をすることができる。

○2項

被告人が病気のため出頭することができないときは、検察官 及び弁護人の意見を聴き、決定で、出頭することができるまで公判手続を停止しなければならない。


但し第二百八十四条 及び第二百八十五条の規定により代理人を出頭させた場合は、この限りでない。

○3項

犯罪事実の存否の証明に欠くことのできない証人が病気のため公判期日に出頭することができないときは、公判期日外においてその取調をするのを適当と認める場合の外、決定で、出頭することができるまで公判手続を停止しなければならない。

○4項

前三項の規定により公判手続を停止するには、医師の意見を聴かなければならない。

1項

開廷後裁判官がかわつたときは、公判手続を更新しなければならない。


但し、判決の宣告をする場合は、この限りでない。

1項

第二百九十一条の二の決定が取り消されたときは、公判手続を更新しなければならない。


但し、検察官 及び被告人 又は弁護人に異議がないときは、この限りでない。

1項

地方裁判所において一人の裁判官のした訴訟手続は、被告事件が合議体で審判すべきものであつた場合にも、その効力を失わない。

第二節 争点及び証拠の整理手続

第一款 公判前整理手続

第一目 通則

1項

裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは、検察官、被告人 若しくは弁護人の請求により 又は職権で、第一回公判期日前に、決定で、事件の争点 及び証拠を整理するための公判準備として、事件を公判前整理手続に付することができる。

○2項

前項の決定 又は同項の請求を却下する決定をするには、裁判所の規則の定めるところにより、あらかじめ、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴かなければならない。

○3項

公判前整理手続は、この款に定めるところにより、訴訟関係人を出頭させて陳述させ、又は訴訟関係人に書面を提出させる方法により、行うものとする。

1項

裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うことができるよう、公判前整理手続において、十分な準備が行われるようにするとともに、できる限り早期にこれを終結させるように努めなければならない。

○2項

訴訟関係人は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うことができるよう、公判前整理手続において、相互に協力するとともに、その実施に関し、裁判所に進んで協力しなければならない。

1項

公判前整理手続においては、被告人に弁護人がなければその手続を行うことができない

○2項

公判前整理手続において被告人に弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。

1項

公判前整理手続においては、次に掲げる事項を行うことができる。

一 号

訴因 又は罰条を明確にさせること。

二 号

訴因 又は罰条の追加、撤回 又は変更を許すこと。

三 号

第二百七十一条の五第一項 又は第二項これらの規定を第三百十二条の二第四項において準用する場合を含む。)の請求について決定をすること。

四 号

公判期日においてすることを予定している主張を明らかにさせて事件の争点を整理すること。

五 号
証拠調べの請求をさせること。
六 号

前号の請求に係る証拠について、その立証趣旨、尋問事項等を明らかにさせること。

七 号

証拠調べの請求に関する意見(証拠書類について第三百二十六条の同意をするかどうかの意見を含む。)を確かめること。

八 号
証拠調べをする決定 又は証拠調べの請求を却下する決定をすること。
九 号
証拠調べをする決定をした証拠について、その取調べの順序 及び方法を定めること。
十 号
証拠調べに関する異議の申立てに対して決定をすること。
十一 号

第三目の定めるところにより証拠開示に関する裁定をすること。

十二 号

第三百十六条の三十三第一項の規定による被告事件の手続への参加の申出に対する決定 又は当該決定を取り消す決定をすること。

十三 号
公判期日を定め、又は変更すること その他公判手続の進行上必要な事項を定めること。
1項

裁判長は、訴訟関係人を出頭させて公判前整理手続をするときは、公判前整理手続期日を定めなければならない。

○2項

公判前整理手続期日は、これを検察官、被告人 及び弁護人に通知しなければならない。

○3項

裁判長は、検察官、被告人 若しくは弁護人の請求により 又は職権で、公判前整理手続期日を変更することができる。


この場合においては、裁判所の規則の定めるところにより、あらかじめ、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴かなければならない。

1項

公判前整理手続期日に検察官 又は弁護人が出頭しないときは、その期日の手続を行うことができない

1項

弁護人が公判前整理手続期日に出頭しないとき、又は在席しなくなつたときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。

○2項

弁護人が公判前整理手続期日に出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。

1項

被告人は、公判前整理手続期日に出頭することができる。

○2項

裁判所は、必要と認めるときは、被告人に対し、公判前整理手続期日に出頭することを求めることができる。

○3項

裁判長は、被告人を出頭させて公判前整理手続をする場合には、被告人が出頭する最初の公判前整理手続期日において、まず、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨を告知しなければならない。

1項

裁判所は、弁護人の陳述 又は弁護人が提出する書面について被告人の意思を確かめる必要があると認めるときは、公判前整理手続期日において被告人に対し質問を発し、及び弁護人に対し被告人と連署した書面の提出を求めることができる。

1項

裁判所は、合議体の構成員に命じ、公判前整理手続(第三百十六条の五第二号第三号第八号 及び第十号から第十二号までの決定を除く)をさせることができる。


この場合において、受命裁判官は、裁判所 又は裁判長と同一の権限を有する。

1項

公判前整理手続期日には、裁判所書記官を立ち会わせなければならない。

○2項

公判前整理手続期日における手続については、裁判所の規則の定めるところにより、公判前整理手続調書を作成しなければならない。

第二目 争点及び証拠の整理

1項

検察官は、事件が公判前整理手続に付されたときは、その証明予定事実公判期日において証拠により証明しようとする事実をいう。以下同じ。)を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人 又は弁護人に送付しなければならない。


この場合においては、当該書面には、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調べを請求する意思のない資料に基づいて、裁判所に事件について偏見 又は予断を生じさせるおそれのある事項を記載することができない

○2項

検察官は、前項の証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない。

○3項

前項の規定により証拠の取調べを請求するについては、第二百九十九条第一項の規定は適用しない

○4項

裁判所は、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の書面の提出 及び送付 並びに第二項の請求の期限を定めるものとする。

1項

検察官は、前条第二項の規定により取調べを請求した証拠(以下「検察官請求証拠」という。)については、速やかに、被告人 又は弁護人に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない。

一 号

証拠書類 又は証拠物 当該証拠書類 又は証拠物を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。

二 号

証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人 その氏名 及び住居を知る機会を与え、かつ、その者の供述録取書等のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあつては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。

○2項

検察官は、前項の規定による証拠の開示をした後、被告人 又は弁護人から請求があつたときは、速やかに、被告人 又は弁護人に対し、検察官が保管する証拠の一覧表交付をしなければならない。

○3項

前項の一覧表には、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、証拠ごとに、当該各号に定める事項を記載しなければならない。

一 号

証拠物

品名 及び数量

二 号

供述を録取した書面で供述者の署名 又は押印のあるもの

当該書面の標目、作成の年月日 及び供述者の氏名

三 号

証拠書類(前号に掲げるものを除く

当該証拠書類の標目、作成の年月日 及び作成者の氏名

○4項

前項の規定にかかわらず、検察官は、同項の規定により第二項の一覧表に記載すべき事項であつて、これを記載することにより次に掲げるおそれがあると認めるものは、同項の一覧表に記載しないことができる。

一 号

人の身体 若しくは財産に害を加え 又は人を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれ

二 号

人の名誉 又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ

三 号

犯罪の証明 又は犯罪の捜査に支障を生ずるおそれ

○5項

検察官は、第二項の規定により一覧表の交付をした後、証拠を新たに保管するに至つたときは、速やかに、被告人 又は弁護人に対し、当該新たに保管するに至つた証拠の一覧表の交付をしなければならない。


この場合においては、前二項の規定を準用する。

1項

検察官は、前条第一項の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、次の各号に掲げる証拠の類型のいずれかに該当し、かつ、特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められるものについて、被告人 又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その重要性の程度 その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度 並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容 及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、同項第一号に定める方法による開示をしなければならない。


この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期 若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。

一 号
証拠物
二 号

第三百二十一条第二項に規定する裁判所 又は裁判官の検証の結果を記載した書面

三 号

第三百二十一条第三項に規定する書面 又はこれに準ずる書面

四 号

第三百二十一条第四項に規定する書面 又はこれに準ずる書面

五 号
次に掲げる者の供述録取書等

検察官が証人として尋問を請求した者

検察官が取調べを請求した供述録取書等の供述者であつて、当該供述録取書等が第三百二十六条の同意がされない場合には、検察官が証人として尋問を請求することを予定しているもの

六 号

前号に掲げるもののほか、被告人以外の者の供述録取書等であつて、検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの

七 号
被告人の供述録取書等
八 号

取調べ状況の記録に関する準則に基づき、検察官、検察事務官 又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であつて、身体の拘束を受けている者の取調べに関し、その年月日、時間、場所 その他の取調べの状況を記録したもの(被告人 又はその共犯として身体を拘束され 若しくは公訴を提起された者であつて第五号イ 若しくはに掲げるものに係るものに限る

九 号

検察官請求証拠である証拠物の押収手続記録書面押収手続の記録に関する準則に基づき、検察官、検察事務官 又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であつて、証拠物の押収に関し、その押収者、押収の年月日、押収場所 その他の押収の状況を記録したものをいう。次項 及び第三項第二号イにおいて同じ。

○2項

前項の規定による開示をすべき証拠物の押収手続記録書面(前条第一項 又は前項の規定による開示をしたものを除く)について、被告人 又は弁護人から開示の請求があつた場合において、当該証拠物により特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために当該開示をすることの必要性の程度 並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容 及び程度を考慮し、相当と認めるときも、同項と同様とする。

○3項

被告人 又は弁護人は、前二項の開示の請求をするときは、次の各号に掲げる開示の請求の区分に応じ、当該各号に定める事項を明らかにしなければならない。

一 号

第一項の開示の請求

次に掲げる事項

第一項各号に掲げる証拠の類型 及び開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項

事案の内容、特定の検察官請求証拠に対応する証明予定事実、開示の請求に係る証拠と当該検察官請求証拠との関係 その他の事情に照らし、当該開示の請求に係る証拠が当該検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であること その他の被告人の防御の準備のために当該開示が必要である理由

二 号

前項の開示の請求

次に掲げる事項

開示の請求に係る押収手続記録書面を識別するに足りる事項

第一項の規定による開示をすべき証拠物と特定の検察官請求証拠との関係 その他の事情に照らし、当該証拠物により当該検察官請求証拠の証明力を判断するために当該開示が必要である理由

1項

被告人 又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四第一項 並びに前条第一項 及び第二項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けたときは、検察官請求証拠について、第三百二十六条の同意をするかどうか 又はその取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見を明らかにしなければならない。

○2項

裁判所は、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴いた上で、前項の意見を明らかにすべき期限を定めることができる。

1項

被告人 又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四第一項 並びに第三百十六条の十五第一項 及び第二項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けた場合において、その証明予定事実 その他の公判期日においてすることを予定している事実上 及び法律上の主張があるときは、裁判所 及び検察官に対し、これを明らかにしなければならない。


この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。

○2項

被告人 又は弁護人は、前項の証明予定事実があるときは、これを証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない。


この場合においては、第三百十六条の十三第三項の規定を準用する。

○3項

裁判所は、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の主張を明らかにすべき期限 及び前項の請求の期限を定めることができる。

1項

被告人 又は弁護人は、前条第二項の規定により取調べを請求した証拠については、速やかに、検察官に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない。

一 号

証拠書類 又は証拠物 当該証拠書類 又は証拠物を閲覧し、かつ、謄写する機会を与えること。

二 号

証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人 その氏名 及び住居を知る機会を与え、かつ、その者の供述録取書等のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあつては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧し、かつ、謄写する機会を与えること。

1項

検察官は、前条の規定による開示をすべき証拠の開示を受けたときは、第三百十六条の十七第二項の規定により被告人 又は弁護人が取調べを請求した証拠について、第三百二十六条の同意をするかどうか 又はその取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見を明らかにしなければならない。

○2項

裁判所は、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴いた上で、前項の意見を明らかにすべき期限を定めることができる。

1項

検察官は、第三百十六条の十四第一項 並びに第三百十六条の十五第一項 及び第二項の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、第三百十六条の十七第一項の主張に関連すると認められるものについて、被告人 又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その関連性の程度 その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度 並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容 及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、第三百十六条の十四第一項第一号に定める方法による開示をしなければならない。


この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期 若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。

○2項

被告人 又は弁護人は、前項の開示の請求をするときは、次に掲げる事項を明らかにしなければならない。

一 号

開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項

二 号

第三百十六条の十七第一項の主張と開示の請求に係る証拠との関連性 その他の被告人の防御の準備のために当該開示が必要である理由

1項

検察官は、第三百十六条の十三から前条まで(第三百十六条の十四第五項除く)に規定する手続が終わつた後、その証明予定事実を追加し又は変更する必要があると認めるときは、速やかに、その追加し 又は変更すべき証明予定事実を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人 又は弁護人に送付しなければならない。


この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。

○2項

検察官は、その証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べの請求を追加する必要があると認めるときは、速やかに、その追加すべき証拠の取調べを請求しなければならない。


この場合においては、第三百十六条の十三第三項の規定を準用する。

○3項

裁判所は、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の書面の提出 及び送付 並びに前項の請求の期限を定めることができる。

