障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律

# 平成十七年法律第百二十三号 #
略称 : 障害者総合支援法 

第一章 総則

分類 法律
カテゴリ   社会福祉
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第百四号による改正
最終編集日 : 2024年 05月02日 08時39分


1項

この法律は、障害者基本法昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)、知的障害者福祉法昭和三十五年法律第三十七号)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律昭和二十五年法律第百二十三号)、児童福祉法昭和二十二年法律第百六十四号)その他障害者 及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者 及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活 又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業 その他の支援を総合的に行い、もって障害者 及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。

1項

障害者 及び障害児が日常生活 又は社会生活を営むための支援は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者 及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活 又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること 及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと 並びに障害者 及び障害児にとって日常生活 又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念 その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。

1項

市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、この法律の実施に関し、次に掲げる責務を有する。

一 号

障害者が自ら選択した場所に居住し、又は障害者 若しくは障害児(以下「障害者等」という。)が自立した日常生活 又は社会生活を営むことができるよう、当該市町村の区域における障害者等の生活の実態を把握した上で、公共職業安定所、障害者職業センター(障害者の雇用の促進等に関する法律昭和三十五年法律第百二十三号第十九条第一項に規定する障害者職業センターをいう。以下同じ。)、障害者就業・生活支援センター(同法第二十七条第二項に規定する障害者就業・生活支援センターをいう。以下同じ。)その他の職業リハビリテーション(同法第二条第七号に規定する職業リハビリテーションをいう。以下同じ。)の措置を実施する機関、教育機関 その他の関係機関との緊密な連携を図りつつ、必要な自立支援給付 及び地域生活支援事業を総合的かつ計画的に行うこと。

二 号

障害者等の福祉に関し、必要な情報の提供を行い、並びに相談に応じ、必要な調査 及び指導を行い、並びにこれらに付随する業務を行うこと。

三 号

意思疎通について支援が必要な障害者等が障害福祉サービスを円滑に利用することができるよう 必要な便宜を供与すること、障害者等に対する虐待の防止 及びその早期発見のために関係機関と連絡調整を行うことその他障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行うこと。

2項

都道府県は、この法律の実施に関し、次に掲げる責務を有する。

一 号

市町村が行う自立支援給付 及び地域生活支援事業が適正かつ円滑に行われるよう、市町村に対する必要な助言、情報の提供 その他の援助を行うこと。

二 号

市町村と連携を図りつつ、必要な自立支援医療費の支給 及び地域生活支援事業を総合的に行うこと。

三 号

障害者等に関する相談 及び指導のうち、専門的な知識 及び技術を必要とするものを行うこと。

四 号

市町村と協力して障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行うとともに、市町村が行う障害者等の権利の擁護のために必要な援助が適正かつ円滑に行われるよう、市町村に対する必要な助言、情報の提供 その他の援助を行うこと。

3項

国は、市町村 及び都道府県が行う自立支援給付、地域生活支援事業 その他この法律に基づく業務が適正かつ円滑に行われるよう、市町村 及び都道府県に対する必要な助言、情報の提供 その他の援助を行わなければならない。

4項

国 及び地方公共団体は、障害者等が自立した日常生活 又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービス、相談支援 及び地域生活支援事業の提供体制の確保に努めなければならない。

1項

すべての国民は、その障害の有無にかかわらず、障害者等が自立した日常生活 又は社会生活を営めるような地域社会の実現に協力するよう 努めなければならない。

1項

この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者、知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち十八歳以上である者 及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条第一項に規定する精神障害者(発達障害者支援法平成十六年法律第百六十七号第二条第二項に規定する発達障害者を含み、知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。以下「精神障害者」という。)のうち十八歳以上である者 並びに治療方法が確立していない疾病 その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が主務大臣が定める程度である者であって十八歳以上であるものをいう。

2項

この法律において「障害児」とは、児童福祉法第四条第二項に規定する障害児をいう。

3項

この法律において「保護者」とは、児童福祉法第六条に規定する保護者をいう。

4項

この法律において「障害支援区分」とは、障害者等の障害の多様な特性 その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものとして主務省令で定める区分をいう。

1項

この法律において「障害福祉サービス」とは、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所、重度障害者等包括支援、施設入所支援、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、自立生活援助 及び共同生活援助をいい、「障害福祉サービス事業」とは、障害福祉サービス(障害者支援施設、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法(平成十四年法律第百六十七号)第十一条第一号の規定により独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園が設置する施設(以下「のぞみの園」という。)その他主務省令で定める施設において行われる施設障害福祉サービス(施設入所支援 及び主務省令で定める障害福祉サービスをいう。以下同じ。)を除く)を行う事業をいう。

2項

この法律において「居宅介護」とは、障害者等につき、居宅において入浴、排せつ 又は食事の介護 その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。

