武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律

# 平成十五年法律第七十九号 #
略称 : 武力攻撃事態対処法  事態対処法 

第二章 武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処のための手続等

分類 法律
カテゴリ   外事
@ 施行日 : 令和三年九月一日 ( 2021年 9月1日 )
@ 最終更新 : 令和三年法律第三十六号による改正
最終編集日 : 2023年 01月13日 13時49分


1項

政府は、武力攻撃事態等 又は存立危機事態に至ったときは、武力攻撃事態等 又は存立危機事態への対処に関する基本的な方針(以下「対処基本方針」という。)を定めるものとする。

2項

対処基本方針に定める事項は、次のとおりとする。

一 号

対処すべき事態に関する次に掲げる事項

事態の経緯、事態が武力攻撃事態であること、武力攻撃予測事態であること 又は存立危機事態であることの認定 及び当該認定の前提となった事実

事態が武力攻撃事態 又は存立危機事態であると認定する場合にあっては、我が国の存立を全うし国民を守るために他に適当な手段がなく、 事態に対処するため武力の行使が必要であると認められる理由

二 号

当該武力攻撃事態等 又は存立危機事態への対処に関する全般的な方針

三 号
対処措置に関する重要事項
3項

武力攻撃事態 又は存立危機事態においては、対処基本方針には、前項第三号に定める事項として、次に掲げる内閣総理大臣の承認を行う場合は その旨を記載しなければならない。

一 号

防衛大臣が自衛隊法昭和二十九年法律第百六十五号第七十条第一項 又は第八項の規定に基づき発する同条第一項第一号に定める防衛招集命令書による防衛招集命令に関して同項 又は同条第八項の規定により内閣総理大臣が行う承認

二 号

防衛大臣が自衛隊法第七十五条の四第一項 又は第六項の規定に基づき発する同条第一項第一号に定める防衛招集命令書による防衛招集命令に関して同項 又は同条第六項の規定により内閣総理大臣が行う承認

三 号

防衛大臣が自衛隊法第七十七条の規定に基づき発する防衛出動待機命令に関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認

四 号

防衛大臣が自衛隊法第七十七条の二の規定に基づき命ずる防御施設構築の措置に関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認

五 号

防衛大臣が武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律平成十六年法律第百十三号) 第十条第三項の規定に基づき実施を命ずる行動関連措置としての役務の提供に関して同項の規定により内閣総理大臣が行う承認

六 号

防衛大臣が武力攻撃事態及び存立危機事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律平成十六年法律第百十六号) 第四条の規定に基づき命ずる同法第四章の規定による措置に関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認

4項

武力攻撃事態 又は存立危機事態においては、対処基本方針には、前項に定めるもののほか第二項第三号に定める事項として、第一号に掲げる内閣総理大臣が行う国会の承認(衆議院が解散されているときは、日本国憲法第五十四条に規定する緊急集会による参議院の承認。以下この条において同じ。)の求めを行う場合にあっては その旨を、内閣総理大臣が第二号に掲げる防衛出動を命ずる場合にあっては その旨を記載しなければならない。


ただし同号に掲げる防衛出動を命ずる旨の記載は、特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合でなければ、することができない

一 号

内閣総理大臣が防衛出動を命ずることについての自衛隊法第七十六条第一項の規定に基づく国会の承認の求め

二 号

自衛隊法第七十六条第一項の規定に基づき内閣総理大臣が命ずる防衛出動

5項

武力攻撃予測事態においては、対処基本方針には、第二項第三号に定める事項として、次に掲げる内閣総理大臣の承認を行う場合は その旨を記載しなければならない。

一 号

防衛大臣が自衛隊法第七十条第一項 又は第八項の規定に基づき発する同条第一項第一号に定める防衛招集命令書による防衛招集命令(事態が緊迫し、同法第七十六条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合に係るものに限る)に関して同法第七十条第一項 又は第八項の規定により内閣総理大臣が行う承認

二 号

防衛大臣が自衛隊法第七十五条の四第一項 又は第六項の規定に基づき発する同条第一項第一号に定める防衛招集命令書による防衛招集命令(事態が緊迫し、同法第七十六条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合に係るものに限る)に関して同法第七十五条の四第一項 又は第六項の規定により内閣総理大臣が行う承認

三 号

防衛大臣が自衛隊法第七十七条の規定に基づき発する防衛出動待機命令に関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認

四 号

防衛大臣が自衛隊法第七十七条の二の規定に基づき命ずる防御施設構築の措置に関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認

五 号

防衛大臣が武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律第十条第三項の規定に基づき実施を命ずる行動関連措置としての役務の提供に関して同項の規定により内閣総理大臣が行う承認

6項

内閣総理大臣は、対処基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

7項

内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、直ちに、対処基本方針(第四項第一号に規定する国会の承認の求めに関する部分を除く)につき、国会の承認を求めなければならない。

8項

内閣総理大臣は、第六項の閣議の決定があったときは、直ちに、対処基本方針を公示してその周知を図らなければならない。

9項

内閣総理大臣は、第七項の規定に基づく 対処基本方針の承認があったときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。

10項

第四項第一号に規定する防衛出動を命ずることについての承認の求めに係る国会の承認が得られたときは、対処基本方針を変更して、これに当該承認に係る防衛出動を命ずる旨を記載するものとする。

11項

第七項の規定に基づく対処基本方針の承認の求めに対し、不承認の議決があったときは、当該議決に係る対処措置は、速やかに、終了されなければならない。


この場合において、内閣総理大臣は、第四項第二号に規定する防衛出動を命じた自衛隊については、直ちに撤収を命じなければならない。

12項

内閣総理大臣は、対処措置を実施するに当たり、対処基本方針に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。

