貸金業法
第二節 業務
指定紛争解決機関(紛争解決委員を含む。)は、当事者である加入貸金業者(手続実施基本契約を締結した相手方である貸金業者をいう。以下この章において同じ。)若しくは当該加入貸金業者に係る資金需要者等(債務者等であつた者を含む。以下この章において同じ。)又はこれらの者以外の者との手続実施基本契約 その他の契約で定めるところにより、紛争解決等業務を行うことに関し、負担金 又は料金 その他の報酬を受けることができる。
指定紛争解決機関は、他の指定紛争解決機関 又は他の法律の規定による指定であつて紛争解決等業務に相当する業務に係るものとして政令で定めるものを受けた者(第四十一条の五十第四項 及び第五項において「受託紛争解決機関」という。)以外の者に対して、苦情処理手続 又は紛争解決手続の業務を委託してはならない。
当事者である加入貸金業者 又は当該加入貸金業者に係る資金需要者等(以下この章において単に「当事者」という。)から紛争解決等業務の実施に関する料金を徴収する場合にあつては、当該料金に関する事項
前各号に掲げるもののほか、紛争解決等業務の実施に必要な事項として内閣府令で定めるもの
前項第一号の手続実施基本契約は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
指定紛争解決機関は、加入貸金業者に係る資金需要者等からの貸金業務関連苦情の解決の申立て又は当事者からの紛争解決手続の申立てに基づき苦情処理手続 又は紛争解決手続を開始すること。
指定紛争解決機関 又は紛争解決委員は、苦情処理手続を開始し、又は加入貸金業者に係る資金需要者等からの申立てに基づき紛争解決手続を開始した場合において、加入貸金業者にこれらの手続に応じるよう求めることができ、当該加入貸金業者は、その求めがあつたときは、正当な理由なくこれを拒んではならないこと。
紛争解決委員は、紛争解決手続において、前号の和解案の受諾の勧告によつては当事者間に和解が成立する見込みがない場合において、事案の性質、当事者の意向、当事者の手続追行の状況 その他の事情に照らして相当であると認めるときは、貸金業務関連紛争の解決のために必要な特別調停案を作成し、理由を付して当事者に提示することができること。
加入貸金業者は、訴訟が係属している請求を目的とする紛争解決手続が開始された場合には、当該訴訟が係属している旨、当該訴訟における請求の理由 及び当該訴訟の程度を指定紛争解決機関に報告しなければならないこと。
加入貸金業者は、紛争解決手続の目的となつた請求に係る訴訟が提起された場合には、当該訴訟が提起された旨 及び当該訴訟における請求の理由を指定紛争解決機関に報告しなければならないこと。
前二号に規定する場合のほか、加入貸金業者は、紛争解決手続の目的となつた請求に係る訴訟に関し、当該訴訟の程度 その他の事項の報告を求められた場合には、当該事項を指定紛争解決機関に報告しなければならないこと。
加入貸金業者は、第六号 若しくは第七号の訴訟が裁判所に係属しなくなつた場合 又はその訴訟について裁判が確定した場合には、その旨 及びその内容を指定紛争解決機関に報告しなければならないこと。
前各号に掲げるもののほか、貸金業務関連苦情の処理 又は貸金業務関連紛争の解決の促進のために必要であるものとして内閣府令で定める事項
第一項第二号の手続実施基本契約の締結に関する事項に関する業務規程は、貸金業者から手続実施基本契約の締結の申込みがあつた場合には、当該貸金業者が手続実施基本契約に係る債務 その他の紛争解決等業務の実施に関する義務を履行することが確実でないと見込まれるときを除き、これを拒否してはならないことを内容とするものでなければならない。
第一項第三号に掲げる事項に関する業務規程は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。
指定紛争解決機関の実質的支配者等(指定紛争解決機関の株式の所有、指定紛争解決機関に対する融資 その他の事由を通じて指定紛争解決機関の事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にあるものとして内閣府令で定める者をいう。)又は指定紛争解決機関の子会社等(指定紛争解決機関が株式の所有 その他の事由を通じてその事業を実質的に支配する関係にあるものとして内閣府令で定める者をいう。)を貸金業務関連紛争の当事者とする貸金業務関連紛争について紛争解決手続の業務を行うこととしている指定紛争解決機関にあつては、当該実質的支配者等 若しくは当該子会社等 又は指定紛争解決機関が紛争解決委員に対して不当な影響を及ぼすことを排除するための措置が講じられていること。
紛争解決委員が弁護士でない場合(司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)第三条第一項第七号に規定する紛争について行う紛争解決手続において、紛争解決委員が同条第二項に規定する司法書士である場合を除く。)において、紛争解決手続の実施に当たり法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするときに、弁護士の助言を受けることができるようにするための措置を定めていること。
