感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

# 平成十年法律第百十四号 #
略称 : 感染症予防法  感染症法 

第一章 総則

分類 法律
カテゴリ   厚生
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第九十六号による改正
最終編集日 : 2024年 11月23日 19時25分


1項

この法律は、感染症の予防 及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。

1項

感染症の発生の予防 及びそのまん延の防止を目的として国 及び地方公共団体が講ずる施策は、これらを目的とする施策に関する国際的動向を踏まえつつ、保健医療を取り巻く環境の変化、国際交流の進展等に即応し、新感染症 その他の感染症に迅速かつ適確に対応することができるよう、感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し、これらの者の人権を尊重しつつ、総合的かつ計画的に推進されることを基本理念とする。

1項

国 及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じた感染症に関する正しい知識の普及、感染症に関する情報の収集、整理、分析 及び提供、感染症に関する研究の推進、病原体等の検査能力の向上並びに感染症の予防に係る人材の養成 及び資質の向上を図るとともに、社会福祉等の関連施策との有機的な連携に配慮しつつ感染症の患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


この場合において、国 及び地方公共団体は、感染症の患者等の人権を尊重しなければならない。

2項

国 及び地方公共団体は、地域の特性に配慮しつつ、感染症の予防に関する施策が総合的かつ迅速に実施されるよう、相互に連携を図らなければならない。

3項

国は、感染症 及び病原体等に関する情報の収集 及び研究 並びに感染症に係る医療のための医薬品の研究開発の推進 及び当該医薬品の安定供給の確保、病原体等の検査の実施等を図るための体制を整備し、国際的な連携を確保するよう努めるとともに、地方公共団体に対し前二項の責務が十分に果たされるように必要な技術的 及び財政的援助を与えることに努めなければならない。

1項

国民は、感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない。

1項

医師 その他の医療関係者は、感染症の予防に関し国 及び地方公共団体が講ずる施策に協力し、その予防に寄与するよう努めるとともに、感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切な医療を行うとともに、当該医療について適切な説明を行い、当該患者等の理解を得るよう努めなければならない。

2項

病院、診療所、病原体等の検査を行っている機関、老人福祉施設等の施設の開設者 及び管理者は、当該施設において感染症が発生し、又はまん延しないように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

1項

獣医師 その他の獣医療関係者は、感染症の予防に関し国 及び地方公共団体が講ずる施策に協力するとともに、その予防に寄与するよう努めなければならない。

2項

動物等取扱業者(動物 又はその死体の輸入、保管、貸出し、販売 又は遊園地、動物園、博覧会の会場 その他不特定かつ多数の者が入場する施設 若しくは場所における展示を業として行う者をいう。)は、その輸入し、保管し、貸出しを行い、販売し、又は展示する動物 又はその死体が感染症を人に感染させることがないように、感染症の予防に関する知識 及び技術の習得、動物 又はその死体の適切な管理 その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

1項

この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症 及び新感染症をいう。

2項

この法律において「一類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。

一 号
エボラ出血熱
二 号
クリミア・コンゴ出血熱
三 号
痘そう
四 号
南米出血熱
五 号
ペスト
六 号
マールブルグ病
七 号
ラッサ熱
3項

この法律において「二類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。

一 号
急性灰白髄炎
二 号
結核
三 号
ジフテリア
四 号

重症急性呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る

五 号

中東呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る

六 号

鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型が新型インフルエンザ等感染症(第七項第三号に掲げる新型コロナウイルス感染症 及び同項第四号に掲げる再興型コロナウイルス感染症を除く第六項第一号 及び第二十五項第一号において同じ。)の病原体に変異するおそれが高いものの血清亜型として政令で定めるものであるものに限る第五項第七号において「特定鳥インフルエンザ」という。

4項

この法律において「三類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。

一 号
コレラ
二 号
細菌性赤痢
三 号
腸管出血性大腸菌感染症
四 号
腸チフス
五 号
パラチフス
5項

この法律において「四類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。

一 号
E型肝炎
二 号
A型肝炎
三 号
黄熱
四 号
Q熱
五 号
狂犬病
六 号
炭疽
七 号

鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く

八 号
ボツリヌス症
九 号
マラリア
十 号

野兎病

十一 号

前各号に掲げるもののほか、既に知られている感染性の疾病であって、動物 又はその死体、飲食物、衣類、寝具 その他の物件を介して人に感染し、前各号に掲げるものと同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの

