不正競争防止法

# 平成五年法律第四十七号 #
略称 : 不競法 

第二章 差止請求、損害賠償等

分類 法律
カテゴリ   産業通則
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和五年法律第五十一号による改正
最終編集日 : 2024年 04月30日 15時11分


1項

不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者 又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止 又は予防を請求することができる。

2項

不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却 その他の侵害の停止 又は予防に必要な行為を請求することができる。

1項

故意 又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。


ただし第十五条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密 又は限定提供データを使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。

1項

第二条第一項第一号から第十六号まで 又は第二十二号に掲げる不正競争によって営業上の利益を侵害された者(以下この項において「被侵害者」という。)が故意 又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者(以下この項において「侵害者」という。)に対し その侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、侵害者がその侵害の行為を組成した物(電磁的記録を含む。以下この項において同じ。)を譲渡したとき(侵害の行為により生じた物を譲渡したときを含む。)、又はその侵害の行為により生じた役務を提供したときは、次に掲げる額の合計額を、被侵害者が受けた損害の額とすることができる。

一 号

被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物 又は提供することができた役務の単位数量当たりの利益の額に、侵害者が譲渡した当該物 又は提供した当該役務の数量(次号において「譲渡等数量」という。)のうち被侵害者の販売 又は提供の能力に応じた数量(同号において「販売等能力相応数量」という。)を超えない部分(その全部 又は一部に相当する数量を被侵害者が販売 又は提供をすることができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(同号において「特定数量」という。)を控除した数量)を乗じて得た額

二 号

譲渡等数量のうち販売等能力相応数量を超える数量 又は特定数量がある場合におけるこれらの数量に応じた次のイからホまでに掲げる不正競争の区分に応じて当該イからホまでに定める行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額(被侵害者が、次のイからホまでに掲げる不正競争の区分に応じて当該イからホまでに定める行為の許諾をし得たと認められない場合を除く

第二条第一項第一号 又は第二号に掲げる不正競争

当該侵害に係る商品等表示の使用

第二条第一項第三号に掲げる不正競争

当該侵害に係る商品の形態の使用

第二条第一項第四号から第九号までに掲げる不正競争

当該侵害に係る営業秘密の使用

第二条第一項第十一号から第十六号までに掲げる不正競争

当該侵害に係る限定提供データの使用

第二条第一項第二十二号に掲げる不正競争

当該侵害に係る商標の使用

2項

不正競争によって営業上の利益を侵害された者が故意 又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。

3項

第二条第一項第一号から第九号まで第十一号から第十六号まで第十九号 又は第二十二号に掲げる不正競争によって営業上の利益を侵害された者は、故意 又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対し、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。

一 号

第二条第一項第一号 又は第二号に掲げる不正競争

当該侵害に係る商品等表示の使用

二 号

第二条第一項第三号に掲げる不正競争

当該侵害に係る商品の形態の使用

三 号

第二条第一項第四号から第九号までに掲げる不正競争

当該侵害に係る営業秘密の使用

四 号

第二条第一項第十一号から第十六号までに掲げる不正競争

当該侵害に係る限定提供データの使用

五 号

第二条第一項第十九号に掲げる不正競争

当該侵害に係るドメイン名の使用

六 号

第二条第一項第二十二号に掲げる不正競争

当該侵害に係る商標の使用

4項

裁判所は、第一項第二号イからホまで 及び前項各号に定める行為に対し受けるべき金銭の額を認定するに当たっては、営業上の利益を侵害された者が、当該行為の対価について、不正競争があったことを前提として当該不正競争をした者との間で合意をするとしたならば、当該営業上の利益を侵害された者が得ることとなるその対価を考慮することができる。

5項

第三項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。


この場合において、その営業上の利益を侵害した者に故意 又は重大な過失がなかったときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

