性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律

# 令和四年法律第七十八号 #
略称 : AV出演被害防止・救済法 

第一章 総則

分類 法律
カテゴリ   労働
最終編集日 : 2024年 11月23日 19時25分


1項

この法律は、性行為映像制作物の制作公表により出演者の心身 及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがあり、また、現に生じていることに鑑み、性行為映像制作物への出演に係る被害の発生 及び拡大の防止を図り、並びにその被害を受けた出演者の救済に資するために徹底した対策を講ずることが出演者の個人としての人格を尊重し、あわせてその心身の健康 及び私生活の平穏 その他の利益を保護するために不可欠であるとの認識の下に、性行為の強制の禁止 並びに他の法令による契約の無効 及び性行為 その他の行為の禁止 又は制限をいささかも変更するものではないとのこの法律の実施 及び解釈の基本原則を明らかにした上で、出演契約の締結 及び履行等に当たっての制作公表者等の義務、出演契約の効力の制限 及び解除 並びに差止請求権の創設等の厳格な規制を定める特則 並びに特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律平成十三年法律第百三十七号)の特例を定めるとともに、出演者等のための相談体制の整備等について定め、もって出演者の性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資することを目的とする。

1項

この法律において「性行為」とは、性交 若しくは性交類似行為 又は他人が人の露出された性器等(性器 又は肛門(こうもん)をいう。以下 この項において同じ。)を触る行為 若しくは人が自己 若しくは他人の露出された性器等を触る行為をいう。

2項

この法律において「性行為映像制作物」とは、性行為に係る人の姿態を撮影した映像 並びにこれに関連する映像 及び音声によって構成され、社会通念上一体の内容を有するものとして制作された電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)又はこれに係る記録媒体であって、その全体として専ら性欲を興奮させ 又は刺激するものをいう。

3項

この法律において「性行為映像制作物への出演」とは、性行為映像制作物において性行為に係る姿態の撮影の対象となることをいう。

4項

この法律において「出演者」とは、性行為映像制作物への出演をし、又はしようとする者をいう。

5項

この法律において「制作公表」とは、撮影、編集、流通、公表(頒布、公衆送信(公衆(特定かつ多数の者を含む。)によって直接受信されることを目的として無線通信 又は有線電気通信の送信を行うことをいう。)又は上映をいう。以下同じ。)等(これらの行為に関するあっせんを含む。)の一連の過程の全部 又は一部を行うことをいう。

6項

この法律において「出演契約」とは、出演者が、性行為映像制作物への出演をして、その性行為映像制作物の制作公表を行うことを承諾することを内容とする契約をいう。

7項

この法律において「制作公表者」とは、性行為映像制作物の制作公表を行う者として、出演者との間で出演契約を締結し、又は締結しようとする者をいう。

8項

この法律において「制作公表従事者」とは、制作公表者以外の者であって、制作公表者との間の雇用、請負、委任 その他の契約に基づき性行為映像制作物の制作公表に従事する者をいう。

1項

制作公表者 及び制作公表従事者は、その行う性行為映像制作物の制作公表により出演者の心身 及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがあり、また、現に生じていることを深く自覚して、出演者の個人としての人格を尊重し、あわせてその心身の健康 及び私生活の平穏 その他の利益を保護し、もってその性をめぐる個人の尊厳が重んぜられるようにしなければならない。

2項

制作公表者 及び制作公表従事者は、性行為映像制作物に係る撮影に当たって、出演者に対して性行為を強制してはならない

3項

この法律のいかなる規定も、公の秩序 又は善良の風俗に反する法律行為を無効とする民法明治二十九年法律第八十九号第九十条の規定 その他の法令の規定により無効とされる契約を有効とするものと解釈してはならない。

4項

制作公表者 及び制作公表従事者は、性行為映像制作物の制作公表に当たっては、この法律により刑法明治四十年法律第四十五号)、売春防止法昭和三十一年法律第百十八号)その他の法令において禁止され 又は制限されている性行為 その他の行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、出演者の権利 及び自由を侵害することがないようにしなければならない。