仲裁地が日本国内にある仲裁手続 及び仲裁手続に関して裁判所が行う手続については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
仲裁法
第一章 総則
この法律において「仲裁合意」とは、既に生じた民事上の紛争 又は将来において生ずる一定の法律関係(契約に基づくものであるかどうかを問わない。)に関する民事上の紛争の全部 又は一部の解決を一人 又は二人以上の仲裁人にゆだね、かつ、その判断(以下「仲裁判断」という。)に服する旨の合意をいう。
この法律において「仲裁廷」とは、仲裁合意に基づき、その対象となる民事上の紛争について審理し、仲裁判断を行う一人の仲裁人 又は二人以上の仲裁人の合議体をいう。
この法律において「主張書面」とは、仲裁手続において当事者が作成して仲裁廷に提出する書面であって、当該当事者の主張が記載されているものをいう。
次章から第七章まで、第九章 及び第十章の規定は、次項 及び第八条に定めるものを除き、仲裁地が日本国内にある場合について適用する。
第十四条第一項 及び第十五条の規定は、仲裁地が日本国内にある場合、仲裁地が日本国外にある場合 及び仲裁地が定まっていない場合に適用する。
第八章の規定は、仲裁地が日本国内にある場合 及び仲裁地が日本国外にある場合に適用する。
仲裁手続に関しては、裁判所は、この法律に規定する場合に限り、その権限を行使することができる。
この法律の規定により裁判所が行う手続に係る事件は、次に掲げる裁判所の管轄に専属する。
当事者が合意により定めた地方裁判所
仲裁地(一の地方裁判所の管轄区域のみに属する地域を仲裁地として定めた場合に限る。)を管轄する地方裁判所
当該事件の被申立人の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所
前項の規定にかかわらず、仲裁地が日本国内にあるときは、この法律の規定により裁判所が行う手続に係る申立ては、東京地方裁判所 及び大阪地方裁判所にもすることができる。
この法律の規定により二以上の裁判所が管轄権を有するときは、先に申立てがあった裁判所が管轄する。
裁判所は、この法律の規定により裁判所が行う手続に係る事件の全部 又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより 又は職権で、これを管轄裁判所に移送しなければならない。
裁判所は、第三項の規定により管轄する事件について、相当と認めるときは、申立てにより 又は職権で、当該事件の全部 又は一部を同項の規定により管轄権を有しないこととされた裁判所に移送することができる。
この法律の規定により裁判所が行う手続に係る裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
この法律の規定により裁判所が行う手続に係る裁判につき利害関係を有する者は、この法律に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し、その告知を受けた日から二週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。
裁判所に対する次の各号に掲げる申立ては、仲裁地が定まっていない場合であって、仲裁地が日本国内となる可能性があり、かつ、申立人 又は被申立人の普通裁判籍(最後の住所により定まるものを除く。)の所在地が日本国内にあるときも、することができる。
この場合においては、当該各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める規定を適用する。
第十六条第三項の申立て
同条
第十七条第二項から第五項までの申立て
同条
第十九条第四項の申立て
第十八条 及び第十九条
第二十条の申立て
同条
前項の場合における同項各号に掲げる申立てに係る事件は、第五条第一項の規定にかかわらず、次に掲げる裁判所の管轄に専属する。
前項に規定する普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所
この法律の規定により裁判所が行う手続について利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、次に掲げる事項を請求することができる。
事件の記録中の電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録の複製
事件の記録の正本、謄本 又は抄本の交付
事件に関する事項の証明書の交付
