犯罪による収益の移転防止に関する法律

# 平成十九年法律第二十二号 #
略称 : 犯罪収益移転防止法  犯収法 

第一章 総則

分類 法律
カテゴリ   刑事
@ 施行日 : 令和四年十二月二十九日 ( 2022年 12月29日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第九十七号による改正
最終編集日 : 2023年 01月22日 10時43分


1項

この法律は、犯罪による収益が組織的な犯罪を助長するために使用されるとともに、これが移転して事業活動に用いられることにより健全な経済活動に重大な悪影響を与えるものであること、及び犯罪による収益の移転が没収、追徴 その他の手続によりこれを剝奪し、又は犯罪による被害の回復に充てることを困難にするものであることから、犯罪による収益の移転を防止すること(以下「犯罪による収益の移転防止」という。)が極めて重要であることに鑑み、特定事業者による顧客等の本人特定事項(第四条第一項第一号に規定する本人特定事項をいう。第三条第一項において同じ。)等の確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置を講ずることにより、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律平成十一年法律第百三十六号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)及び国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律平成三年法律第九十四号。以下「麻薬特例法」という。)による措置と相まって、犯罪による収益の移転防止を図り、併せてテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約等の的確な実施を確保し、もって国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与することを目的とする。

1項

この法律において「犯罪による収益」とは、組織的犯罪処罰法第二条第四項に規定する犯罪収益等 又は麻薬特例法第二条第五項に規定する薬物犯罪収益等をいう。

2項

この法律において「特定事業者」とは、次に掲げる者をいう。

一 号
銀行
二 号
信用金庫
三 号
信用金庫連合会
四 号
労働金庫
五 号
労働金庫連合会
六 号
信用協同組合
七 号
信用協同組合連合会
八 号
農業協同組合
九 号
農業協同組合連合会
十 号
漁業協同組合
十一 号
漁業協同組合連合会
十二 号
水産加工業協同組合
十三 号
水産加工業協同組合連合会
十四 号
農林中央金庫
十五 号
株式会社商工組合中央金庫
十六 号
株式会社日本政策投資銀行
十七 号
保険会社
十八 号

保険業法平成七年法律第百五号)第二条第七項に規定する外国保険会社等

十九 号

保険業法第二条第十八項に規定する少額短期保険業者

二十 号
共済水産業協同組合連合会
二十一 号

金融商品取引法昭和二十三年法律第二十五号) 第二条第九項に規定する金融商品取引業者

二十二 号

金融商品取引法第二条第三十項に規定する証券金融会社

二十三 号

金融商品取引法第六十三条第五項に規定する特例業務届出者

二十四 号

金融商品取引法第六十三条の九第四項に規定する海外投資家等特例業務届出者

二十五 号
信託会社
二十六 号

信託業法(平成十六年法律第百五十四号)第五十条の二第一項の登録を受けた者

二十七 号

不動産特定共同事業法平成六年法律第七十七号)第二条第五項に規定する不動産特定共同事業者(信託会社 又は金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)第一条第一項の認可を受けた金融機関であって、不動産特定共同事業法第二条第四項に規定する不動産特定共同事業を営むものを含む。)、同条第七項に規定する小規模不動産特定共同事業者、同条第九項に規定する特例事業者 又は同条第十一項に規定する適格特例投資家限定事業者

二十八 号
無尽会社
二十九 号

貸金業法昭和五十八年法律第三十二号)第二条第二項に規定する貸金業者

三十 号
貸金業法第二条第一項第五号に規定する者のうち政令で定める者
三十一 号

資金決済に関する法律平成二十一年法律第五十九号)第二条第三項に規定する資金移動業者

三十二 号
資金決済に関する法律第二条第八項に規定する暗号資産交換業者
三十三 号

商品先物取引法昭和二十五年法律第二百三十九号)第二条第二十三項に規定する商品先物取引業者

三十四 号

社債、株式等の振替に関する法律平成十三年法律第七十五号)第二条第二項に規定する振替機関(同法第四十八条の規定により振替機関とみなされる日本銀行を含む。

三十五 号

社債、株式等の振替に関する法律第二条第四項に規定する口座管理機関

三十六 号

電子記録債権法平成十九年法律第百二号)第二条第二項に規定する電子債権記録機関

三十七 号
独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構
三十八 号

本邦において両替業務(業として外国通貨(本邦通貨以外の通貨をいう。)又は旅行小切手の売買を行うことをいう。)を行う者

三十九 号

顧客に対し、その指定する機械類 その他の物品を購入してその賃貸(政令で定めるものに限る)をする業務を行う者

四十 号

それを提示し又は通知して、特定の販売業者から商品 若しくは権利を購入し、又は特定の役務提供事業者(役務の提供の事業を営む者をいう。以下 この号において同じ。)から有償で役務の提供を受けることができるカード その他の物 又は番号、記号 その他の符号(以下「クレジットカード等」という。)をこれにより商品 若しくは権利を購入しようとする者 又は役務の提供を受けようとする者(以下「利用者たる顧客」という。)に交付し又は付与し、当該利用者たる顧客が当該クレジットカード等を提示し 又は通知して特定の販売業者から商品 若しくは権利を購入し、又は特定の役務提供事業者から有償で役務の提供を受けたときは、当該販売業者 又は役務提供事業者に当該商品 若しくは権利の代金 又は当該役務の対価に相当する額の金銭を直接に又は第三者を経由して交付するとともに、当該利用者たる顧客から、あらかじめ定められた時期までに当該代金 若しくは当該対価の合計額の金銭を受領し、又は あらかじめ定められた時期ごとに当該合計額を基礎としてあらかじめ定められた方法により算定して得た額の金銭を受領する業務を行う者

