昭和二十二年法律第五十四号(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)

# 昭和二十二年法律第五十四号 #
略称 : 独禁法  独占禁止法 

第十二章 犯則事件の調査等

分類 法律
カテゴリ   産業通則
@ 施行日 : 令和六年六月十九日 ( 2024年 6月19日 )
@ 最終更新 : 令和六年法律第五十八号による改正
最終編集日 : 2024年 09月11日 12時31分


1項

公正取引委員会の職員(公正取引委員会の指定を受けた者に限る。以下この章において「委員会職員」という。)は、犯則事件(第八十九条から第九十一条までの罪に係る事件をいう。以下この章において同じ。)を調査するため必要があるときは、犯則嫌疑者 若しくは参考人(以下この項において「犯則嫌疑者等」という。)に対して出頭を求め、犯則嫌疑者等に対して質問し、犯則嫌疑者等が所持し 若しくは置き去つた物件を検査し、又は犯則嫌疑者等が任意に提出し 若しくは置き去つた物件を領置することができる。

○2項

委員会職員は、犯則事件の調査について、官公署 又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

1項

委員会職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、公正取引委員会の所在地を管轄する地方裁判所 又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、臨検、捜索、差押え 又は記録命令付差押え(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を保管する者 その他電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて必要な電磁的記録を記録媒体に記録させ、又は印刷させた上、当該記録媒体を差し押さえることをいう。以下同じ。)をすることができる。

○2項

差し押さえるべき物件が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成 若しくは変更をした電磁的記録 又は当該電子計算機で変更 若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機 又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機 又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。

○3項

前二項の場合において、急速を要するときは、委員会職員は、臨検すべき場所、捜索すべき場所、身体 若しくは物件、差し押さえるべき物件 又は電磁的記録を記録させ、若しくは印刷させるべき者の所在地を管轄する地方裁判所 又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、これらの項の処分をすることができる。

○4項

委員会職員は、第一項 又は前項の許可状(第百十四条の三第四項 及び第五項除き、以下この章において「許可状」という。)を請求する場合においては、犯則事件が存在すると認められる資料を提供しなければならない。

○5項

前項の請求があつた場合においては、地方裁判所 又は簡易裁判所の裁判官は、臨検すべき場所、捜索すべき場所、身体 若しくは物件、差し押さえるべき物件 又は記録させ、若しくは印刷させるべき電磁的記録 及びこれを記録させ、若しくは印刷させるべき者 並びに請求者の官職 及び氏名、有効期間、その期間経過後は執行に着手することができずこれを返還しなければならない旨、交付の年月日 並びに裁判所名を記載し、自己の記名押印した許可状を委員会職員に交付しなければならない。


この場合において、犯則嫌疑者の氏名(法人については、名称)又は犯則の事実が明らかであるときは、これらの事項をも記載しなければならない。

○6項

第二項の場合においては、許可状に、前項に規定する事項のほか、差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。

○7項

委員会職員は、許可状を他の委員会職員に交付して、臨検、捜索、差押え 又は記録命令付差押えをさせることができる。

1項

委員会職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、許可状の交付を受けて、犯則嫌疑者から発し、又は犯則嫌疑者に対して発した郵便物、信書便物 又は電信についての書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するものを差し押さえることができる。

○2項

委員会職員は、前項の規定に該当しない郵便物、信書便物 又は電信についての書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するものについては、犯則事件に関係があると認めるに足りる状況があるものに限り、許可状の交付を受けて、これを差し押さえることができる。

○3項

委員会職員は、前二項の規定による処分をした場合においては、その旨を発信人 又は受信人に通知しなければならない。


ただし、通知によつて犯則事件の調査が妨げられるおそれがある場合は、この限りでない。

1項

委員会職員は、差押え 又は記録命令付差押えをするため必要があるときは、電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者 又は自己の業務のために不特定 若しくは多数の者の通信を媒介することのできる電気通信を行うための設備を設置している者に対し、その業務上記録している電気通信の送信元、送信先、通信日時 その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定し、三十日を超えない期間を定めて、これを消去しないよう、書面で求めることができる。


この場合において、当該電磁的記録について差押え 又は記録命令付差押えをする必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない。

○2項

前項の規定により消去しないよう求める期間については、特に必要があるときは、三十日を超えない範囲内で延長することができる。


ただし、消去しないよう求める期間は、通じて六十日超えることができない

○3項

第一項の規定による求めを行う場合において、必要があるときは、みだりに当該求めに関する事項を漏らさないよう求めることができる。

1項

差し押さえるべき物件が電磁的記録に係る記録媒体であるときは、委員会職員は、その差押えに代えて次に掲げる処分をすることができる。

一 号

差し押さえるべき記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写し、印刷し、又は移転した上、当該他の記録媒体を差し押さえること。

二 号

差押えを受ける者に差し押さえるべき記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写させ、印刷させ、又は移転させた上、当該他の記録媒体を差し押さえること。

1項

臨検、捜索、差押え 又は記録命令付差押えは、許可状に夜間でも執行することができる旨の記載がなければ、日没から日の出までの間には、してはならない。

○2項

日没前に開始した臨検、捜索、差押え 又は記録命令付差押えは、必要があると認めるときは、日没後まで継続することができる。

1項

臨検、捜索、差押え 又は記録命令付差押えの許可状は、これらの処分を受ける者に提示しなければならない。

1項

委員会職員は、この章の規定により質問、検査、領置、臨検、捜索、差押え 又は記録命令付差押えをするときは、その身分を示す証票を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

1項

委員会職員は、臨検、捜索、差押え 又は記録命令付差押えをするため必要があるときは、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。