紛争解決手続の開始から終了に至るまでの標準的な手続の進行について定めていること。
指定紛争解決機関が加入貸金業者から紛争解決手続の申立てを受けた場合において、貸金業務関連紛争の他方の当事者となる当該加入貸金業者に係る資金需要者等に対し、速やかにその旨を通知するとともに、当該資金需要者等がこれに応じて紛争解決手続の実施を依頼するか否かを確認するための手続を定めていること。
指定紛争解決機関が加入貸金業者に係る資金需要者等から第七号の紛争解決手続の申立てを受けた場合において、貸金業務関連紛争の他方の当事者となる当該加入貸金業者に対し、速やかにその旨を通知する手続を定めていること。
紛争解決手続において陳述される意見 又は提出され、若しくは提示される帳簿書類 その他の物件に含まれる貸金業務関連紛争の当事者 又は第三者の秘密について、当該秘密の性質に応じてこれを適切に保持するための取扱いの方法を定めていること。
第四十一条の五十第九項に規定する手続実施記録に記載されているこれらの秘密についても、同様とする。
第一項第四号 及び第五号に掲げる事項に関する業務規程は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。
第一項第四号に規定する負担金 及び同項第五号に規定する料金の額 又は算定方法 及び支払方法(次号において「負担金額等」という。)を定めていること。
第二項第五号の「特別調停案」とは、和解案であつて、次に掲げる場合を除き、加入貸金業者が受諾しなければならないものをいう。
当事者である加入貸金業者に係る資金需要者等(以下 この項において単に「資金需要者等」という。)が当該和解案を受諾しないとき。
当該和解案の提示の時において当該紛争解決手続の目的となつた請求に係る訴訟が提起されていない場合において、資金需要者等が当該和解案を受諾したことを加入貸金業者が知つた日から一月を経過する日までに当該請求に係る訴訟が提起され、かつ、同日までに当該訴訟が取り下げられないとき。
当該和解案の提示の時において当該紛争解決手続の目的となつた請求に係る訴訟が提起されている場合において、資金需要者等が当該和解案を受諾したことを加入貸金業者が知つた日から一月を経過する日までに当該訴訟が取り下げられないとき。
資金需要者等が当該和解案を受諾したことを加入貸金業者が知つた日から一月を経過する日までに、当該紛争解決手続が行われている貸金業務関連紛争について、当事者間において仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意がされ、又は当該和解案によらずに和解 若しくは調停が成立したとき。
内閣総理大臣は、前項の規定による認可をしようとするときは、当該認可に係る業務規程が第四項各号 及び第五項各号に掲げる基準(紛争解決手続の業務に係る部分に限る。)に適合していることについて、あらかじめ、法務大臣に協議しなければならない。
指定紛争解決機関は、手続実施基本契約により加入貸金業者が負担する義務の不履行が生じた場合において、当該加入貸金業者の意見を聴き、当該不履行につき正当な理由がないと認めるときは、遅滞なく、当該加入貸金業者の商号、名称 又は氏名 及び当該不履行の事実を公表するとともに、その登録をした内閣総理大臣 又は都道府県知事に報告しなければならない。
指定紛争解決機関は、第四十一条の五十第九項の規定によるもののほか、内閣府令で定めるところにより、紛争解決等業務に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。
指定紛争解決機関は、加入貸金業者に係る資金需要者等から貸金業務関連苦情について解決の申立てがあつたときは、その相談に応じ、当該資金需要者等に必要な助言をし、当該貸金業務関連苦情に係る事情を調査するとともに、当該加入貸金業者に対し、当該貸金業務関連苦情の内容を通知してその迅速な処理を求めなければならない。
指定紛争解決機関は、前項の申立てを受けたときは、紛争解決委員を選任するものとする。
紛争解決委員は、人格が高潔で識見の高い者であつて、次の各号のいずれかに該当する者(第一項の申立てに係る当事者と利害関係を有する者を除く。)のうちから選任されるものとする。
この場合において、紛争解決委員のうち少なくとも一人は、第一号 又は第三号(当該申立てが司法書士法第三条第一項第七号に規定する紛争に係るものである場合にあつては、第一号、第三号 又は第四号)のいずれかに該当する者でなければならない。
弁護士であつてその職務に従事した期間が通算して五年以上である者
貸金業務に従事した期間が通算して十年以上である者
当該申立てが司法書士法第三条第一項第七号に規定する紛争に係るものである場合にあつては、同条第二項に規定する司法書士であつて同項に規定する簡裁訴訟代理等関係業務に従事した期間が通算して五年以上である者
