小切手法

昭和八年法律第五十七号
分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和二年四月一日 ( 2020年 4月1日 )
@ 最終更新 : 平成二十九年法律第四十五号による改正
最終編集日 : 2022年 12月09日 13時14分

第一章 小切手ノ振出及方式

1項
小切手ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 号

証券ノ文言中ニ其ノ証券ノ作成ニ用フル語ヲ以テ 記載スル小切手ナルコトヲ示ス文字

二 号
一定ノ金額ヲ支払フベキ旨ノ単純ナル委託
三 号

支払ヲ為スベキ者(支払人)ノ名称

四 号
支払ヲ為スベキ地ノ表示
五 号
小切手ヲ振出ス日及地ノ表示
六 号

小切手ヲ振出ス者(振出人)ノ署名

1項

前条ニ掲グル事項ノ何レカヲ欠ク証券ハ小切手タル効力ヲ有セズ


但シ次ノ数項ニ規定スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ

2項

支払人ノ名称ニ附記シタル地ハ特別ノ表示ナキ限リ之ヲ支払地ト看做ス支払人ノ名称ニ数箇ノ地ノ附記アルトキハ小切手ハ初頭ニ記載シアル地ニ於テ之ヲ支払フベキモノトス

3項

前項ノ記載 其ノ他 何等ノ表示ナキ小切手ハ振出地ニ於テ之ヲ支払フベキモノトス

4項

振出地ノ記載ナキ小切手ハ振出人ノ名称ニ附記シタル地ニ於テ之ヲ 振出シタルモノト看做ス

1項

小切手ハ其ノ呈示ノ時ニ於テ振出人ノ処分シ得ル資金アル銀行ニ宛テ且振出人ヲシテ資金ヲ小切手ニ依リ処分スルコトヲ得シムル明示又ハ 黙示ノ契約ニ従ヒ之ヲ振出スベキモノトス


但シ此ノ規定ニ従ハザルトキト雖モ証券ノ小切手タル効力ヲ妨ゲズ

1項

小切手ハ 引受ヲ為スコトヲ得ズ小切手ニ為シタル引受ノ記載ハ 之ヲ為サザルモノト看做ス

1項

小切手ハ左ノ何レカトシテ 之ヲ振出スコトヲ得

一 号

記名式 又ハ指図式

二 号

記名式ニシテ「指図禁止」ノ文字 又ハ之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ヲ記載スルモノ

三 号
持参人払式
2項

記名ノ小切手ニシテ「又ハ持参人ニ」ノ文字 又ハ之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ヲ記載シタルモノハ之ヲ持参人払式小切手ト看做ス

3項

受取人ノ記載ナキ小切手ハ 之ヲ持参人払式小切手ト看做ス

1項

小切手ハ振出人ノ自己指図ニテ 之ヲ振出スコトヲ得

2項

小切手ハ第三者ノ計算ニ於テ 之ヲ振出スコトヲ得

3項

小切手ハ振出人ノ自己宛ニテ 之ヲ振出スコトヲ得

1項

小切手ニ記載シタル利息ノ約定ハ 之ヲ為サザルモノト看做ス

1項

小切手ハ支払人ノ住所地ニ在ルト 又ハ其ノ他ノ地ニ在ルトヲ問ハズ第三者ノ住所ニ於テ支払フベキモノト為スコトヲ得


但シ其ノ第三者ハ銀行タルコトヲ要ス

1項

小切手ノ金額ヲ文字 及数字ヲ以テ記載シタル場合ニ 於テ其ノ金額ニ差異アルトキハ文字ヲ以テ記載シタル金額ヲ 小切手金額トス

2項

小切手ノ金額ヲ文字ヲ以テ 又ハ数字ヲ以テ重複シテ記載シタル場合ニ於テ其ノ金額ニ差異アルトキハ 最小金額ヲ小切手金額トス

1項

小切手ニ小切手債務ノ負担ニ付キ行為能力ナキ者ノ署名、偽造ノ署名、仮設人ノ署名又ハ 其ノ他ノ事由ニ因リ小切手ノ署名者 若ハ其ノ本人ニ義務ヲ負ハシムルコト能ハザル署名アル場合ト雖モ 他ノ署名者ノ債務ハ之ガ為其ノ効力ヲ妨ゲラルルコトナシ

