子の返還の強制執行は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百七十一条第一項の規定により執行裁判所が第三者に子の返還を実施させる決定をする方法により行うほか、同法第百七十二条第一項に規定する方法により行う。
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律
第四章 子の返還の執行手続に関する民事執行法の特則
前項の強制執行は、確定した子の返還を命ずる終局決定(確定した子の返還を命ずる終局決定と同一の効力を有するものを含む。)の正本に基づいて実施する。
子が十六歳に達した場合には、民事執行法第百七十一条第一項の規定による子の返還の強制執行(同項の規定による決定に基づく子の返還の実施を含む。以下「子の返還の代替執行」という。)は、することができない。
民事執行法第百七十二条第一項に規定する方法による子の返還の強制執行の手続において、執行裁判所は、子が十六歳に達した日の翌日以降に子を返還しないことを理由として、同項の規定による金銭の支払を命じてはならない。
子の返還の代替執行の申立ては、次の各号のいずれかに該当するときでなければすることができない。
民事執行法第百七十二条第一項の規定による決定が確定した日から二週間を経過したとき(当該決定において定められた債務を履行すべき一定の期間の経過がこれより後である場合にあっては、その期間を経過したとき)。
民事執行法第百七十二条第一項に規定する方法による強制執行を実施しても、債務者が常居所地国に子を返還する見込みがあるとは認められないとき。
子の返還の代替執行の申立ては、債務者に代わって常居所地国に子を返還する者(以下「返還実施者」という。)となるべき者を特定してしなければならない。
第百三十四条第一項の決定は、債務者による子の監護を解くために必要な行為をする者として執行官を指定し、かつ、返還実施者を指定してしなければならない。
執行裁判所は、民事執行法第百七十一条第三項の規定にかかわらず、子に急迫した危険があるとき その他の審尋をすることにより強制執行の目的を達することができない事情があるときは、債務者を審尋しないで第百三十四条第一項の決定をすることができる。
執行裁判所は、第百三十七条の返還実施者となるべき者を前条の規定により返還実施者として指定することが子の利益に照らして相当でないと認めるときは、第百三十七条の申立てを却下しなければならない。
民事執行法第百七十五条(第八項を除く。)の規定は子の返還の代替執行における執行官の権限 及び当該権限の行使に係る執行裁判所の裁判について、同法第百七十六条の規定は子の返還の代替執行の手続について、それぞれ準用する。
この場合において、
同法第百七十五条第一項第二号中
「債権者 若しくはその代理人と子」とあるのは
「返還実施者(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成二十五年法律第四十八号)第百三十七条に規定する返還実施者をいう。以下同じ。)、債権者 若しくは同法第百四十条第一項において準用する第六項に規定する代理人と子」と、
「又は債権者 若しくはその代理人」とあるのは
「又は返還実施者、債権者 若しくは同項に規定する代理人」と、
同項第三号 及び同条第九項中
「債権者 又はその代理人」とあるのは
「返還実施者、債権者 又は国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百四十条第一項において準用する第六項に規定する代理人」と
読み替えるものとする。
執行官は、前項において準用する民事執行法第百七十五条第一項 又は第二項の規定による子の監護を解くために必要な行為をするに際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、威力を用い、又は警察上の援助を求めることができる。
執行官は、前項の規定にかかわらず、子に対して威力を用いることはできない。
子以外の者に対して威力を用いることが子の心身に有害な影響を及ぼすおそれがある場合においては、当該子以外の者についても、同様とする。
返還実施者は、常居所地国に子を返還するために、子の監護 その他の必要な行為をすることができる。
子の返還の代替執行の手続については、民事執行法第百七十一条第六項の規定は、適用しない。
前条第一項において準用する民事執行法第百七十六条の規定は、返還実施者について準用する。
外務大臣は、子の返還の代替執行に関し、立会いその他の必要な協力をすることができる。
子の返還の強制執行に係る事件の記録の閲覧、謄写 若しくは複製、その正本、謄本 若しくは抄本の交付 又は当該事件に関する事項の証明書の交付の請求については、第六十二条の規定を準用する。