係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
民事保全法
第三款 仮処分命令
仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害 又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。
第二項の仮処分命令は、口頭弁論 又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。
ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
裁判所は、仮処分命令の申立ての目的を達するため、債務者に対し一定の行為を命じ、若しくは禁止し、若しくは給付を命じ、又は保管人に目的物を保管させる処分 その他の必要な処分をすることができる。
裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときに限り、債権者の意見を聴いて、仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を仮処分命令において定めることができる。
第二十二条第二項の規定は、前項の金銭の供託について準用する。
占有移転禁止の仮処分命令(係争物の引渡し 又は明渡しの請求権を保全するための仮処分命令のうち、次に掲げる事項を内容とするものをいう。以下この条、第五十四条の二 及び第六十二条において同じ。)であって、係争物が不動産であるものについては、その執行前に債務者を特定することを困難とする特別の事情があるときは、裁判所は、債務者を特定しないで、これを発することができる。
債務者に対し、係争物の占有の移転を禁止し、及び係争物の占有を解いて執行官に引き渡すべきことを命ずること。
執行官に、係争物の保管をさせ、かつ、債務者が係争物の占有の移転を禁止されている旨 及び執行官が係争物を保管している旨を公示させること。
前項の規定による占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、当該執行によって係争物である不動産の占有を解かれた者が、債務者となる。
第一項の規定による占有移転禁止の仮処分命令は、第四十三条第二項の期間内にその執行がされなかったときは、債務者に対して送達することを要しない。
この場合において、第四条第二項において準用する民事訴訟法第七十九条第一項の規定による担保の取消しの決定で第十四条第一項の規定により立てさせた担保に係るものは、裁判所が相当と認める方法で申立人に告知することによって、その効力を生ずる。