仲裁手続においては、当事者は、平等に取り扱われなければならない。
仲裁法
第五章 仲裁手続の開始及び仲裁手続における審理
仲裁手続においては、当事者は、事案について説明する十分な機会が与えられなければならない。
仲裁廷が従うべき仲裁手続の準則は、当事者が合意により定めるところによる。
ただし、この法律の公の秩序に関する規定に反してはならない。
前項の合意がないときは、仲裁廷は、この法律の規定に反しない限り、適当と認める方法によって仲裁手続を実施することができる。
第一項の合意がない場合における仲裁廷の権限には、証拠に関し、証拠としての許容性、取調べの必要性 及びその証明力についての判断をする権限が含まれる。
仲裁手続においては、当事者は、この法律の規定 又は当事者間の合意により定められた仲裁手続の準則(いずれも公の秩序に関しないものに限る。)が遵守されていないことを知りながら、遅滞なく(異議を述べるべき期限についての定めがある場合にあっては、当該期限までに)異議を述べないときは、当事者間に別段の合意がない限り、異議を述べる権利を放棄したものとみなす。
仲裁地は、当事者が合意により定めるところによる。
前項の合意がないときは、仲裁廷は、当事者の利便 その他の紛争に関する事情を考慮して、仲裁地を定める。
仲裁廷は、当事者間に別段の合意がない限り、前二項の規定による仲裁地にかかわらず、適当と認めるいかなる場所においても、次に掲げる手続を行うことができる。
合議体である仲裁廷の評議
当事者、鑑定人 又は第三者の陳述の聴取
仲裁手続は、当事者間に別段の合意がない限り、特定の民事上の紛争について、一方の当事者が他方の当事者に対し、これを仲裁手続に付する旨の通知をした日に開始する。
仲裁手続における請求は、時効の完成猶予 及び更新の効力を生ずる。
ただし、当該仲裁手続が仲裁判断によらず に終了したときは、この限りでない。
仲裁手続において使用する言語 及びその言語を使用して行うべき手続は、当事者が合意により定めるところによる。
前項の合意がないときは、仲裁廷が、仲裁手続において使用する言語 及びその言語を使用して行うべき手続を定める。
第一項の合意 又は前項の決定において、定められた言語を使用して行うべき手続についての定めがないときは、その言語を使用して行うべき手続は、次に掲げるものとする。
当事者が行う書面による陳述 又は通知
仲裁廷が行う書面による決定(仲裁判断を含む。)又は通知
仲裁廷は、すべての証拠書類について、第一項の合意 又は第二項の決定により定められた言語(翻訳文について使用すべき言語の定めがある場合にあっては、当該言語)による翻訳文を添付することを命ずることができる。
仲裁申立人(仲裁手続において、これを開始させるための行為をした当事者をいう。以下同じ。)は、仲裁廷が定めた期間内に、申立ての趣旨、申立ての根拠となる事実 及び紛争の要点を陳述しなければならない。
この場合において、仲裁申立人は、取り調べる必要があると思料するすべての証拠書類を提出し、又は提出予定の証拠書類 その他の証拠を引用することができる。
仲裁被申立人(仲裁申立人以外の仲裁手続の当事者をいう。以下同じ。)は、仲裁廷が定めた期間内に、前項の規定により陳述された事項についての自己の主張を陳述しなければならない。
この場合においては、同項後段の規定を準用する。
すべての当事者は、仲裁手続の進行中において、自己の陳述の変更 又は追加をすることができる。
ただし、当該変更 又は追加が時機に後れてされたものであるときは、仲裁廷は、これを許さないことができる。
前三項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
仲裁廷は、当事者に証拠の提出 又は意見の陳述をさせるため、口頭審理を実施することができる。
ただし、一方の当事者が第三十四条第三項の求めその他の口頭審理の実施の申立てをしたときは、仲裁手続における適切な時期に、当該口頭審理を実施しなければならない。
前項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
仲裁廷は、意見の聴取 又は物 若しくは文書の見分を行うために口頭審理を行うときは、当該口頭審理の期日までに相当な期間をおいて、当事者に対し、当該口頭審理の日時 及び場所を通知しなければならない。
当事者は、主張書面、証拠書類 その他の記録を仲裁廷に提供したときは、他の当事者がその内容を知ることができるようにする措置を執らなければならない。
仲裁廷は、仲裁判断 その他の仲裁廷の決定の基礎となるべき鑑定人の報告 その他の証拠資料の内容を、すべての当事者が知ることができるようにする措置を執らなければならない。
仲裁廷は、仲裁申立人が第三十一条第一項の規定に違反したときは、仲裁手続の終了決定をしなければならない。
ただし、違反したことについて正当な理由がある場合は、この限りでない。
仲裁廷は、仲裁被申立人が第三十一条第二項の規定に違反した場合であっても、仲裁被申立人が仲裁申立人の主張を認めたものとして取り扱うことなく、仲裁手続を続行しなければならない。
仲裁廷は、一方の当事者が口頭審理の期日に出頭せず、又は証拠書類を提出しないときは、その時までに収集された証拠に基づいて、仲裁判断をすることができる。
ただし、当該当事者が口頭審理に出頭せず、又は証拠書類を提出しないことについて正当な理由がある場合は、この限りでない。
前三項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
仲裁廷は、一人 又は二人以上の鑑定人を選任し、必要な事項について鑑定をさせ、文書 又は口頭によりその結果の報告をさせることができる。
前項の場合において、仲裁廷は、当事者に対し、次に掲げる行為をすることを求めることができる。
鑑定に必要な情報を鑑定人に提供すること。
鑑定に必要な文書 その他の物を、鑑定人に提出し、又は鑑定人が見分をすることができるようにすること。
当事者の求めがあるとき、又は仲裁廷が必要と認めるときは、鑑定人は、第一項の規定による報告をした後、口頭審理の期日に出頭しなければならない。
当事者は、前項の口頭審理の期日において、次に掲げる行為をすることができる。
自己が依頼した専門的知識を有する者に当該鑑定に係る事項について陳述をさせること。
前各項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
仲裁廷 又は当事者は、民事訴訟法の規定による調査の嘱託、証人尋問、鑑定、書証(当事者が文書を提出してするものを除く。)及び検証(当事者が検証の目的を提示してするものを除く。)であって仲裁廷が必要と認めるものにつき、裁判所に対し、その実施を求める申立てをすることができる。
ただし、当事者間にこれらの全部 又は一部についてその実施を求める申立てをしない旨の合意がある場合は、この限りでない。
当事者が前項の申立てをするには、仲裁廷の同意を得なければならない。
第一項の申立てに係る事件は、第五条第一項 及び第二項の規定にかかわらず、次に掲げる裁判所の管轄に専属する。
第五条第一項第二号に掲げる裁判所
尋問を受けるべき者 若しくは文書を所持する者の住所 若しくは居所 又は検証の目的の所在地を管轄する地方裁判所
申立人 又は被申立人の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所(前二号に掲げる裁判所がない場合に限る。)
第一項の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第一項の申立てにより裁判所が当該証拠調べを実施するに当たり、仲裁人は、文書を閲読し、検証の目的を検証し、又は裁判長の許可を得て証人 若しくは鑑定人(民事訴訟法第二百十三条に規定する鑑定人をいう。)に対して質問をすることができる。
裁判所書記官は、第一項の申立てにより裁判所が実施する証拠調べについて、調書を作成しなければならない。