この法律は、我が国において急速に少子化が進展しており、その状況が二十一世紀の国民生活に深刻かつ多大な影響を及ぼすものであることにかんがみ、このような事態に対し、長期的な視点に立って的確に対処するため、少子化社会において講ぜられる施策の基本理念を明らかにするとともに、国 及び地方公共団体の責務、少子化に対処するために講ずべき施策の基本となる事項その他の事項を定めることにより、少子化に対処するための施策を総合的に推進し、もって国民が豊かで安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。
少子化社会対策基本法
第一章 総則
少子化に対処するための施策は、父母 その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するとの認識の下に、国民の意識の変化、生活様式の多様化等に十分留意しつつ、男女共同参画社会の形成とあいまって、家庭や子育てに夢を持ち、かつ、次代の社会を担う子どもを安心して生み、育てることができる環境を整備することを旨として講ぜられなければならない。
少子化に対処するための施策は、人口構造の変化、財政の状況、経済の成長、社会の高度化 その他の状況に十分配意し、長期的な展望に立って講ぜられなければならない。
少子化に対処するための施策を講ずるに当たっては、子どもの安全な生活が確保されるとともに、子どもがひとしく心身ともに健やかに育つことができるよう配慮しなければならない。
社会、経済、教育、文化 その他あらゆる分野における施策は、少子化の状況に配慮して、講ぜられなければならない。
国は、前条の施策の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、少子化に対処するための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
地方公共団体は、基本理念にのっとり、少子化に対処するための施策に関し、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
事業主は、子どもを生み、育てる者が充実した職業生活を営みつつ豊かな家庭生活を享受することができるよう、国 又は地方公共団体が実施する少子化に対処するための施策に協力するとともに、必要な雇用環境の整備に努めるものとする。
国民は、家庭や子育てに夢を持ち、かつ、安心して子どもを生み、育てることができる社会の実現に資するよう努めるものとする。
政府は、少子化に対処するための施策の指針として、総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策の大綱を定めなければならない。
こども基本法(令和四年法律第七十七号)第九条第一項の規定により定められた同項のこども大綱のうち前項に規定する総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策に係る部分は、同項の規定により定められた大綱とみなす。
政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
政府は、毎年、国会に、少子化の状況 及び少子化に対処するために講じた施策の概況に関する報告を提出するとともに、これを公表しなければならない。
こども基本法第八条第一項の規定による国会への報告 及び公表がされたときは、前項の規定による国会への報告 及び公表がされたものとみなす。