特定適格消費者団体は、事業者が消費者に対して負う金銭の支払義務であって消費者契約に関する第一号から第四号までに掲げる請求 及び第五号イからハまでに掲げる者が消費者に対して負う金銭の支払義務であって消費者契約に関する同号に掲げる請求(これらに附帯する利息、損害賠償、違約金 又は費用の請求を含む。)に係るものについて、共通義務確認の訴えを提起することができる。
消費者の財産的被害等の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律
第一節 共通義務確認訴訟に係る民事訴訟手続の特例
不法行為に基づく損害賠償の請求(民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定によるものに限り、次号(イに係る部分に限る。)に掲げるものを除く。)
事業者の被用者が消費者契約に関する業務の執行について第三者に損害を加えたことを理由とする次のイからハまでに掲げる者に対する当該イからハまでに定める請求
事業者(当該被用者の選任 及びその事業の監督について故意又は重大な過失により相当の注意を怠ったものに限る。第三項第三号において同じ。)
民法第七百十五条第一項の規定による損害賠償の請求
事業監督者(当該被用者の選任 及びその事業の監督について故意 又は重大な過失により相当の注意を怠ったものに限る。第三項第三号ロにおいて同じ。)
民法第七百十五条第二項の規定による損害賠償の請求
被用者(第三者に損害を加えたことについて故意 又は重大な過失があるものに限る。第三項第三号ハにおいて同じ。)
不法行為に基づく損害賠償の請求(民法の規定によるものに限る。)
次に掲げる損害については、前項第三号から第五号までに掲げる請求に係る金銭の支払義務についての共通義務確認の訴えを提起することができない。
契約上の債務の不履行 又は不法行為により、物品、権利 その他の消費者契約の目的となるもの(役務を除く。次号において同じ。)以外の財産が滅失し、又は損傷したことによる損害
消費者契約の目的となるものの提供があるとすればその処分 又は使用により得るはずであった利益を喪失したことによる損害
契約上の債務の不履行 又は不法行為により、消費者契約による製造、加工、修理、運搬 又は保管に係る物品 その他の消費者契約の目的となる役務の対象となったもの以外の財産が滅失し、又は損傷したことによる損害
消費者契約の目的となる役務の提供があるとすれば当該役務を利用すること 又は当該役務の対象となったものを処分し、若しくは使用することにより得るはずであった利益を喪失したことによる損害
精神上の苦痛を受けたことによる損害(その額の算定の基礎となる主要な事実関係が相当多数の消費者について共通するものであり、かつ、次のイ 又はロのいずれかに該当するものを除く。)
共通義務確認の訴えにおいて一の訴えにより、前項各号に掲げる請求(同項第三号から第五号までに掲げる請求にあっては、精神上の苦痛を受けたことによる損害に係る請求を含まないものに限る。以下このイにおいて「財産的請求」という。)と併せて請求されるものであって、財産的請求と共通する事実上の原因に基づくもの
事業者の故意によって生じたもの
次の各号に掲げる請求に係る金銭の支払義務についての共通義務確認の訴えについては、当該各号に定める者を被告とする。
第一項第一号から第三号までに掲げる請求
消費者契約の相手方である事業者
第一項第四号に掲げる請求
消費者契約の相手方である事業者 若しくはその債務の履行をする事業者 又は消費者契約の締結について勧誘をし、当該勧誘をさせ、若しくは当該勧誘を助長する事業者
第一項第五号に掲げる請求
次に掲げる者
消費者契約の相手方である事業者 若しくはその債務の履行をする事業者 又は消費者契約の締結について勧誘をし、当該勧誘をさせ、若しくは当該勧誘を助長する事業者であって、当該事業者の消費者契約に関する業務の執行について第三者に損害を加えた被用者を使用するもの
イに掲げる事業者の事業監督者
イに掲げる事業者の被用者であって、当該事業者の消費者契約に関する業務の執行について第三者に損害を加えたもの
裁判所は、共通義務確認の訴えに係る請求を認容する判決をしたとしても、事案の性質、当該判決を前提とする簡易確定手続において予想される主張 及び立証の内容 その他の事情を考慮して、当該簡易確定手続において対象債権の存否 及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるときは、共通義務確認の訴えの全部 又は一部を却下することができる。
共通義務確認の訴えは、訴訟の目的の価額の算定については、財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなす。
共通義務確認の訴えの訴状には、対象債権 及び対象消費者の範囲を記載して、請求の趣旨 及び原因を特定しなければならない。
共通義務確認訴訟については、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第五条(第五号に係る部分を除く。)の規定は、適用しない。
次の各号に掲げる請求に係る金銭の支払義務についての共通義務確認の訴えは、当該各号に定める地を管轄する地方裁判所にも提起することができる。
