この法律は、発達障害者の心理機能の適正な発達 及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後 できるだけ早期に発達支援を行うとともに、切れ目なく発達障害者の支援を行うことが特に重要であることに鑑み、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、発達障害者が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国 及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立 及び社会参加のためのその生活全般にわたる支援を図り、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。
発達障害者支援法
第一章 総則
この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群 その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害 その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
この法律において「発達障害者」とは、発達障害がある者であって発達障害 及び社会的障壁により日常生活 又は社会生活に制限を受けるものをいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。
この法律において「社会的障壁」とは、発達障害がある者にとって日常生活 又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念 その他一切のものをいう。
この法律において「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う個々の発達障害者の特性に対応した医療的、福祉的 及び教育的援助をいう。
発達障害者の支援は、全ての発達障害者が社会参加の機会が確保されること 及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないことを旨として、行われなければならない。
発達障害者の支援は、社会的障壁の除去に資することを旨として、行われなければならない。
発達障害者の支援は、個々の発達障害者の性別、年齢、障害の状態 及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関 及び民間団体相互の緊密な連携の下に、その意思決定の支援に配慮しつつ、切れ目なく行われなければならない。
国 及び地方公共団体は、発達障害者の心理機能の適正な発達 及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることに鑑み、前条の基本理念(次項 及び次条において「基本理念」という。)にのっとり、発達障害の早期発見のため必要な措置を講じるものとする。
国 及び地方公共団体は、基本理念にのっとり、発達障害児に対し、発達障害の症状の発現後できるだけ早期に、その者の状況に応じて適切に、就学前の発達支援、学校における発達支援 その他の発達支援が行われるとともに、発達障害者に対する就労、地域における生活等に関する支援 及び発達障害者の家族 その他の関係者に対する支援が行われるよう、必要な措置を講じるものとする。
国 及び地方公共団体は、発達障害者 及び その家族 その他の関係者からの各種の相談に対し、個々の発達障害者の特性に配慮しつつ総合的に応ずることができるようにするため、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関 及び民間団体相互の有機的連携の下に必要な相談体制の整備を行うものとする。
発達障害者の支援等の施策が講じられるに当たっては、発達障害者 及び発達障害児の保護者(親権を行う者、未成年後見人 その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)の意思ができる限り尊重されなければならないものとする。
国 及び地方公共団体は、発達障害者の支援等の施策を講じるに当たっては、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を担当する部局の相互の緊密な連携を確保するとともに、発達障害者が被害を受けること等を防止するため、これらの部局と消費生活、警察等に関する業務を担当する部局 その他の関係機関との必要な協力体制の整備を行うものとする。
国民は、個々の発達障害の特性 その他発達障害に関する理解を深めるとともに、基本理念にのっとり、発達障害者の自立 及び社会参加に協力するように努めなければならない。