特別の定めがある場合を除き、この法律の規定により裁判所が行う手続に関しては、その性質に反しない限り、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第一編から第四編までの規定(同法第八十七条の二の規定を除く。)を準用する。
この法律に定めるもののほか、この法律の規定により裁判所が行う手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
仲裁手続における通知を書面によってするときは、当事者間に別段の合意がない限り、名宛人が直接当該書面を受領した時 又は名宛人の住所、常居所、営業所、事務所 若しくは配達場所(名宛人が発信人からの書面の配達を受けるべき場所として指定した場所をいう。以下この条において同じ。)に当該書面が配達された時に、通知がされたものとする。
裁判所は、仲裁手続における書面によってする通知について、当該書面を名宛人の住所、常居所、営業所、事務所 又は配達場所に配達することが可能であるが、発信人が当該配達の事実を証明する資料を得ることが困難である場合において、必要があると認めるときは、発信人の申立てにより、裁判所が当該書面の送達をする旨の決定をすることができる。
この場合における送達については、民事訴訟法第百四条 及び第百十条から第百十三条までの規定は適用しない。
前項の規定は、当事者間に同項の送達を行わない旨の合意がある場合には、適用しない。
第二項の申立てに係る事件は、第五条第一項 及び第二項の規定にかかわらず、同条第一項第一号 及び第二号に掲げる裁判所 並びに名宛人の住所、常居所、営業所、事務所 又は配達場所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
仲裁手続における通知を書面によってする場合において、名宛人の住所、常居所、営業所、事務所 及び配達場所の全てが相当の調査をしても分からないときは、当事者間に別段の合意がない限り、発信人は、名宛人の最後の住所、常居所、営業所、事務所 又は配達場所にあてて当該書面を書留郵便 その他配達を試みたことを証明することができる方法により発送すれば足りる。
この場合においては、当該書面が通常到達すべきであった時に通知がされたものとする。
第一項 及び前項の規定は、この法律の規定により裁判所が行う手続において通知を行う場合については、適用しない。
第二章 仲裁合意
仲裁合意は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者が和解をすることができる民事上の紛争(離婚 又は離縁の紛争を除く。)を対象とする場合に限り、その効力を有する。
仲裁合意は、当事者の全部が署名した文書、当事者が交換した書簡 又は電報(ファクシミリ装置 その他の隔地者間の通信手段で文字による通信内容の記録が受信者に提供されるものを用いて送信されたものを含む。)その他の書面によってしなければならない。
仲裁合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第六項において同じ。)によってされたときは、その仲裁合意は、書面によってされたものとみなす。
仲裁手続において、一方の当事者が提出した主張書面に仲裁合意の内容の記載があり、これに対して他方の当事者が提出した主張書面にこれを争う旨の記載がないときは、その仲裁合意は、書面によってされたものとみなす。
仲裁合意を含む一の契約において、仲裁合意以外の契約条項が無効、取消し その他の事由により効力を有しないものとされる場合においても、仲裁合意は、当然には、その効力を妨げられない。
仲裁合意の対象となる民事上の紛争について訴えが提起されたときは、受訴裁判所は、被告の申立てにより、訴えを却下しなければならない。
ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
仲裁合意が無効、取消し その他の事由により効力を有しないとき。
仲裁合意に基づく仲裁手続を行うことができないとき。
当該申立てが、本案について、被告が弁論をし、又は弁論準備手続において申述をした後にされたものであるとき。
仲裁廷は、前項の訴えに係る訴訟が裁判所に係属する間においても、仲裁手続を開始し、又は続行し、かつ、仲裁判断をすることができる。
仲裁合意は、その当事者が、当該仲裁合意の対象となる民事上の紛争に関して、仲裁手続の開始前 又は進行中に、裁判所に対して保全処分の申立てをすること、及びその申立てを受けた裁判所が保全処分を命ずることを妨げない。
第三章 仲裁人
仲裁人の数は、当事者が合意により定めるところによる。
当事者の数が二人である場合において、前項の合意がないときは、仲裁人の数は、三人とする。
当事者の数が三人以上である場合において、第一項の合意がないときは、当事者の申立てにより、裁判所が仲裁人の数を定める。