3項

この法律において「重度訪問介護」とは、重度の肢体不自由者 その他の障害者であって常時介護を要するものとして主務省令で定めるものにつき、居宅 又はこれに相当する場所として主務省令で定める場所における入浴、排せつ 又は食事の介護 その他の主務省令で定める便宜 及び外出時における移動中の介護を総合的に供与することをいう。

4項

この法律において「同行援護」とは、視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護 その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。

5項

この法律において「行動援護」とは、知的障害 又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を要するものにつき、当該障害者等が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護、外出時における移動中の介護 その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。

6項

この法律において「療養介護」とは、医療を要する障害者であって常時介護を要するものとして主務省令で定めるものにつき、主として昼間において、病院 その他の主務省令で定める施設において行われる機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護 及び日常生活上の世話の供与をいい、「療養介護医療」とは、療養介護のうち医療に係るものをいう。

7項

この法律において「生活介護」とは、常時介護を要する障害者として主務省令で定める者につき、主として昼間において、障害者支援施設 その他の主務省令で定める施設において行われる入浴、排せつ 又は食事の介護、創作的活動 又は生産活動の機会の提供 その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。

8項

この法律において「短期入所」とは、居宅においてその介護を行う者の疾病 その他の理由により、障害者支援施設 その他の主務省令で定める施設への短期間の入所を必要とする障害者等につき、当該施設に短期間の入所をさせ、入浴、排せつ 又は食事の介護 その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。

9項

この法律において「重度障害者等包括支援」とは、常時介護を要する障害者等であって、その介護の必要の程度が著しく高いものとして主務省令で定めるものにつき、居宅介護 その他の主務省令で定める障害福祉サービスを包括的に提供することをいう。

10項

この法律において「施設入所支援」とは、その施設に入所する障害者につき、主として夜間において、入浴、排せつ 又は食事の介護 その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。

11項

この法律において「障害者支援施設」とは、障害者につき、施設入所支援を行うとともに、施設入所支援以外の施設障害福祉サービスを行う施設(のぞみの園 及び第一項の主務省令で定める施設を除く)をいう。

12項

この法律において「自立訓練」とは、障害者につき、自立した日常生活 又は社会生活を営むことができるよう、主務省令で定める期間にわたり、身体機能 又は生活能力の向上のために必要な訓練 その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。

13項

この法律において「就労移行支援」とは、就労を希望する障害者 及び通常の事業所に雇用されている障害者であって主務省令で定める事由により当該事業所での就労に必要な知識 及び能力の向上のための支援を一時的に必要とするものにつき、主務省令で定める期間にわたり、生産活動 その他の活動の機会の提供を通じて、就労に必要な知識 及び能力の向上のために必要な訓練 その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。

14項

この法律において「就労継続支援」とは、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者 及び通常の事業所に雇用されている障害者であって主務省令で定める事由により当該事業所での就労に必要な知識 及び能力の向上のための支援を一時的に必要とするものにつき、就労の機会を提供するとともに、生産活動 その他の活動の機会の提供を通じて、その知識 及び能力の向上のために必要な訓練 その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。

15項

この法律において「就労定着支援」とは、就労に向けた支援として主務省令で定めるものを受けて通常の事業所に新たに雇用された障害者につき、主務省令で定める期間にわたり、当該事業所での就労の継続を図るために必要な当該事業所の事業主、障害福祉サービス事業を行う者、医療機関 その他の者との連絡調整 その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。

16項

この法律において「自立生活援助」とは、施設入所支援 又は共同生活援助を受けていた障害者 その他の主務省令で定める障害者が居宅における自立した日常生活を営む上での各般の問題につき、主務省令で定める期間にわたり、定期的な巡回訪問により、又は随時通報を受け、当該障害者からの相談に応じ、必要な情報の提供 及び助言 その他の主務省令で定める援助を行うことをいう。

17項

この法律において「共同生活援助」とは、障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において相談、入浴、排せつ 若しくは食事の介護 その他の日常生活上の援助を行い、又はこれに併せて、居宅における自立した日常生活への移行を希望する入居者につき、当該日常生活への移行 及び移行後の定着に関する相談 その他の主務省令で定める援助を行うことをいう。

18項

この法律において「相談支援」とは、基本相談支援、地域相談支援 及び計画相談支援をいい、「地域相談支援」とは、地域移行支援 及び地域定着支援をいい、「計画相談支援」とは、サービス利用支援 及び継続サービス利用支援をいい、「一般相談支援事業」とは、基本相談支援 及び地域相談支援のいずれも行う事業をいい、「特定相談支援事業」とは、基本相談支援 及び計画相談支援のいずれも行う事業をいう。

19項

この法律において「基本相談支援」とは、地域の障害者等の福祉に関する各般の問題につき、障害者等、障害児の保護者 又は障害者等の介護を行う者からの相談に応じ、必要な情報の提供 及び助言を行い、併せてこれらの者と市町村 及び第二十九条第二項に規定する指定障害福祉サービス事業者等との連絡調整(サービス利用支援 及び継続サービス利用支援に関するものを除く)その他の主務省令で定める便宜を総合的に供与することをいう。

