この法律は、がんが国民の疾病による死亡の最大の原因となっている等がんが国民の生命 及び健康にとって重大な問題となっている現状に鑑み、がん対策基本法(平成十八年法律第九十八号)の趣旨にのっとり、がん医療の質の向上等(がん医療 及びがん検診(以下「がん医療等」という。)の質の向上 並びにがんの予防の推進をいう。以下同じ。)、国民に対するがん、がん医療等 及びがんの予防についての情報提供の充実 その他のがん対策を科学的知見に基づき実施するため、全国がん登録の実施 並びにこれに係る情報の利用 及び提供、保護等について定めるとともに、院内がん登録等の推進に関する事項を定め、あわせて、がん登録等により得られた情報の活用について定めることにより、がんの罹 患、診療、転帰等の状況の把握 及び分析 その他のがんに係る調査研究を推進し、もってがん対策の一層の充実に資することを目的とする。
がん登録等の推進に関する法律
第一章 総則
この法律において「がん」とは、悪性新生物 その他の政令で定める疾病をいう。
この法律において「がん登録」とは、全国がん登録 及び院内がん登録をいう。
この法律において「全国がん登録」とは、国 及び都道府県による利用 及び提供の用に供するため、この法律の定めるところにより、国が国内におけるがんの罹患、診療、転帰等に関する情報をデータベース(情報の集合物であって、当該情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。以下同じ。)に記録し、及び保存することをいう。
この法律において「院内がん登録」とは、がん医療の提供を行う病院において、そのがん医療の状況を適確に把握するため、当該病院において診療が行われたがんの罹患、診療、転帰等に関する詳細な情報を記録し、及び保存することをいう。
この法律において「がんに係る調査研究」とは、がん、がん医療等 及びがんの予防に関する統計の作成 その他の調査研究(匿名化を行った情報を当該調査研究の成果として自ら利用し、又は提供することを含む。)をいう。
この法律において「全国がん登録データベース」とは、第五条第一項の規定により整備されるデータベースをいう。
この法律において「全国がん登録情報」とは、全国がん登録データベースに記録された第五条第一項に規定する登録情報(匿名化が行われていないものに限り、次章第二節 及び第三節の規定により利用し、又は提供される場合を含む。)をいう。
この法律において「都道府県がん情報」とは、全国がん登録情報のうち、これを利用しようとする都道府県の名称が第五条第一項第二号の情報として記録されたがん 及び当該都道府県の区域内の第六条第一項に規定する病院等から届出がされたがんに係る情報(匿名化が行われていないものに限り、次章第二節 及び第三節の規定により利用し、又は提供される場合を含む。)をいう。
この法律において「匿名化」とは、がんに罹患した者に関する情報を当該がんに罹患した者の識別(他の情報との照合による識別を含む。第十五条第一項 及び第十七条第一項において同じ。)ができないように加工することをいう。
この法律において「特定匿名化情報」とは、第十五条第一項の規定により匿名化が行われた情報 並びに第二十一条第五項 及び第六項の規定により全国がん登録データベースに記録された情報をいう。
全国がん登録については、がん対策全般を科学的知見に基づき実施する上で基礎となるものとして、広範な情報の収集により、がんの罹患、診療、転帰等の状況ができる限り正確に把握されるものでなければならない。
がん対策の充実のためには、全国がん登録の実施のほか、がんの診療の状況を適確に把握することが必要であることに鑑み、院内がん登録により得られる情報 その他のがんの診療に関する詳細な情報(以下「がん診療情報」という。)の収集が図られなければならない。
全国がん登録 及びがん診療情報の収集により得られた情報については、これらががん患者の診療等を通じて得られる貴重な情報であることに鑑み、民間によるものを含めがんに係る調査研究のために十分に活用されるとともに、その成果ががん患者 及びその家族をはじめとする国民に還元されなければならない。
がんの罹患、診療、転帰等に関する情報が特に適正な取扱いが求められる情報であることに鑑み、がん登録 及びがん診療情報の収集に係るがんに罹患した者に関する情報は、厳格に保護されなければならない。
国、都道府県、市町村、病院 及び診療所の開設者 及び管理者 並びに前条第四項に規定する情報の提供を受ける研究者は、同条の基本理念の実現を図るため、相互に連携を図りながら協力しなければならない。