1項

代理権ヲ有セザル者ガ代理人トシテ 小切手ニ署名シタルトキハ自ラ其ノ小切手ニ因リ義務ヲ負フ其ノ者ガ 支払ヲ為シタルトキハ本人ト同一ノ権利ヲ有ス権限ヲ 超エタル代理人ニ付亦同ジ

1項

振出人ハ支払ヲ 担保ス振出人ガ之ヲ担保セザル旨ノ 一切ノ文言ハ之ヲ記載セザルモノト看做ス

1項

未完成ニテ振出シタル小切手ニ予メ為シタル合意ト異ル補充ヲ為シタル場合ニ於テハ其ノ違反ハ之ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ


但シ所持人ガ悪意 又ハ重大ナル過失ニ因リ小切手ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ

第二章 譲渡

1項

記名式 又ハ指図式ノ小切手ハ裏書ニ依リテ之ヲ 譲渡スコトヲ得

2項

記名式小切手ニシテ「指図禁止」ノ文字又ハ 之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ヲ記載シタルモノハ民法明治二十九年法律第八十九号第三編第一章第四節ノ規定ニ依ル債権ノ譲渡ニ関スル方式ニ従ヒ且其ノ効力ヲ以テノミ之ヲ譲渡スコトヲ得

3項

裏書ハ振出人其ノ他ノ債務者ニ対シテモ 之ヲ為スコトヲ得此等ノ者ハ更ニ小切手ヲ裏書スルコトヲ得

1項

裏書ハ 単純ナルコトヲ要ス裏書ニ附シタル条件ハ之ヲ記載セザルモノト看做ス

2項
一部ノ裏書ハ之ヲ無効トス
3項
支払人ノ裏書モ亦之ヲ無効トス
4項

持参人払ノ裏書ハ 白地式裏書ト同一ノ効力ヲ有ス

5項

支払人ニ対シテ為シタル裏書ハ受取証書タル効力ノミヲ有ス


但シ支払人ガ数箇ノ営業所ヲ有スル場合ニ於テ小切手ノ振宛テラレタル営業所以外ノ営業所ニ対シテ為シタル裏書ハ此ノ限ニ在ラズ

1項

裏書ハ小切手又ハ之ト結合シタル紙片(補箋)ニ 之ヲ記載シ裏書人署名スルコトヲ要ス

2項

裏書ハ 被裏書人ヲ指定セズシテ之ヲ為シ又ハ 単ニ裏書人ノ署名ノミヲ以テ 之ヲ為スコトヲ得(白地式裏書) 此ノ後ノ場合ニ於テハ裏書ハ小切手ノ裏面 又ハ補箋ニ之ヲ為スニ非ザレバ 其ノ効力ヲ有セズ

1項

裏書ハ小切手ヨリ生ズル 一切ノ権利ヲ移転ス

2項

裏書ガ白地式ナルトキハ 所持人ハ

一 号

自己ノ名称 又ハ他人ノ名称ヲ以テ 白地ヲ補充スルコトヲ得

二 号

白地式ニ依リ 又ハ他人ヲ表示シテ 更ニ小切手ヲ裏書スルコトヲ得

三 号

白地ヲ補充セズ且裏書ヲ為サズシテ 小切手ヲ第三者ニ譲渡スコトヲ得

1項

裏書人ハ反対ノ文言ナキ限リ 支払ヲ担保ス

2項

裏書人ハ新ナル裏書ヲ禁ズルコトヲ得 此ノ場合ニ於テハ其ノ裏書人ハ 小切手ノ爾後ノ被裏書人ニ対シ担保ノ責ヲ負フコトナシ

1項

裏書シ得ベキ小切手ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ 其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス 最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト 雖モ亦同ジ抹消シタル裏書ハ此ノ関係ニ於テハ之ヲ記載セザルモノト看做ス白地式裏書ニ 次デ他ノ裏書アルトキハ其ノ裏書ヲ為シタル者ハ 白地式裏書ニ因リテ小切手ヲ 取得シタルモノト看做ス