○4項

第三百十六条の十四第一項第三百十六条の十五 及び第三百十六条の十六の規定は、第二項の規定により検察官が取調べを請求した証拠についてこれを準用する。

1項

被告人 又は弁護人は、第三百十六条の十三から第三百十六条の二十まで第三百十六条の十四第五項除く)に規定する手続が終わつた後、第三百十六条の十七第一項の主張を追加し 又は変更する必要があると認めるときは、速やかに、裁判所 及び検察官に対し、その追加し 又は変更すべき主張を明らかにしなければならない。


この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。

○2項

被告人 又は弁護人は、その証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べの請求を追加する必要があると認めるときは、速やかに、その追加すべき証拠の取調べを請求しなければならない。


この場合においては、第三百十六条の十三第三項の規定を準用する。

○3項

裁判所は、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴いた上で、第一項の主張を明らかにすべき期限 及び前項の請求の期限を定めることができる。

○4項

第三百十六条の十八 及び第三百十六条の十九の規定は、第二項の規定により被告人 又は弁護人が取調べを請求した証拠についてこれを準用する。

○5項

第三百十六条の二十の規定は、第一項の追加し 又は変更すべき主張に関連すると認められる証拠についてこれを準用する。

1項

第二百九十九条の二 及び第二百九十九条の三の規定は、検察官 又は弁護人がこの目の規定による証拠の開示をする場合についてこれを準用する。

○2項

第二百九十九条の四の規定は、検察官が第三百十六条の十四第一項第三百十六条の二十一第四項において準用する場合を含む。)の規定による証拠の開示をすべき場合についてこれを準用する。

○3項

第二百九十九条の五から第二百九十九条の七までの規定は、検察官が前項において準用する第二百九十九条の四第一項から第十項までの規定による措置をとつた場合についてこれを準用する。

1項

裁判所は、公判前整理手続を終了するに当たり、検察官 及び被告人 又は弁護人との間で、事件の争点 及び証拠の整理の結果を確認しなければならない。

第三目 証拠開示に関する裁定

1項

裁判所は、証拠の開示の必要性の程度 並びに証拠の開示によつて生じるおそれのある弊害の内容 及び程度 その他の事情を考慮して、必要と認めるときは、第三百十六条の十四第一項第三百十六条の二十一第四項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠については検察官の請求により、第三百十六条の十八第三百十六条の二十二第四項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠については被告人 又は弁護人の請求により、決定で、当該証拠の開示の時期 若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。

○2項

裁判所は、前項の請求について決定をするときは、相手方の意見を聴かなければならない。

○3項

第一項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

裁判所は、検察官が第三百十六条の十四第一項 若しくは第三百十六条の十五第一項 若しくは第二項第三百十六条の二十一第四項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)若しくは第三百十六条の二十第一項第三百十六条の二十二第五項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠を開示していないと認めるとき、又は被告人 若しくは弁護人が第三百十六条の十八第三百十六条の二十二第四項において準用する場合を含む。)の規定による開示をすべき証拠を開示していないと認めるときは、相手方の請求により、決定で、当該証拠の開示を命じなければならない。


この場合において、裁判所は、開示の時期 若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。

○2項

裁判所は、前項の請求について決定をするときは、相手方の意見を聴かなければならない。

○3項

第一項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

裁判所は、第三百十六条の二十五第一項 又は前条第一項の請求について決定をするに当たり、必要があると認めるときは、検察官、被告人 又は弁護人に対し、当該請求に係る証拠の提示を命ずることができる。


この場合においては、裁判所は、何人にも、当該証拠の閲覧 又は謄写をさせることができない。

○2項

裁判所は、被告人 又は弁護人がする前条第一項の請求について決定をするに当たり、必要があると認めるときは、検察官に対し、その保管する証拠であつて、裁判所の指定する範囲に属するものの標目を記載した一覧表の提示を命ずることができる。


この場合においては、裁判所は、何人にも、当該一覧表の閲覧 又は謄写をさせることができない。

○3項

第一項の規定は第三百十六条の二十五第三項 又は前条第三項の即時抗告が係属する抗告裁判所について、前項の規定は同条第三項の即時抗告が係属する抗告裁判所について、それぞれ準用する。

第二款 期日間整理手続

1項

裁判所は、審理の経過に鑑み必要と認めるときは、検察官、被告人 若しくは弁護人の請求により又は職権で、第一回公判期日後に、決定で、事件の争点 及び証拠を整理するための公判準備として、事件を期日間整理手続に付することができる。

○2項

期日間整理手続については、前款第三百十六条の二第一項 及び第三百十六条の九第三項除く)の規定を準用する。


この場合において、検察官、被告人 又は弁護人が前項の決定前に取調べを請求している証拠については、期日間整理手続において取調べを請求した証拠とみなし、

第三百十六条の六から第三百十六条の十まで及び第三百十六条の十二
公判前整理手続期日」とあるのは
「期日間整理手続期日」と、

同条第二項
公判前整理手続調書」とあるのは
「期日間整理手続調書」と

読み替えるものとする。

第三款 公判手続の特例

1項

公判前整理手続 又は期日間整理手続に付された事件を審理する場合には、第二百八十九条第一項に規定する事件に該当しないときであつても、弁護人がなければ開廷することはできない

1項

公判前整理手続に付された事件については、被告人 又は弁護人は、証拠により証明すべき事実 その他の事実上 及び法律上の主張があるときは、第二百九十六条の手続に引き続き、これを明らかにしなければならない。


この場合においては、同条ただし書の規定を準用する。

1項

公判前整理手続に付された事件については、裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、前条の手続が終わつた後、公判期日において、当該公判前整理手続の結果を明らかにしなければならない。

○2項

期日間整理手続に付された事件については、裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、その手続が終わつた後、公判期日において、当該期日間整理手続の結果を明らかにしなければならない。

1項

公判前整理手続 又は期日間整理手続に付された事件については、検察官 及び被告人 又は弁護人は、第二百九十八条第一項の規定にかかわらず、やむを得ない事由によつて公判前整理手続 又は期日間整理手続において請求することができなかつたものを除き、当該公判前整理手続 又は期日間整理手続が終わつた後には、証拠調べを請求することができない

○2項

前項の規定は、裁判所が、必要と認めるときに、職権で証拠調べをすることを妨げるものではない。

第三節 被害者参加

1項

裁判所は、次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等 若しくは当該被害者の法定代理人 又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人 又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係 その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、当該被害者等 又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする。

一 号
故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
二 号

刑法第百七十六条第百七十七条第百七十九条第二百十一条第二百二十条 又は第二百二十四条から第二百二十七条までの罪

三 号

前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(第一号に掲げる罪を除く

四 号

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律平成二十五年法律第八十六号第四条第五条 又は第六条第三項 若しくは第四項の罪

五 号

第一号から第三号までに掲げる罪の未遂罪

○2項

前項の申出は、あらかじめ検察官にしなければならない。


この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

○3項

裁判所は、第一項の規定により被告事件の手続への参加を許された者(以下「被害者参加人」という。)が当該被告事件の被害者等 若しくは当該被害者の法定代理人に該当せず 若しくは該当しなくなつたことが明らかになつたとき、又は第三百十二条の規定により罰条が撤回 若しくは変更されたため当該被告事件が同項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなつたときは、決定で、同項の決定を取り消さなければならない


犯罪の性質、被告人との関係 その他の事情を考慮して被告事件の手続への参加を認めることが相当でないと認めるに至つたときも、同様とする。

1項

被害者参加人 又はその委託を受けた弁護士は、公判期日に出席することができる。

○2項

公判期日は、これを被害者参加人に通知しなければならない。

○3項

裁判所は、被害者参加人 又はその委託を受けた弁護士が多数である場合において、必要があると認めるときは、これらの者の全員 又はその一部に対し、その中から、公判期日に出席する代表者を選定するよう求めることができる。

○4項

裁判所は、審理の状況、被害者参加人 又はその委託を受けた弁護士の数 その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、公判期日の全部 又は一部への出席を許さないことができる。

○5項

前各項の規定は、公判準備において証人の尋問 又は検証が行われる場合について準用する。

1項

被害者参加人 又はその委託を受けた弁護士は、検察官に対し、当該被告事件についてのこの法律の規定による検察官の権限の行使に関し、意見を述べることができる。


この場合において、検察官は、当該権限を行使し又は行使しないこととしたときは、必要に応じ、当該意見を述べた者に対し、その理由を説明しなければならない。

1項

裁判所は、証人を尋問する場合において被害者参加人 又はその委託を受けた弁護士から、その者がその証人を尋問することの申出があるときは、被告人 又は弁護人の意見を聴き、審理の状況、申出に係る尋問事項の内容、申出をした者の数 その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、申出をした者がその証人を尋問することを許すものとする。

○2項

前項の申出は、検察官の尋問が終わつた後(検察官の尋問がないときは、被告人 又は弁護人の尋問が終わつた後)直ちに、尋問事項を明らかにして、検察官にしなければならない。


この場合において、検察官は、当該事項について自ら尋問する場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

○3項

裁判長は、第二百九十五条第一項から第四項までに規定する場合のほか、被害者参加人 又はその委託を受けた弁護士のする尋問が第一項に規定する事項以外の事項にわたるときは、これを制限することができる。

1項

裁判所は、被害者参加人 又はその委託を受けた弁護士から、その者が被告人に対して第三百十一条第二項の供述を求めるための質問を発することの申出があるときは、被告人 又は弁護人の意見を聴き、被害者参加人 又はその委託を受けた弁護士がこの法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合であつて、審理の状況、申出に係る質問をする事項の内容、申出をした者の数 その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、申出をした者が被告人に対してその質問を発することを許すものとする。

○2項

前項の申出は、あらかじめ、質問をする事項を明らかにして、検察官にしなければならない。


この場合において、検察官は、当該事項について自ら供述を求める場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

○3項

裁判長は、第二百九十五条第一項第三項 及び第四項に規定する場合のほか、被害者参加人 又はその委託を受けた弁護士のする質問が第一項に規定する意見の陳述をするために必要がある事項に関係のない事項にわたるときは、これを制限することができる。

1項

裁判所は、被害者参加人 又はその委託を受けた弁護士から、事実 又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数 その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、第二百九十三条第一項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。

○2項

前項の申出は、あらかじめ、陳述する意見の要旨を明らかにして、検察官にしなければならない。


この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

○3項

裁判長は、第二百九十五条第一項第三項 及び第四項に規定する場合のほか、被害者参加人 又はその委託を受けた弁護士の意見の陳述が第一項に規定する範囲を超えるときは、これを制限することができる。

○4項

第一項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする。

1項

裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項同条第五項において準用する場合を含む。第四項において同じ。)の規定により公判期日 又は公判準備に出席する場合において、被害者参加人の年齢、心身の状態 その他の事情を考慮し、被害者参加人が著しく不安 又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、その不安 又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官 若しくは訴訟関係人の尋問 若しくは被告人に対する供述を求める行為 若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、被害者参加人に付き添わせることができる。

○2項

前項の規定により被害者参加人に付き添うこととされた者は、裁判官 若しくは訴訟関係人の尋問 若しくは被告人に対する供述を求める行為 若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。

○3項

裁判所は、第一項の規定により被害者参加人に付き添うこととされた者が、裁判官 若しくは訴訟関係人の尋問 若しくは被告人に対する供述を求める行為 若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがあると認めるに至つたとき その他その者を被害者参加人に付き添わせることが相当でないと認めるに至つたときは、決定で、同項の決定を取り消すことができる。

○4項

裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日 又は公判準備に出席する場合において、犯罪の性質、被害者参加人の年齢、心身の状態、被告人との関係 その他の事情により、被害者参加人が被告人の面前において在席、尋問、質問 又は陳述をするときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて、相当と認めるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、弁護人が出頭している場合に限り、被告人とその被害者参加人との間で、被告人から被害者参加人の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。

○5項

裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日に出席する場合において、犯罪の性質、被害者参加人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響 その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、傍聴人とその被害者参加人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。

第四節 証拠

1項
事実の認定は、証拠による。
1項

証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。

1項

強制、拷問 又は脅迫による自白、不当に長く抑留 又は拘禁された後の自白 その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない

○2項

被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。

○3項

前二項の自白には、起訴された犯罪について有罪であることを自認する場合を含む。

1項

第三百二十一条乃至第三百二十八条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない

○2項

第二百九十一条の二の決定があつた事件の証拠については、前項の規定は、これを適用しない


但し、検察官、被告人 又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものについては、この限りでない。

1項

被告人以外の者が作成した供述書 又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名 若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。

一 号

裁判官の面前(第百五十七条の六第一項 及び第二項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神 若しくは身体の故障、所在不明 若しくは国外にいるため公判準備 若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備 若しくは公判期日において前の供述と異なつた供述をしたとき。

二 号

検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神 若しくは身体の故障、所在不明 若しくは国外にいるため公判準備 若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備 若しくは公判期日において前の供述と相反するか 若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。


ただし、公判準備 又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る

三 号

前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神 若しくは身体の故障、所在不明 又は国外にいるため公判準備 又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。


ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る

○2項

被告人以外の者の公判準備 若しくは公判期日における供述を録取した書面 又は裁判所 若しくは裁判官の検証の結果を記載した書面は、前項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。

○3項

検察官、検察事務官 又は司法警察職員の検証の結果を記載した書面は、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、第一項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。