仲裁人の選任手続は、当事者が合意により定めるところによる。
ただし、第五項 又は第六項に規定するものについては、この限りでない。
当事者の数が二人であり、仲裁人の数が三人である場合において、前項の合意がないときは、当事者がそれぞれ一人の仲裁人を、当事者により選任された二人の仲裁人がその余の仲裁人を、選任する。
この場合において、一方の当事者が仲裁人を選任した他方の当事者から仲裁人を選任すべき旨の催告を受けた日から三十日以内にその選任をしないときは当該当事者の申立てにより、当事者により選任された二人の仲裁人がその選任後三十日以内にその余の仲裁人を選任しないときは一方の当事者の申立てにより、裁判所が仲裁人を選任する。
当事者の数が二人であり、仲裁人の数が一人である場合において、第一項の合意がなく、かつ、当事者間に仲裁人の選任についての合意が成立しないときは、一方の当事者の申立てにより、裁判所が仲裁人を選任する。
当事者の数が三人以上である場合において、第一項の合意がないときは、当事者の申立てにより、裁判所が仲裁人を選任する。
第一項の合意により仲裁人の選任手続が定められた場合であっても、当該選任手続において定められた行為がされないこと その他の理由によって当該選任手続による仲裁人の選任ができなくなったときは、一方の当事者は、裁判所に対し、仲裁人の選任の申立てをすることができる。
裁判所は、第二項から前項までの規定による仲裁人の選任に当たっては、次に掲げる事項に配慮しなければならない。
当事者の合意により定められた仲裁人の要件
選任される者の公正性 及び独立性
仲裁人の数を一人とする場合 又は当事者により選任された二人の仲裁人が選任すべき仲裁人を選任すべき場合にあっては、当事者双方の国籍と異なる国籍を有する者を選任することが適当かどうか。
当事者は、仲裁人に次に掲げる事由があるときは、当該仲裁人を忌避することができる。
当事者の合意により定められた仲裁人の要件を具備しないとき。
仲裁人の公正性 又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるとき。
仲裁人を選任し、又は当該仲裁人の選任について推薦 その他これに類する関与をした当事者は、当該選任後に知った事由を忌避の原因とする場合に限り、当該仲裁人を忌避することができる。
仲裁人への就任の依頼を受けてその交渉に応じようとする者は、当該依頼をした者に対し、自己の公正性 又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実の全部を開示しなければならない。
仲裁人は、仲裁手続の進行中、当事者に対し、自己の公正性 又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実(既に開示したものを除く。)の全部を遅滞なく開示しなければならない。
仲裁人の忌避の手続は、当事者が合意により定めるところによる。
ただし、第四項に規定するものについては、この限りでない。
前項の合意がない場合において、仲裁人の忌避についての決定は、当事者の申立てにより、仲裁廷が行う。
前項の申立てをしようとする当事者は、仲裁廷が構成されたことを知った日 又は前条第一項各号に掲げる事由のいずれかがあることを知った日のいずれか遅い日から十五日以内に、忌避の原因を記載した申立書を仲裁廷に提出しなければならない。
この場合において、仲裁廷は、当該仲裁人に忌避の原因があると認めるときは、忌避を理由があるとする決定をしなければならない。
前三項に規定する忌避の手続において仲裁人の忌避を理由がないとする決定がされた場合には、その忌避をした当事者は、当該決定の通知を受けた日から三十日以内に、裁判所に対し、当該仲裁人の忌避の申立てをすることができる。
この場合において、裁判所は、当該仲裁人に忌避の原因があると認めるときは、忌避を理由があるとする決定をしなければならない。
仲裁廷は、前項の忌避の申立てに係る事件が裁判所に係属する間においても、仲裁手続を開始し、又は続行し、かつ、仲裁判断をすることができる。
当事者は、次に掲げる事由があるときは、裁判所に対し、仲裁人の解任の申立てをすることができる。
この場合において、裁判所は、当該仲裁人にその申立てに係る事由があると認めるときは、当該仲裁人を解任する決定をしなければならない。
仲裁人が法律上 又は事実上その任務を遂行することができなくなったとき。
前号の場合を除くほか、仲裁人がその任務の遂行を不当に遅滞させたとき。
仲裁人の任務は、次に掲げる事由により、終了する。
当事者の合意による仲裁人の解任
第十九条第一項から第四項までに規定する忌避の手続においてされた忌避を理由があるとする決定