1項

持参人払式小切手ニ裏書ヲ為シタルトキハ裏書人ハ遡求ニ関スル規定ニ従ヒ責任ヲ負フ


但シ之ガ為証券ハ指図式小切手ニ変ズルコトナシ

1項

事由ノ何タルヲ問ハズ小切手ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合ニ於テ其ノ小切手ヲ取得シタル所持人ハ小切手ガ持参人払式ノモノナルトキ 又ハ 裏書シ得ベキモノニシテ其ノ所持人ガ第十九条ノ規定ニ依リ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ返還スル義務ヲ負フコトナシ


但シ悪意 又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ

1項

小切手ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人 其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ


但シ所持人ガ 其ノ債務者ヲ害スルコトヲ知リテ小切手ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ

1項

裏書ニ「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」其ノ他単ナル委任ヲ示ス文言アルトキハ所持人ハ小切手ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ行使スルコトヲ得


但シ所持人ハ代理ノ為ノ裏書ノミヲ為スコトヲ得

2項

前項ノ場合ニ於テハ債務者ガ所持人ニ対抗スルコトヲ得ル抗弁ハ裏書人ニ対抗スルコトヲ得ベカリシモノニ限ル

3項

代理ノ為ノ裏書ニ依ル委任ハ委任者ノ死亡 又ハ其ノ者ガ行為能力ノ制限ヲ受ケタルコトニ因リ終了セズ

1項

拒絶証書 若ハ之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言ノ作成後ノ裏書又ハ呈示期間経過後ノ裏書ハ民法第三編第一章第四節ノ規定ニ依ル 債権ノ譲渡ノ効力ノミヲ有ス

2項

日附ノ記載ナキ裏書ハ拒絶証書 若ハ之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言ノ作成前又ハ呈示期間経過前ニ 之ヲ為シタルモノト推定ス

