この法律は、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体 及び財産を保護し、並びに武力攻撃の国民生活 及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることの重要性に鑑み、これらの事項に関し、国、地方公共団体等の責務、国民の協力、住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置、武力攻撃災害への対処に関する措置 その他の必要な事項を定めることにより、武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号。以下「事態対処法」という。)と相まって、国全体として万全の態勢を整備し、もって武力攻撃事態等における国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することを目的とする。
武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律
第一節 通則
この法律において「武力攻撃事態等」、「武力攻撃」、「武力攻撃事態」、「指定行政機関」、「指定地方行政機関」、「指定公共機関」、「対処基本方針」、「対策本部」及び「対策本部長」の意義は、それぞれ事態対処法第一条、第二条第一号から第七号まで(第三号 及び第四号を除く。)、第九条第一項、第十条第一項 及び第十一条第一項に規定する当該用語の意義による。
この法律において「指定地方公共機関」とは、都道府県の区域において電気、ガス、輸送、通信、医療 その他の公益的事業を営む法人、地方道路公社(地方道路公社法(昭和四十五年法律第八十二号)第一条の地方道路公社をいう。)その他の公共的施設を管理する法人 及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項の地方独立行政法人をいう。)で、あらかじめ当該法人の意見を聴いて当該都道府県の知事が指定するものをいう。
この法律において「国民の保護のための措置」とは、対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体 又は指定公共機関 若しくは指定地方公共機関が法律の規定に基づいて実施する次に掲げる措置 その他の武力攻撃から国民の生命、身体 及び財産を保護するため、又は武力攻撃が国民生活 及び国民経済に影響を及ぼす場合において当該影響が最小となるようにするための措置(第六号に掲げる措置にあっては、対処基本方針が廃止された後 これらの者が法律の規定に基づいて実施するものを含む。)をいう。
この法律において「武力攻撃災害」とは、武力攻撃により直接 又は間接に生ずる人の死亡 又は負傷、火事、爆発、放射性物質の放出 その他の人的 又は物的災害をいう。
国は、国民の安全を確保するため、武力攻撃事態等に備えて、あらかじめ、国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針を定めるとともに、武力攻撃事態等においては、その組織 及び機能のすべてを挙げて自ら国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施し、又は地方公共団体 及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置を的確かつ迅速に支援し、並びに国民の保護のための措置に関し国費による適切な措置を講ずること等により、国全体として万全の態勢を整備する責務を有する。
地方公共団体は、国があらかじめ定める国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針に基づき、武力攻撃事態等においては、自ら国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施し、及び当該地方公共団体の区域において関係機関が実施する国民の保護のための措置を総合的に推進する責務を有する。
指定公共機関 及び指定地方公共機関は、武力攻撃事態等においては、この法律で定めるところにより、その業務について、国民の保護のための措置を実施する責務を有する。
国、地方公共団体 並びに指定公共機関 及び指定地方公共機関は、国民の保護のための措置を実施するに当たっては、相互に連携協力し、その的確かつ迅速な実施に万全を期さなければならない。
国民は、この法律の規定により国民の保護のための措置の実施に関し協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする。
前項の協力は国民の自発的な意思にゆだねられるものであって、その要請に当たって強制にわたることがあってはならない。
国 及び地方公共団体は、自主防災組織(災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第二条の二第二号の自主防災組織をいう。以下同じ。)及びボランティアにより行われる国民の保護のための措置に資するための自発的な活動に対し、必要な支援を行うよう努めなければならない。
国民の保護のための措置を実施するに当たっては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない。
前項に規定する国民の保護のための措置を実施する場合において、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該国民の保護のための措置を実施するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われるものとし、いやしくも国民を差別的に取り扱い、並びに思想 及び良心の自由 並びに表現の自由を侵すものであってはならない。
国 及び地方公共団体は、国民の保護のための措置の実施に伴う損失補償、国民の保護のための措置に係る不服申立て又は訴訟 その他の国民の権利利益の救済に係る手続について、できる限り迅速に処理するよう努めなければならない。
国 及び地方公共団体は、日本赤十字社が実施する国民の保護のための措置については、その特性にかんがみ、その自主性を尊重しなければならない。
国 及び地方公共団体は、放送事業者(放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二十六号の放送事業者をいう。以下同じ。)である指定公共機関 及び指定地方公共機関が実施する国民の保護のための措置については、その言論 その他表現の自由に特に配慮しなければならない。
国 及び地方公共団体は、武力攻撃事態等においては、国民の保護のための措置に関し、国民に対し、正確な情報を、適時に、かつ、適切な方法で提供しなければならない。
国、地方公共団体 並びに指定公共機関 及び指定地方公共機関は、国民の保護のための措置に関する情報については、新聞、放送、インターネット その他の適切な方法により、迅速に国民に提供するよう努めなければならない。
国民の保護のための措置を実施するに当たっては、高齢者、障害者 その他特に配慮を要する者の保護について留意しなければならない。
国民の保護のための措置を実施するに当たっては、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施を確保しなければならない。