○4項

鑑定の経過 及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについても、前項と同様である。

1項

被告事件の公判準備 若しくは公判期日における手続以外の刑事手続 又は他の事件の刑事手続において第百五十七条の六第一項 又は第二項に規定する方法によりされた証人の尋問 及び供述 並びにその状況を記録した記録媒体がその一部とされた調書は、前条第一項の規定にかかわらず、証拠とすることができる。


この場合において、裁判所は、その調書を取り調べた後、訴訟関係人に対し、その供述者を証人として尋問する機会を与えなければならない。

○2項

前項の規定により調書を取り調べる場合においては、第三百五条第五項ただし書の規定は、適用しない。

○3項

第一項の規定により取り調べられた調書に記録された証人の供述は、第二百九十五条第一項前段 並びに前条第一項第一号 及び第二号の適用については、被告事件の公判期日においてされたものとみなす。

1項

第一号に掲げる者の供述 及びその状況を録音 及び録画を同時に行う方法により記録した記録媒体(その供述がされた聴取の開始から終了に至るまでの間における供述 及びその状況を記録したものに限る)は、その供述が第二号に掲げる措置が特に採られた情況の下にされたものであると認める場合であつて、聴取に至るまでの情況 その他の事情を考慮し相当と認めるときは、第三百二十一条第一項の規定にかかわらず、証拠とすることができる。


この場合において、裁判所は、その記録媒体を取り調べた後、訴訟関係人に対し、その供述者を証人として尋問する機会を与えなければならない。

一 号
次に掲げる者

刑法第百七十六条第百七十七条第百七十九条第百八十一条 若しくは第百八十二条の罪、同法第二百二十五条 若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ 又は結婚の目的に係る部分に限る。以下このにおいて同じ。)、同法第二百二十七条第一項同法第二百二十五条 又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る)若しくは第三項わいせつの目的に係る部分に限る)の罪 若しくは同法第二百四十一条第一項 若しくは第三項の罪 又はこれらの罪の未遂罪の被害者

児童福祉法第六十条第一項の罪 若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第四条から第八条までの罪 又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第二条から第六条までの罪の被害者

及びに掲げる者のほか、犯罪の性質、供述者の年齢、心身の状態、被告人との関係 その他の事情により、更に公判準備 又は公判期日において供述するときは精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者

二 号
次に掲げる措置

供述者の年齢、心身の状態 その他の特性に応じ、供述者の不安 又は緊張を緩和すること その他の供述者が十分な供述をするために必要な措置

供述者の年齢、心身の状態 その他の特性に応じ、誘導をできる限り避けること その他の供述の内容に不当な影響を与えないようにするために必要な措置
2項

前項の規定により取り調べられた記録媒体に記録された供述者の供述は、第二百九十五条第一項前段の規定の適用については、被告事件の公判期日においてされたものとみなす。

1項

被告人が作成した供述書 又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名 若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる


但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない

○2項

被告人の公判準備 又は公判期日における供述を録取した書面は、その供述が任意にされたものであると認めるときに限り、これを証拠とすることができる

1項

第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。

一 号

戸籍謄本、公正証書謄本 その他公務員(外国の公務員を含む。)がその職務上証明することができる事実についてその公務員の作成した書面

二 号

商業帳簿、航海日誌 その他業務の通常の過程において作成された書面

三 号

前二号に掲げるもののほか特に信用すべき情況の下に作成された書面

1項

被告人以外の者の公判準備 又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用する。

○2項

被告人以外の者の公判準備 又は公判期日における供述で被告人以外の者の供述をその内容とするものについては、第三百二十一条第一項第三号の規定を準用する。

1項

裁判所は、第三百二十一条から前条までの規定により証拠とすることができる書面 又は供述であつても、あらかじめ、その書面に記載された供述 又は公判準備 若しくは公判期日における供述の内容となつた他の者の供述が任意にされたものかどうかを調査した後でなければ、これを証拠とすることができない

1項

検察官 及び被告人が証拠とすることに同意した書面 又は供述は、その書面が作成され 又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認めるときに限り第三百二十一条乃至前条の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる

○2項

被告人が出頭しないでも証拠調を行うことができる場合において、被告人が出頭しないときは、前項の同意があつたものとみなす。


但し、代理人 又は弁護人が出頭したときは、この限りでない。

1項

裁判所は、検察官 及び被告人 又は弁護人が合意の上、文書の内容 又は公判期日に出頭すれば供述することが予想されるその供述の内容を書面に記載して提出したときは、その文書 又は供述すべき者を取り調べないでも、その書面を証拠とすることができる。


この場合においても、その書面の証明力を争うことを妨げない。

1項

第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面 又は供述であつても、公判準備 又は公判期日における被告人、証人 その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。

第五節 公判の裁判

1項

被告事件が裁判所の管轄に属しないときは、判決で管轄違の言渡をしなければならない。


但し第二百六十六条第二号の規定により地方裁判所の審判に付された事件については、管轄違の言渡をすることはできない

1項

高等裁判所は、その特別権限に属する事件として公訴の提起があつた場合において、その事件が下級の裁判所の管轄に属するものと認めるときは、前条の規定にかかわらず、決定で管轄裁判所にこれを移送しなければならない。

1項

裁判所は、被告人の申立がなければ、土地管轄について、管轄違の言渡をすることができない

○2項

管轄違の申立は、被告事件につき証拠調を開始した後は、これをすることができない

1項

簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。

1項

被告事件について犯罪の証明があつたときは、第三百三十四条の場合を除いては、判決で刑の言渡をしなければならない。

○2項

刑の執行猶予は、刑の言渡しと同時に、判決でその言渡しをしなければならない。


猶予の期間中 保護観察に付する場合も、同様とする。

1項

被告事件について刑を免除するときは、判決でその旨の言渡をしなければならない。

1項

有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目 及び法令の適用を示さなければならない。

○2項

法律上犯罪の成立を妨げる理由 又は刑の加重減免の理由となる事実が主張されたときは、これに対する判断を示さなければならない。

1項

被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。

1項

左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。

一 号
確定判決を経たとき。
二 号

犯罪後の法令により刑が廃止されたとき。

三 号
大赦があつたとき。
四 号
時効が完成したとき。
1項

左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。

一 号
被告人に対して裁判権を有しないとき。
二 号

第三百四十条の規定に違反して公訴が提起されたとき。

三 号

公訴の提起があつた事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき。

四 号

公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。

1項

左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。

一 号

第二百七十一条第二項の規定により公訴の提起がその効力を失つたとき。

二 号

起訴状に記載された事実が真実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していないとき。

三 号
公訴が取り消されたとき。
四 号

被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。

五 号

第十条 又は第十一条の規定により審判してはならないとき。

○2項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

公訴の取消による公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事件について更に公訴を提起することができる。

1項

被告人が陳述をせず、許可を受けないで退廷し、又は秩序維持のため裁判長から退廷を命ぜられたときは、その陳述を聴かないで判決をすることができる。

1項

判決は、公判廷において、宣告によりこれを告知する。

1項

禁錮以上の刑に処する判決の宣告があつたときは、保釈 又は勾留の執行停止は、その効力を失う


この場合には、あらたに保釈 又は勾留の執行停止の決定がないときに限り、第九十八条の規定を準用する。

2項

前項の場合には、新たに保釈 又は勾留の執行停止の決定がないときに限り、第九十八条 及び第二百七十一条の八第五項第三百十二条の二第四項において準用する 場合を含む。以下 この項において同じ。)の規定を準用する。


この場合において、

第二百七十一条の八第五項
第一項(」とあるのは、
第二百七十一条の八第一項(」と

読み替えるものとする。

1項
検察官は、拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告により保釈 又は勾留の執行停止が その効力を失つた場合において、被告人が刑事施設に収容されていないときは、被告人に対し、指定する日時 及び場所に出頭することを命ずることができる。
1項

前条の規定による命令を受けた被告人が、正当な理由がなく、指定された日時 及び場所に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。

1項

禁錮以上の刑に処する判決の宣告があつた後は、第六十条第二項但書 及び第八十九条の規定は、これを適用しない

2項

拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があつた後は、第九十条の規定による保釈を許すには、同条に規定する不利益 その他の不利益の程度が著しく高い場合でなければならない。


ただし、保釈された場合に被告人が逃亡するおそれの程度が高くないと認めるに足りる相当な理由があるときは、この限りでない。

1項

無罪、免訴、刑の免除、刑の全部の執行猶予、公訴棄却(第三百三十八条第四号による場合を除く)、罰金 又は科料の裁判の告知があつたときは、勾留状は、その効力を失う。

1項

押収した物について、没収の言渡がないときは、押収を解く言渡があつたものとする。

1項

押収した贓物で被害者に還付すべき理由が明らかなものは、これを被害者に還付する言渡をしなければならない。

○2項

贓物の対価として得た物について、被害者から交付の請求があつたときは、前項の例による。

○3項

仮に還付した物について、別段の言渡がないときは、還付の言渡があつたものとする。

○4項

前三項の規定は、民事訴訟の手続に従い、利害関係人がその権利を主張することを妨げない。

1項

裁判所は、罰金、科料 又は追徴を言い渡す場合において、判決の確定を待つてはその執行をすることができず、又はその執行をするのに著しい困難を生ずる虞があると認めるときは、検察官の請求により 又は職権で、被告人に対し、仮に罰金、科料 又は追徴に相当する金額を納付すべきことを命ずることができる。

○2項

仮納付の裁判は、刑の言渡と同時に、判決でその言渡をしなければならない。

○3項

仮納付の裁判は、直ちにこれを執行することができる。

1項

刑の執行猶予の言渡を取り消すべき場合には、検察官は、刑の言渡を受けた者の現在地 又は最後の住所地を管轄する地方裁判所、家庭裁判所 又は簡易裁判所に対しその請求をしなければならない。

○2項

刑法第二十六条の二第二号 又は第二十七条の五第二号の規定により刑の執行猶予の言渡しを取り消すべき場合には、前項の請求は、保護観察所の長の申出に基づいてこれをしなければならない。

1項

前条の請求があつたときは、裁判所は、猶予の言渡を受けた者 又はその代理人の意見を聴いて決定をしなければならない。

○2項

前項の場合において、その請求が刑法第二十六条の二第二号 又は第二十七条の五第二号の規定による猶予の言渡しの取消しを求めるものであつて、猶予の言渡しを受けた者の請求があるときは、口頭弁論を経なければならない。

○3項

第一項の決定をするについて口頭弁論を経る場合には、猶予の言渡を受けた者は、弁護人を選任することができる。

○4項

第一項の決定をするについて口頭弁論を経る場合には、検察官は、裁判所の許可を得て、保護観察官に意見を述べさせることができる。

○5項

第一項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

刑法第五十二条の規定により刑を定むべき場合には、検察官は、その犯罪事実について最終の判決をした裁判所にその請求をしなければならない。


この場合には、前条第一項 及び第五項の規定を準用する。

第四章 証拠収集等への協力及び訴追に関する合意

第一節 合意及び協議の手続

1項

検察官は、特定犯罪に係る事件の被疑者 又は被告人が特定犯罪に係る他人の刑事事件(以下単に「他人の刑事事件」という。)について一 又は二以上の第一号に掲げる行為をすることにより得られる証拠の重要性、関係する犯罪の軽重 及び情状、当該関係する犯罪の関連性の程度 その他の事情を考慮して、必要と認めるときは、被疑者 又は被告人との間で、被疑者 又は被告人が当該他人の刑事事件について一 又は二以上の同号に掲げる行為をし、かつ、検察官が被疑者 又は被告人の当該事件について一 又は二以上の第二号に掲げる行為をすることを内容とする合意をすることができる。

一 号
次に掲げる行為

第百九十八条第一項 又は第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官 又は司法警察職員の取調べに際して真実の供述をすること。

証人として尋問を受ける場合において真実の供述をすること。

検察官、検察事務官 又は司法警察職員による証拠の収集に関し、証拠の提出 その他の必要な協力をすること( 及びに掲げるものを除く)。

二 号
次に掲げる行為
公訴を提起しないこと。
公訴を取り消すこと。

特定の訴因 及び罰条により公訴を提起し、又はこれを維持すること。

特定の訴因 若しくは罰条の追加 若しくは撤回 又は特定の訴因 若しくは罰条への変更を請求すること。

第二百九十三条第一項の規定による意見の陳述において、被告人に特定の刑を科すべき旨の意見を陳述すること。

即決裁判手続の申立てをすること。

略式命令の請求をすること。
○2項

前項に規定する「特定犯罪」とは、次に掲げる罪(死刑 又は無期の懲役 若しくは禁錮に当たるものを除く)をいう。

一 号

刑法第九十六条から第九十六条の六まで若しくは第百五十五条の罪、同条の例により処断すべき罪、同法第百五十七条の罪、同法第百五十八条の罪(同法第百五十五条の罪、同条の例により処断すべき罪 又は同法第百五十七条第一項 若しくは第二項の罪に係るものに限る)又は同法第百五十九条から第百六十三条の五まで第百九十七条から第百九十七条の四まで第百九十八条第二百四十六条から第二百五十条まで 若しくは第二百五十二条から第二百五十四条までの罪