○2項

前項の処分は、領置物件、差押物件 又は記録命令付差押物件についても、することができる。

1項

臨検すべき物件 又は差し押さえるべき物件が電磁的記録に係る記録媒体であるときは、委員会職員は、臨検 又は捜索 若しくは差押えを受ける者に対し、電子計算機の操作その他の必要な協力を求めることができる。

1項

委員会職員は、この章の規定により質問、検査、領置、臨検、捜索、差押え 又は記録命令付差押えをする間は、何人に対しても、許可を受けないでその場所に出入りすることを禁止することができる。

1項

委員会職員は、人の住居 又は人の看守する邸宅 若しくは建造物 その他の場所で臨検、捜索、差押え 又は記録命令付差押えをするときは、その所有者 若しくは管理者(これらの者の代表者、代理人 その他これらの者に代わるべき者を含む。)又はこれらの者の使用人 若しくは同居の親族で成年に達した者を立ち会わせなければならない。

○2項

前項の場合において、同項に規定する者を立ち会わせることができないときは、その隣人で成年に達した者 又はその地の警察官若しくは地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。

○3項

女子の身体について捜索するときは、成年の女子を立ち会わせなければならない。


ただし、急速を要する場合は、この限りでない。

1項

委員会職員は、臨検、捜索、差押え 又は記録命令付差押えをするに際し必要があるときは、警察官の援助を求めることができる。

1項

委員会職員は、この章の規定により質問、検査、領置、臨検、捜索、差押え 又は記録命令付差押えをしたときは、その処分を行つた年月日 及びその結果を記載した調書を作成し、質問を受けた者 又は立会人に示し、これらの者とともにこれに署名押印しなければならない。


ただし、質問を受けた者 又は立会人が署名押印せず、又は署名押印することができないときは、その旨を付記すれば足りる。

1項

委員会職員は、領置、差押え 又は記録命令付差押えをしたときは、その目録を作成し、領置物件、差押物件 若しくは記録命令付差押物件の所有者、所持者 若しくは保管者(第百三条の三の規定による処分を受けた者を含む。)又はこれらの者に代わるべき者にその謄本を交付しなければならない。

1項

運搬 又は保管に不便な領置物件、差押物件 又は記録命令付差押物件は、その所有者 又は所持者 その他委員会職員が適当と認める者に、その承諾を得て、保管証を徴して保管させることができる。

1項

公正取引委員会は、領置物件、差押物件 又は記録命令付差押物件について留置の必要がなくなつたときは、その返還を受けるべき者にこれを還付しなければならない。

○2項

公正取引委員会は、前項の領置物件、差押物件 又は記録命令付差押物件の返還を受けるべき者の住所若しくは居所がわからないため、又はその他の事由によりこれを還付することができない場合においては、その旨を公告しなければならない。

○3項

前項の公告に係る領置物件、差押物件 又は記録命令付差押物件について、公告の日から六月を経過しても還付の請求がないときは、これらの物件は、国庫に帰属する。

1項

公正取引委員会は、第百三条の三の規定により電磁的記録を移転し、又は移転させた上差し押さえた記録媒体について留置の必要がなくなつた場合において、差押えを受けた者と当該記録媒体の所有者、所持者 又は保管者とが異なるときは、当該差押えを受けた者に対し、当該記録媒体を交付し、又は当該電磁的記録の複写を許さなければならない。

○2項

前条第二項の規定は、前項の規定による交付 又は複写について準用する。

○3項

前項において準用する前条第二項の規定による公告の日から六月を経過しても前項の交付 又は複写の請求がないときは、その交付をし、又は複写をさせることを要しない。

1項

委員会職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、学識経験を有する者に領置物件、差押物件 若しくは記録命令付差押物件についての鑑定を嘱託し、又は通訳 若しくは翻訳を嘱託することができる。

○2項

前項の規定による鑑定の嘱託を受けた者(第四項 及び第五項において「鑑定人」という。)は、公正取引委員会の所在地を管轄する地方裁判所 又は簡易裁判所の裁判官の許可を受けて、当該鑑定に係る物件を破壊することができる。

○3項

前項の許可の請求は、委員会職員からこれをしなければならない。

○4項

前項の請求があつた場合において、裁判官は、当該請求を相当と認めるときは、犯則嫌疑者の氏名(法人については、名称)、罪名、破壊すべき物件 及び鑑定人の氏名 並びに請求者の官職 及び氏名、有効期間、その期間経過後は執行に着手することができずこれを返還しなければならない旨、交付の年月日 及び裁判所名を記載し、自己の記名押印した許可状を委員会職員に交付しなければならない。

○5項

鑑定人は、第二項の処分を受ける者に前項の許可状を示さなければならない。

1項

委員会職員は、犯則事件の調査を終えたときは、調査の結果を公正取引委員会に報告しなければならない。

1項

公正取引委員会は、犯則事件の調査の結果、第七十四条第一項の規定により告発した場合において、領置物件、差押物件 又は記録命令付差押物件があるときは、これを領置目録、差押目録又は記録命令付差押目録とともに引き継がなければならない。

○2項

前項の領置物件、差押物件 又は記録命令付差押物件が第百十三条の規定による保管に係るものである場合においては、同条の保管証をもつて引き継ぐとともに、その旨を同条の保管者に通知しなければならない。

○3項

前二項の規定により領置物件、差押物件 又は記録命令付差押物件が引き継がれたときは、当該物件は、刑事訴訟法の規定によつて押収されたものとみなす。

1項

この章の規定に基づいて公正取引委員会 又は委員会職員がする処分 及び行政指導については、行政手続法第二章から第四章までの規定は、適用しない

1項

この章の規定による公正取引委員会 又は委員会職員の処分 又はその不作為については、審査請求をすることができない