寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
民法
第十一節 寄託
寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
この場合において、受寄者は、その契約の解除によって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
ただし、書面による寄託については、この限りでない。
受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては、書面による寄託の受寄者に限る。)は、寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引渡しがないときは、契約の解除をすることができる。
受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用することができない。
受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない。
再受寄者は、寄託者に対して、その権限の範囲内において、受寄者と同一の権利を有し、義務を負う。
無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え 若しくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なく その事実を寄託者に通知しなければならない。
ただし、寄託者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
第三者が寄託物について権利を主張する場合であっても、受寄者は、寄託者の指図がない限り、寄託者に対しその寄託物を返還しなければならない。
ただし、受寄者が前項の通知をした場合 又は同項ただし書の規定によりその通知を要しない場合において、その寄託物をその第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。)があったときであって、その第三者にその寄託物を引き渡したときは、この限りでない。
受寄者は、前項の規定により寄託者に対して寄託物を返還しなければならない場合には、寄託者にその寄託物を引き渡したことによって第三者に損害が生じたときであっても、その賠償の責任を負わない。
寄託者は、寄託物の性質 又は瑕疵によって生じた損害を受寄者に賠償しなければならない。
ただし、寄託者が過失なく その性質 若しくは瑕疵を知らなかったとき、又は受寄者がこれを知っていたときは、この限りでない。
当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。
前項に規定する場合において、受寄者は、寄託者がその時期の前に返還を請求したことによって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは、受寄者は、いつでも その返還をすることができる。
返還の時期の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない。
寄託物の返還は、その保管をすべき場所でしなければならない。
ただし、受寄者が正当な事由によってその物を保管する場所を変更したときは、その現在の場所で返還をすることができる。
寄託物の一部滅失 又は損傷によって生じた損害の賠償 及び受寄者が支出した費用の償還は、寄託者が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
前項の損害賠償の請求権については、寄託者が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
第六百四十六条から第六百四十八条まで、第六百四十九条 並びに第六百五十条第一項 及び第二項の規定は、寄託について準用する。
複数の者が寄託した物の種類 及び品質が同一である場合には、受寄者は、各寄託者の承諾を得たときに限り、これらを混合して保管することができる。
前項の規定に基づき受寄者が複数の寄託者からの寄託物を混合して保管したときは、寄託者は、その寄託した物と同じ数量の物の返還を請求することができる。
前項に規定する場合において、寄託物の一部が滅失したときは、寄託者は、混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができる。
この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には、受寄者は、寄託された物と種類、品質 及び数量の同じ物をもって返還しなければならない。
第五百九十条 及び第五百九十二条の規定は、前項に規定する場合について準用する。
第五百九十一条第二項 及び第三項の規定は、預金 又は貯金に係る契約により金銭を寄託した場合について準用する。