20項

この法律において「地域移行支援」とは、障害者支援施設、のぞみの園 若しくは第一項 若しくは第六項の主務省令で定める施設に入所している障害者 又は精神科病院(精神科病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む。第八十九条第七項において同じ。)に入院している精神障害者 その他の地域における生活に移行するために重点的な支援を必要とする者であって主務省令で定めるものにつき、住居の確保 その他の地域における生活に移行するための活動に関する相談 その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。

21項

この法律において「地域定着支援」とは、居宅において単身 その他の主務省令で定める状況において生活する障害者につき、当該障害者との常時の連絡体制を確保し、当該障害者に対し、障害の特性に起因して生じた緊急の事態 その他の主務省令で定める場合に相談 その他の便宜を供与することをいう。

22項

この法律において「サービス利用支援」とは、第二十条第一項 若しくは第二十四条第一項の申請に係る障害者等 又は第五十一条の六第一項 若しくは第五十一条の九第一項の申請に係る障害者の心身の状況、その置かれている環境、当該障害者等 又は障害児の保護者の障害福祉サービス 又は地域相談支援の利用に関する意向 その他の事情を勘案し、利用する障害福祉サービス 又は地域相談支援の種類 及び内容 その他の主務省令で定める事項を定めた計画(以下「サービス等利用計画案」という。)を作成し、第十九条第一項に規定する支給決定(次項において「支給決定」という。)、第二十四条第二項に規定する支給決定の変更の決定(次項において「支給決定の変更の決定」という。)、第五十一条の五第一項に規定する地域相談支援給付決定(次項において「地域相談支援給付決定」という。)又は第五十一条の九第二項に規定する地域相談支援給付決定の変更の決定(次項において「地域相談支援給付決定の変更の決定」という。)(以下「支給決定等」と総称する。)が行われた後に、第二十九条第二項に規定する指定障害福祉サービス事業者等、第五十一条の十四第一項に規定する指定一般相談支援事業者 その他の者(次項において「関係者」という。)との連絡調整 その他の便宜を供与するとともに、当該支給決定等に係る障害福祉サービス又は地域相談支援の種類 及び内容、これを担当する者 その他の主務省令で定める事項を記載した計画(以下「サービス等利用計画」という。)を作成することをいう。

23項

この法律において「継続サービス利用支援」とは、第十九条第一項の規定により支給決定を受けた障害者 若しくは障害児の保護者(以下「支給決定障害者等」という。)又は第五十一条の五第一項の規定により地域相談支援給付決定を受けた障害者(以下「地域相談支援給付決定障害者」という。)が、第二十三条に規定する支給決定の有効期間 又は第五十一条の八に規定する地域相談支援給付決定の有効期間内において継続して障害福祉サービス 又は地域相談支援を適切に利用することができるよう、当該支給決定障害者等 又は地域相談支援給付決定障害者に係るサービス等利用計画(この項の規定により変更されたものを含む。以下同じ。)が適切であるかどうかにつき、主務省令で定める期間ごとに、当該支給決定障害者等の障害福祉サービス 又は当該地域相談支援給付決定障害者の地域相談支援の利用状況を検証し、その結果 及び当該支給決定に係る障害者等 又は当該地域相談支援給付決定に係る障害者の心身の状況、その置かれている環境、当該障害者等 又は障害児の保護者の障害福祉サービス 又は地域相談支援の利用に関する意向 その他の事情を勘案し、サービス等利用計画の見直しを行い、その結果に基づき、次のいずれかの便宜の供与を行うことをいう。

一 号

サービス等利用計画を変更するとともに、関係者との連絡調整 その他の便宜の供与を行うこと。

二 号

新たな支給決定 若しくは地域相談支援給付決定 又は支給決定の変更の決定 若しくは地域相談支援給付決定の変更の決定が必要であると認められる場合において、当該支給決定等に係る障害者 又は障害児の保護者に対し、支給決定等に係る申請の勧奨を行うこと。

24項

この法律において「自立支援医療」とは、障害者等につき、その心身の障害の状態の軽減を図り、自立した日常生活 又は社会生活を営むために必要な医療であって政令で定めるものをいう。

25項

この法律において「補装具」とは、障害者等の身体機能を補完し、又は代替し、かつ、長期間にわたり継続して使用されるもの その他の主務省令で定める基準に該当するものとして、義肢、装具、車椅子 その他の主務大臣が定めるものをいう。

26項

この法律において「移動支援事業」とは、障害者等が円滑に外出することができるよう、障害者等の移動を支援する事業をいう。

27項

この法律において「地域活動支援センター」とは、障害者等を通わせ、創作的活動 又は生産活動の機会の提供、社会との交流の促進 その他の主務省令で定める便宜を供与する施設をいう。

28項

この法律において「福祉ホーム」とは、現に住居を求めている障害者につき、低額な料金で、居室 その他の設備を利用させるとともに、日常生活に必要な便宜を供与する施設をいう。