第三章 保証

1項

小切手ノ支払ハ 其ノ金額ノ全部 又ハ一部ニ付保証ニ依リ之ヲ担保スルコトヲ得

2項

支払人ヲ除クノ外第三者ハ前項ノ保証ヲ為スコトヲ得 小切手ニ署名シタル者ト雖モ亦同ジ

1項

保証ハ小切手 又ハ補箋ニ之ヲ為スベシ

2項

保証ハ「保証」其ノ他 之ト同一ノ意義ヲ有スル文字ヲ以テ表示シ保証人署名スベシ

3項

小切手ノ表面ニ為シタル単ナル署名ハ之ヲ保証ト看做ス


但シ振出人ノ署名ハ此ノ限ニ在ラズ

4項

保証ニハ何人ノ為ニ之ヲ為スカヲ表示スルコトヲ要ス 其ノ表示ナキトキハ振出人ノ為ニ 之ヲ為シタルモノト看做ス

1項

保証人ハ保証セラレタル者ト 同一ノ責任ヲ負フ

2項

保証ハ其ノ担保シタル債務ガ 方式ノ瑕疵ヲ除キ他ノ如何ナル事由ニ因リテ 無効ナルトキト雖モ之ヲ有効トス

3項

保証人ガ 小切手ノ支払ヲ為シタルトキハ保証セラレタル者 及其ノ者ノ小切手上ノ債務者ニ対シ小切手ヨリ生ズル権利ヲ取得ス

第四章 呈示及支払

1項

小切手ハ一覧払ノモノトス之ニ反スル 一切ノ記載ハ之ヲ為サザルモノト看做ス

2項

振出ノ日附トシテ記載シタル日ヨリ前ニ支払ノ為呈示シタル小切手ハ呈示ノ日ニ於テ之ヲ 支払フベキモノトス

1項

国内ニ於テ振出シ 且支払フベキ小切手ハ十日内ニ 支払ノ為之ヲ呈示スルコトヲ要ス

2項

支払ヲ為スベキ国ト 異ル国ニ於テ振出シタル小切手ハ振出地及支払地ガ 同一洲ニ存スルトキハ二十日内又異ル洲ニ存スルトキハ七十日内ニ之ヲ呈示スルコトヲ要ス

3項

前項ニ関シテハ欧羅巴洲ノ一国ニ於テ振出シ 地中海沿岸ノ一国ニ於テ支払フベキ小切手 又ハ 地中海沿岸ノ一国ニ於テ振出シ欧羅巴洲ノ一国ニ於テ 支払フベキ小切手ハ同一洲内ニ於テ振出シ 且支払フベキモノト看做ス

4項

本条ニ掲グル期間ノ起算日ハ小切手ニ振出ノ日附トシテ 記載シタル日トス

1項

小切手ガ暦ヲ異ニスル 二地ノ間ニ振出シタルモノナルトキハ振出ノ日ヲ支払地ノ暦ノ 応当日ニ換フ

1項

手形交換所ニ於ケル 小切手ノ呈示ハ支払ノ為ノ呈示タル 効力ヲ有ス

1項

小切手ノ支払委託ノ取消ハ呈示期間経過後ニ於テノミ 其ノ効力ヲ生ズ

2項

支払委託ノ 取消ナキトキハ支払人ハ期間経過後ト雖モ 支払ヲ為スコトヲ得

1項

振出ノ後振出人ガ死亡シ意思能力ヲ喪失シ 又ハ行為能力ノ制限ヲ受クルモ小切手ノ効力ニ 影響ヲ及ボスコトナシ

1項

小切手ノ支払人ハ 支払ヲ為スニ当リ所持人ニ対シ 小切手ニ受取ヲ証スル記載ヲ為シテ 之ヲ交付スベキコトヲ請求スルコトヲ得

2項

所持人ハ 一部支払ヲ拒ムコトヲ得ズ

3項

一部支払ノ場合ニ於テハ支払人ハ 其ノ支払アリタル旨ノ小切手上ノ記載及受取証書ノ 交付ヲ請求スルコトヲ得

1項

裏書シ得ベキ 小切手ノ支払ヲ為ス支払人ハ裏書ノ連続ノ整否ヲ 調査スル義務アルモ裏書人ノ署名ヲ 調査スル義務ナシ

1項

支払地ノ通貨ニ非ザル通貨ヲ以テ 支払フベキ旨ヲ記載シタル小切手ニ付テハ其ノ呈示期間内ハ支払ノ日ニ於ケル価格ニ依リ 其ノ国ノ通貨ヲ以テ支払ヲ為スコトヲ得呈示ヲ為スモ 支払ナカリシトキハ所持人ハ其ノ選択ニ依リ呈示ノ日 又ハ支払ノ日ノ相場ニ従ヒ其ノ国ノ通貨ヲ以テ 小切手ノ金額ヲ支払フベキコトヲ 請求スルコトヲ得