四十一 号

それを提示し又は通知して、特定の販売業者から商品 若しくは権利を購入し、又は特定の役務提供事業者(役務の提供の事業を営む者をいう。以下 この号において同じ。)から有償で役務の提供を受けることができるカード その他の物 又は番号、記号 その他の符号(以下「クレジットカード等」という。)をこれにより商品 若しくは権利を購入しようとする者 又は役務の提供を受けようとする者(以下「利用者たる顧客」という。)に交付し 又は付与し、当該利用者たる顧客が当該クレジットカード等を提示し又は通知して特定の販売業者から商品 若しくは権利を購入し、又は特定の役務提供事業者から有償で役務の提供を受けたときは、当該販売業者 又は役務提供事業者に当該商品 若しくは権利の代金 又は当該役務の対価に相当する額の金銭を直接に又は第三者を経由して交付するとともに、当該利用者たる顧客から、あらかじめ定められた時期までに当該代金 若しくは当該対価の合計額の金銭を受領し、又はあらかじめ定められた時期ごとに当該合計額を基礎としてあらかじめ定められた方法により算定して得た額の金銭を受領する業務を行う者

四十二 号

宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号第二条第三号に規定する宅地建物取引業者(信託会社 又は金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第一条第一項の認可を受けた金融機関であって、宅地建物取引業法第二条第二号に規定する宅地建物取引業(別表において単に「宅地建物取引業」という。)を営むもの(第二十二条第一項第十六号において「みなし宅地建物取引業者」という。)を含む。

四十三 号

金、白金 その他の政令で定める貴金属 若しくはダイヤモンド その他の政令で定める宝石 又は これらの製品(以下「貴金属等」という。)の売買を業として行う者

四十四 号

顧客に対し、自己の居所 若しくは事務所の所在地を当該顧客が郵便物(民間事業者による信書の送達に関する法律平成十四年法律第九十九号第二条第三項に規定する信書便物 並びに大きさ 及び重量が郵便物に類似する貨物を含む。以下同じ。)を受け取る場所として用い、又は自己の電話番号を当該顧客が連絡先の電話番号として用いることを許諾し、当該自己の居所 若しくは事務所において当該顧客宛ての郵便物を受け取ってこれを当該顧客に引き渡し、又は当該顧客宛ての当該電話番号に係る電話(ファクシミリ装置による通信を含む。以下同じ。)を受けてその内容を当該顧客に連絡し、若しくは当該顧客宛ての若しくは当該顧客からの当該電話番号に係る電話を当該顧客が指定する電話番号に自動的に転送する役務を提供する業務を行う者

四十五 号

弁護士(外国法事務弁護士を含む。)又は弁護士法人(外国法事務弁護士法人 及び弁護士・外国法事務弁護士共同法人を含む。

四十六 号
司法書士 又は司法書士法人
四十七 号
行政書士 又は行政書士法人
四十八 号

公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士を含む。)又は監査法人

四十九 号
税理士 又は税理士法人
3項

この法律において「顧客等」とは、顧客(前項第四十号に掲げる特定事業者にあっては、利用者たる顧客)又はこれに準ずる者として政令で定める者をいう。

1項

国家公安委員会は、特定事業者による顧客等の本人特定事項等の確認、取引記録等の保存、 疑わしい取引の届出等の措置が的確に行われることを確保するため、特定事業者に対し犯罪による収益の移転に係る手口に関する情報の提供 その他の援助を行うとともに、犯罪による収益の移転防止の重要性について国民の理解を深めるよう努めるものとする。

2項

国家公安委員会は、特定事業者により届け出られた疑わしい取引に関する情報 その他の犯罪による収益に関する情報が、刑事事件の捜査 及び犯則事件の調査 並びに犯罪による収益の移転防止に関する国際的な情報交換 その他の協力に有効に活用されるよう、迅速かつ的確にその集約、整理 及び分析を行うものとする。

3項

国家公安委員会は、毎年、犯罪による収益の移転に係る手口 その他の犯罪による収益の移転の状況に関する調査 及び分析を行った上で、特定事業者 その他の事業者が行う取引の種別ごとに、当該取引による犯罪による収益の移転の危険性の程度 その他の当該調査 及び分析の結果を記載した犯罪収益移転危険度調査書を作成し、これを公表するものとする。

4項

国家公安委員会は、第二項の規定による情報の集約、整理 及び分析 並びに前項の規定による調査 及び分析を行うため必要があると認めるときは、関係行政機関、特定事業者 その他の関係者に対し、資料の提出、意見の表明、説明 その他必要な協力を求めることができる。

5項

前項に定めるもののほか、 国家公安委員会 その他の関係行政機関 及び地方公共団体の関係機関は、犯罪による収益の移転防止について相互に協力するものとする。