会社法

# 平成十七年法律第八十六号 #

第一款 特別清算の開始

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和五年六月十四日 ( 2023年 6月14日 )
@ 最終更新 : 令和五年法律第五十三号による改正
最終編集日 : 2024年 10月13日 07時55分

1項

裁判所は、清算株式会社に次に掲げる事由があると認めるときは、第五百十四条の規定に基づき、申立てにより、当該清算株式会社に対し特別清算の開始を命ずる。

一 号

清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること。

二 号

債務超過(清算株式会社の財産がその債務を完済するのに足りない状態をいう。次条第二項において同じ。)の疑いがあること。

1項

債権者、清算人、監査役 又は株主は、特別清算開始の申立てをすることができる。

2項

清算株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人は、特別清算開始の申立てをしなければならない。

1項

裁判所は、特別清算開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、債権者、清算人、監査役 若しくは株主の申立てにより又は職権で、特別清算開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続 又は処分の中止を命ずることができる。


ただし第一号に掲げる破産手続については破産手続開始の決定がされていない場合に限り、第二号に掲げる手続 又は第三号に掲げる処分についてはその手続の申立人である債権者 又はその処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限る

一 号

清算株式会社についての破産手続

二 号

清算株式会社の財産に対して既にされている強制執行、仮差押え 又は仮処分の手続(一般の先取特権 その他一般の優先権がある債権に基づくものを除く

三 号

清算株式会社の財産に対して既にされている共助対象外国租税(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法 及び地方税法の特例等に関する法律(昭和四十四年法律第四十六号。第五百十八条の二 及び第五百七十一条第四項において「租税条約等実施特例法」という。)第十一条第一項に規定する共助対象外国租税をいう。以下同じ。)の請求権に基づき国税滞納処分の例によってする処分(第五百十五条第一項において「外国租税滞納処分」という。

2項

特別清算開始の申立てを却下する決定に対して第八百九十条第五項の即時抗告がされたときも、前項同様とする。

1項

特別清算開始の申立てをした者は、特別清算開始の命令前に限り、当該申立てを取り下げることができる。


この場合において、前条の規定による中止の命令、第五百四十条第二項の規定による保全処分 又は第五百四十一条第二項の規定による処分がされた後は、裁判所の許可を得なければならない。

1項

裁判所は、特別清算開始の申立てがあった場合において、特別清算開始の原因となる事由があると認めるときは、次のいずれかに該当する場合を除き、特別清算開始の命令をする。

一 号

特別清算の手続の費用の予納がないとき。

二 号

特別清算によっても 清算を結了する見込みがないことが明らかであるとき。

三 号

特別清算によることが債権者の一般の利益に反することが明らかであるとき。

四 号

不当な目的で特別清算開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。

1項

特別清算開始の命令があったときは、破産手続開始の申立て、清算株式会社の財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分 若しくは外国租税滞納処分 又は財産開示手続(民事執行法昭和五十四年法律第四号第百九十七条第一項の申立てによるものに限る。以下 この項において同じ。)若しくは第三者からの情報取得手続(同法第二百五条第一項第一号第二百六条第一項 又は第二百七条第一項の申立てによるものに限る。以下 この項において同じ。)の申立てはすることができず、破産手続(破産手続開始の決定がされていないものに限る)、清算株式会社の財産に対して既にされている強制執行、仮差押え 及び仮処分の手続 並びに外国租税滞納処分 並びに財産開示手続 及び第三者からの情報取得手続は中止する。


ただし、一般の先取特権 その他一般の優先権がある債権に基づく強制執行、仮差押え、仮処分 又は財産開示手続 若しくは第三者からの情報取得手続については、この限りでない。

2項

特別清算開始の命令が確定したときは、前項の規定により中止した手続 又は処分は、特別清算の手続の関係においては、その効力を失う。

3項

特別清算開始の命令があったときは、清算株式会社の債権者の債権(一般の先取特権 その他一般の優先権がある債権、特別清算の手続のために清算株式会社に対して生じた債権 及び特別清算の手続に関する清算株式会社に対する費用請求権を除く。以下 この節において「協定債権」という。)については、第九百三十八条第一項第二号 又は第三号に規定する特別清算開始の取消しの登記 又は特別清算終結の登記の日から二箇月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。

1項

裁判所は、特別清算開始の命令があった場合において、債権者の一般の利益に適合し、かつ、担保権の実行の手続等(清算株式会社の財産につき存する担保権の実行の手続、企業担保権の実行の手続 又は清算株式会社の財産に対して既にされている一般の先取特権 その他一般の優先権がある債権に基づく強制執行の手続をいう。以下 この条において同じ。)の申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは、清算人、監査役、債権者 若しくは株主の申立てにより又は職権で、相当の期間を定めて、担保権の実行の手続等の中止を命ずることができる。

1項

協定債権を有する債権者(以下 この節において「協定債権者」という。)は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない

一 号

特別清算開始後に清算株式会社に対して債務を負担したとき。

二 号

支払不能(清算株式会社が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。以下 この款において同じ。)になった後に契約によって負担する債務を専ら協定債権をもってする相殺に供する目的で清算株式会社の財産の処分を内容とする契約を清算株式会社との間で締結し、又は清算株式会社に対して債務を負担する者の債務を引き受けることを内容とする契約を締結することにより清算株式会社に対して債務を負担した場合であって、当該契約の締結の当時、支払不能であったことを知っていたとき。

三 号

支払の停止があった後に清算株式会社に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。


ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。

四 号

特別清算開始の申立てがあった後に清算株式会社に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、特別清算開始の申立てがあったことを知っていたとき。

2項

前項第二号から第四号までの規定は、これらの規定に規定する債務の負担が次に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない

一 号
法定の原因
二 号

支払不能であったこと 又は支払の停止若しくは特別清算開始の申立てがあったことを協定債権者が知った時より前に生じた原因

三 号

特別清算開始の申立てがあった時より一年以上前に生じた原因

1項

清算株式会社に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない

一 号

特別清算開始後に他人の協定債権を取得したとき。

二 号

支払不能になった後に協定債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。

三 号

支払の停止があった後に協定債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。


ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。

四 号

特別清算開始の申立てがあった後に協定債権を取得した場合であって、その取得の当時、特別清算開始の申立てがあったことを知っていたとき。

2項

前項第二号から第四号までの規定は、これらの規定に規定する協定債権の取得が次に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない

一 号
法定の原因
二 号

支払不能であったこと又は支払の停止 若しくは特別清算開始の申立てがあったことを清算株式会社に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた原因

三 号

特別清算開始の申立てがあった時より一年以上前に生じた原因

四 号

清算株式会社に対して債務を負担する者と清算株式会社との間の契約

1項

協定債権者は、共助対象外国租税の請求権をもって特別清算の手続に参加するには、租税条約等実施特例法 第十一条第一項に規定する共助実施決定を得なければならない。