2項

外国通貨ノ価格ハ支払地ノ慣習ニ依リ之ヲ定ム


但シ振出人ハ小切手ニ定メタル換算率ニ依リ支払金額ヲ計算スベキ旨ヲ記載スルコトヲ得

3項

前二項ノ規定ハ振出人ガ特種ノ通貨ヲ以テ 支払フベキ旨(外国通貨現実支払文句)ヲ 記載シタル場合ニハ之ヲ適用セズ

4項

振出国ト支払国トニ於テ同名異価ヲ有スル通貨ニ依リ 小切手ノ金額ヲ定メタルトキハ支払地ノ通貨ニ依リテ 之ヲ定メタルモノト推定ス

第五章 線引小切手

1項

小切手ノ振出人 又ハ所持人ハ 小切手ニ線引ヲ為スコトヲ得線引ハ次条ニ定ムル効力ヲ有ス

2項

線引ハ小切手ノ表面ニ 二条ノ平行線ヲ引キテ之ヲ為スベシ線引ハ一般又ハ特定タルコトヲ得

3項

二条ノ線内ニ 何等ノ指定ヲ為サザルカ又ハ「銀行」 若ハ之ト同一ノ意義ヲ有スル 文字ヲ記載シタルトキハ線引ハ之ヲ一般トス 二条ノ線内ニ銀行ノ名称ヲ 記載シタルトキハ線引ハ之ヲ特定トス

4項

一般線引ハ 之ヲ特定線引ニ変更スルコトヲ得ルモ特定線引ハ 之ヲ一般線引ニ変更スルコトヲ得ズ

5項

線引 又ハ被指定銀行ノ名称 ノ抹消ハ之ヲ為サザルモノト看做ス

1項

一般線引小切手ハ 支払人ニ於テ銀行ニ対シ又ハ支払人ノ取引先ニ対シテノミ 之ヲ支払フコトヲ得

2項

特定線引小切手ハ支払人ニ於テ被指定銀行ニ対シテノミ又被指定銀行ガ支払人ナルトキハ自己ノ取引先ニ対シテノミ之ヲ支払フコトヲ得


但シ被指定銀行ハ他ノ銀行ヲシテ小切手ノ取立ヲ為サシムルコトヲ得

3項

銀行ハ自己ノ取引先又ハ他ノ銀行ヨリノミ線引小切手ヲ 取得スルコトヲ得銀行ハ此等ノ者以外ノ者ノ為ニ線引小切手ノ 取立ヲ為スコトヲ得ズ

4項

数箇ノ特定線引アル小切手ハ支払人ニ於テ之ヲ支払フコトヲ得ズ


但シ二箇ノ線引アル場合ニ於テ其ノ一ガ手形交換所ニ於ケル取立ノ為ニ為サレタルモノナルトキハ此ノ限ニ在ラズ

5項

前四項ノ規定ヲ遵守セザル支払人 又ハ 銀行ハ之ガ為ニ生ジタル損害ニ付小切手ノ金額ニ達スル迄賠償ノ責ニ任ズ

第六章 支払拒絶ニ因ル遡求

1項

適法ノ時期ニ呈示シタル小切手ノ支払ナキ場合ニ於テ左ノ何レカニ依リ支払拒絶ヲ証明スルトキハ所持人ハ裏書人、振出人 其ノ他ノ債務者ニ対シ其ノ遡求権ヲ行フコトヲ得

一 号

公正証書(拒絶証書

二 号

小切手ニ呈示ノ日ヲ表示シテ記載シ且 日附ヲ附シタル支払人ノ宣言

三 号

適法ノ時期ニ小切手ヲ呈示シタルモ 其ノ支払ナカリシ旨ヲ証明シ且 日附ヲ附シタル手形交換所ノ宣言

1項

拒絶証書 又ハ之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言ハ呈示期間経過前ニ 之ヲ作ラシムルコトヲ要ス

2項

期間ノ末日ニ呈示アリタルトキハ拒絶証書 又ハ之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言ハ之ニ次グ第一ノ取引日ニ之ヲ作ラシムルコトヲ得

