この法律は、国民の理解と協力を得つつ、犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進すること等による再犯の防止等が犯罪対策において重要であることに鑑み、再犯の防止等に関する施策に関し、基本理念を定め、国 及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、再犯の防止等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与することを目的とする。
再犯の防止等の推進に関する法律
第一章 総則
この法律において「犯罪をした者等」とは、犯罪をした者 又は非行少年(非行のある少年をいう。以下同じ。)若しくは非行少年であった者をいう。
この法律において「再犯の防止等」とは、犯罪をした者等が犯罪をすることを防ぐこと(非行少年の非行をなくすこと 及び非行少年であった者が再び非行少年となることを防ぐことを含む。)をいう。
再犯の防止等に関する施策は、犯罪をした者等の多くが安定した職業に就くこと 及び住居を確保することができないこと等のために円滑な社会復帰をすることが困難な状況にあることを踏まえ、犯罪をした者等が、社会において孤立することなく、国民の理解と協力を得て再び社会を構成する一員となることを支援することにより、犯罪をした者等が円滑に社会に復帰することができるようにすることを旨として、講ぜられるものとする。
再犯の防止等に関する施策は、犯罪をした者等が、その特性に応じ、矯正施設(刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院 及び少年鑑別所をいう。以下同じ。)に収容されている間のみならず、社会に復帰した後も途切れることなく、必要な指導 及び支援を受けられるよう、矯正施設における適切な収容 及び処遇のための施策と職業 及び住居の確保に係る支援をはじめとする円滑な社会復帰のための施策との有機的な連携を図りつつ、関係行政機関の相互の密接な連携の下に、総合的に講ぜられるものとする。
再犯の防止等に関する施策は、犯罪をした者等が、犯罪の責任等を自覚すること 及び被害者等の心情を理解すること並びに自ら社会復帰のために努力することが、再犯の防止等に重要であるとの認識の下に、講ぜられるものとする。
再犯の防止等に関する施策は、犯罪 及び非行の実態、再犯の防止等に関する各般の施策の有効性等に関する調査研究の成果等を踏まえ、効果的に講ぜられるものとする。
国は、前条の基本理念(次項において「基本理念」という。)にのっとり、再犯の防止等に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
地方公共団体は、基本理念にのっとり、再犯の防止等に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
国 及び地方公共団体は、再犯の防止等に関する施策が円滑に実施されるよう、相互に連携を図らなければならない。
国 及び地方公共団体は、再犯の防止等に関する施策の実施に当たっては、再犯の防止等に関する活動を行う民間の団体 その他の関係者との緊密な連携協力の確保に努めなければならない。
国 及び地方公共団体は、再犯の防止等に関する施策の実施に当たっては、再犯の防止等に関する活動を行う民間の団体 その他の関係者に対して必要な情報を適切に提供するものとする。
再犯の防止等に関する活動を行う民間の団体 その他の関係者は、前項の規定により提供を受けた犯罪をした者等の個人情報 その他の犯罪をした者等の個人情報を適切に取り扱わなければならない。
国民の間に広く再犯の防止等についての関心と理解を深めるため、再犯防止啓発月間を設ける。
再犯防止啓発月間は、七月とする。
国 及び地方公共団体は、再犯防止啓発月間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めなければならない。
政府は、再犯の防止等に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、再犯の防止等に関する施策の推進に関する計画(以下「再犯防止推進計画」という。)を定めなければならない。
再犯防止推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
再犯の防止等に関する施策の推進に関する基本的な事項
再犯の防止等に向けた教育 及び職業訓練の充実に関する事項
犯罪をした者等の社会における職業 及び住居の確保並びに保健医療サービス 及び福祉サービスの利用に係る支援に関する事項
矯正施設における収容 及び処遇 並びに保護観察に関する体制 その他の関係機関における体制の整備に関する事項
その他再犯の防止等に関する施策の推進に関する重要事項
法務大臣は、再犯防止推進計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
法務大臣は、再犯防止推進計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議しなければならない。
法務大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、再犯防止推進計画を公表しなければならない。
政府は、少なくとも五年ごとに、再犯防止推進計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。
第三項から第五項までの規定は、再犯防止推進計画の変更について準用する。
都道府県 及び市町村は、再犯防止推進計画を勘案して、当該都道府県 又は市町村における再犯の防止等に関する施策の推進に関する計画(次項において「地方再犯防止推進計画」という。)を定めるよう努めなければならない。
都道府県 及び市町村は、地方再犯防止推進計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。
政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上、財政上 又は税制上の措置その他の措置を講じなければならない。
政府は、毎年、国会に、政府が講じた再犯の防止等に関する施策についての報告を提出しなければならない。