国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律
第五節 出国禁止命令
家庭裁判所は、前項の規定による申立てに係る事件の相手方が子が名義人となっている旅券を所持すると認めるときは、申立てにより、同項の規定による裁判において、当該旅券の外務大臣への提出を命じなければならない。
子の返還申立事件が高等裁判所に係属する場合には、その高等裁判所が、前二項の規定による裁判(以下「出国禁止命令」という。)をする。
出国禁止命令の申立ては、その趣旨 及び出国禁止命令を求める事由を明らかにしてしなければならない。
出国禁止命令を求める事由については、出国禁止命令の申立てに係る事件(以下「出国禁止命令事件」という。)の申立人が資料を提出しなければならない。
前条第二項の規定による裁判の申立ては、出国禁止命令があるまで、取り下げることができる。
民事訴訟法第二百六十一条第三項 及び第二百六十二条第一項の規定は、出国禁止命令の申立ての取下げについて準用する。
この場合において、
同法第二百六十一条第三項ただし書中
「口頭弁論、弁論準備手続 又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは、
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百二十三条第二項に規定する出国禁止命令事件の手続の期日」と
読み替えるものとする。
出国禁止命令は、出国禁止命令事件の相手方の陳述を聴かなければ、することができない。
ただし、その陳述を聴く手続を経ることにより出国禁止命令の目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
裁判所は、第百三十三条において準用する第六十二条第三項の規定にかかわらず、出国禁止命令事件について、出国禁止命令事件の当事者から同条第一項 又は第二項の規定による許可の申立てがあった場合には、出国禁止命令事件の相手方に対し、出国禁止命令事件が係属したことを通知し、又は出国禁止命令を告知するまでは、相当と認めるときに限り、これを許可することができる。
出国禁止命令の申立てについての裁判は、出国禁止命令事件の当事者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。
前条の規定により即時抗告が提起された場合において、原裁判の取消しの原因となることが明らかな事情 及び原裁判の執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることについて疎明があったときは、抗告裁判所は、申立てにより、即時抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせて、若しくは担保を立てることを条件として、又は担保を立てさせないで原裁判の執行の停止を命ずることができる。
出国禁止命令事件の記録が家庭裁判所に存する間は、家庭裁判所も、この処分を命ずることができる。
第百二十三条第二項の規定は前項の申立てについて、第百九条第二項 及び第三項の規定は前項の規定により担保を立てる場合における供託 及び担保について、それぞれ準用する。
第百二十二条第一項の規定による裁判が確定した後に、当該裁判を求める事由の消滅 その他の事情の変更があるときは、子の返還申立事件が係属する裁判所は、当該裁判を受けた者の申立てにより、当該裁判の取消しの裁判をすることができる。
裁判所が、第百二十二条第一項の規定による裁判を取り消す場合において、同条第二項の規定による裁判がされているときは、裁判所は、当該裁判をも取り消さなければならない。
第百二十三条 及び前三条の規定は、第一項の申立て 及び当該申立てについての裁判について準用する。
裁判所書記官は、出国禁止命令事件 及び前条第一項の規定による申立てに係る事件(第百三十三条において「出国禁止命令取消事件」という。)の手続の期日について、調書を作成しなければならない。
ただし、裁判長においてその必要がないと認めるときは、この限りでない。
外務大臣は、第百二十二条第二項の規定による裁判を受けた者から当該裁判に係る旅券の提出を受けたときは、当該旅券を保管しなければならない。
外務大臣は、出国禁止命令が効力を失ったときは、前項の旅券の提出を行った者の求めにより、当該旅券を返還しなければならない。
第百二十二条第二項の規定による裁判を受けた者が当該裁判に従わないときは、裁判所は、二十万円以下の過料に処する。
出国禁止命令事件 及び出国禁止命令取消事件の手続については、特別の定めがある場合を除き、第三節第一款から第三款まで 及び第五款(第七十二条、第八十四条、第八十五条、第八十七条、第八十九条、第九十条、第九十九条 及び第百条を除く。)の規定を準用する。
この場合において、
第九十四条第二項第二号中
「理由」とあるのは、
「理由の要旨」と
読み替えるものとする。