性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律

# 令和四年法律第七十八号 #
略称 : AV出演被害防止・救済法 

第二章 出演契約等に関する特則

分類 法律
カテゴリ   労働
最終編集日 : 2024年 08月16日 09時44分


第一節 締結に関する特則

1項

出演契約は、性行為映像制作物ごとに締結しなければならない。

2項

出演契約は、書面 又は電磁的記録でしなければ、その効力を生じない。

3項

前項の出演契約に係る書面 又は電磁的記録(以下「出演契約書等」という。)には、制作公表者 及び出演者の氏名 又は名称 その他制作公表者 及び出演者を特定するために必要な事項 並びに当該出演契約の締結の日時 及び場所のほか、次に掲げる事項(当該制作公表者に係る部分に関する事項に限る)を記載し、又は記録しなければならない。

一 号

当該出演者が性行為映像制作物への出演をすること。

二 号

当該出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影を予定する日時 及び場所

三 号

前号の撮影の対象となる当該出演者の性行為に係る姿態の具体的内容

四 号

前号の性行為に係る姿態の相手方を特定するために必要な事項

五 号
当該性行為映像制作物の公表の具体的方法 及び期間
六 号

当該性行為映像制作物の公表を行う者制作公表者以外の者であるときは、その旨 及び当該公表を行う者の氏名 又は名称 その他当該公表を行う者を特定するために必要な事項

七 号

当該出演者が受けるべき報酬の額 及び支払の時期

八 号
その他内閣府令で定める事項
1項

制作公表者は、出演者との間で出演契約を締結しようとするときは、あらかじめ、その出演者に対し、前条第三項に規定する事項(同項各号に掲げる事項については、当該制作公表者に係る部分に関する事項に限る次条 及び第二十一条第二号において「出演契約事項」という。)について出演契約書等の案を示して説明するとともに、次に掲げる事項についてこれらの事項を記載し 又は記録した書面 又は電磁的記録(以下「説明書面等」という。)を交付し 又は提供して説明しなければならない。

一 号

第七条から第十六条までに規定する事項

二 号

第十一条取消権については追認をすることができる時から、第十二条第一項の解除権については出演者が当該解除権を行使することができることを知った時から、それぞれ、時効によって消滅するまで、五年間行使することができること。

三 号

撮影された映像により出演者が特定される可能性があること。

四 号

第十七条第一項の規定によりが整備した体制における同項に規定する相談に応じる機関同条第二項の規定により都道府県が整備した体制における当該相談に応じる機関があるときは、当該機関を含む。)の名称 及び連絡先

五 号
その他内閣府令で定める事項
2項

制作公表者は、前項の規定による説明を行うに当たっては、出演者がその内容を容易かつ正確に理解することができるよう、丁寧に、かつ、分かりやすく、これを行わなければならない。

3項

制作公表者以外の者は、出演契約の内容 又は第一項各号に掲げる事項に関し、出演者を誤認させるような説明 その他の行為をしてはならない。

1項

制作公表者は、出演者との間で出演契約を締結したときは、速やかに、当該出演者に対し、出演契約事項が記載され 又は記録された出演契約書等を交付し、又は提供しなければならない。

第二節 履行等に関する特則

1項

出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影は、当該出演者が出演契約書等の交付 若しくは提供を受けた日 又は説明書面等の交付 若しくは提供を受けた日のいずれか遅い日から一月を経過した後でなければ、行ってはならない。

2項

出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影において、出演者は、出演契約において定められている性行為に係る姿態の撮影であっても、その全部 又は一部を拒絶することができる。


これによって制作公表者 又は第三者損害が生じたときであっても、当該出演者は、その賠償の責任を負わない。

3項

出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影に当たっては、出演者の健康の保護(生殖機能の保護を含む。)その他の安全 及び衛生 並びに出演者が性行為に係る姿態の撮影を拒絶することができるようにすること その他その債務の履行の任意性が確保されるよう、特に配慮して必要な措置を講じなければならない。

4項

いかなる名称によるかを問わず、出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影に密接に関連する出演者の撮影(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律平成二十六年法律第百二十六号第二条第一項各号いずれかに掲げる人の姿態の撮影に限る)は、出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影とみなして前三項の規定を適用する。


この場合において、

前二項
性行為に係る姿態」とあるのは、
私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律第二条第一項各号いずれかに掲げる人の姿態」と

