この法律は、国際的に協力して南極地域の環境(これに依存し 及び関連する生態系 並びにこれとともに包括的に保護されるべき南極地域の固有の価値を含む。以下単に「南極地域の環境」という。)の保護を図るため、南極地域活動計画の確認の制度を設けるほか南極地域における行為の制限に関する所要の措置等を講ずることにより環境保護に関する南極条約議定書(同議定書の附属書Ⅰから附属書Ⅴまでを含む。以下「議定書」という。)の的確かつ円滑な実施を確保し、もって人類の福祉に貢献するとともに現在 及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
南極地域の環境の保護に関する法律
第一章 総則
この法律は、日本国民 及び日本国の法人 並びに日本国内に住所を有する外国人 及び日本国内に事務所を有する外国の法人(当該事務所に所属する従業者が当該法人の業務に関し、南極地域活動をし、又は南極地域活動の主宰に関与する場合に限る。)に適用する。
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
南極地域
南緯六十度以南の陸域(氷棚 及びその上空の部分を含む。以下同じ。)及び海域(氷棚の区域については、その下の海中の部分に限る。以下同じ。)をいう。
南極地域の固有の価値
南極地域の科学上、歴史上 若しくは芸術上の価値 又は原生の状態を維持していることの価値をいう。
南極地域活動
南極地域においてする科学的調査、観光 その他の活動(一定の目的のためにする一連の行為をいう。)をいう。
南極地域活動計画
一 又は二以上の南極地域活動に係る一の計画をいう。
南極特別保護地区
議定書附属書Ⅴ第三条1 又は3の規定により指定された南極特別保護地区であって、環境省令で定めるものをいう。
特定活動
南極地域の海域においてする次に掲げる南極地域活動(次に掲げる南極地域活動以外の南極地域活動と一体となって行われるものを除く。)をいう。
南極地域の海域に生息し、又は生育する水産動植物の採捕であって当該採捕を制限し、又は禁止する法令の規定(政令で定めるものに限る。)に反することなく行われるもの 及びこれに付随する環境省令で定める行為
船舶の航行 又は航空機の飛行(南極特別保護地区への立入りを除く。)及びこれらに付随する環境省令で定める行為
科学的調査であってその結果を公表することとされているもの(イに掲げるものを除く。)
南極環境構成要素
南極地域の大気、南極地域の水、南極地域に生息し、又は生育する動植物 その他の南極地域の環境の構成要素(南極地域の気象 その他のこれらの構成要素の現象 又は状態を含む。)であって、環境省令で定めるものをいう。
南極環境影響
南極地域活動が南極環境構成要素に及ぼす影響をいう。
鉱物資源活動
鉱物(石炭、亜炭、石油 及び天然ガスを含む。)の探鉱 及び採鉱をいう。
南極哺
乳類 哺乳綱に属する種であってその個体が南極地域に生息するものとして環境省令で定めるものの生きている個体をいう。
南極鳥類
鳥綱に属する種であってその個体が南極地域に生息するものとして環境省令で定めるものの生きている個体をいう。
廃棄物 >南極地域の陸域(上空を除く。以下この号において同じ。)において発生し、又は南極地域の陸域に持ち込まれた固形状 又は液状の不要物をいう。
南極史跡記念物
議定書附属書Ⅴ第八条5後段に規定する史跡 及び歴史的記念物の一覧表に掲げられた史跡 及び歴史的記念物であって、環境省令で定めるものをいう。
環境大臣は、議定書の的確かつ円滑な実施を図るため、次条第一項に規定する確認を受けて南極地域活動を主宰する者(以下「主宰者」という。)及び南極地域活動の行為者が南極地域の環境の保護のために配慮しなければならない基本的な事項(以下この条において「基本的な配慮事項」という。)を定めて公表するものとする。
環境大臣は、基本的な配慮事項を定めようとするときは、文部科学大臣 その他関係行政機関の長に協議しなければならない。
前二項の規定は、基本的な配慮事項の変更について準用する。