第三条第一項第一号から第三号までに掲げる請求
義務履行地
第三条第一項第四号 及び第五号に掲げる請求に掲げる請求
不法行為があった地
対象消費者の数が五百人以上であると見込まれるときは、民事訴訟法第四条第一項 若しくは第五条第五号 又は前項の規定による管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも、共通義務確認の訴えを提起することができる。
対象消費者の数が千人以上であると見込まれるときは、東京地方裁判所 又は大阪地方裁判所にも、共通義務確認の訴えを提起することができる。
民事訴訟法第四条第一項、第五条第五号、第十一条第一項 若しくは第十二条 又は前三項の規定により二以上の地方裁判所が管轄権を有するときは、共通義務確認の訴えは、先に訴えの提起があった地方裁判所が管轄する。
ただし、その地方裁判所は、著しい損害 又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てにより 又は職権で、当該共通義務確認の訴えに係る訴訟の全部 又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
裁判所は、共通義務確認訴訟がその管轄に属する場合においても、他の裁判所に事実上 及び法律上同種の原因に基づく請求を目的とする共通義務確認訴訟が係属している場合において、当事者の住所 又は所在地、尋問を受けるべき証人の住所、争点 又は証拠の共通性 その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申立てにより 又は職権で、当該共通義務確認訴訟の全部 又は一部について、当該他の裁判所に移送することができる。
請求の内容 及び相手方が同一である共通義務確認訴訟が数個同時に係属するときは、その弁論 及び裁判は、併合してしなければならない。
前項に規定する場合には、当事者は、その旨を裁判所に申し出なければならない。
消費者は、民事訴訟法第四十二条の規定にかかわらず、共通義務確認訴訟の結果について利害関係を有する場合であっても、特定適格消費者団体を補助するため、その共通義務確認訴訟に参加することができない。
共通義務確認訴訟が係属する裁判所は、次に掲げる事由につき疎明があった場合には、当該共通義務確認訴訟の当事者である特定適格消費者団体の申立てにより、決定で、当該共通義務確認訴訟の当事者である事業者等に対して、第三十一条第一項の規定により事業者等が特定適格消費者団体に開示しなければならない同項に規定する文書について、同条第二項に規定する方法により開示することを命ずることができる。
第二条第四号に規定する義務が存すること。
前項の規定による命令(以下この条において「保全開示命令」という。)の申立ては、文書の表示を明らかにしてしなければならない。
裁判所は、保全開示命令の申立てについて決定をする場合には、事業者等を審尋しなければならない。
事業者等が正当な理由なく保全開示命令に従わないときは、裁判所は、決定で、三十万円以下の過料に処する。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
民事訴訟法第百八十九条の規定は、第六項の規定による過料の裁判について準用する。
共通義務確認訴訟の確定判決は、民事訴訟法第百十五条第一項の規定にかかわらず、当該共通義務確認訴訟の当事者以外の特定適格消費者団体 及び当該共通義務確認訴訟に係る対象消費者の範囲に属する第三十三条第二項第一号に規定する届出消費者に対しても その効力を有する。
共通義務確認訴訟の当事者は、当該共通義務確認訴訟において、当該共通義務確認の訴えの被告とされた事業者等に当該共通義務確認訴訟の目的である第二条第四号に規定する義務が存することを認める旨の和解をするときは、当該義務に関し、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
当該義務に係る事実上 及び法律上の原因
共通義務確認訴訟の当事者は、当該共通義務確認訴訟において、当該共通義務確認訴訟に係る対象債権に係る紛争の解決に関し、当該紛争に係る消費者の当該共通義務確認の訴えの被告とされた事業者等に対する対象債権以外の金銭の支払請求権(以下「和解金債権」という。)が存することを認める旨の和解をするときは、当該和解金債権に関し、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
和解金債権を有する消費者(第二十六条第一項第十号において「和解対象消費者」という。)の範囲
共通義務確認訴訟における和解において、当該共通義務確認訴訟の当事者である特定適格消費者団体が当該共通義務確認訴訟の目的である第二条第四号に規定する義務について共通義務確認の訴えを提起しない旨の定めがされたときは、当該定めは、当該共通義務確認訴訟の当事者以外の特定適格消費者団体に対してもその効力を有する。
共通義務確認の訴えが提起された場合において、原告 及び被告が共謀して共通義務確認の訴えに係る対象消費者の権利を害する目的をもって判決をさせたときは、他の特定適格消費者団体は、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。