6項

この法律において「五類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。

一 号

インフルエンザ(鳥インフルエンザ 及び新型インフルエンザ等感染症を除く

二 号

ウイルス性肝炎(E型肝炎 及びA型肝炎を除く

三 号
クリプトスポリジウム症
四 号
後天性免疫不全症候群
五 号
性器クラミジア感染症
六 号
梅毒
七 号
麻しん
八 号
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
九 号

前各号に掲げるもののほか、既に知られている感染性の疾病(四類感染症を除く)であって、前各号に掲げるものと 同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして厚生労働省令で定めるもの

7項

この法律において「新型インフルエンザ等感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。

一 号

新型インフルエンザ(新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命 及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。

二 号

再興型インフルエンザ(かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後 流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命 及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。

三 号

新型コロナウイルス感染症(新たに人から人に伝染する能力を有することとなったコロナウイルスを病原体とする感染症であって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命 及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。

四 号

再興型コロナウイルス感染症(かつて世界的規模で流行したコロナウイルスを病原体とする感染症であってその後 流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命 及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。

8項

この法律において「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症 及び新型インフルエンザ等感染症を除く)であって、第三章から第七章までの規定の全部 又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命 及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。

9項

この法律において「新感染症」とは、人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病と その病状 又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命 及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。

10項

この法律において「疑似症患者」とは、感染症の疑似症を呈している者をいう。

11項

この法律において「無症状病原体保有者」とは、感染症の病原体を保有している者であって当該感染症の症状を呈していないものをいう。

12項

この法律において「感染症指定医療機関」とは、特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関、第二種感染症指定医療機関、第一種協定指定医療機関、第二種協定指定医療機関 及び結核指定医療機関をいう。

13項

この法律において「特定感染症指定医療機関」とは、新感染症の所見がある者 又は一類感染症、二類感染症 若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として厚生労働大臣が指定した病院をいう。

14項

この法律において「第一種感染症指定医療機関」とは、一類感染症、二類感染症 又は新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院をいう。

15項

この法律において「第二種感染症指定医療機関」とは、二類感染症 又は新型インフルエンザ等 感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院をいう。

16項

この法律において「第一種協定指定医療機関」とは、第三十六条の二第一項の規定による通知(同項第一号に掲げる措置をその内容に含むものに限る)又は第三十六条の三第一項に規定する医療措置協定(同号に掲げる措置をその内容に含むものに限る)に基づき、新型インフルエンザ等感染症 若しくは指定感染症の患者 又は新感染症の所見がある者を入院させ、必要な医療を提供する医療機関として都道府県知事が指定した病院 又は診療所をいう。

17項

この法律において「第二種協定指定医療機関」とは、第三十六条の二第一項の規定による通知(同項第二号 又は第三号に掲げる措置をその内容に含むものに限る)又は第三十六条の三第一項に規定する医療措置協定(第三十六条の二第一項第二号 又は第三号に掲げる措置をその内容に含むものに限る)に基づき、第四十四条の三の二第一項第四十四条の九第一項の規定に基づく政令によって準用される場合を含む。)又は第五十条の三第一項の厚生労働省令で定める医療を提供する医療機関として都道府県知事が指定した病院 若しくは診療所(これらに準ずるものとして政令で定めるものを含む。次項第三十八条第二項第四十二条第一項第四十四条の三の三第一項 及び第五十条の四第一項において同じ。)又は薬局をいう。

18項

この法律において「結核指定医療機関」とは、結核患者に対する適正な医療を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院 若しくは診療所 又は薬局をいう。

19項

この法律において「病原体等」とは、感染症の病原体 及び毒素をいう。

20項

この法律において「毒素」とは、感染症の病原体によって産生される物質であって、人の生体内に入った場合に人を発病させ、又は死亡させるもの(人工的に合成された物質で、その構造式がいずれかの毒素の構造式と同一であるもの(以下「人工合成毒素」という。)を含む。)をいう。

21項

この法律において「特定病原体等」とは、一種病原体等、二種病原体等、三種病原体等 及び四種病原体等をいう。

22項

この法律において「一種病原体等」とは、次に掲げる病原体等(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律昭和三十五年法律第百四十五号第十四条第一項第二十三条の二の五第一項 若しくは第二十三条の二十五第一項の規定による承認 又は同法第二十三条の二の二十三第一項の規定による認証を受けた医薬品 又は再生医療等製品に含有されるものその他これに準ずる病原体等(以下「医薬品等」という。)であって、人を発病させるおそれがほとんどないものとして厚生労働大臣が指定するものを除く)をいう。

一 号

アレナウイルス属ガナリトウイルス、サビアウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス 及びラッサウイルス