前各号に掲げる者に準ずる者として内閣府令で定める者
指定紛争解決機関は、第一項の申立てを第二項の規定により選任した紛争解決委員(以下 この条 及び次条第一項において単に「紛争解決委員」という。)による紛争解決手続に付するものとする。
ただし、紛争解決委員は、当該申立てに係る当事者である加入貸金業者に係る資金需要者等が当該貸金業務関連紛争を適切に解決するに足りる能力を有する者であると認められること その他の事由により紛争解決手続を行うのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに第一項の申立てをしたと認めるときは、紛争解決手続を実施しないものとし、紛争解決委員が当該申立てを受託紛争解決機関における紛争解決手続に相当する手続に付することが適当と認めるときは、指定紛争解決機関は、受託紛争解決機関に紛争解決手続の業務を委託するものとする。
前項ただし書の規定により紛争解決委員が紛争解決手続を実施しないこととしたとき、又は受託紛争解決機関に業務を委託することとしたときは、指定紛争解決機関は、第一項の申立てをした者に対し、その旨を理由を付して通知するものとする。
紛争解決委員は、当事者 若しくは参考人から意見を聴取し、若しくは報告書の提出を求め、又は当事者から参考となるべき帳簿書類 その他の物件の提出を求め、和解案を作成して、その受諾を勧告し、又は特別調停(第四十一条の四十四第六項に規定する特別調停案を提示することをいう。)をすることができる。
紛争解決手続は、公開しない。
ただし、紛争解決委員は、当事者の同意を得て、相当と認める者の傍聴を許すことができる。
指定紛争解決機関は、紛争解決手続の開始に先立ち、当事者である加入貸金業者に係る資金需要者等に対し、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項について、これを記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供して説明をしなければならない。
第四十一条の四十四第四項第六号に規定する紛争解決手続の開始から終了に至るまでの標準的な手続の進行
前二号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
指定紛争解決機関は、内閣府令で定めるところにより、その実施した紛争解決手続に関し、次に掲げる事項を記載した手続実施記録を作成し、保存しなければならない。
紛争解決手続の結果(紛争解決手続の終了の理由 及びその年月日を含む。)
前各号に掲げるもののほか、実施した紛争解決手続の内容を明らかにするために必要な事項であつて内閣府令で定めるもの
紛争解決手続によつては貸金業務関連紛争の当事者間に和解が成立する見込みがないことを理由に紛争解決委員が当該紛争解決手続を終了した場合において、当該紛争解決手続の申立てをした当該貸金業務関連紛争の当事者がその旨の通知を受けた日から一月以内に当該紛争解決手続の目的となつた請求について訴えを提起したときは、時効の完成猶予に関しては、当該紛争解決手続における請求の時に、訴えの提起があつたものとみなす。
指定紛争解決機関の紛争解決等業務の廃止が第四十一条の六十第一項の規定により認可され、又は第四十一条の三十九第一項の規定による指定が第四十一条の六十一第一項の規定により取り消され、かつ、その認可 又は取消しの日に紛争解決手続が実施されていた貸金業務関連紛争がある場合において、当該紛争解決手続の申立てをした当該貸金業務関連紛争の当事者が第四十一条の六十第三項 若しくは第四十一条の六十一第四項の規定による通知を受けた日 又は当該認可 若しくは取消しを知つた日のいずれか早い日から一月以内に当該紛争解決手続の目的となつた請求について訴えを提起したときも、前項と同様とする。
貸金業務関連紛争について当該貸金業務関連紛争の当事者間に訴訟が係属する場合において、次の各号のいずれかに掲げる事由があり、かつ、当該貸金業務関連紛争の当事者の共同の申立てがあるときは、受訴裁判所は、四月以内の期間を定めて訴訟手続を中止する旨の決定をすることができる。
受訴裁判所は、いつでも前項の決定を取り消すことができる。
第一項の申立てを却下する決定 及び前項の規定により第一項の決定を取り消す決定に対しては、不服を申し立てることができない。
指定紛争解決機関は、加入貸金業者の名簿を公衆の縦覧に供しなければならない。
指定紛争解決機関でない者(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第百五十六条の三十九第一項の規定による指定を受けた者 その他これに類する者として政令で定めるものを除く。)は、その名称 又は商号中に、指定紛争解決機関と誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。