二 号

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律平成十一年法律第百三十六号。以下「組織的犯罪処罰法」という。第三条第一項第一号から第四号まで第十三号 若しくは第十四号に掲げる罪に係る同条の罪、同項第十三号 若しくは第十四号に掲げる罪に係る同条の罪の未遂罪 又は組織的犯罪処罰法第十条 若しくは第十一条の罪

三 号

前二号に掲げるもののほか、租税に関する法律、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律昭和二十二年法律第五十四号) 又は金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)の罪 その他の財政経済関係犯罪として政令で定めるもの

四 号
次に掲げる法律の罪

爆発物取締罰則明治十七年太政官布告第三十二号

大麻取締法昭和二十三年法律第百二十四号

覚醒剤取締法昭和二十六年法律第二百五十二号

麻薬及び向精神薬取締法昭和二十八年法律第十四号

武器等製造法昭和二十八年法律第百四十五号

あへん法昭和二十九年法律第七十一号

銃砲刀剣類所持等取締法昭和三十三年法律第六号

国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律平成三年法律第九十四号

五 号

刑法第百三条第百四条 若しくは第百五条の二の罪 又は組織的犯罪処罰法第七条の罪(同条第一項第一号から第三号までに掲げる者に係るものに限る) 若しくは組織的犯罪処罰法第七条の二の罪(いずれも前各号に掲げる罪を本犯の罪とするものに限る

○3項

第一項の合意には、被疑者 若しくは被告人がする同項第一号に掲げる行為 又は検察官がする同項第二号に掲げる行為に付随する事項 その他の合意の目的を達するため必要な事項をその内容として含めることができる。

1項

前条第一項の合意をするには、弁護人の同意がなければならない。

○2項

前条第一項の合意は、検察官、被疑者 又は被告人 及び弁護人が連署した書面により、その内容を明らかにしてするものとする。

1項

第三百五十条の二第一項の合意をするため必要な協議は、検察官と被疑者 又は被告人 及び弁護人との間で行うものとする。


ただし、被疑者 又は被告人 及び弁護人に異議がないときは、協議の一部を弁護人のみとの間で行うことができる。

1項

前条の協議において、検察官は、被疑者 又は被告人に対し、他人の刑事事件について供述を求めることができる。


この場合においては、第百九十八条第二項の規定を準用する。

○2項

被疑者 又は被告人が前条の協議においてした供述は、第三百五十条の二第一項の合意が成立しなかつたときは、これを証拠とすることができない

○3項

前項の規定は、被疑者 又は被告人が当該協議においてした行為が刑法第百三条第百四条 若しくは第百七十二条の罪 又は組織的犯罪処罰法第七条第一項第一号 若しくは第二号に掲げる者に係る同条の罪に当たる場合において、これらの罪に係る事件において用いるときは、これを適用しない

1項

検察官は、司法警察員が送致し若しくは送付した事件 又は司法警察員が現に捜査していると認める事件について、その被疑者との間で第三百五十条の四の協議を行おうとするときは、あらかじめ、司法警察員と協議しなければならない。

○2項

検察官は、第三百五十条の四の協議に係る他人の刑事事件について司法警察員が現に捜査していること その他の事情を考慮して、当該他人の刑事事件の捜査のため必要と認めるときは、前条第一項の規定により供述を求めること その他の当該協議における必要な行為を司法警察員にさせることができる。


この場合において、司法警察員は、検察官の個別の授権の範囲内で、検察官が第三百五十条の二第一項の合意の内容とすることを提案する同項第二号に掲げる行為の内容の提示をすることができる。

第二節 公判手続の特例

1項

検察官は、被疑者との間でした第三百五十条の二第一項の合意がある場合において、当該合意に係る被疑者の事件について公訴を提起したときは、第二百九十一条の手続が終わつた後(事件が公判前整理手続に付された場合にあつては、その時後)遅滞なく、証拠として第三百五十条の三第二項の書面(以下「合意内容書面」という。)の取調べを請求しなければならない。


被告事件について、公訴の提起後に被告人との間で第三百五十条の二第一項の合意をしたときも、同様とする。

○2項

前項の規定により合意内容書面の取調べを請求する場合において、当該合意の当事者が第三百五十条の十第二項の規定により当該合意から離脱する旨の告知をしているときは、検察官は、あわせて、同項の書面の取調べを請求しなければならない。

○3項

第一項の規定により合意内容書面の取調べを請求した後に、当該合意の当事者が第三百五十条の十第二項の規定により当該合意から離脱する旨の告知をしたときは、検察官は、遅滞なく、同項の書面の取調べを請求しなければならない。

1項

被告人以外の者の供述録取書等であつて、その者が第三百五十条の二第一項の合意に基づいて作成したもの又は同項の合意に基づいてされた供述を録取し若しくは記録したものについて、検察官、被告人 若しくは弁護人が取調べを請求し、又は裁判所が職権でこれを取り調べることとしたときは、検察官は、遅滞なく、合意内容書面の取調べを請求しなければならない。


この場合においては、前条第二項 及び第三項の規定を準用する。

1項

検察官、被告人 若しくは弁護人が証人尋問を請求し、又は裁判所が職権で証人尋問を行うこととした場合において、その証人となるべき者との間で当該証人尋問についてした第三百五十条の二第一項の合意があるときは、検察官は、遅滞なく、合意内容書面の取調べを請求しなければならない。


この場合においては、第三百五十条の七第三項の規定を準用する。

第三節 合意の終了

1項

次の各号に掲げる事由があるときは、当該各号に定める者は、第三百五十条の二第一項の合意から離脱することができる。

一 号

第三百五十条の二第一項の合意の当事者が当該合意に違反したとき

その相手方

二 号

次に掲げる事由

被告人

検察官が第三百五十条の二第一項第二号ニに係る同項の合意に基づいて訴因 又は罰条の追加、撤回 又は変更を請求した場合において、裁判所がこれを許さなかつたとき。

検察官が第三百五十条の二第一項第二号ホに係る同項の合意に基づいて第二百九十三条第一項の規定による意見の陳述において被告人に特定の刑を科すべき旨の意見を陳述した事件について、裁判所がその刑より重い刑の言渡しをしたとき。

検察官が第三百五十条の二第一項第二号ヘに係る同項の合意に基づいて即決裁判手続の申立てをした事件について、裁判所がこれを却下する決定(第三百五十条の二十二第三号 又は第四号に掲げる場合に該当することを理由とするものに限る)をし、又は第三百五十条の二十五第一項第三号 若しくは第四号に該当すること(同号については、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述と相反するか 又は実質的に異なつた供述をしたことにより同号に該当する場合を除く)となつたことを理由として第三百五十条の二十二の決定を取り消したとき。

検察官が第三百五十条の二第一項第二号トに係る同項の合意に基づいて略式命令の請求をした事件について、裁判所が第四百六十三条第一項 若しくは第二項の規定により通常の規定に従い審判をすることとし、又は検察官が第四百六十五条第一項の規定により正式裁判の請求をしたとき。

三 号

次に掲げる事由

検察官

被疑者 又は被告人が第三百五十条の四の協議においてした他人の刑事事件についての供述の内容が真実でないことが明らかになつたとき

第一号に掲げるもののほか、被疑者 若しくは被告人が第三百五十条の二第一項の合意に基づいてした供述の内容が真実でないこと 又は被疑者 若しくは被告人が同項の合意に基づいて提出した証拠が偽造 若しくは変造されたものであることが明らかになつたとき。

○2項

前項の規定による離脱は、その理由を記載した書面により、当該離脱に係る合意の相手方に対し、当該合意から離脱する旨の告知をして行うものとする。

1項

検察官が第三百五十条の二第一項第二号イに係る同項の合意に基づいて公訴を提起しない処分をした事件について、検察審査会法第三十九条の五第一項第一号 若しくは第二号の議決 又は同法第四十一条の六第一項の起訴議決があつたときは、当該合意は、その効力を失う。

1項

前条の場合には、当該議決に係る事件について公訴が提起されたときにおいても、被告人が第三百五十条の四の協議においてした供述 及び当該合意に基づいてした被告人の行為により得られた証拠 並びにこれらに基づいて得られた証拠は、当該被告人の刑事事件において、これらを証拠とすることができない

○2項

前項の規定は、次に掲げる場合には、これを適用しない

一 号

前条に規定する議決の前に被告人がした行為が、当該合意に違反するものであつたことが明らかになり、又は第三百五十条の十第一項第三号イ 若しくはに掲げる事由に該当することとなつたとき。

二 号

被告人が当該合意に基づくものとしてした行為 又は当該協議においてした行為が第三百五十条の十五第一項の罪、刑法第百三条第百四条第百六十九条 若しくは第百七十二条の罪 又は組織的犯罪処罰法第七条第一項第一号 若しくは第二号に掲げる者に係る同条の罪に当たる場合において、これらの罪に係る事件において用いるとき。

三 号

証拠とすることについて被告人に異議がないとき。

第四節 合意の履行の確保

1項

検察官が第三百五十条の二第一項第二号イからニまで 又はに係る同項の合意(同号ハに係るものについては、特定の訴因 及び罰条により公訴を提起する旨のものに限る)に違反して、公訴を提起し、公訴を取り消さず、異なる訴因 及び罰条により公訴を提起し、訴因 若しくは罰条の追加、撤回 若しくは変更を請求することなく 若しくは異なる訴因 若しくは罰条の追加 若しくは撤回 若しくは異なる訴因 若しくは罰条への変更を請求して公訴を維持し、又は即決裁判手続の申立て若しくは略式命令の請求を同時にすることなく公訴を提起したときは、判決で当該公訴を棄却しなければならない。

○2項

検察官が第三百五十条の二第一項第二号ハに係る同項の合意(特定の訴因 及び罰条により公訴を維持する旨のものに限る)に違反して訴因 又は罰条の追加 又は変更を請求したときは、裁判所は、第三百十二条第一項の規定にかかわらず、これを許してはならない。

1項

検察官が第三百五十条の二第一項の合意に違反したときは、被告人が第三百五十条の四の協議においてした供述 及び当該合意に基づいてした被告人の行為により得られた証拠は、これらを証拠とすることができない

○2項

前項の規定は、当該被告人の刑事事件の証拠とすることについて当該被告人に異議がない場合 及び当該被告人以外の者の刑事事件の証拠とすることについてその者に異議がない場合には、これを適用しない

1項

第三百五十条の二第一項の合意に違反して、検察官、検察事務官 又は司法警察職員に対し、虚偽の供述をし又は偽造 若しくは変造の証拠を提出した者は、五年以下の懲役に処する。

○2項

前項の罪を犯した者が、当該合意に係る他人の刑事事件の裁判が確定する前であつて、かつ、当該合意に係る自己の刑事事件の裁判が確定する前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。

第五章 即決裁判手続

第一節 即決裁判手続の申立て

1項

検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれること その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。


ただし、死刑 又は無期 若しくは短期一年以上の懲役 若しくは禁錮に当たる事件については、この限りでない。

○2項

前項の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができない

○3項

検察官は、被疑者に対し、前項の同意をするかどうかの確認を求めるときは、これを書面でしなければならない。


この場合において、検察官は、被疑者に対し、即決裁判手続を理解させるために必要な事項(被疑者に弁護人がないときは、次条の規定により弁護人を選任することができる旨を含む。)を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げなければならない。

○4項

被疑者に弁護人がある場合には、第一項の申立ては、被疑者が第二項の同意をするほか、弁護人が即決裁判手続によることについて同意をし又はその意見を留保しているときに限り、これをすることができる。

○5項

被疑者が第二項の同意をし、及び弁護人が前項の同意をし又はその意見を留保するときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。

○6項

第一項の書面には、前項書面を添付しなければならない。

1項

前条第三項の確認を求められた被疑者が即決裁判手続によることについて同意をするかどうかを明らかにしようとする場合において、被疑者が貧困 その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。


ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。

○2項

第三十七条の三の規定は、前項の請求をする場合についてこれを準用する。

第二節 公判準備及び公判手続の特例

1項

即決裁判手続の申立てがあつた場合において、被告人に弁護人がないときは、裁判長は、できる限り速やかに、職権で弁護人を付さなければならない。

1項

検察官は、即決裁判手続の申立てをした事件について、被告人 又は弁護人に対し、第二百九十九条第一項の規定により証拠書類を閲覧する機会 その他の同項に規定する機会を与えるべき場合には、できる限り速やかに、その機会を与えなければならない。

1項

裁判所は、即決裁判手続の申立てがあつた事件について、弁護人が即決裁判手続によることについてその意見を留保しているとき、又は即決裁判手続の申立てがあつた後に弁護人が選任されたときは、弁護人に対し、できる限り速やかに、即決裁判手続によることについて同意をするかどうかの確認を求めなければならない。

○2項

弁護人は、前項の同意をするときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。

1項

裁判長は、即決裁判手続の申立てがあつたときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴いた上で、その申立て後(前条第一項に規定する場合においては、同項の同意があつた後)、できる限り早い時期の公判期日を定めなければならない。

1項

裁判所は、即決裁判手続の申立てがあつた事件について、第二百九十一条第五項の手続に際し、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述をしたときは、次に掲げる場合を除き、即決裁判手続によつて審判をする旨の決定をしなければならない。