前条の規定による仲裁人の解任の決定
第十九条第一項から第四項までに規定する忌避の手続 又は前条の規定による解任の手続の進行中に、仲裁人が辞任し、又は当事者の合意により仲裁人が解任されたという事実のみから、当該仲裁人について第十八条第一項各号 又は前条各号に掲げる事由があるものと推定してはならない。
前条第一項各号に掲げる事由により仲裁人の任務が終了した場合における後任の仲裁人の選任の方法は、当事者間に別段の合意がない限り、任務が終了した仲裁人の選任に適用された選任の方法による。
第四章 仲裁廷の特別の権限
仲裁廷は、仲裁合意の存否 又は効力に関する主張についての判断 その他自己の仲裁権限(仲裁手続における審理 及び仲裁判断を行う権限をいう。以下この条において同じ。)の有無についての判断を示すことができる。
仲裁手続において、仲裁廷が仲裁権限を有しない旨の主張は、その原因となる事由が仲裁手続の進行中に生じた場合にあってはその後 速やかに、その他の場合にあっては本案についての最初の主張書面の提出の時(口頭審理において口頭で最初に本案についての主張をする時を含む。)までに、しなければならない。
ただし、仲裁権限を有しない旨の主張の遅延について正当な理由があると仲裁廷が認めるときは、この限りでない。
当事者は、仲裁人を選任し、又は仲裁人の選任について推薦 その他これに類する関与をした場合であっても、前項の主張をすることができる。
仲裁廷は、適法な第二項の主張があったときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める決定 又は仲裁判断により、当該主張に対する判断を示さなければならない。
自己が仲裁権限を有する旨の判断を示す場合
仲裁判断前の独立の決定 又は仲裁判断
自己が仲裁権限を有しない旨の判断を示す場合
仲裁手続の終了決定
仲裁廷が仲裁判断前の独立の決定において自己が仲裁権限を有する旨の判断を示したときは、当事者は、当該決定の通知を受けた日から三十日以内に、裁判所に対し、当該仲裁廷が仲裁権限を有するかどうかについての判断を求める申立てをすることができる。
この場合において、当該申立てに係る事件が裁判所に係属する場合であっても、当該仲裁廷は、仲裁手続を続行し、かつ、仲裁判断をすることができる。
財産上の給付(金銭の支払を除く。)を求める権利について、当該権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は当該権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに、当該給付の目的である財産の処分 その他の変更を禁止すること。
仲裁手続における審理を妨げる行為を禁止すること(次号に掲げるものを除く。)。
前項の申立て(同項第五号に係るものを除く。)をするときは、保全すべき権利 又は権利関係 及びその申立ての原因となる事実を疎明しなければならない。
仲裁廷は、第一項各号に掲げる措置を講ずることを命ずる命令(以下「暫定保全措置命令」という。)を発するに際し、必要があると認めるときは、相当な担保を提供すべきことを命ずることができる。
保全すべき権利 若しくは権利関係 又は第一項の申立ての原因を欠くことが判明し、又はこれを欠くに至ったとき その他の事情の変更があったときは、仲裁廷は、申立てにより、暫定保全措置命令を取り消し、変更し、又はその効力を停止することができる。
前項の規定によるほか、仲裁廷は、特別の事情があると認めるときは、当事者にあらかじめ通知した上で、職権で、暫定保全措置命令を取り消し、変更し、又はその効力を停止することができる。
仲裁廷は、第四項の事情の変更があったと思料するときは、当事者に対し、速やかに当該事情の変更の有無 及び当該事情の変更があったときはその内容を開示することを命ずることができる。
暫定保全措置命令の申立てをした者(次項において「申立人」という。)が前項の規定による命令に従わないときは、第四項の規定の適用については、同項の事情の変更があったものとみなす。
仲裁廷は、第四項 又は第五項の規定により暫定保全措置命令を取り消し、変更し、又はその効力を停止した場合において、申立人の責めに帰すべき事由により暫定保全措置命令を発したと認めるときは、暫定保全措置命令を受けた者の申立てにより、当該申立人に対し、これにより当該暫定保全措置命令を受けた者が受けた損害の賠償を命ずることができる。
ただし、当事者間に別段の合意がある場合は、この限りでない。
前項の規定による命令は、仲裁判断としての効力を有する。
