債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
破産法
第一節 破産手続開始の申立て
債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。
債務者が法人である場合に関する前条第一項の規定の適用については、
同項中
「支払不能」とあるのは、
「支払不能 又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」と
する。
前項の規定は、存立中の合名会社 及び合資会社には、適用しない。
債務者についての外国で開始された手続で破産手続に相当するものがある場合には、当該債務者に破産手続開始の原因となる事実があるものと推定する。
債権者が破産手続開始の申立てをするときは、その有する債権の存在 及び破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。
次の各号に掲げる法人については、それぞれ当該各号に定める者は、破産手続開始の申立てをすることができる。
一般社団法人 又は一般財団法人
理事
株式会社 又は相互会社(保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第五項に規定する相互会社をいう。第百五十条第六項第三号において同じ。)
取締役
合名会社、合資会社 又は合同会社
業務を執行する社員
前項各号に掲げる法人については、清算人も、破産手続開始の申立てをすることができる。
前二項の規定により第一項各号に掲げる法人について破産手続開始の申立てをする場合には、理事、取締役、業務を執行する社員 又は清算人の全員が破産手続開始の申立てをするときを除き、破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。
前三項の規定は、第一項各号に掲げる法人以外の法人について準用する。
法人については、その解散後であっても、残余財産の引渡し又は分配が終了するまでの間は、破産手続開始の申立てをすることができる。
破産手続開始の申立ては、最高裁判所規則で定める事項を記載した書面でしなければならない。
債権者以外の者が破産手続開始の申立てをするときは、最高裁判所規則で定める事項を記載した債権者一覧表を裁判所に提出しなければならない。
ただし、当該申立てと同時に債権者一覧表を提出することができないときは、当該申立ての後遅滞なくこれを提出すれば足りる。
前条第一項の書面(以下この条において「破産手続開始の申立書」という。)に同項に規定する事項が記載されていない場合には、裁判所書記官は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命ずる処分をしなければならない。
民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い破産手続開始の申立ての手数料を納付しない場合も、同様とする。
前項の処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
第一項の処分に対しては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内に、異議の申立てをすることができる。
前項の異議の申立ては、執行停止の効力を有する。
裁判所は、第三項の異議の申立てがあった場合において、破産手続開始の申立書に第一項の処分において補正を命じた不備以外の不備があると認めるときは、相当の期間を定め、その期間内に当該不備を補正すべきことを命じなければならない。
第一項 又は前項の場合において、破産手続開始の申立人が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、破産手続開始の申立書を却下しなければならない。
前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
破産手続開始の申立てをするときは、申立人は、破産手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。
裁判所は、申立人の資力、破産財団となるべき財産の状況 その他の事情を考慮して、申立人 及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認めるときは、破産手続の費用を仮に国庫から支弁することができる。
職権で破産手続開始の決定をした場合も、同様とする。
前条第一項の規定は、前項前段の規定により破産手続の費用を仮に国庫から支弁する場合には、適用しない。
裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続 又は処分の中止を命ずることができる。
ただし、第一号に掲げる手続 又は第六号に掲げる処分についてはその手続の申立人である債権者 又はその処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限り、第五号に掲げる責任制限手続については責任制限手続開始の決定がされていない場合に限る。
債務者の財産に対して既にされている強制執行、仮差押え、仮処分 又は一般の先取特権の実行 若しくは留置権(商法(明治三十二年法律第四十八号)又は会社法の規定によるものを除く。)による競売(以下 この節において「強制執行等」という。)の手続で、債務者につき破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権 若しくは財団債権となるべきもの(以下 この項 及び次条第八項において「破産債権等」という。)に基づくもの又は破産債権等を被担保債権とするもの
債務者の責任制限手続(船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(昭和五十年法律第九十四号)第三章 又は船舶油濁等損害賠償保障法(昭和五十年法律第九十五号)第五章、同法第四十三条第五項において準用する同法第三十一条 及び第三十二条 並びに同法第四十三条第六項において準用する船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第三章(第九条、第十条、第十六条 及び第五十四条を除く。)若しくは船舶油濁等損害賠償保障法第五十一条第五項において準用する同法第三十一条 及び第三十二条 並びに同法第五十一条第六項において準用する船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第三章(第九条、第十条、第十六条、第四節 及び第五十四条を除く。)の規定による責任制限手続をいう。第二百六十三条 及び第二百六十四条第一項において同じ。)