一 号

第三百五十条の十六第二項 又は第四項の同意が撤回されたとき。

二 号

第三百五十条の二十第一項に規定する場合において、同項の同意がされなかつたとき、又はその同意が撤回されたとき。

三 号

前二号に掲げるもののほか、当該事件が即決裁判手続によることができないものであると認めるとき。

四 号

当該事件が即決裁判手続によることが相当でないものであると認めるとき。

1項

前条の手続を行う公判期日 及び即決裁判手続による公判期日については、弁護人がないときは、これを開くことができない

1項

第三百五十条の二十二の決定のための審理 及び即決裁判手続による審判については、第二百八十四条第二百八十五条第二百九十六条第二百九十七条第三百条から第三百二条まで 及び第三百四条から第三百七条までの規定は、これを適用しない

○2項

即決裁判手続による証拠調べは、公判期日において、適当と認める方法でこれを行うことができる。

1項

裁判所は、第三百五十条の二十二の決定があつた事件について、次の各号いずれかに該当することとなつた場合には、当該決定を取り消さなければならない。

一 号

判決の言渡し前に、被告人 又は弁護人が即決裁判手続によることについての同意を撤回したとき。

二 号

判決の言渡し前に、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述を撤回したとき。

三 号

前二号に掲げるもののほか、当該事件が即決裁判手続によることができないものであると認めるとき。

四 号

当該事件が即決裁判手続によることが相当でないものであると認めるとき。

○2項

前項の規定により第三百五十条の二十二の決定が取り消されたときは、公判手続を更新しなければならない。


ただし、検察官 及び被告人 又は弁護人に異議がないときは、この限りでない。

1項

即決裁判手続の申立てを却下する決定(第三百五十条の二十二第三号 又は第四号に掲げる場合に該当することを理由とするものを除く)があつた事件について、当該決定後、証拠調べが行われることなく公訴が取り消された場合において、公訴の取消しによる公訴棄却の決定が確定したときは、第三百四十条の規定にかかわらず、同一事件について更に公訴を提起することができる。


前条第一項第一号第二号 又は第四号のいずれかに該当すること(同号については、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述と相反するか 又は実質的に異なつた供述をしたことにより同号に該当する場合に限る)となつたことを理由として第三百五十条の二十二の決定が取り消された事件について、当該取消しの決定後、証拠調べが行われることなく公訴が取り消された場合において、公訴の取消しによる公訴棄却の決定が確定したときも、同様とする。

第三節 証拠の特例

1項

第三百五十条の二十二の決定があつた事件の証拠については、第三百二十条第一項の規定は、これを適用しない


ただし、検察官、被告人 又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものについては、この限りでない。

第四節 公判の裁判の特例

1項

裁判所は、第三百五十条の二十二の決定があつた事件については、できる限り、即日判決の言渡しをしなければならない。

1項

即決裁判手続において懲役 又は禁錮の言渡しをする場合には、その刑の全部の執行猶予の言渡しをしなければならない。

第三編 上訴

第一章 通則

1項

検察官 又は被告人は、上訴をすることができる。

○2項

第二百六十六条第二号の規定により裁判所の審判に付された事件と他の事件とが併合して審判され、一個の裁判があつた場合には、第二百六十八条第二項の規定により検察官の職務を行う弁護士 及び当該 他の事件の検察官は、その裁判に対し各々独立して上訴をすることができる。

1項

検察官 又は被告人以外の者で決定を受けたものは、抗告をすることができる。

1項

被告人の法定代理人 又は保佐人は、被告人のため上訴をすることができる。

1項

勾留に対しては、勾留の理由の開示があつたときは、その開示の請求をした者も、被告人のため上訴をすることができる。


その上訴を棄却する決定に対しても、同様である。

1項

原審における代理人 又は弁護人は、被告人のため上訴をすることができる。

1項

前三条の上訴は、被告人の明示した意思に反してこれをすることができない

1項

上訴は、裁判の一部に対してこれをすることができる。


部分を限らないで上訴をしたときは、裁判の全部に対してしたものとみなす。

1項

上訴の提起期間は、裁判が告知された日から進行する。

1項

検察官、被告人 又は第三百五十二条に規定する者は、上訴の放棄 又は取下をすることができる。

1項

第三百五十三条 又は第三百五十四条に規定する者は、書面による被告人の同意を得て、上訴の放棄 又は取下をすることができる。

1項

死刑 又は無期の懲役 若しくは禁錮に処する判決に対する上訴は、前二条の規定にかかわらず、これを放棄することができない

1項

上訴放棄の申立は、書面でこれをしなければならない。

1項

上訴の放棄 又は取下をした者は、その事件について更に上訴をすることができない


上訴の放棄 又は取下に同意をした被告人も、同様である。

1項

第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己 又は代人の責に帰することができない事由によつて上訴の提起期間内に上訴をすることができなかつたときは、原裁判所に上訴権回復の請求をすることができる。

1項

上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。

○2項

上訴権回復の請求をする者は、その請求と同時に上訴の申立をしなければならない。

1項

上訴権回復の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

上訴権回復の請求があつたときは、原裁判所は、前条の決定をするまで裁判の執行を停止する決定をすることができる。


この場合には、被告人に対し勾留状を発することができる。

1項

刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長 又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上訴をしたものとみなす。

○2項

被告人が自ら申立書を作ることができないときは、刑事施設の長 又はその代理者は、これを代書し、又は所属の職員にこれをさせなければならない。

1項

前条の規定は、刑事施設にいる被告人が上訴の放棄 若しくは取下げ 又は上訴権回復の請求をする場合にこれを準用する。

第二章 控訴

1項

控訴は、地方裁判所 又は簡易裁判所がした第一審の判決に対してこれをすることができる。

1項

控訴の提起期間は、十四日とする。

1項

控訴をするには、申立書を第一審裁判所に差し出さなければならない。

1項

控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。


この決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

控訴申立人は、裁判所の規則で定める期間内に控訴趣意書を控訴裁判所に差し出さなければならない。

○2項

控訴趣意書には、この法律 又は裁判所の規則の定めるところにより、必要な疎明資料 又は検察官 若しくは弁護人の保証書を添附しなければならない。

1項

左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨の検察官 又は弁護人の保証書を添附しなければならない。

一 号

法律に従つて判決裁判所を構成しなかつたこと。

二 号

法令により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。

三 号

審判の公開に関する規定に違反したこと。

1項

左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録 及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつてその事由があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

一 号

不法に管轄 又は管轄違を認めたこと。

二 号

不法に、公訴を受理し、又はこれを棄却したこと。

三 号

審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。

四 号

判決に理由を附せず、又は理由にくいちがいがあること。

1項

前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録 及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

1項

法令の適用に誤があつてその誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その誤 及びその誤が明らかに判決に影響を及ぼすべきことを示さなければならない。

1項

刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録 及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて刑の量定が不当であることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

1項

事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録 及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき誤認があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

1項

やむを得ない事由によつて第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかつた証拠によつて証明することのできる事実であつて前二条に規定する控訴申立の理由があることを信ずるに足りるものは、訴訟記録 及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実以外の事実であつても、控訴趣意書にこれを援用することができる。

○2項

第一審の弁論終結後判決前に生じた事実であつて前二条に規定する控訴申立の理由があることを信ずるに足りるものについても、前項同様である。

○3項

前二項の場合には、控訴趣意書に、その事実を疎明する資料を添附しなければならない。


第一項の場合には、やむを得ない事由によつてその証拠の取調を請求することができなかつた旨を疎明する資料をも添附しなければならない。

1項

左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることを疎明する資料を添附しなければならない。

一 号

再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。

二 号

判決があつた後に刑の廃止 若しくは変更 又は大赦があつたこと。

1項

控訴の申立は、第三百七十七条乃至第三百八十二条 及び前条に規定する事由があることを理由とするときに限り、これをすることができる。

1項

控訴の申立が法令上の方式に違反し、又は控訴権の消滅後にされたものであることが明らかなときは、控訴裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。

○2項

前項の決定に対しては、第四百二十八条第二項の異議の申立をすることができる。


この場合には、即時抗告に関する規定をも準用する。

1項

左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。

一 号

第三百七十六条第一項に定める期間内に控訴趣意書を差し出さないとき。

二 号

控訴趣意書がこの法律 若しくは裁判所の規則で定める方式に違反しているとき、又は控訴趣意書にこの法律 若しくは裁判所の規則の定めるところに従い必要な疎明資料若しくは保証書を添附しないとき。

三 号

控訴趣意書に記載された控訴の申立の理由が、明らかに第三百七十七条乃至第三百八十二条 及び第三百八十三条に規定する事由に該当しないとき。

○2項

前条第二項の規定は、前項の決定についてこれを準用する。

1項

控訴審では、弁護士以外の者を弁護人に選任することはできない

1項

控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることができない

1項

公判期日には、検察官 及び弁護人は、控訴趣意書に基いて弁論をしなければならない。

1項

控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。


ただし、裁判所は、五十万円刑法暴力行為等処罰に関する法律 及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円以下の罰金 又は科料に当たる事件以外の事件について、被告人の出頭がその権利の保護のため重要であると認めるときは、被告人の出頭を命ずることができる。

1項

前条の規定にかかわらず、控訴裁判所は、拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴されている被告人であつて、保釈 又は勾留の執行停止をされているものについては、判決を宣告する公判期日への出頭を命じなければならない。


ただし、重い疾病 又は傷害 その他やむを得ない事由により被告人が当該公判期日に出頭することが困難であると認めるときは、この限りでない。

1項

弁護人が出頭しないとき、又は弁護人の選任がないときは、この法律により弁護人を要する場合 又は決定で弁護人を附した場合を除いては、検察官の陳述を聴いて判決をすることができる。

1項

控訴裁判所は、控訴趣意書に包含された事項は、これを調査しなければならない。

○2項

控訴裁判所は、控訴趣意書に包含されない事項であつても、第三百七十七条乃至第三百八十二条 及び第三百八十三条に規定する事由に関しては、職権で調査をすることができる。

1項

控訴裁判所は、前条の調査をするについて必要があるときは、検察官、被告人 若しくは弁護人の請求により又は職権で事実の取調をすることができる。


但し第三百八十二条の二の疎明があつたものについては、刑の量定の不当 又は判決に影響を及ぼすべき事実の誤認を証明するために欠くことのできない場合に限り、これを取り調べなければならない。

○2項

控訴裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状につき取調をすることができる。

○3項

前二項の取調は、合議体の構成員にこれをさせ、又は地方裁判所、家庭裁判所 若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。


この場合には、受命裁判官 及び受託裁判官は、裁判所 又は裁判長と同一の権限を有する。

○4項

第一項 又は第二項の規定による取調をしたときは、検察官 及び弁護人は、その結果に基いて弁論をすることができる。

1項

第一審において証拠とすることができた証拠は、控訴審においても、これを証拠とすることができる。

1項

控訴の申立が法令上の方式に違反し、又は控訴権の消滅後にされたものであるときは、判決で控訴を棄却しなければならない。

1項

第三百七十七条乃至第三百八十二条 及び第三百八十三条に規定する事由がないときは、判決で控訴を棄却しなければならない。

1項

第三百七十七条乃至第三百八十二条 及び第三百八十三条に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。

○2項

第三百九十三条第二項の規定による取調の結果、原判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。

1項

不法に、管轄違を言い渡し、又は公訴を棄却したことを理由として原判決を破棄するときは、判決で事件を原裁判所に差し戻さなければならない。

1項

不法に管轄を認めたことを理由として原判決を破棄するときは、判決で事件を管轄第一審裁判所に移送しなければならない。


但し、控訴裁判所は、その事件について第一審の管轄権を有するときは、第一審として審判をしなければならない。

1項

前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の裁判所に移送しなければならない。


但し、控訴裁判所は、訴訟記録 並びに原裁判所 及び控訴裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。

1項

被告人の利益のため原判決を破棄する場合において、破棄の理由が控訴をした共同被告人に共通であるときは、その共同被告人のためにも原判決を破棄しなければならない。

1項

被告人が控訴をし、又は被告人のため控訴をした事件については、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない

1項

控訴裁判所は、拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴されている被告人であつて、保釈 又は勾留の執行停止をされているものが判決を宣告する公判期日に出頭しないときは、次に掲げる判決以外の判決を宣告することができない


ただし第三百九十条の二ただし書に規定する場合であつて、刑の執行のため その者を収容するのに困難を生ずるおそれがないと認めるときは、この限りでない。

一 号
無罪、免訴、刑の免除、公訴棄却 又は管轄違いの言渡しをした原判決に対する控訴を棄却する判決
二 号
事件を原裁判所に差し戻し、又は管轄裁判所に移送する判決
三 号
無罪、免訴、刑の免除 又は公訴棄却の言渡しをする判決
2項

拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴されている被告人であつて、保釈 又は勾留の執行停止を取り消されたものが勾留されていないときも、前項本文と同様とする。


ただし、被告人が逃亡していることにより勾留することが困難であると見込まれる場合において、次に掲げる判決について、速やかに宣告する必要があると認めるときは、この限りでない。

一 号

公職選挙法昭和二十五年法律第百号第二百五十三条の二第一項に規定する刑事事件について、有罪の言渡し(刑の免除の言渡しを除く。以下 この号において同じ。)をする判決 又は有罪の言渡しをした原判決に対する控訴を棄却する判決

