この節において「更生緊急保護」とは、次に掲げる者が、刑事上の手続 又は保護処分による身体の拘束を解かれた後、親族からの援助を受けることができず、若しくは公共の衛生福祉に関する機関 その他の機関から医療、宿泊、職業 その他の保護を受けることができない場合 又はこれらの援助 若しくは保護のみによっては改善更生することができないと認められる場合に、緊急に、その者に対し、金品を給与し、又は貸与し、宿泊場所を供与し、宿泊場所への帰住、医療、療養、就職 又は教養訓練を助け、職業を補導し、社会生活に適応させるために必要な生活指導を行い、生活環境の改善 又は調整を図ること等により、その者が進んで法律を守る善良な社会の一員となることを援護し、その速やかな改善更生を保護することをいう。
更生保護法
第五章 更生緊急保護等
第一節 更生緊急保護
懲役、禁錮 又は拘留の刑の執行を終わった者
懲役、禁錮 又は拘留の刑の執行の免除を得た者
懲役 又は禁錮につき刑の全部の執行猶予の言渡しを受け、その裁判が確定するまでの者
前号に掲げる者のほか、懲役 又は禁錮につき刑の全部の執行猶予の言渡しを受け、保護観察に付されなかった者
懲役 又は禁錮につき刑の一部の執行猶予の言渡しを受け、その猶予の期間中保護観察に付されなかった者であって、その刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間の執行を終わったもの
罰金 又は科料の言渡しを受けた者
労役場から出場し、又は仮出場を許された者
少年院から退院し、又は仮退院を許された者(保護観察に付されている者を除く。)
更生緊急保護は、その対象となる者の改善更生のために必要な限度で、国の責任において、行うものとする。
更生緊急保護は、保護観察所の長が、自ら行い、又は更生保護事業法の規定により更生保護事業を営む者 その他の適当な者に委託して行うものとする。
更生緊急保護は、その対象となる者が刑事上の手続 又は保護処分による身体の拘束を解かれた後六月を超えない範囲内において、その意思に反しない場合に限り、行うものとする。
ただし、その者の改善更生を保護するため特に必要があると認められるときは、第一項の措置のうち、金品の給与 又は貸与 及び宿泊場所の供与については更に六月を、その他のものについては更に一年六月を、それぞれ超えない範囲内において、これを行うことができる。
更生緊急保護を行うに当たっては、その対象となる者が公共の衛生福祉に関する機関 その他の機関から必要な保護を受けることができるようあっせんするとともに、更生緊急保護の効率化に努めて、その期間の短縮と費用の節減を図らなければならない。
更生緊急保護に関し職業のあっせんの必要があると認められるときは、公共職業安定所は、更生緊急保護を行う者の協力を得て、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)の規定に基づき、更生緊急保護の対象となる者の能力に適当な職業をあっせんすることに努めるものとする。
更生緊急保護は、前条第一項各号に掲げる者の申出があった場合において、保護観察所の長がその必要があると認めたときに限り、行うものとする。
収容中の者から申出があり、その者が同項第一号、第二号、第五号 又は第九号に掲げる者(第八十八条の二において「刑執行終了者等」という。)に該当することとなった場合において、保護観察所の長が必要があると認めたときも、同様とする。
検察官、刑事施設の長 又は少年院の長は、前条第一項各号に掲げる者について、刑事上の手続 又は保護処分による身体の拘束を解く場合において、必要があると認めるときは、その者に対し、この節に定める更生緊急保護の制度 及び申出の手続について教示しなければならない。
収容中の者について、必要があると認めるときも、同様とする。
保護観察所の長は、更生緊急保護を行う必要があるか否かを判断するに当たっては、その申出をした者の刑事上の手続に関与した検察官 又はその者が収容されていた刑事施設(労役場に留置されていた場合には、当該労役場が附置された刑事施設)の長 若しくは少年院の長の意見を聴かなければならない。
ただし、仮釈放の期間の満了によって前条第一項第一号に該当した者 又は仮退院の終了により同項第九号に該当した者については、この限りでない。
国は、法務大臣が財務大臣と協議して定める基準に従い、第八十五条第三項の規定による委託によって生ずる費用を支弁する。
前項に規定する委託は、同項の規定により国が支弁する金額が予算の金額を超えない範囲内においてしなければならない。
第二節 刑執行停止中の者に対する措置
保護観察所の長は、刑事訴訟法第四百八十条 又は第四百八十二条の規定により刑の執行を停止されている者について、検察官の請求があったときは、その者に対し、第五十七条第一項(第一号に係る部分に限る。)、第五十八条、第六十一条 及び第六十二条の規定の例により、適当と認める指導監督、補導援護 並びに応急の救護 及びその援護の措置をとることができる。