1項

所持人ハ拒絶証書 又ハ之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言ノ作成ノ日ニ次グ 又ハ無費用償還文句アル場合ニ於テハ呈示ノ日ニ 次グ四取引日内ニ 自己ノ裏書人及振出人ニ対シ支払拒絶アリタルコトヲ通知スルコトヲ要ス 各裏書人ハ通知ヲ受ケタル日ニ次グ二取引日内ニ前ノ通知者全員ノ名称 及宛所ヲ示シテ自己ノ受ケタル通知ヲ 自己ノ裏書人ニ通知シ順次振出人ニ及ブモノトス此ノ期間ハ 各其ノ通知ヲ受ケタル時ヨリ進行ス

2項

前項ノ規定ニ従ヒ 小切手ノ署名者ニ通知ヲ為ストキハ同一期間内ニ 其ノ保証人ニ 同一ノ通知ヲ為スコトヲ要ス

3項

裏書人ガ 其ノ宛所ヲ記載セズ 又ハ其ノ記載ガ読ミ難キ場合ニ於テハ其ノ裏書人ノ 直接ノ前者ニ通知スルヲ以テ足ル

4項

通知ヲ為スベキ者ハ如何ナル方法ニ依リテモ 之ヲ為スコトヲ得単ニ小切手ヲ返付スルニ依リテモ 亦之ヲ為スコトヲ得

5項

通知ヲ為スベキ者ハ適法ノ期間内ニ通知ヲ為シタルコトヲ証明スルコトヲ要ス此ノ期間内ニ通知ヲ為ス書面ヲ郵便ニ付シ 又ハ民間事業者による信書の送達に関する法律平成十四年法律第九十九号第二条第六項ニ規定スル一般信書便事業者 若ハ同条第九項ニ規定スル特定信書便事業者ノ提供スル同条第二項ニ規定スル信書便ノ役務ヲ利用シテ発送シタル場合ニ於テハ其ノ期間ヲ遵守シタルモノト看做ス

6項

前項ノ期間内ニ通知ヲ為サザル者ハ其ノ権利ヲ失フコトナシ


但シ過失ニ因リテ生ジタル損害アルトキハ小切手ノ金額ヲ超エザル範囲内ニ於テ其ノ賠償ノ責ニ任ズ

1項

振出人、裏書人又ハ保証人ハ証券ニ記載シ且署名シタル 「無費用償還」、 「拒絶証書不要」ノ文句其ノ他 之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ニ依リ 所持人ニ対シ其ノ遡求権ヲ行フ為ノ拒絶証書又ハ 之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言ノ作成ヲ免除スルコトヲ得

2項

前項ノ文言ハ所持人ニ対シ 法定期間内ニ於ケル 小切手ノ呈示及通知ノ義務ヲ免除スルコトナシ期間ノ不遵守ハ所持人ニ対シ 之ヲ援用スル者ニ於テ 其ノ証明ヲ為スコトヲ要ス

3項

振出人ガ第一項ノ文言ヲ記載シタルトキハ一切ノ署名者ニ対シ其ノ効力ヲ生ズ裏書人 又ハ保証人ガ之ヲ記載シタルトキハ其ノ裏書人 又ハ保証人ニ対シテノミ 其ノ効力ヲ生ズ振出人ガ 此ノ文言ヲ記載シタルニ拘ラズ所持人ガ 拒絶証書 又ハ 之ト同一ノ効力ヲ有スル 宣言ヲ作ラシメタルトキハ其ノ費用ハ 所持人之ヲ負担ス裏書人 又ハ保証人ガ 此ノ文言ヲ記載シタル場合ニ於テ拒絶証書 又ハ之ト同一ノ効力ヲ有スル 宣言ノ作成アリタルトキハ一切ノ署名者ヲシテ 其ノ費用ヲ償還セシムルコトヲ得