二 号

組織的犯罪処罰法第十三条第三項の規定による犯罪被害財産の没収 若しくは組織的犯罪処罰法第十六条第二項の規定による犯罪被害財産の価額の追徴の言渡しをする判決 又はこれらの言渡しをした原判決に対する控訴を棄却する判決

1項

原裁判所が不法に公訴棄却の決定をしなかつたときは、決定で公訴を棄却しなければならない。

○2項

第三百八十五条第二項の規定は、前項の決定についてこれを準用する。

1項

即決裁判手続においてされた判決に対する控訴の申立ては、第三百八十四条の規定にかかわらず、当該判決の言渡しにおいて示された罪となるべき事実について第三百八十二条に規定する事由があることを理由としては、これをすることができない

○2項

原裁判所が即決裁判手続によつて判決をした事件については、第三百九十七条第一項の規定にかかわらず、控訴裁判所は、当該判決の言渡しにおいて示された罪となるべき事実について第三百八十二条に規定する事由があることを理由としては、原判決を破棄することができない

1項

第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。

第三章 上告

1項

高等裁判所がした第一審 又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。

一 号

憲法の違反があること 又は憲法の解釈に誤があること。

二 号

最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。

三 号

最高裁判所の判例がない場合に、大審院 若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例 又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。

1項

最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であつても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、その判決確定前に限り、裁判所の規則の定めるところにより、自ら上告審としてその事件を受理することができる。

1項

上告趣意書には、裁判所の規則の定めるところにより、上告の申立の理由を明示しなければならない。

1項

上告裁判所は、上告趣意書 その他の書類によつて、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判決で上告を棄却することができる。

1項

上告審においては、公判期日に被告人を召喚することを要しない。

1項

上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。


但し、判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合は、この限りでない。

○2項

第四百五条第二号 又は第三号に規定する事由のみがある場合において、上告裁判所がその判例を変更して原判決を維持するのを相当とするときは、前項の規定は、これを適用しない

1項

上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。

一 号

判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。

二 号

刑の量定が甚しく不当であること。

三 号

判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。

四 号

再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。

五 号

判決があつた後に刑の廃止 若しくは変更 又は大赦があつたこと。

1項

不法に管轄を認めたことを理由として原判決を破棄するときは、判決で事件を管轄控訴裁判所 又は管轄第一審裁判所に移送しなければならない。

1項

前条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所 若しくは第一審裁判所に差し戻し、又はこれらと同等の他の裁判所に移送しなければならない。


但し、上告裁判所は、訴訟記録 並びに原裁判所 及び第一審裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。

1項

第一審裁判所が即決裁判手続によつて判決をした事件については、第四百十一条の規定にかかわらず、上告裁判所は、当該判決の言渡しにおいて示された罪となるべき事実について同条第三号に規定する事由があることを理由としては、原判決を破棄することができない

1項

前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。

1項

上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人 又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正することができる。

○2項

前項の申立は、判決の宣告があつた日から十日以内にこれをしなければならない。

○3項

上告裁判所は、適当と認めるときは、第一項に規定する者の申立により、前項の期間を延長することができる。

1項

訂正の判決は、弁論を経ないでもこれをすることができる。

1項

上告裁判所は、訂正の判決をしないときは、速やかに決定で申立を棄却しなければならない。

○2項

訂正の判決に対しては、第四百十五条第一項の申立をすることはできない

1項

上告裁判所の判決は、宣告があつた日から第四百十五条の期間を経過したとき、又はその期間内に同条第一項の申立があつた場合には訂正の判決 若しくは申立を棄却する決定があつたときに、確定する。

第四章 抗告

1項

抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外、裁判所のした決定に対してこれをすることができる。


但し、この法律に特別の定のある場合は、この限りでない。

1項

裁判所の管轄 又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、この法律に特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合を除いては、抗告をすることはできない

○2項

前項の規定は、勾留、保釈、押収 又は押収物の還付に関する決定 及び鑑定のためにする留置に関する決定については、これを適用しない

○3項

勾留に対しては、前項の規定にかかわらず、犯罪の嫌疑がないことを理由として抗告をすることはできない

1項

抗告は、即時抗告を除いては、何時でも これをすることができる。


但し、原決定を取り消しても実益がないようになつたときは、この限りでない。

1項

即時抗告の提起期間は、三日とする。

1項

抗告をするには、申立書を原裁判所に差し出さなければならない。

○2項

原裁判所は、抗告を理由があるものと認めるときは、決定を更正しなければならない。


抗告の全部 又は一部を理由がないと認めるときは、申立書を受け取つた日から三日以内に意見書を添えて、これを抗告裁判所に送付しなければならない。

1項

抗告は、即時抗告を除いては、裁判の執行を停止する効力を有しない。


但し、原裁判所は、決定で、抗告の裁判があるまで執行を停止することができる。

○2項

抗告裁判所は、決定で裁判の執行を停止することができる。

1項

即時抗告の提起期間内 及びその申立があつたときは、裁判の執行は、停止される

1項

抗告の手続がその規定に違反したとき、又は抗告が理由のないときは、決定で抗告を棄却しなければならない。

○2項

抗告が理由のあるときは、決定で原決定を取り消し、必要がある場合には、更に裁判をしなければならない。

1項

抗告裁判所の決定に対しては、抗告をすることはできない

1項

高等裁判所の決定に対しては、抗告をすることはできない

○2項

即時抗告をすることができる旨の規定がある決定 並びに第四百十九条 及び第四百二十条の規定により抗告をすることができる決定で高等裁判所がしたものに対しては、その高等裁判所に異議の申立をすることができる。

○3項

前項の異議の申立に関しては、抗告に関する規定を準用する。


即時抗告をすることができる旨の規定がある決定に対する異議の申立に関しては、即時抗告に関する規定をも準用する。

1項

裁判官が 次に掲げる裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消し 又は変更を請求することができる。

一 号
忌避の申立てを却下する裁判
二 号

勾留、保釈、押収 又は押収物の還付に関する裁判

三 号
鑑定のため留置を命ずる裁判
四 号

証人、鑑定人、通訳人 又は翻訳人に対して過料 又は費用の賠償を命ずる裁判

五 号

身体の検査を受ける者に対して過料 又は費用の賠償を命ずる裁判

○2項

第四百二十条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

○3項

第二百七条の二第二項第二百二十四条第三項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による措置に関する裁判に対しては、当該措置に係る者が第二百一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者に該当しないことを理由として第一項請求をすることができない

○4項

第一項の請求を受けた地方裁判所 又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。

○5項

第一項第四号 又は第五号の裁判の取消し 又は変更の請求は、その裁判のあつた日から三日以内にしなければならない。

6項

前項の請求期間内 及びその請求があつたときは、裁判の執行は、停止される。

1項

検察官 又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分 又は押収 若しくは押収物の還付に関する処分に不服がある者は、その検察官 又は検察事務官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消 又は変更を請求することができる。

○2項

司法警察職員のした前項の処分に不服がある者は、司法警察職員の職務執行地を管轄する地方裁判所 又は簡易裁判所にその処分の取消 又は変更を請求することができる。

○3項

前二項の請求については、行政事件訴訟に関する法令の規定は、これを適用しない

1項

前二条の請求をするには、請求書を管轄裁判所に差し出さなければならない。

1項

第四百二十四条第四百二十六条 及び第四百二十七条の規定は、第四百二十九条 及び第四百三十条の請求があつた場合にこれを準用する。

1項

この法律により不服を申し立てることができない決定 又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。

○2項

前項の抗告の提起期間は、五日とする。

1項

第四百二十三条第四百二十四条 及び第四百二十六条の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、前条第一項の抗告についてこれを準用する。

第四編 再審

1項

再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。

一 号

原判決の証拠となつた証拠書類 又は証拠物が確定判決により偽造 又は変造であつたことが証明されたとき。

二 号

原判決の証拠となつた証言、鑑定、通訳 又は翻訳が確定判決により虚偽であつたことが証明されたとき。

三 号

有罪の言渡を受けた者を誣告した罪が確定判決により証明されたとき。


但し、誣告により有罪の言渡を受けたときに限る

四 号

原判決の証拠となつた裁判が確定裁判により変更されたとき。

五 号

特許権、実用新案権、意匠権 又は商標権を害した罪により有罪の言渡をした事件について、その権利の無効の審決が確定したとき、又は無効の判決があつたとき。

六 号

有罪の言渡を受けた者に対して無罪 若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。

七 号

原判決に関与した裁判官、原判決の証拠となつた証拠書類の作成に関与した裁判官 又は原判決の証拠となつた書面を作成し若しくは供述をした検察官、検察事務官 若しくは司法警察職員が被告事件について職務に関する罪を犯したこと 確定判決により証明されたとき。


但し、原判決をする前に裁判官、検察官、検察事務官 又は司法警察職員に対して公訴の提起があつた場合には、原判決をした裁判所がその事実を知らなかつたときに限る

1項

再審の請求は、左の場合において、控訴 又は上告を棄却した確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。

一 号

前条第一号 又は第二号に規定する事由があるとき。

二 号

原判決 又はその証拠となつた証拠書類の作成に関与した裁判官について前条第七号に規定する事由があるとき。

○2項

第一審の確定判決に対して再審の請求をした事件について再審の判決があつた後は、控訴棄却の判決に対しては、再審の請求をすることはできない

○3項

第一審 又は第二審の確定判決に対して再審の請求をした事件について再審の判決があつた後は、上告棄却の判決に対しては、再審の請求をすることはできない

1項

前二条の規定に従い、確定判決により犯罪が証明されたことを再審の請求の理由とすべき場合において、その確定判決を得ることができないときは、その事実を証明して再審の請求をすることができる。


但し、証拠がないという理由によつて確定判決を得ることができないときは、この限りでない。

1項

再審の請求は、原判決をした裁判所がこれを管轄する。

1項

再審の請求は、左の者がこれをすることができる。

一 号
検察官
二 号
有罪の言渡を受けた者
三 号

有罪の言渡を受けた者の法定代理人 及び保佐人

四 号

有罪の言渡を受けた者が死亡し、又は心神喪失の状態に在る場合には、その配偶者、直系の親族 及び兄弟姉妹

○2項

第四百三十五条第七号 又は第四百三十六条第一項第二号に規定する事由による再審の請求は、有罪の言渡を受けた者がその罪を犯させた場合には、検察官でなければこれをすることができない

1項

検察官以外の者は、再審の請求をする場合には、弁護人を選任することができる。

○2項

前項の規定による弁護人の選任は、再審の判決があるまでその効力を有する。

1項

再審の請求は、刑の執行が終り、又はその執行を受けることがないようになつたときでも、これをすることができる。

1項

再審の請求は、刑の執行を停止する効力を有しない。


但し、管轄裁判所に対応する検察庁の検察官は、再審の請求についての裁判があるまで刑の執行を停止することができる。

1項

再審の請求は、これを取り下げることができる。

○2項

再審の請求を取り下げた者は、同一の理由によつては、更に再審の請求をすることができない

1項

第三百六十六条の規定は、再審の請求 及びその取下についてこれを準用する。

1項

再審の請求を受けた裁判所は、必要があるときは、合議体の構成員に再審の請求の理由について、事実の取調をさせ、又は地方裁判所、家庭裁判所 若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。


この場合には、受命裁判官 及び受託裁判官は、裁判所 又は裁判長と同一の権限を有する。

1項

再審の請求が法令上の方式に違反し、又は請求権の消滅後にされたものであるときは、決定でこれを棄却しなければならない。

1項

再審の請求が理由のないときは、決定でこれを棄却しなければならない。

○2項

前項の決定があつたときは、何人も、同一の理由によつては、更に再審の請求をすることはできない

1項

再審の請求が理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない。

○2項

再審開始の決定をしたときは、決定で刑の執行を停止することができる。

1項

控訴を棄却した確定判決と その判決によつて確定した第一審の判決とに対して再審の請求があつた場合において、第一審裁判所が再審の判決をしたときは、控訴裁判所は、決定で再審の請求を棄却しなければならない。

○2項

第一審 又は第二審の判決に対する上告を棄却した判決と その判決によつて確定した第一審 又は第二審の判決とに対して再審の請求があつた場合において、第一審裁判所 又は控訴裁判所が再審の判決をしたときは、上告裁判所は、決定で再審の請求を棄却しなければならない。

1項

第四百四十六条第四百四十七条第一項第四百四十八条第一項 又は前条第一項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