13項

第六項から 第九項まで 及び第十一項の規定は、対処基本方針の変更について準用する。


ただし第十項の規定に基づく変更 及び対処措置を構成する措置の終了を内容とする変更については、第七項第九項 及び第十一項の規定は、この限りでない。

14項

内閣総理大臣は、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるとき又は国会が対処措置を終了すべきことを議決したときは、対処基本方針の廃止につき、閣議の決定を求めなければならない。

15項

内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、速やかに、対処基本方針が廃止された旨 及び対処基本方針に定める対処措置の結果を国会に報告するとともに、これを公示しなければならない。

1項

内閣総理大臣は、対処基本方針が定められたときは、当該対処基本方針に係る対処措置の実施を推進するため、内閣法昭和二十二年法律第五号第十二条第四項の規定にかかわらず、閣議にかけて、臨時に内閣に事態対策本部(以下「対策本部」という。)を設置するものとする。

2項

内閣総理大臣は、対策本部を置いたときは、当該対策本部の名称 並びに設置の場所 及び期間を国会に報告するとともに、これを公示しなければならない。

1項

対策本部の長は、事態対策本部長(以下「対策本部長」という。)とし、内閣総理大臣(内閣総理大臣に事故があるときは、そのあらかじめ指名する国務大臣)をもって充てる。

2項

対策本部長は、対策本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

3項

対策本部に、事態対策副本部長(以下「対策副本部長」という。)、事態対策本部員(以下「対策本部員」という。)その他の職員を置く。

4項

対策副本部長は、国務大臣をもって充てる。

5項

対策副本部長は、対策本部長を助け、対策本部長に事故があるときは、その職務を代理する。


対策副本部長が二人以上置かれている場合にあっては、あらかじめ対策本部長が定めた順序で、その職務を代理する。

6項

対策本部員は、対策本部長 及び対策副本部長以外のすべての国務大臣をもって充てる。


この場合において、国務大臣が不在のときは、そのあらかじめ指名する副大臣(内閣官房副長官を含む。)がその職務を代行することができる。

7項

対策副本部長 及び対策本部員以外の対策本部の職員は、内閣官房の職員、指定行政機関の長(国務大臣を除く)その他の職員 又は関係する指定地方行政機関の長 その他の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。

1項

対策本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

一 号

指定行政機関、地方公共団体 及び指定公共機関が実施する対処措置に関する対処基本方針に基づく総合的な推進に関すること。

二 号

前号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務

1項

指定行政機関の長(当該指定行政機関が内閣府設置法第四十九条第一項 若しくは第二項 若しくは国家行政組織法第三条第二項の委員会 若しくは第二条第五号ロに掲げる機関 又は同号ニに掲げる機関のうち合議制のものである場合にあっては、当該指定行政機関。次項において同じ。)は、対策本部が設置されたときは、対処措置を実施するため必要な権限の全部 又は一部を当該対策本部の職員である当該指定行政機関の職員 又は当該指定地方行政機関の長 若しくは その職員に委任することができる

2項

指定行政機関の長は、前項の規定による委任をしたときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。

1項

対策本部長は、対処措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、対処基本方針に基づき、指定行政機関の長 及び関係する指定地方行政機関の長 並びに前条の規定により権限を委任された当該指定行政機関の職員 及び当該指定地方行政機関の職員、関係する地方公共団体の長 その他の執行機関 並びに関係する指定公共機関に対し、指定行政機関、関係する地方公共団体 及び関係する指定公共機関が実施する対処措置に関する総合調整を行うことができる。

2項

前項の場合において、当該地方公共団体の長 その他の執行機関 及び指定公共機関(次条 及び第十六条において「地方公共団体の長等」という。)は、当該地方公共団体 又は指定公共機関が実施する対処措置に関して対策本部長が行う総合調整に関し、対策本部長に対して意見を申し出ることができる。

1項

内閣総理大臣は、国民の生命、身体 若しくは財産の保護 又は武力攻撃の排除に支障があり、特に必要があると認める場合であって、前条第一項の総合調整に基づく 所要の対処措置が実施されないときは、対策本部長の求めに応じ、別に法律で定めるところにより、関係する地方公共団体の長等に対し、当該対処措置を実施すべきことを指示することができる。

2項

内閣総理大臣は、次に掲げる場合において、対策本部長の求めに応じ、別に法律で定めるところにより、関係する地方公共団体の長等に通知した上で、自ら 又は当該対処措置に係る事務を所掌する大臣を指揮し、当該地方公共団体 又は指定公共機関が実施すべき当該対処措置を実施し、又は実施させることができる。

一 号

前項の指示に基づく 所要の対処措置が実施されないとき。

二 号

国民の生命、身体 若しくは財産の保護 又は武力攻撃の排除に支障があり、特に必要があると認める場合であって、事態に照らし緊急を要すると認めるとき。

1項

政府は、第十四条第一項 又は前条第一項の規定により、対処措置の実施に関し、関係する地方公共団体の長等に対する総合調整 又は指示が行われた場合において、その総合調整 又は指示に基づく措置の実施により当該地方公共団体 又は指定公共機関が損失を受けたときは、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

1項

政府は、地方公共団体 及び指定公共機関が実施する対処措置について、その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない。

1項

政府は、武力攻撃 又は存立危機武力攻撃の排除に当たって我が国が講じた措置について、国際連合憲章第五十一条(武力攻撃の排除に当たって我が国が講じた措置にあっては、同条 及び日米安保条約第五条第二項)の規定に従って、直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。

1項

対策本部は、対処基本方針が廃止されたときに、廃止されるものとする。

2項

内閣総理大臣は、対策本部が廃止されたときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。

1項

対策本部に係る事項については、内閣法にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。