1項

小切手上ノ各債務者ハ所持人ニ対シ 合同シテ其ノ責ニ任ズ

2項

所持人ハ前項ノ債務者ニ対シ其ノ債務ヲ負ヒタル順序ニ拘ラズ各別 又ハ 共同ニ請求ヲ為スコトヲ得

3項

小切手ノ署名者ニシテ之ヲ受戻シタルモノモ 同一ノ権利ヲ有ス

4項

債務者ノ一人ニ対スル請求ハ 他ノ債務者ニ対スル請求ヲ妨ゲズ既ニ請求ヲ受ケタル者ノ 後者ニ対シテモ亦同ジ

1項

所持人ハ遡求ヲ受クル者ニ対シ左ノ金額ヲ請求スルコトヲ得

一 号

支払アラザリシ小切手ノ金額

二 号

法定利率(国内ニ於テ振出シ且支払フベキ小切手以外ノ小切手ニ在リテハ年六分ノ率次条第二号ニ於テ同ジ)ニ依ル呈示ノ日以後ノ利息

三 号

拒絶証書 又ハ之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言ノ費用、通知ノ費用及 其ノ他ノ費用

1項

小切手ヲ受戻シタル者ハ其ノ前者ニ対シ 左ノ金額ヲ請求スルコトヲ得

一 号
其ノ支払ヒタル総金額
二 号

前号ノ金額ニ対シ法定利率ニ依リ計算シタル 支払ノ日以後ノ利息

三 号
其ノ支出シタル費用
1項

遡求ヲ受ケタル 又ハ受クベキ債務者ハ支払ト引換ニ拒絶証書 又ハ 之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言、 受取ヲ証スル記載ヲ為シタル計算書及 小切手ノ交付ヲ請求スルコトヲ得

2項

小切手ヲ受戻シタル裏書人ハ自己及後者ノ裏書ヲ 抹消スルコトヲ得

1項

法定ノ期間内ニ於ケル小切手ノ呈示 又ハ 拒絶証書若ハ 之ト同一ノ効力ヲ有スル 宣言ノ作成ガ避クベカラザル 障碍(国ノ法令ニ依ル禁制其ノ他ノ不可抗力)ニ因リテ 妨ゲラレタルトキハ其ノ期間ヲ伸長ス

2項

所持人ハ 自己ノ裏書人ニ対シ遅滞ナク其ノ不可抗力ヲ通知シ且 小切手 又ハ補箋ニ 其ノ通知ヲ記載シ日附ヲ附シテ之ニ署名スルコトヲ要ス其ノ他ニ付テハ第四十一条ノ規定ヲ準用ス

3項

不可抗力ガ止ミタルトキハ所持人ハ遅滞ナク支払ノ為 小切手ヲ呈示シ且 必要アルトキハ拒絶証書 又ハ之ト同一ノ効力ヲ有スル 宣言ヲ作ラシムルコトヲ要ス

4項

不可抗力ガ所持人ニ於テ其ノ裏書人ニ不可抗力ノ通知ヲ為シタル日ヨリ十五日ヲ超エテ継続スルトキハ呈示期間経過前ニ 其ノ通知ヲ為シタル場合ト雖モ呈示又ハ拒絶証書 若ハ 之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言ヲ要セズシテ遡求権ヲ行フコトヲ得

5項

所持人 又ハ所持人ガ小切手ノ呈示 又ハ拒絶証書 若ハ之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言ノ作成ヲ 委任シタル者ニ付テノ 単純ナル人的事由ハ不可抗力ヲ構成スルモノト認メズ

第七章 複本

1項

一国ニ於テ振出シ他ノ国ニ於テ若ハ振出国ノ海外領土ニ於テ支払フベキ小切手、一国ノ海外領土ニ於テ振出シ其ノ国ニ於テ支払フベキ小切手、一国ノ同一海外領土ニ於テ振出シ且支払フベキ小切手 又ハ一国ノ一海外領土ニ於テ振出シ其ノ国ノ他ノ海外領土ニ於テ支払フベキ小切手ハ持参人払ノモノヲ除クノ外同一内容ノ数通ヲ以テ 之ヲ振出スコトヲ得数通ヲ以テ小切手ヲ振出シタルトキハ其ノ証券ノ文言中ニ番号ヲ附スルコトヲ要ス之ヲ欠クトキハ各通ハ之ヲ各別ノ小切手ト看做ス