二 号

エボラウイルス属アイボリーコーストエボラウイルス、ザイールウイルス、スーダンエボラウイルス 及びレストンエボラウイルス

三 号

オルソポックスウイルス属バリオラウイルス(別名痘そうウイルス

四 号

ナイロウイルス属クリミア・コンゴヘモラジックフィーバーウイルス(別名クリミア・コンゴ出血熱ウイルス

五 号
マールブルグウイルス属レイクビクトリアマールブルグウイルス
六 号

前各号に掲げるもののほか前各号に掲げるものと同程度に病原性を有し、国民の生命 及び健康に極めて重大な影響を与えるおそれがある病原体等として政令で定めるもの

23項

この法律において「四種病原体等」とは、次に掲げる病原体等(医薬品等であって、人を発病させるおそれがほとんどないものとして厚生労働大臣が指定するものを除く)をいう。

一 号

エルシニア属ペスティス(別名ペスト菌

二 号

クロストリジウム属ボツリヌム(別名ボツリヌス菌

三 号
ベータコロナウイルス属SARSコロナウイルス
四 号

バシラス属アントラシス(別名炭疽菌

五 号

フランシセラ属ツラレンシス種(別名野兎病菌)亜種ツラレンシス 及びホルアークティカ

六 号

ボツリヌス毒素(人工合成毒素であって、その構造式がボツリヌス毒素の構造式と同一であるものを含む。

七 号

前各号に掲げるもののほか前各号に掲げるものと同程度に病原性を有し、国民の生命 及び健康に重大な影響を与えるおそれがある病原体等として政令で定めるもの

24項

この法律において「三種病原体等」とは、次に掲げる病原体等(医薬品等であって、人を発病させるおそれがほとんどないものとして厚生労働大臣が指定するものを除く)をいう。

一 号
コクシエラ属バーネッティイ
二 号

マイコバクテリウム属ツベルクローシス(別名結核菌)(イソニコチン酸ヒドラジド、リファンピシン その他結核の治療に使用される薬剤として政令で定めるものに対し耐性を有するものに限る

三 号

リッサウイルス属レイビーズウイルス(別名狂犬病ウイルス

四 号

前三号に掲げるもののほか前三号に掲げるものと同程度に病原性を有し、国民の生命 及び健康に影響を与えるおそれがある病原体等として政令で定めるもの

25項

この法律において「四種病原体等」とは、次に掲げる病原体等(医薬品等であって、人を発病させるおそれがほとんどないものとして厚生労働大臣が指定するものを除く)をいう。

一 号

インフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルス(血清亜型が政令で定めるものであるもの(新型インフルエンザ等感染症の病原体を除く)又は新型インフルエンザ等感染症の病原体に限る

二 号

エシェリヒア属コリー(別名大腸菌)(腸管出血性大腸菌に限る

三 号
エンテロウイルス属ポリオウイルス
四 号

クリプトスポリジウム属パルバム(遺伝子型が一型 又は二型であるものに限る

五 号

サルモネラ属エンテリカ(血清亜型がタイフィ 又はパラタイフィAであるものに限る

六 号

志賀毒素(人工合成毒素であって、その構造式が志賀毒素の構造式と同一であるものを含む。

七 号

シゲラ属(別名赤痢菌)ソンネイ、デイゼンテリエ、フレキシネリー 及びボイデイ

八 号

ビブリオ属コレラ(別名コレラ菌)(血清型がO一 又はO一三九であるものに限る

九 号

フラビウイルス属イエローフィーバーウイルス(別名黄熱ウイルス

十 号

マイコバクテリウム属ツベルクローシス(前項第二号に掲げる病原体を除く

十一 号

前各号に掲げるもののほか前各号に掲げるものと同程度に病原性を有し、国民の健康に影響を与えるおそれがある病原体等として政令で定めるもの

26項

厚生労働大臣は、第三項第六号の政令の制定 又は改廃の立案をしようとするときは、あらかじめ厚生科学審議会の意見を聴かなければならない。

1項

一類感染症の疑似症患者 又は二類感染症のうち政令で定めるものの疑似症患者については、それぞれ一類感染症の患者 又は二類感染症の患者とみなして、この法律の規定を適用する。

2項

新型インフルエンザ等感染症の疑似症患者であって当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のあるものについては、新型インフルエンザ等感染症の患者とみなして、この法律の規定を適用する。

3項

一類感染症の無症状病原体保有者 又は新型インフルエンザ等感染症の無症状病原体保有者については、それぞれ一類感染症の患者 又は新型インフルエンザ等感染症の患者とみなして、この法律の規定を適用する。