国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律

# 平成二十五年法律第四十八号 #
略称 : ハーグ条約実施法 

第一節 返還事由等

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和六年五月二十四日 ( 2024年 5月24日 )
@ 最終更新 : 令和六年法律第三十三号
最終編集日 : 2024年 11月23日 19時25分


1項

日本国への連れ去り 又は日本国における留置により子についての監護の権利を侵害された者は、子を監護している者に対し、この法律の定めるところにより、常居所地国に子を返還することを命ずるよう家庭裁判所に申し立てることができる。

1項

裁判所は、子の返還の申立てが次の各号に掲げる事由のいずれにも該当すると認めるときは、子の返還を命じなければならない。

一 号

子が十六歳に達していないこと。

二 号
子が日本国内に所在していること。
三 号

常居所地国の法令によれば、当該連れ去り 又は留置が申立人の有する子についての監護の権利を侵害するものであること。

四 号
当該連れ去りの時 又は当該留置の開始の時に、常居所地国が条約締約国であったこと。
1項

裁判所は、の規定にかかわらず次の各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるときは、子の返還を命じてはならない。


ただし第一号から第三号まで 又は第五号に掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して常居所地国に子を返還することが子の利益に資すると認めるときは、子の返還を命ずることができる。

一 号

子の返還の申立てが当該連れ去りの時 又は当該留置の開始の時から一年を経過した後にされたものであり、かつ、子が新たな環境に適応していること。

二 号

申立人が当該連れ去りの時 又は当該留置の開始の時に子に対して現実に監護の権利を行使していなかったこと(当該連れ去り又は留置がなければ申立人が子に対して現実に監護の権利を行使していたと認められる場合を除く)。

三 号
申立人が当該連れ去りの前 若しくは当該留置の開始の前にこれに同意し、又は当該連れ去りの後 若しくは当該留置の開始の後にこれを承諾したこと。
四 号
常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすこと その他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること。
五 号
子の年齢 及び発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である場合において、子が常居所地国に返還されることを拒んでいること。
六 号
常居所地国に子を返還することが日本国における人権 及び基本的自由の保護に関する基本原則により認められないものであること。
2項

裁判所は、前項第四号に掲げる事由の有無を判断するに当たっては、次に掲げる事情 その他の一切の事情を考慮するものとする。

一 号

常居所地国において子が申立人から身体に対する暴力 その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次号において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無

二 号
相手方 及び子が常居所地国に入国した場合に相手方が申立人から子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれの有無
三 号
申立人 又は相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情の有無
3項

裁判所は、日本国において子の監護に関する裁判があったこと 又は外国においてされた子の監護に関する裁判が日本国で効力を有する可能性があることのみを理由として、子の返還の申立てを却下する裁判をしてはならない。


ただし、これらの子の監護に関する裁判の理由を子の返還の申立てについての裁判において考慮することを妨げない。