記名式 又ハ指図式ノ小切手ハ裏書ニ依リテ之ヲ 譲渡スコトヲ得
小切手法
第二章 譲渡
記名式小切手ニシテ「指図禁止」ノ文字又ハ 之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ヲ記載シタルモノハ民法(明治二十九年法律第八十九号)第三編第一章第四節ノ規定ニ依ル債権ノ譲渡ニ関スル方式ニ従ヒ且其ノ効力ヲ以テノミ之ヲ譲渡スコトヲ得
裏書ハ振出人其ノ他ノ債務者ニ対シテモ 之ヲ為スコトヲ得此等ノ者ハ更ニ小切手ヲ裏書スルコトヲ得
裏書ハ 単純ナルコトヲ要ス裏書ニ附シタル条件ハ之ヲ記載セザルモノト看做ス
持参人払ノ裏書ハ 白地式裏書ト同一ノ効力ヲ有ス
支払人ニ対シテ為シタル裏書ハ受取証書タル効力ノミヲ有ス
但シ支払人ガ数箇ノ営業所ヲ有スル場合ニ於テ小切手ノ振宛テラレタル営業所以外ノ営業所ニ対シテ為シタル裏書ハ此ノ限ニ在ラズ
裏書ハ小切手又ハ之ト結合シタル紙片(補箋)ニ 之ヲ記載シ裏書人署名スルコトヲ要ス
裏書ハ 被裏書人ヲ指定セズシテ之ヲ為シ又ハ 単ニ裏書人ノ署名ノミヲ以テ 之ヲ為スコトヲ得(白地式裏書) 此ノ後ノ場合ニ於テハ裏書ハ小切手ノ裏面 又ハ補箋ニ之ヲ為スニ非ザレバ 其ノ効力ヲ有セズ
裏書ハ小切手ヨリ生ズル 一切ノ権利ヲ移転ス
裏書ガ白地式ナルトキハ 所持人ハ
自己ノ名称 又ハ他人ノ名称ヲ以テ 白地ヲ補充スルコトヲ得
白地式ニ依リ 又ハ他人ヲ表示シテ 更ニ小切手ヲ裏書スルコトヲ得
白地ヲ補充セズ且裏書ヲ為サズシテ 小切手ヲ第三者ニ譲渡スコトヲ得
裏書人ハ反対ノ文言ナキ限リ 支払ヲ担保ス
裏書人ハ新ナル裏書ヲ禁ズルコトヲ得 此ノ場合ニ於テハ其ノ裏書人ハ 小切手ノ爾後ノ被裏書人ニ対シ担保ノ責ヲ負フコトナシ
裏書シ得ベキ小切手ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ 其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス 最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト 雖モ亦同ジ抹消シタル裏書ハ此ノ関係ニ於テハ之ヲ記載セザルモノト看做ス白地式裏書ニ 次デ他ノ裏書アルトキハ其ノ裏書ヲ為シタル者ハ 白地式裏書ニ因リテ小切手ヲ 取得シタルモノト看做ス
持参人払式小切手ニ裏書ヲ為シタルトキハ裏書人ハ遡求ニ関スル規定ニ従ヒ責任ヲ負フ
但シ之ガ為証券ハ指図式小切手ニ変ズルコトナシ
事由ノ何タルヲ問ハズ小切手ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合ニ於テ其ノ小切手ヲ取得シタル所持人ハ小切手ガ持参人払式ノモノナルトキ 又ハ 裏書シ得ベキモノニシテ其ノ所持人ガ第十九条ノ規定ニ依リ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ返還スル義務ヲ負フコトナシ
但シ悪意 又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
小切手ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人 其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ
但シ所持人ガ 其ノ債務者ヲ害スルコトヲ知リテ小切手ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
裏書ニ「回収ノ為」、「取立ノ為」、「代理ノ為」其ノ他単ナル委任ヲ示ス文言アルトキハ所持人ハ小切手ヨリ生ズル一切ノ権利ヲ行使スルコトヲ得
但シ所持人ハ代理ノ為ノ裏書ノミヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ債務者ガ所持人ニ対抗スルコトヲ得ル抗弁ハ裏書人ニ対抗スルコトヲ得ベカリシモノニ限ル
代理ノ為ノ裏書ニ依ル委任ハ委任者ノ死亡 又ハ其ノ者ガ行為能力ノ制限ヲ受ケタルコトニ因リ終了セズ
拒絶証書 若ハ之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言ノ作成後ノ裏書又ハ呈示期間経過後ノ裏書ハ民法第三編第一章第四節ノ規定ニ依ル 債権ノ譲渡ノ効力ノミヲ有ス
日附ノ記載ナキ裏書ハ拒絶証書 若ハ之ト同一ノ効力ヲ有スル宣言ノ作成前又ハ呈示期間経過前ニ 之ヲ為シタルモノト推定ス