債務者の財産に対して既にされている共助対象外国租税(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法 及び地方税法の特例等に関する法律(昭和四十四年法律第四十六号。第百三条第五項 及び第二百五十三条第四項において「租税条約等実施特例法」という。)第十一条第一項に規定する共助対象外国租税をいう。以下同じ。)の請求権に基づき国税滞納処分の例によってする処分(以下「外国租税滞納処分」という。)で、破産債権等に基づくもの
裁判所は、前項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。
裁判所は、第九十一条第二項に規定する保全管理命令が発せられた場合において、債務者の財産の管理 及び処分をするために特に必要があると認めるときは、保全管理人の申立てにより、担保を立てさせて、第一項の規定により中止した強制執行等の手続 又は外国租税滞納処分の取消しを命ずることができる。
第一項の規定による中止の命令、第二項の規定による決定 及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
第四項に規定する裁判 及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、前条第一項第一号 又は第六号の規定による中止の命令によっては破産手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、全ての債権者に対し、債務者の財産に対する強制執行等 及び国税滞納処分(国税滞納処分の例による処分を含み、交付要求を除く。以下同じ。)の禁止を命ずることができる。
ただし、事前に又は同時に、債務者の主要な財産に関し第二十八条第一項の規定による保全処分をした場合 又は第九十一条第二項に規定する保全管理命令をした場合に限る。
前項の規定による禁止の命令(以下「包括的禁止命令」という。)を発する場合において、裁判所は、相当と認めるときは、一定の範囲に属する強制執行等 又は国税滞納処分を包括的禁止命令の対象から除外することができる。
包括的禁止命令が発せられた場合には、債務者の財産に対して既にされている強制執行等の手続 及び外国租税滞納処分(当該包括的禁止命令により禁止されることとなるものに限る。)は、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、中止する。
裁判所は、第九十一条第二項に規定する保全管理命令が発せられた場合において、債務者の財産の管理 及び処分をするために特に必要があると認めるときは、保全管理人の申立てにより、担保を立てさせて、第三項の規定により中止した強制執行等の手続 又は外国租税滞納処分の取消しを命ずることができる。
包括的禁止命令、第四項の規定による決定 及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
包括的禁止命令が発せられたときは、破産債権等(当該包括的禁止命令により強制執行等 又は国税滞納処分が禁止されているものに限る。)については、当該包括的禁止命令が効力を失った日の翌日から二月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。
包括的禁止命令 及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定があった場合には、その旨を公告し、その裁判書を債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人。次項において同じ。)及び申立人に送達し、かつ、その決定の主文を知れている債権者 及び債務者(保全管理人が選任されている場合に限る。)に通知しなければならない。
前条第六項の即時抗告についての裁判(包括的禁止命令を変更し、又は取り消す旨の決定を除く。)があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
裁判所は、包括的禁止命令を発した場合において、強制執行等の申立人である債権者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該債権者の申立てにより、当該債権者に限り当該包括的禁止命令を解除する旨の決定をすることができる。
この場合において、当該債権者は、債務者の財産に対する強制執行等をすることができ、当該包括的禁止命令が発せられる前に当該債権者がした強制執行等の手続で第二十五条第三項の規定により中止されていたものは、続行する。
前項の規定は、裁判所が国税滞納処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認める場合について準用する。
第一項(前項において準用する場合を含む。次項 及び第六項において同じ。)の規定による解除の決定を受けた者に対する第二十五条第八項の規定の適用については、
同項中
「当該包括的禁止命令が効力を失った日」とあるのは、
「第二十七条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定による解除の決定があった日」と
する。
第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
第一項の申立てについての裁判 及び第四項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の財産に関し、その財産の処分禁止の仮処分 その他の必要な保全処分を命ずることができる。
裁判所は、前項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。
第一項の規定による保全処分 及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
第三項に規定する裁判 及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
裁判所が第一項の規定により債務者が債権者に対して弁済 その他の債務を消滅させる行為をすることを禁止する旨の保全処分を命じた場合には、債権者は、破産手続の関係においては、当該保全処分に反してされた弁済 その他の債務を消滅させる行為の効力を主張することができない。
ただし、債権者が、その行為の当時、当該保全処分がされたことを知っていたときに限る。
破産手続開始の申立てをした者は、破産手続開始の決定前に限り、当該申立てを取り下げることができる。
この場合において、第二十四条第一項の規定による中止の命令、包括的禁止命令、前条第一項の規定による保全処分、第九十一条第二項に規定する保全管理命令 又は第百七十一条第一項の規定による保全処分がされた後は、裁判所の許可を得なければならない。