裁判所は、再審開始の決定が確定した事件については、第四百四十九条の場合を除いては、その審級に従い、更に審判をしなければならない。

○2項

左の場合には、第三百十四条第一項本文 及び第三百三十九条第一項第四号の規定は、前項の審判にこれを適用しない。

一 号

死亡者 又は回復の見込がない心神喪失者のために再審の請求がされたとき。

二 号

有罪の言渡を受けた者が、再審の判決がある前に、死亡し、又は心神喪失の状態に陥りその回復の見込がないとき。

○3項

前項の場合には、被告人の出頭がなくても、審判をすることができる。


但し、弁護人が出頭しなければ開廷することはできない

○4項

第二項の場合において、再審の請求をした者が弁護人を選任しないときは、裁判長は、職権で弁護人を附しなければならない。

1項

再審においては、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。

1項

再審において無罪の言渡をしたときは、官報 及び新聞紙に掲載して、その判決を公示しなければならない。

第五編 非常上告

1項

検事総長は、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる。

1項

非常上告をするには、その理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出さなければならない。

1項

公判期日には、検察官は、申立書に基いて陳述をしなければならない。

1項

非常上告が理由のないときは、判決でこれを棄却しなければならない。

1項

非常上告が理由のあるときは、左の区別に従い、判決をしなければならない。

一 号

原判決が法令に違反したときは、その違反した部分を破棄する。


但し、原判決が被告人のため不利益であるときは、これを破棄して、被告事件について更に判決をする。

二 号

訴訟手続が法令に違反したときは、その違反した手続を破棄する。

1項

非常上告の判決は、前条第一号但書の規定によりされたものを除いては、その効力を被告人に及ぼさない。

1項

裁判所は、申立書に包含された事項に限り、調査をしなければならない。

○2項

裁判所は、裁判所の管轄、公訴の受理 及び訴訟手続に関しては、事実の取調をすることができる。


この場合には、第三百九十三条第三項の規定を準用する。

第六編 略式手続

1項

簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、百万円以下の罰金 又は科料を科することができる。


この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。

1項

検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確めなければならない。

○2項

被疑者は、略式手続によることについて異議がないときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。

1項

略式命令の請求は、公訴の提起と同時に、書面でこれをしなければならない。

○2項

前項の書面には、前条第二項の書面を添附しなければならない。

1項

検察官は、略式命令の請求をする場合において、その事件について被告人との間でした第三百五十条の二第一項の合意があるときは、当該請求と同時に、合意内容書面を裁判所に差し出さなければならない。

○2項

前項の規定により合意内容書面を裁判所に差し出した後、裁判所が略式命令をする前に、当該合意の当事者が第三百五十条の十第二項の規定により当該合意から離脱する旨の告知をしたときは、検察官は、遅滞なく、同項の書面をその裁判所に差し出さなければならない。

1項

第四百六十二条の請求があつた場合において、その事件が略式命令をすることができないものであり、又はこれをすることが相当でないものであると思料するときは、通常の規定に従い、審判をしなければならない。

○2項

検察官が、第四百六十一条の二に定める手続をせず、又は第四百六十二条第二項に違反して略式命令を請求したときも、前項と同様である。

○3項

裁判所は、前二項の規定により通常の規定に従い審判をするときは、直ちに検察官にその旨を通知しなければならない。

○4項

検察官は、前項の規定による通知を受けたときは、速やかに、裁判所に対し、被告人に送達するものとして、起訴状の謄本を提出しなければならない。

5項

第一項 及び第二項の場合には、第二百七十一条 及び第二百七十一条の二の規定の適用があるものとする。


この場合において、

第二百七十一条第一項
公訴の提起」とあるのは
第四百六十三条第四項の規定による起訴状の謄本の提出」と、

同条第二項
公訴の提起が」とあるのは
第四百六十三条第三項の規定による通知が」と、

第二百七十一条の二第二項
公訴の提起において、裁判所に対し、起訴状とともに」とあるのは
第四百六十三条第三項の規定による通知を受けた後速やかに、裁判所に対し」と

する。

6項

前項において 読み替えて適用する第二百七十一条の二第二項の規定による起訴状抄本等の提出は、第三百三十八条第四号に係る部分に限る)の規定の適用については、公訴の提起においてされたものとみなす。

1項

前条の場合を除いて、略式命令の請求があつた日から四箇月以内に略式命令が被告人に告知されないときは、公訴の提起は、さかのぼつてその効力を失う。

○2項

前項の場合には、裁判所は、決定で、公訴を棄却しなければならない。


略式命令が既に検察官に告知されているときは、略式命令を取り消した上、その決定をしなければならない。

○3項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

略式命令には、罪となるべき事実、適用した法令、科すべき刑 及び附随の処分 並びに略式命令の告知があつた日から十四日以内に正式裁判の請求をすることができる旨を示さなければならない。

1項

略式命令を受けた者 又は検察官は、その告知を受けた日から十四日以内に正式裁判の請求をすることができる。

○2項

正式裁判の請求は、略式命令をした裁判所に、書面でこれをしなければならない。


正式裁判の請求があつたときは、裁判所は、速やかにその旨を検察官 又は略式命令を受けた者に通知しなければならない。

1項

正式裁判の請求は、第一審の判決があるまでこれを取り下げることができる。

1項

第三百五十三条第三百五十五条乃至第三百五十七条第三百五十九条第三百六十条 及び第三百六十一条乃至第三百六十五条の規定は、正式裁判の請求 又はその取下についてこれを準用する。

1項

正式裁判の請求が法令上の方式に違反し、又は請求権の消滅後にされたものであるときは、決定でこれを棄却しなければならない。


この決定に対しては、即時抗告をすることができる。

○2項

正式裁判の請求を適法とするときは、通常の規定に従い、審判をしなければならない。

○3項

前項の場合においては、略式命令に拘束されない。

4項

検察官は、第二項の規定により通常の規定に従い審判をすることとされた場合において、起訴状に記載された第二百七十一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者の個人特定事項について、必要と認めるときは、裁判所に対し、当該個人特定事項が被告人に知られないようにするための措置をとることを求めることができる。

5項

前項の規定による求めは、第二百七十一条の二第一項の規定による求めとみなして、同条第二項の規定を適用する。


この場合において、

同項
公訴の提起において、裁判所に対し、起訴状とともに」とあるのは、
「速やかに、裁判所に対し」と

する。

6項

第四百六十三条第六項の規定は、前項において読み替えて適用する第二百七十一条の二第二項の規定による起訴状抄本等の提出について準用する。

1項

正式裁判の請求により判決をしたときは、略式命令は、その効力を失う。

1項

略式命令は、正式裁判の請求期間の経過 又はその請求の取下により、確定判決と同一の効力を生ずる。


正式裁判の請求を棄却する裁判が確定したときも、同様である。

第七編 裁判の執行

第一章 裁判の執行の手続

1項

裁判は、この法律に特別の定のある場合を除いては、確定した後これを執行する。

1項

裁判の執行は、その裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを指揮する。


但し第七十条第一項但書の場合、第百八条第一項但書の場合 その他その性質上 裁判所 又は裁判官が指揮すべき場合は、この限りでない。

○2項

上訴の裁判 又は上訴の取下により下級の裁判所の裁判を執行する場合には、上訴裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを指揮する。


但し、訴訟記録が下級の裁判所 又はその裁判所に対応する検察庁に在るときは、その裁判所に対応する検察庁の検察官が、これを指揮する。

1項

裁判の執行の指揮は、書面でこれをし、これに裁判書 又は裁判を記載した調書の謄本 又は抄本を添えなければならない。


但し、刑の執行を指揮する場合を除いては、裁判書の原本、謄本 若しくは抄本 又は裁判を記載した調書の謄本 若しくは抄本に認印して、これをすることができる。

1項

二以上の主刑の執行は、罰金 及び科料を除いては、その重いものを先にする。


但し、検察官は、重い刑の執行を停止して、他の刑の執行をさせることができる。

1項
死刑の執行は、法務大臣の命令による。
○2項

前項の命令は、判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。


但し、上訴権回復 若しくは再審の請求、非常上告 又は恩赦の出願 若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間 及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。

1項

法務大臣が死刑の執行を命じたときは、五日以内にその執行をしなければならない。

1項

死刑は、検察官、検察事務官 及び刑事施設の長 又はその代理者の立会いの上、これを執行しなければならない。

○2項

検察官 又は刑事施設の長の許可を受けた者でなければ、刑場に入ることはできない

1項

死刑の執行に立ち会つた検察事務官は、執行始末書を作り、検察官 及び刑事施設の長 又はその代理者とともに、これに署名押印しなければならない。

1項

死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によつて執行を停止する。

○2項

死刑の言渡を受けた女子が懐胎しているときは、法務大臣の命令によつて執行を停止する。

○3項

前二項の規定により死刑の執行を停止した場合には、心神喪失の状態が回復した後 又は出産の後に法務大臣の命令がなければ、執行することはできない

○4項

第四百七十五条第二項の規定は、前項の命令についてこれを準用する。


この場合において、判決確定の日とあるのは、心神喪失の状態が回復した日 又は出産の日と読み替えるものとする。

1項

懲役、禁錮 又は拘留の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁の検察官 又は刑の言渡を受けた者の現在地を管轄する地方検察庁の検察官の指揮によつて、その状態が回復するまで執行を停止する。

1項

前条の規定により刑の執行を停止した場合には、検察官は、刑の言渡を受けた者を監護義務者 又は地方公共団体の長に引き渡し、病院 その他の適当な場所に入れさせなければならない。

○2項

刑の執行を停止された者は、前項の処分があるまでこれを刑事施設に留置し、その期間を刑期に算入する。

1項

懲役、禁錮 又は拘留の言渡を受けた者について左の事由があるときは、刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁の検察官 又は刑の言渡を受けた者の現在地を管轄する地方検察庁の検察官の指揮によつて執行を停止することができる。

一 号

刑の執行によつて、著しく健康を害するとき、又は生命を保つことのできない虞があるとき。

二 号

年齢七十年以上であるとき。

三 号

受胎後百五十日以上であるとき。

四 号

出産後六十日を経過しないとき

五 号

刑の執行によつて回復することのできない不利益を生ずる虞があるとき。

六 号

祖父母 又は父母が年齢七十年以上 又は重病 若しくは不具で、他にこれを保護する親族がないとき。

七 号

子 又は孫が幼年で、他にこれを保護する親族がないとき。

八 号

その他重大な事由があるとき。

1項

第五百条に規定する申立の期間内 及びその申立があつたときは、訴訟費用の負担を命ずる裁判の執行は、その申立についての裁判が確定するまで停止される。

1項

死刑、懲役、禁錮 又は拘留の言渡しを受けた者が拘禁されていないときは、検察官は、執行のためこれを呼び出さなければならない。


呼出しに応じないときは、収容状を発しなければならない。

1項

前条前段の規定による呼出しを受けた者が、正当な理由がなく、指定された日時 及び場所に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。

1項

死刑、懲役、禁錮 又は拘留の言渡しを受けた者が逃亡したとき、又は逃亡するおそれがあるときは、検察官は、直ちに収容状を発し、又は司法警察員にこれを発せしめることができる。

1項

死刑、懲役、禁錮 又は拘留の言渡しを受けた者の現在地が分からないときは、検察官は、検事長にその者の刑事施設への収容を請求することができる。

○2項

請求を受けた検事長は、その管内の検察官に収容状を発せしめなければならない。

1項

収容状には、刑の言渡しを受けた者の氏名、住居、年齢、刑名、刑期 その他収容に必要な事項を記載し、検察官 又は司法警察員が、これに記名押印しなければならない。

1項

収容状は、勾引状と同一の効力を有する。

1項

収容状の執行については、勾引状の執行に関する規定を準用する。

1項

罰金、科料、没収、追徴、過料、没取、訴訟費用、費用賠償 又は仮納付の裁判は、検察官の命令によつてこれを執行する。


この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。

○2項

前項の裁判の執行は、民事執行法昭和五十四年法律第四号)その他強制執行の手続に関する法令の規定に従つてする。


ただし、執行前に裁判の送達をすることを要しない。

1項

没収 又は租税 その他の公課 若しくは専売に関する法令の規定により言い渡した罰金 若しくは追徴は、刑の言渡を受けた者が判決の確定した後死亡した場合には、相続財産についてこれを執行することができる。

1項

法人に対して罰金、科料、没収 又は追徴を言い渡した場合に、その法人が判決の確定した後合併によつて消滅したときは、合併の後存続する法人 又は合併によつて設立された法人に対して執行することができる。

1項

第一審と第二審とにおいて、仮納付の裁判があつた場合に、第一審の仮納付の裁判について既に執行があつたときは、その執行は、これを第二審の仮納付の裁判で納付を命ぜられた金額の限度において、第二審の仮納付の裁判についての執行とみなす。

○2項

前項の場合において、第一審の仮納付の裁判の執行によつて得た金額が第二審の仮納付の裁判で納付を命ぜられた金額を超えるときは、その超過額は、これを還付しなければならない。

1項

仮納付の裁判の執行があつた後に、罰金、科料 又は追徴の裁判が確定したときは、その金額の限度において刑の執行があつたものとみなす。

○2項

前項の場合において、仮納付の裁判の執行によつて得た金額が罰金、科料 又は追徴の金額を超えるときは、その超過額は、これを還付しなければならない。

1項

上訴の提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き、全部これを本刑に通算する。

○2項

上訴申立後の未決勾留の日数は、左の場合には、全部これを本刑に通算する。

一 号

検察官が上訴を申し立てたとき。

二 号

検察官以外の者が上訴を申し立てた場合においてその上訴審において原判決が破棄されたとき。

○3項

前二項の規定による通算については、未決勾留の一日を刑期の一日 又は金額の四千円に折算する。

○4項

上訴裁判所が原判決を破棄した後の未決勾留は、上訴中の未決勾留日数に準じて、これを通算する。

1項

没収物は、検察官がこれを処分しなければならない。

1項

没収を執行した後 三箇月以内に、権利を有する者が没収物の交付を請求したときは、検察官は、破壊し、又は廃棄すべき物を除いては、これを交付しなければならない。

○2項

没収物を処分した後 前項の請求があつた場合には、検察官は、公売によつて得た代価を交付しなければならない。

1項

偽造し、又は変造された物を返還する場合には、偽造 又は変造の部分をその物に表示しなければならない。

○2項

偽造し、又は変造された物が押収されていないときは、これを提出させて、前項に規定する手続をしなければならない。


但し、その物が公務所に属するときは、偽造 又は変造の部分を公務所に通知して相当な処分をさせなければならない。

1項

不正に作られた電磁的記録 又は没収された電磁的記録に係る記録媒体を返還し、又は交付する場合には、当該電磁的記録を消去し、又は当該電磁的記録が不正に利用されないようにする処分をしなければならない。