第三十九条の規定は第八項の規定による命令について、同条第一項 及び第三項の規定は暫定保全措置命令 その他のこの条の規定による命令(第八項の規定による命令を除く。)又は決定について、それぞれ準用する。
第五章 仲裁手続の開始及び仲裁手続における審理
仲裁手続においては、当事者は、平等に取り扱われなければならない。
仲裁手続においては、当事者は、事案について説明する十分な機会が与えられなければならない。
仲裁廷が従うべき仲裁手続の準則は、当事者が合意により定めるところによる。
ただし、この法律の公の秩序に関する規定に反してはならない。
前項の合意がないときは、仲裁廷は、この法律の規定に反しない限り、適当と認める方法によって仲裁手続を実施することができる。
第一項の合意がない場合における仲裁廷の権限には、証拠に関し、証拠としての許容性、取調べの必要性 及びその証明力についての判断をする権限が含まれる。
仲裁手続においては、当事者は、この法律の規定 又は当事者間の合意により定められた仲裁手続の準則(いずれも公の秩序に関しないものに限る。)が遵守されていないことを知りながら、遅滞なく(異議を述べるべき期限についての定めがある場合にあっては、当該期限までに)異議を述べないときは、当事者間に別段の合意がない限り、異議を述べる権利を放棄したものとみなす。
仲裁地は、当事者が合意により定めるところによる。
前項の合意がないときは、仲裁廷は、当事者の利便 その他の紛争に関する事情を考慮して、仲裁地を定める。
仲裁廷は、当事者間に別段の合意がない限り、前二項の規定による仲裁地にかかわらず、適当と認めるいかなる場所においても、次に掲げる手続を行うことができる。
合議体である仲裁廷の評議
当事者、鑑定人 又は第三者の陳述の聴取
仲裁手続は、当事者間に別段の合意がない限り、特定の民事上の紛争について、一方の当事者が他方の当事者に対し、これを仲裁手続に付する旨の通知をした日に開始する。
仲裁手続における請求は、時効の完成猶予 及び更新の効力を生ずる。
ただし、当該仲裁手続が仲裁判断によらず に終了したときは、この限りでない。
仲裁手続において使用する言語 及びその言語を使用して行うべき手続は、当事者が合意により定めるところによる。
前項の合意がないときは、仲裁廷が、仲裁手続において使用する言語 及びその言語を使用して行うべき手続を定める。
第一項の合意 又は前項の決定において、定められた言語を使用して行うべき手続についての定めがないときは、その言語を使用して行うべき手続は、次に掲げるものとする。
当事者が行う書面による陳述 又は通知
仲裁廷が行う書面による決定(仲裁判断を含む。)又は通知
仲裁廷は、すべての証拠書類について、第一項の合意 又は第二項の決定により定められた言語(翻訳文について使用すべき言語の定めがある場合にあっては、当該言語)による翻訳文を添付することを命ずることができる。
仲裁申立人(仲裁手続において、これを開始させるための行為をした当事者をいう。以下同じ。)は、仲裁廷が定めた期間内に、申立ての趣旨、申立ての根拠となる事実 及び紛争の要点を陳述しなければならない。
この場合において、仲裁申立人は、取り調べる必要があると思料するすべての証拠書類を提出し、又は提出予定の証拠書類 その他の証拠を引用することができる。
仲裁被申立人(仲裁申立人以外の仲裁手続の当事者をいう。以下同じ。)は、仲裁廷が定めた期間内に、前項の規定により陳述された事項についての自己の主張を陳述しなければならない。
この場合においては、同項後段の規定を準用する。
すべての当事者は、仲裁手続の進行中において、自己の陳述の変更 又は追加をすることができる。
ただし、当該変更 又は追加が時機に後れてされたものであるときは、仲裁廷は、これを許さないことができる。
前三項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
仲裁廷は、当事者に証拠の提出 又は意見の陳述をさせるため、口頭審理を実施することができる。
ただし、一方の当事者が第三十四条第三項の求めその他の口頭審理の実施の申立てをしたときは、仲裁手続における適切な時期に、当該口頭審理を実施しなければならない。
前項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
仲裁廷は、意見の聴取 又は物 若しくは文書の見分を行うために口頭審理を行うときは、当該口頭審理の期日までに相当な期間をおいて、当事者に対し、当該口頭審理の日時 及び場所を通知しなければならない。
当事者は、主張書面、証拠書類 その他の記録を仲裁廷に提供したときは、他の当事者がその内容を知ることができるようにする措置を執らなければならない。