する。

1項

制作公表者は、性行為映像制作物の公表が行われるまでの間に、出演者に対し、出演契約に基づいて撮影された映像のうち当該出演者の性行為映像制作物への出演に係る映像であって公表を行うもの(当該制作公表者が当該公表に関する権原を有するものに限る)を確認する機会を与えなければならない。

1項

性行為映像制作物の公表は、当該性行為映像制作物に係る全ての撮影が終了した日から四月を経過した後でなければ、行ってはならない。

第三節 無効、取消し及び解除等に関する特則

1項

性行為映像制作物を特定しないで、出演者契約の相手方その他の者が指定する性行為映像制作物への出演をする義務を課す契約の条項は、無効とする。

2項

次に掲げる出演契約の条項は、無効とする。

一 号

出演者の債務不履行について損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項

二 号

制作公表者の債務不履行により出演者に生じた損害を賠償する責任の全部 若しくは一部を免除し、又は制作公表者にその責任の有無 若しくは限度を決定する権限を付与する条項

三 号

制作公表者の債務の履行に際してされたその制作公表者の不法行為により出演者に生じた損害を賠償する責任の全部 若しくは一部を免除し、又は制作公表者にその責任の有無 若しくは限度を決定する権限を付与する条項

四 号

出演者の権利を制限し 又はその義務を加重する条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して出演者の利益を一方的に害するものと認められるもの

1項

制作公表者第五条第一項 又は第六条の規定に違反したときは、出演者は、その出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の申込み 又はその承諾の意思表示を取り消すことができる。


制作公表従事者第五条第三項の規定に違反したときも、同様とする。

1項

次に掲げるときは、出演者は、民法第五百四十一条の催告をすることなく、直ちにその出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の解除をすることができる。

一 号

第七条第一項 又は第三項の規定に違反して、その出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影(同条第四項の規定により出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影とみなされる撮影を含む。)が行われたとき。

二 号

第八条の規定に違反して、その出演者に対し、撮影された映像のうち当該出演者の性行為映像制作物への出演に係る映像であって公表を行うものを確認する機会を与えることなく、性行為映像制作物の公表が行われたとき。

三 号

第九条の規定に違反して、同条の期間を経過する前に性行為映像制作物の公表が行われたとき。

2項

前項解除があった場合においては、制作公表者は、当該解除に伴う損害賠償を請求することができない。

1項

出演者は、任意に、書面 又は電磁的記録により、その出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の申込みの撤回 又は当該出演契約の解除以下この条において「出演契約の任意解除等」という。)をすることができる。


ただし、当該出演者に係る性行為映像制作物の公表が行われた日から一年を経過したとき(出演者が、制作公表者 若しくは制作公表従事者が第五項の規定に違反して出演契約の任意解除等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことによりその告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は制作公表者 若しくは制作公表従事者が第六項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによって当該期間を経過するまでにその出演契約の任意解除等をしなかった場合には、当該出演者が、当該制作公表者 又は制作公表従事者が内閣府令で定めるところによりその出演契約の任意解除等をすることができる旨を記載して交付した書面を受領した日から一年を経過したとき)は、この限りでない。

2項

出演契約の任意解除等は、出演契約の任意解除等に係る書面 又は電磁的記録による通知を発した時に、その効力を生ずる。

3項

出演契約の任意解除等があった場合においては、制作公表者は、当該出演契約の任意解除等に伴う損害賠償を請求することができない。

4項

前三項の規定に反する特約で出演者に不利なものは、無効とする。

5項

制作公表者 及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者に対し、出演契約の任意解除等に関する事項(第一項から第三項までの規定に関する事項を含む。)その他その出演契約に関する事項であって出演者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告げる行為をしてはならない。

6項

制作公表者 及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者を威迫して困惑させてはならない

1項

出演契約が解除されたときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。

第四節 差止請求権

1項

出演者は、出演契約に基づくことなく性行為映像制作物の制作公表が行われたとき 又は出演契約の取消し 若しくは解除をしたときは、当該性行為映像制作物の制作公表を行い 又は行うおそれがある者に対し、当該制作公表の停止 又は予防を請求することができる。

2項

出演者は、前項の規定による請求をするに際し、その制作公表の停止 又は予防に必要な措置を請求することができる。

3項

制作公表者は、出演者が第一項の規定による請求をしようとするときは、当該出演者に対し、その性行為映像制作物の制作公表を行い 又は行うおそれがある者に関する情報の提供、当該者に対する制作公表の停止 又は予防に関する通知 その他必要な協力を行わなければならない。