1項

技術上の秘密(生産方法 その他政令で定める情報に係るものに限る。以下この条において同じ。)について第二条第一項第四号第五号 又は第八号に掲げる不正競争(営業秘密を取得する行為に限る)があった場合において、その行為をした者が当該技術上の秘密を使用する行為により生ずる物の生産 その他技術上の秘密を使用したことが明らかな行為として政令で定める行為(以下この条において「生産等」という。)をしたときは、その者は、それぞれ当該各号に掲げる不正競争(営業秘密を使用する行為に限る)として生産等をしたものと推定する。

2項

技術上の秘密を取得した後にその技術上の秘密について営業秘密不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないで、その技術上の秘密に係る技術秘密記録媒体等(技術上の秘密が記載され、又は記録された文書、図画 又は記録媒体をいう。以下この条において同じ。)、その技術上の秘密が化体された物件 又は当該技術秘密記録媒体等に係る送信元識別符号(自動公衆送信(公衆によって直接受信されることを目的として公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことをいい、放送 又は有線放送に該当するものを除く)の送信元を識別するための文字、番号、記号 その他の符号をいう。第四項において同じ。)を保有する行為があった場合において、その行為をした者が生産等をしたときは、その者は、第二条第一項第六号に掲げる不正競争(営業秘密を使用する行為に限る)として生産等をしたものと推定する。

3項

技術上の秘密をその保有者から示された後に、不正の利益を得る目的で、又は当該技術上の秘密の保有者に損害を加える目的で、当該技術上の秘密の管理に係る任務に違反して、次に掲げる方法でその技術上の秘密を領得する行為があった場合において、その行為をした者が生産等をしたときは、その者は、第二条第一項第七号に掲げる不正競争(営業秘密を使用する行為に限る)として生産等をしたものと推定する。

一 号
技術秘密記録媒体等 又は技術上の秘密が化体された物件を横領すること。
二 号
技術秘密記録媒体等の記載 若しくは記録について、又は技術上の秘密が化体された物件について、その複製を作成すること。
三 号
技術秘密記録媒体等の記載 又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載 又は記録を消去したように仮装すること。
4項

技術上の秘密を取得した後にその技術上の秘密について営業秘密不正開示行為があったこと 若しくは営業秘密不正開示行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないで、その技術上の秘密に係る技術秘密記録媒体等、その技術上の秘密が化体された物件 又は当該技術秘密記録媒体等に係る送信元識別符号を保有する行為があった場合において、その行為をした者が生産等をしたときは、その者は、第二条第一項第九号に掲げる不正競争(営業秘密を使用する行為に限る)として生産等をしたものと推定する。

1項

不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがあると主張する者が侵害の行為を組成したものとして主張する物 又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。


ただし相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。

1項

裁判所は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。


ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。

2項

裁判所は、前項本文の申立てに係る書類が同項本文の書類に該当するかどうか 又は同項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。


この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない

3項

裁判所は、前項の場合において、第一項本文の申立てに係る書類が同項本文の書類に該当するかどうか 又は同項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等当事者(法人である場合にあっては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人 及び補佐人を除く)、使用人 その他の従業者をいう。以下同じ。)、訴訟代理人 又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。

4項

裁判所は、第二項の場合において、同項後段の書類を開示して専門的な知見に基づく説明を聴くことが必要であると認めるときは、当事者の同意を得て、民事訴訟法平成八年法律第百九号第一編第五章第二節第一款に規定する専門委員に対し、当該書類を開示することができる。

5項

前各項の規定は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟における当該侵害行為について立証するため必要な検証の目的の提示について準用する。

1項

不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は、鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明しなければならない。

1項

不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨 及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

1項

裁判所は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があった場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等訴訟代理人 又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。


ただし、その申立ての時までに当事者等訴訟代理人 又は補佐人第一号に規定する準備書面の閲読 又は同号に規定する証拠の取調べ 若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。

一 号

既に提出され若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ若しくは取り調べられるべき証拠(第七条第三項の規定により開示された書類 又は第十三条第四項の規定により開示された書面を含む。)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。