仲裁廷は、仲裁判断 その他の仲裁廷の決定の基礎となるべき鑑定人の報告 その他の証拠資料の内容を、すべての当事者が知ることができるようにする措置を執らなければならない。
仲裁廷は、仲裁申立人が第三十一条第一項の規定に違反したときは、仲裁手続の終了決定をしなければならない。
ただし、違反したことについて正当な理由がある場合は、この限りでない。
仲裁廷は、仲裁被申立人が第三十一条第二項の規定に違反した場合であっても、仲裁被申立人が仲裁申立人の主張を認めたものとして取り扱うことなく、仲裁手続を続行しなければならない。
仲裁廷は、一方の当事者が口頭審理の期日に出頭せず、又は証拠書類を提出しないときは、その時までに収集された証拠に基づいて、仲裁判断をすることができる。
ただし、当該当事者が口頭審理に出頭せず、又は証拠書類を提出しないことについて正当な理由がある場合は、この限りでない。
前三項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
仲裁廷は、一人 又は二人以上の鑑定人を選任し、必要な事項について鑑定をさせ、文書 又は口頭によりその結果の報告をさせることができる。
前項の場合において、仲裁廷は、当事者に対し、次に掲げる行為をすることを求めることができる。
鑑定に必要な情報を鑑定人に提供すること。
鑑定に必要な文書 その他の物を、鑑定人に提出し、又は鑑定人が見分をすることができるようにすること。
当事者の求めがあるとき、又は仲裁廷が必要と認めるときは、鑑定人は、第一項の規定による報告をした後、口頭審理の期日に出頭しなければならない。
当事者は、前項の口頭審理の期日において、次に掲げる行為をすることができる。
自己が依頼した専門的知識を有する者に当該鑑定に係る事項について陳述をさせること。
前各項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
仲裁廷 又は当事者は、民事訴訟法の規定による調査の嘱託、証人尋問、鑑定、書証(当事者が文書を提出してするものを除く。)及び検証(当事者が検証の目的を提示してするものを除く。)であって仲裁廷が必要と認めるものにつき、裁判所に対し、その実施を求める申立てをすることができる。
ただし、当事者間にこれらの全部 又は一部についてその実施を求める申立てをしない旨の合意がある場合は、この限りでない。
当事者が前項の申立てをするには、仲裁廷の同意を得なければならない。
第一項の申立てに係る事件は、第五条第一項 及び第二項の規定にかかわらず、次に掲げる裁判所の管轄に専属する。
第五条第一項第二号に掲げる裁判所
尋問を受けるべき者 若しくは文書を所持する者の住所 若しくは居所 又は検証の目的の所在地を管轄する地方裁判所
申立人 又は被申立人の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所(前二号に掲げる裁判所がない場合に限る。)
第一項の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第一項の申立てにより裁判所が当該証拠調べを実施するに当たり、仲裁人は、文書を閲読し、検証の目的を検証し、又は裁判長の許可を得て証人 若しくは鑑定人(民事訴訟法第二百十三条に規定する鑑定人をいう。)に対して質問をすることができる。
裁判所書記官は、第一項の申立てにより裁判所が実施する証拠調べについて、調書を作成しなければならない。
第六章 仲裁判断及び仲裁手続の終了
仲裁廷が仲裁判断において準拠すべき法は、当事者が合意により定めるところによる。
この場合において、一の国の法令が定められたときは、反対の意思が明示された場合を除き、当該定めは、抵触する内外の法令の適用関係を定めるその国の法令ではなく、事案に直接適用されるその国の法令を定めたものとみなす。
前項の合意がないときは、仲裁廷は、仲裁手続に付された民事上の紛争に最も密接な関係がある国の法令であって事案に直接適用されるべきものを適用しなければならない。
仲裁廷は、当事者双方の明示された求めがあるときは、前二項の規定にかかわらず、衡平と善により判断するものとする。
仲裁廷は、仲裁手続に付された民事上の紛争に係る契約があるときはこれに定められたところに従って判断し、当該民事上の紛争に適用することができる慣習があるときはこれを考慮しなければならない。
合議体である仲裁廷は、仲裁人の互選により、仲裁廷の長である仲裁人を選任しなければならない。
合議体である仲裁廷の議事は、仲裁廷を構成する仲裁人の過半数で決する。
前項の規定にかかわらず、仲裁手続における手続上の事項は、当事者双方の合意 又は他のすべての仲裁人の委任があるときは、仲裁廷の長である仲裁人が決することができる。
