消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み 又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
消費者契約法
第一節 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し
重要事項について事実と異なることを告げること。
当該告げられた内容が事実であるとの誤認
物品、権利、役務 その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額 その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。
当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項 又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意 又は重大な過失によって告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み 又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み 又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
当該事業者に対し、当該消費者が、その住居 又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。
当該消費者が当該消費者契約の締結について勧誘を受けている場所において、当該消費者が当該消費者契約を締結するか否かについて相談を行うために電話 その他の内閣府令で定める方法によって当該事業者以外の者と連絡する旨の意思を示したにもかかわらず、威迫する言動を交えて、当該消費者が当該方法によって連絡することを妨げること。
進学、就職、結婚、生計 その他の社会生活上の重要な事項
容姿、体型 その他の身体の特徴 又は状況に関する重要な事項
当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情 その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。
当該消費者が、加齢 又は心身の故障によりその判断力が著しく低下していることから、生計、健康 その他の事項に関し その現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合 その他の正当な理由がある場合でないのに、当該消費者契約を締結しなければその現在の生活の維持が困難となる旨を告げること。
前号に掲げるもののほか、当該消費者が当該消費者契約の申込み 又はその承諾の意思表示をする前に、当該事業者が調査、情報の提供、物品の調達 その他の当該消費者契約の締結を目指した事業活動を実施した場合において、当該事業活動が当該消費者からの特別の求めに応じたものであったこと その他の取引上の社会通念に照らして正当な理由がある場合でないのに、当該事業活動が当該消費者のために特に実施したものである旨 及び当該事業活動の実施により生じた損失の補償を請求する旨を告げること。
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、物品、権利、役務 その他の当該消費者契約の目的となるものの分量、回数 又は期間(以下この項において「分量等」という。)が当該消費者にとっての通常の分量等(消費者契約の目的となるものの内容 及び取引条件 並びに事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況 及びこれについての当該消費者の認識に照らして当該消費者契約の目的となるものの分量等として通常想定される分量等をいう。以下この項において同じ。)を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み 又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、消費者が既に当該消費者契約の目的となるものと同種のものを目的とする消費者契約(以下この項において「同種契約」という。)を締結し、当該同種契約の目的となるものの分量等と当該消費者契約の目的となるものの分量等とを合算した分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み 又はその承諾の意思表示をしたときも、同様とする。
第一項第一号 及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項(同項の場合にあっては、第三号に掲げるものを除く。)をいう。
物品、権利、役務 その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途 その他の内容であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの
物品、権利、役務 その他の当該消費者契約の目的となるものの対価 その他の取引条件であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの
前二号に掲げるもののほか、物品、権利、役務 その他の当該消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産 その他の重要な利益についての損害 又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情
第一項から第四項までの規定による消費者契約の申込み 又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
前条の規定は、事業者が第三者に対し、当該事業者と消費者との間における消費者契約の締結について媒介をすることの委託(以下この項において単に「委託」という。)をし、当該委託を受けた第三者(その第三者から委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)を受けた者を含む。以下「受託者等」という。)が消費者に対して同条第一項から第四項までに規定する行為をした場合について準用する。
この場合において、
同条第二項ただし書中
「当該事業者」とあるのは、
「当該事業者 又は次条第一項に規定する受託者等」と
読み替えるものとする。
消費者契約の締結に係る消費者の代理人(復代理人(二以上の段階にわたり復代理人として選任された者を含む。)を含む。以下同じ。)、事業者の代理人 及び受託者等の代理人は、前条第一項から第四項まで(前項において準用する場合を含む。次条から第七条までにおいて同じ。)の規定の適用については、それぞれ消費者、事業者 及び受託者等とみなす。
第四条第一項から第四項までの規定は、これらの項に規定する消費者契約の申込み 又はその承諾の意思表示に対する民法第九十六条の規定の適用を妨げるものと解してはならない。
民法第百二十一条の二第一項の規定にかかわらず、消費者契約に基づく債務の履行として給付を受けた消費者は、第四条第一項から第四項までの規定により当該消費者契約の申込み 又はその承諾の意思表示を取り消した場合において、給付を受けた当時 その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、当該消費者契約によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
第四条第一項から第四項までの規定による取消権は、追認をすることができる時から一年間(同条第三項第八号に係る取消権については、三年間)行わないときは、時効によって消滅する。
当該消費者契約の締結の時から五年(同号に係る取消権については、十年)を経過したときも、同様とする。
会社法(平成十七年法律第八十六号)その他の法律により詐欺 又は強迫を理由として取消しをすることができないものとされている株式 若しくは出資の引受け 又は基金の拠出が消費者契約としてされた場合には、当該株式 若しくは出資の引受け 又は基金の拠出に係る意思表示については、第四条第一項から第四項までの規定によりその取消しをすることができない。