連合国財産補償法

# 昭和二十六年法律第二百六十四号 #

第二章 損害額の算定

分類 法律
カテゴリ   外事
@ 施行日 : 平成二十八年四月一日
@ 最終更新 : 平成二十六年法律第六十九号による改正
最終編集日 : 2024年 05月06日 17時59分


1項

有体物で返還されたものについて生じた損害額は、その財産の返還時の状態を開戦時の状態まで回復するため補償時(第十六条第一項 又は第四項の規定により日本政府が補償金を支払う時をいう。以下同じ。)において必要な金額のうち前条第一項に規定する損害に係る金額とする。


この場合において、その財産がその返還後日本政府の負担によつて補修されたものであるときは、当該財産については、その補修された時の状態を返還時の状態とみなす。

2項

有体物で滅失し、若しくは著しいき損が生じたため 又は所在不明のため返還されなかつたものについて生じた損害額は、開戦時の状態のその財産と同様の財産を本邦内において買い入れるため補償時において必要な金額のうち前条第一項に規定する損害に係る金額とする。

3項

前二項に規定する有体物以外の有体物について生じた損害額は、その財産の平和条約の効力発生時の状態を開戦時の状態まで回復するため補償時において必要な金額のうち前条第一項に規定する損害に係る金額とする。

1項

地上権、永小作権、地役権 又は不動産の賃借権で、これらの権利の目的物の滅失 又は著しい変更のため返還されなかつたものについて生じた損害額は、これらの権利と同様の権利を本邦内において取得するため補償時において必要な金額とする。

1項

金銭債権について生じた損害額は、戦時特別措置により譲渡され、 又は消滅した債権額とする。

2項

金銭債権を担保する抵当権、質権、留置権 若しくは先取特権が戦時特別措置により消滅した場合 又は これらの権利の目的物が戦争の結果滅失 又はき損した場合における金銭債権について生じた損害額は、これらの権利の消滅 又は その目的物の滅失 若しくは き損により債権者が弁済を受けることができなくなつた額とする。

1項

戦時特別措置の適用を受けた公債、社債、特別の法律により法人の発行した債券 又は外国 若しくは外国法人の発行する公債 若しくは社債(以下「公債等」という。)で返還されなかつたもののうち補償時までに償還期限が到来しているものについて生じた損害額は、その公債等の元本の額と その公債等に附属していた利札の額との合計額とする。

2項

返還されなかつた公債等で補償時までに償還期限が到来していないものについて生じた損害額は、その公債等の補償時における時価と補償時までに支払期限の到来している利札の額との合計額とする。

1項

専用権(旧工業所有権戦時法(大正六年法律第二十一号)第五条の規定により専用することの免許を受けた者の権利をいう。以下同じ。)を設定された特許発明に係る特許権(連合国人工業所有権戦後措置令(昭和二十四年政令第三百九号)第五条の規定により同条に規定する期間中におけるその特許発明の実施 又は特許権の消滅に対する報酬 又は損害賠償の請求権が放棄されたものを除く)について生じた損害額は、その専用権者がその特許権の存続期間中 その特許発明を実施した場合において支払うべきであつた 特許実施料に相当する金額からその特許権者が日本政府に対し 納付すべきであつた特許料に相当する金額を差し引いた金額とする。

2項

戦時特別措置によつて取り消され、又は特許権者である連合国人の自由な意思に基かないで譲渡された 特許権(連合国人工業所有権戦後措置令第五条の規定により同条に規定する期間中におけるその特許発明の実施 又は特許権の消滅に対する報酬 又は損害賠償の請求権が放棄されたものを除く)について生じた損害額は、その特許権が存続すべかりし期間中に、 その特許発明を実施した者が支払うべきであつた 特許実施料に相当する金額から同期間中にその特許権者が日本政府に対し 納付すべきであつた特許料に相当する金額を差し引いた金額とする。

3項

特許料の不納 又は存続期間の満了によつて 消滅した特許権(連合国人工業所有権戦後措置令第五条の規定により同条に規定する期間中におけるその特許発明の実施 又は特許権の消滅に対する報酬 又は損害賠償の請求権が放棄されたものを除く)について生じた損害額は、その特許料が納付され、 又は その特許権の存続期間の延長が申請されていたならばその特許権が存続すべかりし期間中にその特許発明を実施した者が支払うべきであつた 特許実施料に相当する金額から同期間中にその特許権者が日本政府に対し 納付すべきであつた特許料に相当する金額を差し引いた金額とする。

4項

前三項の規定において、特許発明を実施した者がその実施した特許発明につき支払うべきであつた特許実施料は、その特許権について開戦時において実施契約が存していたときは、その実施契約に定められていた特許実施料、 開戦時において実施契約が存していなかつたときは、その特許権と類似の特許権について開戦時において存していた実施契約に定められていた 特許実施料の計算方法に準じて算出する。

5項

前項に規定する実施契約中に特許権者が実施権者に対し履行すべき義務又は実施権者が特許権者から受けることができる利益について定があるときは、第一項から 第三項までに規定する期間中 その義務が履行されず、又は その利益を受けることができなかつたことにより特許発明を実施した者が受けた不利益を参しやくして、その者が支払うべき特許実施料を計算することができる。

6項

第二項から 前項までの規定は、実用新案権 及び意匠権について準用する。

1項

戦時特別措置による取消 又は存続期間の満了によつて消滅した 商標権について生じた損害額は、その商標を使用した者がその商標を使用したことによつて受けた 利益に相当する金額とその商標の信用を開戦時の状態に回復するため補償時において必要な金額との合計額とする。

1項

第二条第二項第二号 及び第三号に掲げるもの以外の 会社の株式について生じた損害額は、当該株式の発行会社について第十二条の規定により計算した損害額に、開戦時における当該会社の払込済資本金の額に対し 連合国人が開戦時において有していた 当該会社の株式の払込済株金額が有する割合を乗じて得た金額とする。

2項

返還前に残余財産の分配が行われた 会社の株式について生じた損害額は、返還時前の分配額に相当する金額を前項の金額に加算した金額とする。

1項

会社の損害額は、開戦時において当該会社が本邦内に有していた財産について生じた第四条第一項に規定する損害額を第五条から 前条までの規定に準じて算出した金額から 左に掲げる金額を差し引いた金額とする。

一 号

会社が企業再建整備法(昭和二十一年法律第四十号) 又は金融機関再建整備法(昭和二十一年法律第三十九号)に規定する特別損失 又は確定損を生じたものである場合において、当該特別損失 又は確定損が債務の切捨によつて補てんされたときは、その切り捨てられた債務のうち会社が開戦時において有していたものの額

二 号

会社が戦争の結果受けた損害を補てんするため減資した場合において、連合国人以外の株主の払込によつて その資本を補充したときは、その補充した金額

三 号

会社が開戦時において有していなかつた財産で補償時において有しているものの時価がその取得価額をこえるときは、その超過額

1項

開戦時後株式の発行会社が合併し、又は分割した場合における株式の損害額は、前二条の規定の例に準じ計算するものとする。