裁判所は、人に対する訴えについて、その住所が日本国内にあるとき、住所がない場合 又は住所が知れない場合にはその居所が日本国内にあるとき、居所がない場合 又は居所が知れない場合には訴えの提起前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。
民事訴訟法
第一節 日本の裁判所の管轄権
裁判所は、大使、公使 その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人に対する訴えについて、前項の規定にかかわらず、管轄権を有する。
裁判所は、法人 その他の社団 又は財団に対する訴えについて、その主たる事務所 又は営業所が日本国内にあるとき、事務所 若しくは営業所がない場合 又はその所在地が知れない場合には代表者 その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にあるときは、管轄権を有する。
次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定めるときは、日本の裁判所に提起することができる。
一 契約上の債務の履行の請求を目的とする訴え 又は契約上の債務に関して行われた事務管理 若しくは生じた不当利得に係る請求、契約上の債務の不履行による損害賠償の請求 その他契約上の債務に関する請求を目的とする訴え | 契約において 定められた当該債務の履行地が日本国内にあるとき、又は契約において 選択された地の 法によれば 当該債務の履行地が日本国内にあるとき。 |
二 手形 又は小切手による 金銭の支払の請求を目的とする訴え | 手形 又は小切手の支払地が日本国内にあるとき。 |
三 財産権上の訴え | 請求の目的が日本国内にあるとき、又は当該訴えが金銭の支払を請求するものである場合には差し押さえることができる被告の財産が日本国内にあるとき(その財産の価額が著しく低いときを除く。)。 |
四 事務所 又は営業所を有する者に対する訴えで その事務所 又は営業所における 業務に関するもの | 当該事務所 又は営業所が日本国内にあるとき。 |
五 日本において 事業を行う者(日本において 取引を継続してする外国会社(会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第二号に規定する 外国会社をいう。)を含む。)に対する訴え | 当該訴えが その者の日本における 業務に関するものであるとき。 |
六 船舶債権 その他船舶を担保とする債権に基づく訴え | 船舶が日本国内にあるとき。 |
七 会社 その他の社団 又は財団に関する訴えで次に掲げるもの | 社団 又は財団が 法人である場合にはそれが日本の 法令により設立されたものであるとき、法人でない場合には その主たる事務所 又は営業所が日本国内にあるとき。 |
イ 会社 その他の社団からの社員 若しくは社員であった者に対する訴え、社員からの社員 若しくは社員であった者に対する訴え 又は社員であった者からの社員に対する訴えで、社員としての資格に基づくもの | |
ロ 社団 又は財団からの役員 又は役員であった者に対する訴えで役員としての資格に基づくもの | |
ハ 会社からの発起人 若しくは発起人であった者 又は検査役 若しくは検査役であった者に対する訴えで発起人 又は検査役としての資格に基づくもの | |
ニ 会社 その他の社団の債権者からの社員 又は社員であった者に対する訴えで社員としての資格に基づくもの | |
八 不法行為に関する訴え | 不法行為があった地が日本国内にあるとき(外国で行われた加害行為の結果が日本国内で発生した場合において、日本国内における その結果の発生が通常予見することのできないものであったときを除く。)。 |
九 船舶の衝突 その他海上の事故に基づく損害賠償の訴え | 損害を受けた船舶が最初に到達した地が日本国内にあるとき。 |
十 海難救助に関する訴え | 海難救助があった地 又は救助された船舶が最初に到達した地が日本国内にあるとき。 |
十一 不動産に関する訴え | 不動産が日本国内にあるとき。 |
十二 相続権 若しくは遺留分に関する訴え 又は遺贈 その他死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴え | 相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合 又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき、居所がない場合 又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)。 |
十三 相続債権 その他相続財産の負担に関する訴えで前号に掲げる訴えに該当しないもの | 同号に定めるとき。 |
消費者(個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。以下同じ。)と事業者(法人 その他の社団 又は財団 及び事業として 又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。以下同じ。)との間で締結される契約(労働契約を除く。以下「消費者契約」という。)に関する消費者からの事業者に対する訴えは、訴えの提起の時 又は消費者契約の締結の時における消費者の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができる。
労働契約の存否 その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下「個別労働関係民事紛争」という。)に関する労働者からの事業主に対する訴えは、個別労働関係民事紛争に係る労働契約における労務の提供の地(その地が定まっていない場合にあっては、労働者を雇い入れた事業所の所在地)が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができる。
消費者契約に関する事業者からの消費者に対する訴え 及び個別労働関係民事紛争に関する事業主からの労働者に対する訴えについては、前条の規定は、適用しない。
会社法第七編第二章に規定する訴え(同章第四節 及び第六節に規定するものを除く。)、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第六章第二節に規定する訴え その他これらの法令以外の日本の法令により設立された社団 又は財団に関する訴えでこれらに準ずるものの管轄権は、日本の裁判所に専属する。
登記 又は登録に関する訴えの管轄権は、登記 又は登録をすべき地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に専属する。
知的財産権(知的財産基本法(平成十四年法律第百二十二号)第二条第二項に規定する知的財産権をいう。)のうち設定の登録により発生するものの存否 又は効力に関する訴えの管轄権は、その登録が日本においてされたものであるときは、日本の裁判所に専属する。
一の訴えで数個の請求をする場合において、日本の裁判所が一の請求について管轄権を有し、他の請求について管轄権を有しないときは、当該一の請求と他の請求との間に密接な関連があるときに限り、日本の裁判所にその訴えを提起することができる。
ただし、数人からの 又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る。
当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができる。
前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。
第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
外国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意は、その裁判所が法律上 又は事実上裁判権を行うことができないときは、これを援用することができない。
将来において生ずる消費者契約に関する紛争を対象とする第一項の合意は、次に掲げる場合に限り、その効力を有する。
消費者契約の締結の時において消費者が住所を有していた国の裁判所に訴えを提起することができる旨の合意(その国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意については、次号に掲げる場合を除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなす。)であるとき。
消費者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、又は事業者が日本 若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において、消費者が当該合意を援用したとき。
将来において生ずる個別労働関係民事紛争を対象とする第一項の合意は、次に掲げる場合に限り、その効力を有する。
労働契約の終了の時にされた合意であって、その時における労務の提供の地がある国の裁判所に訴えを提起することができる旨を定めたもの(その国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意については、次号に掲げる場合を除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなす。)であるとき。
労働者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、又は事業主が日本 若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において、労働者が当該合意を援用したとき。
被告が日本の裁判所が管轄権を有しない旨の抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、裁判所は、管轄権を有する。
裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合(日本の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意に基づき訴えが提起された場合を除く。)においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地 その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理 及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、その訴えの全部 又は一部を却下することができる。
第三条の二から第三条の四まで 及び第三条の六から前条までの規定は、訴えについて法令に日本の裁判所の管轄権の専属に関する定めがある場合には、適用しない。
裁判所は、日本の裁判所の管轄権に関する事項について、職権で証拠調べをすることができる。
日本の裁判所の管轄権は、訴えの提起の時を標準として定める。