1項

複本ノ一通ノ支払ハ其ノ支払ガ他ノ複本ヲ無効ナラシムル旨ノ 記載ナキトキト雖モ義務ヲ免レシム

2項

数人ニ各別ニ複本ヲ譲渡シタル裏書人及 其ノ後ノ裏書人ハ其ノ署名アル各通ニシテ 返還ヲ受ケザルモノニ付 責任ヲ負フ

第八章 変造

1項

小切手ノ文言ノ変造ノ場合ニ於テハ其ノ変造後ノ署名者ハ変造シタル文言ニ従ヒテ責任ヲ負ヒ変造前ノ署名者ハ原文言ニ従ヒテ責任ヲ負フ

第九章 時効

1項

所持人ノ裏書人、振出人其ノ他ノ債務者ニ対スル遡求権ハ呈示期間経過後六月ヲ以テ時効ニ罹ル

2項

小切手ノ支払ヲ為スベキ債務者ノ 他ノ債務者ニ対スル遡求権ハ其ノ債務者ガ小切手ノ受戻ヲ為シタル日 又ハ其ノ者ガ訴ヲ受ケタル日ヨリ六月ヲ以テ時効ニ罹ル

1項

時効ノ完成猶予 又ハ更新ハ其ノ事由ガ生ジタル者ニ対シテノミ 其ノ効力ヲ生ズ

第十章 支払保証

1項

支払人ハ小切手ニ支払保証ヲ為スコトヲ得

2項

支払保証ハ小切手ノ表面ニ「支払保証」其ノ他 支払ヲ為ス旨ノ文字ヲ以テ表示シ日附ヲ附シテ支払人署名スベシ

1項

支払保証ハ単純ナルコトヲ要ス

2項

支払保証ニ依リ 小切手ノ記載事項ニ加ヘタル変更ハ之ヲ記載セザルモノト看做ス

1項

支払保証ヲ為シタル支払人ハ呈示期間ノ経過前ニ小切手ノ呈示アリタル場合ニ於テノミ 其ノ支払ヲ為ス義務ヲ負フ

2項

支払ナキ場合ニ於テ前項ノ呈示アリタルコトハ第三十九条ノ規定ニ依リ 之ヲ証明スルコトヲ要ス

3項

第四十四条第四十五条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス

1項

支払保証ニ因リ 振出人其ノ他ノ小切手上ノ債務者ハ其ノ責ヲ免ルルコトナシ

1項

第四十七条ノ規定ハ支払保証ヲ為シタル支払人ニ対スル 権利ノ行使ニ付之ヲ準用ス

1項

支払保証ヲ為シタル支払人ニ対スル 小切手上ノ請求権ハ呈示期間経過後一年ヲ以テ時効ニ罹ル

第十一章 通則

1項

本法ニ於テ「銀行」ナル文字ハ法令ニ依リテ銀行ト同視セラルル人又ハ 施設ヲ含ム

1項

小切手ノ呈示及拒絶証書ノ作成ハ取引日ニ於テノミ 之ヲ為スコトヲ得

2項

小切手ニ関スル行為ヲ為ス為殊ニ呈示 又ハ拒絶証書 若ハ 之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言ノ作成ノ為法令ニ規定シタル期間ノ末日ガ法定ノ休日ニ当ル場合ニ於テハ期間ハ其ノ満了ニ次グ第一ノ取引日迄之ヲ伸長ス期間中ノ休日ハ之ヲ期間ニ算入ス

1項

本法ニ規定スル期間ニハ 其ノ初日ヲ算入セズ

1項

恩恵日ハ法律上ノモノタルト裁判上ノモノタルトヲ問ハズ之ヲ認メズ