○2項

不正に作られた電磁的記録に係る記録媒体が公務所に属する場合において、当該電磁的記録に係る記録媒体が押収されていないときは、不正に作られた部分を公務所に通知して相当な処分をさせなければならない。

1項

押収物の還付を受けるべき者の所在が判らないため、又はその他の事由によつて、その物を還付することができない場合には、検察官は、その旨を政令で定める方法によつて公告しなければならない。

○2項

第二百二十二条第一項において準用する第百二十三条第一項 若しくは第百二十四条第一項の規定 又は第二百二十条第二項の規定により押収物を還付しようとするときも、前項と同様とする。


この場合において、

同項中
検察官」とあるのは、
「検察官 又は司法警察員」と

する。

○3項

前二項の規定による公告をした日から六箇月以内に還付の請求がないときは、その物は、国庫に帰属する。

○4項

前項の期間内でも、価値のない物は、これを廃棄し、保管に不便な物は、これを公売してその代価を保管することができる。

1項

前条第一項の規定は第百二十三条第三項の規定による交付 又は複写について、前条第二項の規定は第二百二十条第二項 及び第二百二十二条第一項において準用する第百二十三条第三項の規定による交付 又は複写について、それぞれ準用する。

○2項

前項において準用する前条第一項 又は第二項の規定による公告をした日から六箇月以内前項の交付 又は複写の請求がないときは、その交付をし、又は複写をさせることを要しない。

1項

訴訟費用の負担を命ぜられた者は、貧困のためこれを完納することができないときは、裁判所の規則の定めるところにより、訴訟費用の全部 又は一部について、その裁判の執行の免除の申立をすることができる。

○2項

前項の申立は、訴訟費用の負担を命ずる裁判が確定した後 二十日以内に これをしなければならない。

1項
被告人 又は被疑者は、検察官に訴訟費用の概算額の予納をすることができる。
1項

検察官は、訴訟費用の裁判を執行する場合において、前条の規定による予納がされた金額があるときは、その予納がされた金額から当該訴訟費用の額に相当する金額を控除し、当該金額を当該訴訟費用の納付に充てる。

○2項

前項の規定により予納がされた金額から訴訟費用の額に相当する金額を控除して残余があるときは、その残余の額は、その予納をした者の請求により返還する。

1項

次の各号いずれかに該当する場合には、第五百条の二の規定による予納がされた金額は、その予納をした者の請求により返還する。

一 号

第三十八条の二の規定により弁護人の選任が効力を失つたとき。

二 号

訴訟手続が終了する場合において、被告人に訴訟費用の負担を命ずる裁判がなされなかつたとき

三 号

訴訟費用の負担を命ぜられた者が、訴訟費用の全部について、その裁判の執行の免除を受けたとき。

1項

刑の言渡を受けた者は、裁判の解釈について疑があるときは、言渡をした裁判所に裁判の解釈を求める申立をすることができる。

1項

裁判の執行を受ける者 又はその法定代理人 若しくは保佐人は、執行に関し検察官のした処分(次章の規定によるものを除く)を不当とするときは、言渡しをした裁判所に異議の申立てをすることができる。

1項

第五百条 及び前二条の申立ては、決定があるまでこれを取り下げることができる。

○2項

第三百六十六条の規定は、第五百条 及び前二条の申立て 及びその取下げについてこれを準用する。

1項

第五百条第五百一条 及び 第五百二条の申立てについてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

罰金 又は科料を完納することができない場合における労役場留置の執行については、刑の執行に関する規定を準用する。

1項

第四百九十条第一項の裁判の執行の費用は、執行を受ける者の負担とし、民事執行法 その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、執行と同時にこれを取り立てなければならない。

第二章 裁判の執行に関する調査

1項
検察官 及び検察事務官は、裁判の執行に関する調査のため必要があるときは、管轄区域外で職務を行うことができる。
1項

検察官 又は裁判所 若しくは裁判官は、裁判の執行に関して、その目的を達するため必要な調査をすることができる。


ただし、強制の処分は、この法律に特別の定めがある場合でなければ、これをすることができない。

2項
検察官 又は裁判所 若しくは裁判官は、裁判の執行に関しては、公務所 又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
1項

検察官は、裁判の執行に関して必要があると認めるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索 又は検証をすることができる。


この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。

2項

差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成 若しくは変更をした電磁的記録 又は当該電子計算機で変更 若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機 又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機 又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。

3項

第一項の令状は、検察官の請求により、これを発する。

4項

検察官は、第一項の身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由 及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態 その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。

5項
裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を付することができる。
1項

前条第一項の令状には、裁判の執行を受ける者の氏名、差し押さえるべき物、記録させ 若しくは印刷させるべき電磁的記録 及びこれを記録させ 若しくは印刷させるべき者、捜索すべき場所、身体 若しくは物、検証すべき場所 若しくは物 又は検査すべき身体 及び身体の検査に関する条件、有効期間 及びその期間経過後は差押え、記録命令付差押え、捜索 又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨 並びに発付の年月日 その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。

2項

前条第二項の場合には、同条第一項の令状に、前項に規定する事項のほか、差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。

3項

第六十四条第二項の規定は、前条第一項の令状について準用する。


この場合において、

第六十四条第二項
被告人の」とあるのは
「裁判の執行を受ける者の」と、

被告人を」とあるのは
「その者を」と

読み替えるものとする。

1項

裁判所 又は裁判官は、裁判の執行に関して必要があると認めるときは、令状を発して、差押え、記録命令付差押え、捜索 又は検証をすることができる。


この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。

2項

差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成 若しくは変更をした電磁的記録 又は当該電子計算機で変更 若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機 又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機 又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。

3項

前条の規定は、第一項の令状について準用する。


この場合において、

同条第一項
裁判官」とあるのは
「裁判長 又は裁判官」と、

同条第二項
前条第二項」とあるのは
次条第二項」と

読み替えるものとする。

1項

検察官 又は裁判所 若しくは裁判官は、裁判の執行を受ける者 その他の者が遺留した物 又は所有者、所持者 若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。

1項

第九十九条第一項第百条第百二条から第百五条まで第百十条第百十条の二前段、第百十一条第一項前段 及び第二項第百十一条の二前段、第百十二条第百十四条第百十五条第百十八条から第百二十条まで第百二十一条第一項 及び第二項第百二十三条第一項から第三項まで 並びに第二百二十二条第六項の規定は、検察官が第五百九条 及び前条の規定によつてする押収 又は捜索について、第百十条第百十一条の二前段、第百十二条第百十四条第百十八条第百二十九条第百三十一条第百三十七条から第百四十条まで 及び第二百二十二条第四項から第七項までの規定は、検察官が第五百九条の規定によつてする検証について、それぞれ準用する。


この場合において、

第九十九条第一項
証拠物 又は没収すべき物」とあり、
及び第百十九条
証拠物 又は没収すべきもの」とあるのは
「裁判の執行を受ける者 若しくは裁判の執行の対象となるものの所在 若しくは状況に関する資料、裁判の執行を受ける者の資産に関する資料、裁判の執行の対象となるもの 若しくは裁判の執行を受ける者の財産を管理するために使用されている物 又は第四百九十条第二項の規定によりその規定に従うこととされる民事執行法 その他強制執行の手続に関する法令の規定により金銭の支払を目的とする債権についての強制執行の目的となる物 若しくはそれ以外の物であつて当該強制執行の手続において 執行官による取上げの対象となるべきもの」と、

第百条第一項第百二条第百五条ただし書 及び第百三十七条第一項
被告人」とあり、
並びに第二百二十二条第六項
被疑者」とあるのは
「裁判の執行を受ける者」と、

第百条第二項 並びに第百二十三条第一項 及び第三項
被告事件」とあり、
並びに第百条第三項ただし書中
審理」とあるのは
「裁判の執行」と、

第二百二十二条第七項
第一項」とあるのは
第五百十三条第一項において読み替えて準用する第百三十七条第一項」と

読み替えるものとする。

2項

第百十六条 及び第百十七条の規定は、検察官が第五百九条の規定によつてする差押え、記録命令付差押え 又は捜索について準用する。

3項

検察官は、第四百九十条第二項の規定によりその規定に従うこととされる民事執行法 その他強制執行の手続に関する法令の規定による手続において必要があると認めるときは、執行官に押収物を提出することができる。

4項

前項の規定による提出をしたときは、押収を解く処分があつたものとする。


この場合において、当該押収物は、還付することを要しない。

5項

前二項の規定は、民事訴訟の手続に従い、利害関係人がその権利を主張することを妨げない。

6項

第九十九条第一項第百条第百二条から第百五条まで第百八条第一項から第三項まで第百九条第百十条第百十条の二前段、第百十一条第一項前段 及び第二項第百十一条の二前段、第百十二条第百十三条第三項第百十四条第百十五条第百十八条から第百二十一条まで第百二十三条第一項から第三項まで 並びに第百二十五条の規定は、裁判所 又は裁判官が前二条の規定によつてする押収 又は捜索について、第百八条第一項から第三項まで第百九条第百十条第百十一条の二前段、第百十二条第百十三条第三項第百十四条第百十八条第百二十五条第一項から第三項まで 及び第四項本文、第百二十九条第百三十一条第百三十七条から第百四十条まで 並びに第二百二十二条第四項 及び第五項の規定は、裁判所 又は裁判官が第五百十一条の規定によつてする検証について、それぞれ準用する。


この場合において、

第九十九条第一項
証拠物 又は没収すべき物」とあり、
及び第百十九条
証拠物 又は没収すべきもの」とあるのは
「裁判の執行を受ける者 若しくは裁判の執行の対象となるものの所在 若しくは状況に関する資料 又は裁判の執行の対象となるものを管理するために使用されている物」と、

第百条第一項第百二条第百五条ただし書、第百八条第一項ただし書、第百十三条第三項 及び第百三十七条第一項
被告人」とあるのは
「裁判の執行を受ける者」と、

第百条第二項 並びに第百二十三条第一項 及び第三項
被告事件」とあり、
並びに第百条第三項ただし書中
審理」とあるのは
「裁判の執行」と、

第百二十五条第四項ただし書中
裁判所」とあるのは
「裁判所 又は第五百十三条第六項において準用する第一項の規定による嘱託をした裁判官」と、

第二百二十二条第四項
検察官、検察事務官 又は司法警察職員」とあるのは
「検証状を執行する者」と

読み替えるものとする。

7項

第百十六条 及び第百十七条の規定は、裁判所 又は裁判官が第五百十一条の規定によつてする差押え、記録命令付差押え 又は捜索について準用する。

8項

第七十一条の規定は、第五百十一条第一項の令状の執行について準用する。

9項

第四百九十九条第一項第三項 及び第四項の規定は、第一項 及び第六項において読み替えて準用する第百二十三条第一項の規定による押収物の還付について準用する。


この場合において、

第四百九十九条第三項
前二項」とあるのは、
第五百十三条第九項において準用する第一項」と

読み替えるものとする。

10項

第四百九十九条第一項の規定は、第一項 及び第六項において読み替えて準用する第百二十三条第三項の規定による交付 又は複写について準用する。

11項

前項において準用する第四百九十九条第一項の規定による公告をした日から六箇月以内前項の交付 又は複写の請求がないときは、その交付をし、又は複写をさせることを要しない。

1項
検察官 又は裁判所 若しくは裁判官は、裁判の執行に関して必要があると認めるときは、裁判の執行を受ける者 その他の者の出頭を求め、質問をし、又は裁判の執行を受ける者以外の者に鑑定、通訳 若しくは翻訳を嘱託することができる。
1項

前条の規定による鑑定の嘱託を受けた者は、裁判官の許可を受けて、第百六十八条第一項に規定する処分をすることができる。

2項

検察官が前条の規定による鑑定の嘱託をした場合においては、前項の許可の請求は、検察官からこれをしなければならない。

3項

裁判官は、前項の請求を相当と認めるとき、又は裁判所 若しくは裁判官が鑑定を嘱託した場合において第一項の許可をするときは、許可状を発しなければならない。

4項

第百三十一条第百三十七条第百三十八条第百四十条 及び第百六十八条第二項から第四項までの規定は、第一項の許可 及び前項の許可状について準用する。


この場合において、

第百三十七条第一項
被告人」とあるのは
「裁判の執行を受ける者」と、

第百六十八条第二項
被告人の氏名、罪名」とあるのは
「裁判の執行を受ける者の氏名」と

読み替えるものとする。

1項

検察官は、検察事務官に第五百八条第一項本文の調査 又は同条第二項第五百九条第五百十二条 若しくは第五百十四条の処分をさせることができる。