国は、大学等における付加価値の高い知的財産の創造が我が国の経済社会の持続的な発展の源泉であることに鑑み、科学技術・イノベーション基本法(平成七年法律第百三十号)第三条に規定する科学技術・イノベーション創出の振興に関する方針に配慮しつつ、 創造力の豊かな研究者の確保 及び養成、研究施設等の整備 並びに研究開発に係る資金の効果的な使用 その他 研究開発の推進に必要な施策を講ずるものとする。
知的財産基本法
第二章 基本的施策
国は、大学等における研究成果が新たな事業分野の開拓 及び産業の技術の向上等に有用であることにかんがみ、 大学等において当該研究成果の適切な管理 及び事業者への円滑な移転が行われるよう、大学等における知的財産に関する専門的知識を有する人材を活用した体制の整備、知的財産権に係る設定の登録 その他の手続の改善、 市場等に関する調査研究 及び情報提供 その他 必要な施策を講ずるものとする。
国は、発明、植物の新品種、意匠、商標 その他の国の登録により権利が発生する知的財産について、早期に権利を確定することにより事業者が事業活動の円滑な実施を図ることができるよう、 所要の手続の迅速かつ的確な実施を可能とする審査体制の整備 その他必要な施策を講ずるものとする。
前項の施策を講ずるに当たり、その実効的な遂行を確保する観点から、事業者の理解と協力を得るよう努めるものとする。
国は、経済社会における知的財産の活用の進展に伴い、知的財産権の保護に関し司法の果たすべき役割がより重要となることにかんがみ、 知的財産権に関する事件について、訴訟手続の一層の充実 及び迅速化、裁判所の専門的な処理体制の整備 並びに裁判外における紛争処理制度の拡充を図るために必要な施策を講ずるものとする。
国は、国内市場における知的財産権の侵害 及び知的財産権を侵害する物品の輸入について、事業者 又は事業者団体 その他関係団体との緊密な連携協力体制の下、知的財産権を侵害する事犯の取締り、権利を侵害する物品の没収 その他 必要な措置を講ずるものとする。
国は、本邦の法令に基づいて設立された法人 その他の団体 又は日本の国籍を有する者(「本邦法人等」という。次条において同じ。)の有する知的財産が外国において適正に保護されない場合には、当該外国政府、国際機関 及び関係団体と状況に応じて連携を図りつつ、知的財産に関する条約に定める権利の的確な行使 その他 必要な措置を講ずるものとする。
国は、知的財産に関する国際機関 その他の国際的な枠組みへの協力を通じて、各国政府と共同して国際的に整合のとれた知的財産に係る制度の構築に努めるとともに、 知的財産の保護に関する制度の整備が十分に行われていない国 又は地域において、本邦法人等が迅速かつ確実に知的財産権の取得 又は行使をすることができる環境が整備されるよう必要な施策を講ずるものとする。
国は、生命科学 その他技術革新の進展が著しい分野における研究開発の有用な成果を知的財産権として迅速かつ適正に保護することにより、活発な起業化等を通じて新たな事業の創出が期待されることにかんがみ、適正に保護すべき権利の範囲に関する検討の結果を踏まえつつ、法制上の措置 その他必要な措置を講ずるものとする。
国は、インターネットの普及 その他社会経済情勢の変化に伴う知的財産の利用方法の多様化に的確に対応した知的財産権の適正な保護が図られるよう、 権利の内容の見直し、事業者の技術的保護手段の開発 及び利用に対する支援 その他 必要な施策を講ずるものとする。
国は、事業者が知的財産を活用した新たな事業の創出 及び当該事業の円滑な実施を図ることができるよう、知的財産の適正な評価方法の確立、事業者に参考となるべき経営上の指針の策定 その他事業者が知的財産を有効かつ適正に活用することができる環境の整備に必要な施策を講ずるものとする。
前項の施策を講ずるに当たっては、中小企業が我が国経済の活力の維持 及び強化に果たすべき重要な使命を有するものであることにかんがみ、 個人による創業 及び事業意欲のある中小企業者による新事業の開拓に対する特別の配慮がなされなければならない。
国は、知的財産に関する内外の動向の調査 及び分析を行い、必要な統計 その他の資料の作成を行うとともに、 知的財産に関するデータベースの整備を図り、事業者、大学等 その他の関係者にインターネット その他の高度情報通信ネットワークの利用を通じて迅速に情報を提供できるよう必要な施策を講ずるものとする。
国は、国民が広く 知的財産に対する理解と関心を深めることにより、知的財産権が尊重される社会を実現できるよう、 知的財産に関する教育 及び学習の振興 並びに広報活動等を通じた知的財産に関する知識の普及のために必要な施策を講ずるものとする。
国は、知的財産の創造、保護 及び活用を促進するため、大学等 及び事業者と緊密な連携協力を図りながら、 知的財産に関する専門的知識を有する人材の確保、養成 及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。