原子力損害の賠償に関する法律

# 昭和三十六年法律第百四十七号 #
略称 : 原賠法  原子力損害賠償法 

第三章 損害賠償措置

分類 法律
カテゴリ   工業
@ 施行日 : 令和四年六月十七日 ( 2022年 6月17日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第六十八号による改正
最終編集日 : 2024年 04月19日 04時16分


第一節 損害賠償措置

1項

原子力事業者は、原子力損害を賠償するための措置(以下「損害賠償措置」という。)を講じていなければ、原子炉の運転等をしてはならない。

1項

損害賠償措置は、次条の規定の適用がある場合を除き、原子力損害賠償責任保険契約 及び原子力損害賠償補償契約の締結 若しくは供託であつて、その措置により、一工場 若しくは一事業所当たり 若しくは一原子力船当たり千二百億円政令で定める原子炉の運転等については、千二百億円以内で政令で定める金額とする。以下「賠償措置額」という。)を原子力損害の賠償に充てることができるものとして文部科学大臣の承認を受けたもの 又はこれらに相当する措置であつて文部科学大臣の承認を受けたものとする。

2項

文部科学大臣は、原子力事業者が第三条の規定により原子力損害を賠償したことにより原子力損害の賠償に充てるべき金額が賠償措置額未満となつた場合において、原子力損害の賠償の履行を確保するため必要があると認めるときは、当該原子力事業者に対し、期限を指定し、これを賠償措置額にすることを命ずることができる。

3項

前項に規定する場合においては、同項の規定による命令がなされるまでの間(同項の規定による命令がなされた場合においては、当該命令により指定された期限までの間)は、前条の規定は、適用しない

1項

原子力船を外国の水域に立ち入らせる場合の損害賠償措置は、原子力損害賠償責任保険契約 及び原子力損害賠償補償契約の締結 その他の措置であつて、当該原子力船に係る原子力事業者が原子力損害を賠償する責めに任ずべきものとして政府が当該外国政府と合意した額の原子力損害を賠償するに足りる措置として文部科学大臣の承認を受けたものとする。

2項

外国原子力船を本邦の水域に立ち入らせる場合の損害賠償措置は、当該外国原子力船に係る原子力事業者が原子力損害を賠償する責めに任ずべきものとして政府が当該外国政府と合意した額(原子力損害の発生の原因となつた事実一について三百六十億円を下らないものとする。)の原子力損害を賠償するに足りる措置として文部科学大臣の承認を受けたものとする。

第二節 原子力損害賠償責任保険契約

1項

原子力損害賠償責任保険契約(以下「責任保険契約」という。)は、原子力事業者の原子力損害の賠償の責任が発生した場合において、一定の事由による原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を保険者(保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項に規定する損害保険会社 又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等で、責任保険の引受けを行う者に限る。以下同じ。)がうめることを約し、保険契約者が保険者に保険料を支払うことを約する契約とする。

1項

被害者は、損害賠償請求権に関し、責任保険契約の保険金について、他の債権者に優先して弁済を受ける権利を有する。

2項

被保険者は、被害者に対する損害賠償額について、自己が支払つた限度 又は被害者の承諾があつた限度においてのみ、保険者に対して保険金の支払を請求することができる。

3項

責任保険契約の保険金請求権は、これを譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。


ただし、被害者が損害賠償請求権に関し差し押える場合は、この限りでない。

1項

保険者は、責任保険契約を解除しようとするときは、あらかじめ、その旨を文部科学大臣に届け出なければならない。

2項

文部科学大臣は、前項の規定による届出を受理したときは、その旨を当該責任保険契約の被保険者に通知しなければならない。

3項

責任保険契約の解除は、文部科学大臣が当該解除に係る第一項の規定による届出を受理した日から起算して九十日の後に、将来に向かつてその効力を生ずる。

4項

核燃料物質等の運搬に係る責任保険契約については、保険者は、当該核燃料物質等の運搬の開始後その終了までの間においては、これを解除することができない

5項

前二項の規定に反する特約で被保険者に不利なものは、無効とする。

第三節 原子力損害賠償補償契約

1項

原子力損害賠償補償契約(以下「補償契約」という。)は、原子力事業者の原子力損害の賠償の責任が発生した場合において、責任保険契約 その他の原子力損害を賠償するための措置によつてはうめることができない原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を政府が補償することを約し、原子力事業者が補償料を納付することを約する契約とする。

2項

補償契約に関する事項は、別に法律で定める。

1項

第九条の規定は、補償契約に基づく 補償金について準用する。

第四節 供託

1項

損害賠償措置としての供託は、原子力事業者の主たる事務所のもよりの法務局 又は地方法務局に、金銭 又は文部科学省令で定める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二百七十八条第一項に規定する振替債を含む。以下 この節において同じ。)によりするものとする。

1項

被害者は、損害賠償請求権に関し、前条の規定により原子力事業者が供託した金銭 又は有価証券について、その債権の弁済を受ける権利を有する。

1項

原子力事業者は、次の各号に掲げる場合においては、文部科学大臣の承認を受けて、第十二条の規定により供託した金銭 又は有価証券を取りもどすことができる。

一 号
原子力損害を賠償したとき。
二 号

供託に代えて他の損害賠償措置を講じたとき。

三 号
原子炉の運転等をやめたとき。
2項

文部科学大臣は、前項第二号 又は第三号に掲げる場合において承認するときは、原子力損害の賠償の履行を確保するため必要と認められる限度において、取りもどすことができる時期 及び取りもどすことができる金銭 又は有価証券の額を指定して承認することができる。

1項

この節に定めるもののほか、供託に関する事項は、文部科学省令・法務省令で定める。