二 号

前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用 又は開示を制限する必要があること。

2項

前項の規定による命令(以下「秘密保持命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。

一 号

秘密保持命令を受けるべき者

二 号

秘密保持命令の対象となるべき営業秘密を特定するに足りる事実

三 号

前項各号に掲げる事由に該当する事実

3項

秘密保持命令が発せられた場合には、その決定書を秘密保持命令を受けた者送達しなければならない。

4項

秘密保持命令は、秘密保持命令を受けた者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずる。

5項

秘密保持命令の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

秘密保持命令の申立てをした者 又は秘密保持命令を受けた者は、訴訟記録の存する裁判所訴訟記録の存する裁判所がない場合にあっては、秘密保持命令を発した裁判所)に対し、前条第一項に規定する要件を欠くこと 又はこれを欠くに至ったことを理由として、秘密保持命令の取消しの申立てをすることができる。

2項

秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判があった場合には、その決定書をその申立てをした者 及び相手方送達しなければならない。

3項

秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

4項

秘密保持命令を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。

5項

裁判所は、秘密保持命令を取り消す裁判をした場合において、秘密保持命令の取消しの申立てをした者 又は相手方以外に当該秘密保持命令が発せられた訴訟において当該営業秘密に係る秘密保持命令を受けている者があるときは、その者に対し、直ちに、秘密保持命令を取り消す裁判をした旨を通知しなければならない。

1項

秘密保持命令が発せられた訴訟(全ての秘密保持命令が取り消された訴訟を除く)に係る訴訟記録につき、民事訴訟法第九十二条第一項の決定があった場合において、当事者から同項に規定する秘密記載部分の閲覧等の請求があり、かつ、その請求の手続を行った者が当該訴訟において秘密保持命令を受けていない者であるときは、裁判所書記官は、同項の申立てをした当事者その請求をした者を除く第三項において同じ。)に対し、その請求後直ちに、その請求があった旨を通知しなければならない。

2項

前項の場合において、裁判所書記官は、同項の請求があった日から二週間を経過する日までの間(その請求の手続を行った者に対する秘密保持命令の申立てがその日までにされた場合にあっては、その申立てについての裁判が確定するまでの間)、その請求の手続を行った者同項の秘密記載部分の閲覧等をさせてはならない。

3項

前二項の規定は、第一項請求をした者同項の秘密記載部分の閲覧等をさせることについて民事訴訟法第九十二条第一項の申立てをした当事者の全ての同意があるときは、適用しない

1項

不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟における当事者等が、その侵害の有無についての判断の基礎となる事項であって当事者の保有する営業秘密に該当するものについて、当事者本人 若しくは法定代理人 又は証人として尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該事項を判断の基礎とすべき不正競争による営業上の利益の侵害の有無についての適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。

2項

裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ当事者等の意見を聴かなければならない。

3項

裁判所は、前項の場合において、必要があると認めるときは、当事者等にその陳述すべき事項の要領を記載した書面の提示をさせることができる。


この場合においては、何人も、その提示された書面の開示を求めることができない

4項

裁判所は、前項後段の書面を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等訴訟代理人 又は補佐人に対し、当該書面を開示することができる。

5項

裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。


当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。

1項

故意 又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対しては、裁判所は、その営業上の信用を害された者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、その者の営業上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。

1項

第二条第一項第四号から第九号までに掲げる不正競争のうち、営業秘密を使用する行為に対する第三条第一項の規定による侵害の停止 又は予防を請求する権利は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 号

その行為を行う者がその行為を継続する場合において、その行為により営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある営業秘密保有者がその事実 及びその行為を行う者を知った時から三年間行わないとき。

二 号

その行為の開始の時から二十年を経過したとき。

2項

前項の規定は、第二条第一項第十一号から第十六号までに掲げる不正競争のうち、限定提供データを使用する行為に対する第三条第一項の規定による侵害の停止 又は予防を請求する権利について準用する。


この場合において、

前項第一号
営業秘密保有者」とあるのは、
「限定提供データ保有者」と

読み替えるものとする。