被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用 及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。
ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用 及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。
ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。
遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。
配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。
ただし、遺産の分割の協議 若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。
居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。
第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。
配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用 及び収益をしなければならない。
ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。
配偶者居住権は、譲渡することができない。
配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築 若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用 若しくは収益をさせることができない。
配偶者が第一項 又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。
配偶者は、居住建物の使用 及び収益に必要な修繕をすることができる。
居住建物の修繕が必要である場合において、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができる。
居住建物が修繕を要するとき(第一項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く。)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なく その旨を通知しなければならない。
ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。
第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。
配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。
ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物の所有者は、配偶者居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
第五百九十九条第一項 及び第二項並びに第六百二十一条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物 又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。
第五百九十七条第一項 及び第三項、第六百条、第六百十三条 並びに第六百十六条の二の規定は、配偶者居住権について準用する。