司法試験は、裁判官、検察官 又は弁護士となろうとする者に必要な学識 及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とする。
司法試験法
第一章 司法試験等
裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第六十六条の試験は、この法律により行う。
司法試験は、法科大学院(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十九条第二項に規定する専門職大学院であつて、法曹に必要な学識 及び能力を培うことを目的とするものをいう。第四条において同じ。)の課程における教育 及び司法修習生の修習との有機的連携の下に行うものとする。
司法試験は、短答式(択一式を含む。以下同じ。)及び論文式による筆記の方法により行う。
司法試験の合格者の判定は、短答式による筆記試験の合格に必要な成績を得た者につき、短答式による筆記試験 及び論文式による筆記試験の成績を総合して行うものとする。
短答式による筆記試験は、裁判官、検察官 又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な法律知識及び法的な推論の能力を有するかどうかを判定することを目的とし、次に掲げる科目について行う。
憲法
民法
刑法
論文式による筆記試験は、裁判官、検察官 又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な学識 並びに法的な分析、構成 及び論述の能力を有するかどうかを判定することを目的とし、次に掲げる科目について行う。
公法系科目(憲法 及び行政法に関する分野の科目をいう。)
民事系科目(民法、商法 及び民事訴訟法に関する分野の科目をいう。)
刑事系科目(刑法 及び刑事訴訟法に関する分野の科目をいう。)
専門的な法律の分野に関する科目として法務省令で定める科目のうち受験者のあらかじめ選択する一科目
前二項に掲げる試験科目については、法務省令により、その全部 又は一部について範囲を定めることができる。
司法試験においては、その受験者が裁判官、検察官 又は弁護士となろうとする者に必要な学識 及びその応用能力を備えているかどうかを適確に評価するため、知識を有するかどうかの判定に偏することなく、法律に関する理論的かつ実践的な理解力、思考力、判断力等の判定に意を用いなければならない。
司法試験は、次の各号に掲げる者が、それぞれ当該各号に定める期間において受けることができる。
法科大学院の課程を修了した者
その修了の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間
司法試験予備試験に合格した者
その合格の発表の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間
前項の規定にかかわらず、司法試験は、第一号に掲げる者が、第二号に掲げる期間において受けることができる。
法科大学院の課程に在学する者であつて、法務省令で定めるところにより、当該法科大学院を設置する大学の学長が、次のイ 及びロに掲げる要件を満たすことについて認定をしたもの
当該法科大学院において所定科目単位(裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを司法試験により判定するために必要なものとして法務省令で定める科目の単位をいう。)を修得していること。
司法試験が行われる日の属する年の四月一日から一年以内に当該法科大学院の課程を修了する見込みがあること。
この項の規定により前号の法科大学院の課程に在学している間に最初に司法試験を受けた日の属する年の四月一日から当該法科大学院の課程を修了 若しくは退学するまでの期間 又は同日から五年を経過するまでの期間のいずれか短い期間
前項の規定により司法試験を受けた者が同項第一号の法科大学院の課程を修了した場合における第一項第一号の規定の適用については、
同号中
「その修了の日後の最初の」とあるのは、
「次項の規定により最初に司法試験を受けた日の属する年の」と
する。
第一項 又は第二項の規定により司法試験を受けた者は、その受験に係る受験資格(第一項各号に規定する法科大学院の課程の修了 若しくは司法試験予備試験の合格 又は第二項第一号に規定する法科大学院の課程の在学 及び当該法科大学院を設置する大学の学長の認定をいう。以下この項において同じ。)に対応する受験期間(第一項各号に定める期間 又は第二項第二号に掲げる期間をいう。)においては、他の受験資格に基づいて司法試験を受けることはできない。
司法試験予備試験(以下「予備試験」という。)は、司法試験を受けようとする者が前条第一項第一号に掲げる者と同等の学識 及びその応用能力 並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とし、短答式 及び論文式による筆記 並びに口述の方法により行う。
短答式による筆記試験は、次に掲げる科目について行う。
憲法
民法
商法
民事訴訟法
刑法
刑事訴訟法
論文式による筆記試験は、短答式による筆記試験に合格した者につき、次に掲げる科目について行う。
前項各号に掲げる科目
法律実務基礎科目(法律に関する実務の基礎的素養(実務の経験により修得されるものを含む。)についての科目をいう。次項において同じ。)
口述試験は、筆記試験に合格した者につき、法的な推論、分析 及び構成に基づいて弁論をする能力を有するかどうかの判定に意を用い、法律実務基礎科目について行う。
前三項に規定する試験科目については、法務省令により、その全部 又は一部について範囲を定めることができる。
法務大臣は、第三条第二項第四号 若しくは第三項 又は前条第五項の法務省令を制定し、又は改廃しようとするときは、司法試験委員会の意見を聴かなければならない。
司法試験 及び予備試験は、それぞれ、司法試験委員会が毎年一回以上行うものとし、その期日 及び場所は、あらかじめ官報をもつて公告する。
司法試験の合格者は司法試験考査委員の合議による判定に基づき、予備試験の合格者は司法試験予備試験考査委員の合議による判定に基づき、それぞれ司法試験委員会が決定する。
司法試験 又は予備試験に合格した者には、それぞれ当該試験に合格したことを証する証書を授与する。
司法試験委員会は、不正の手段によつて司法試験 若しくは予備試験を受け、若しくは受けようとした者 又はこの法律 若しくはこの法律に基づく法務省令に違反した者に対しては、その試験を受けることを禁止し、合格の決定を取り消し、又は情状により五年以内の期間を定めて司法試験 若しくは予備試験を受けることができないものとすることができる。
司法試験 又は予備試験を受けようとする者は、それぞれ実費を勘案して政令で定める額の受験手数料を納付しなければならない。
前項の規定により納付した受験手数料は、当該試験を受けなかつた場合においても返還しない。