前三項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
仲裁廷は、仲裁手続の進行中において、仲裁手続に付された民事上の紛争について当事者間に和解が成立し、かつ、当事者双方の申立てがあるときは、当該和解における合意を内容とする決定をすることができる。
前項の決定は、仲裁判断としての効力を有する。
第一項の決定をするには、次条第一項 及び第三項の規定に従って決定書を作成し、かつ、これに仲裁判断であることの表示をしなければならない。
当事者双方の承諾がある場合には、仲裁廷 又はその選任した一人 若しくは二人以上の仲裁人は、仲裁手続に付された民事上の紛争について、和解を試みることができる。
前項の承諾 又はその撤回は、当事者間に別段の合意がない限り、書面でしなければならない。
仲裁判断をするには、仲裁判断書を作成し、これに仲裁判断をした仲裁人が署名しなければならない。
ただし、仲裁廷が合議体である場合には、仲裁廷を構成する仲裁人の過半数が署名し、かつ、他の仲裁人の署名がないことの理由を記載すれば足りる。
仲裁判断書には、理由を記載しなければならない。
ただし、当事者間に別段の合意がある場合は、この限りでない。
仲裁判断書には、作成の年月日 及び仲裁地を記載しなければならない。
仲裁判断は、仲裁地においてされたものとみなす。
仲裁廷は、仲裁判断がされたときは、仲裁人の署名のある仲裁判断書の写しを送付する方法により、仲裁判断を各当事者に通知しなければならない。
第一項ただし書の規定は、前項の仲裁判断書の写しについて準用する。
仲裁手続は、仲裁判断 又は仲裁手続の終了決定があったときに、終了する。
仲裁廷は、第二十三条第四項第二号 又は第三十三条第一項の規定による場合のほか、次に掲げる事由のいずれかがあるときは、仲裁手続の終了決定をしなければならない。
仲裁申立人がその申立てを取り下げたとき。
ただし、仲裁被申立人が取下げに異議を述べ、かつ、仲裁手続に付された民事上の紛争の解決について仲裁被申立人が正当な利益を有すると仲裁廷が認めるときは、この限りでない。
当事者双方が仲裁手続を終了させる旨の合意をしたとき。
仲裁手続に付された民事上の紛争について、当事者間に和解が成立したとき(第三十八条第一項の決定があったときを除く。)。
前三号に掲げる場合のほか、仲裁廷が、仲裁手続を続行する必要がなく、又は仲裁手続を続行することが不可能であると認めたとき。
仲裁手続が終了したときは、仲裁廷の任務は、終了する。
ただし、次条から第四十三条までの規定による行為をすることができる。
仲裁廷は、当事者の申立てにより又は職権で、仲裁判断における計算違い、誤記 その他これらに類する誤りを訂正することができる。
前項の申立ては、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁判断の通知を受けた日から三十日以内にしなければならない。
当事者は、第一項の申立てをするときは、あらかじめ、又は同時に、他の当事者に対して、当該申立ての内容を記載した通知を発しなければならない。
仲裁廷は、第一項の申立ての日から三十日以内に、当該申立てについての決定をしなければならない。
仲裁廷は、必要があると認めるときは、前項の期間を延長することができる。
第三十九条の規定は、仲裁判断の訂正の決定 及び第一項の申立てを却下する決定について準用する。
当事者は、仲裁廷に対し、仲裁判断の特定の部分の解釈を求める申立てをすることができる。
前項の申立ては、当事者間にかかる申立てをすることができる旨の合意がある場合に限り、することができる。
前条第二項 及び第三項の規定は第一項の申立てについて、
第三十九条 並びに前条第四項 及び第五項の規定は第一項の申立てについての決定について、それぞれ準用する。
当事者は、仲裁手続における申立てのうちに仲裁判断において判断が示されなかったものがあるときは、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁廷に対し、当該申立てについての仲裁判断を求める申立てをすることができる。
この場合においては、第四十一条第二項 及び第三項の規定を準用する。
仲裁廷は、前項の申立ての日から六十日以内に、当該申立てについての決定をしなければならない。
この場合においては、第四十一条第五項の規定を準用する。
第三十九条の規定は、前項の決定について準用する。
第七章 仲裁判断の取消し
当事者は、次に掲げる事由があるときは、裁判所に対し、仲裁判断の取消しの申立てをすることができる。
仲裁合意が、当事者の行為能力の制限により、その効力を有しないこと。
仲裁合意が、当事者が合意により仲裁合意に適用すべきものとして指定した法令(当該指定がないときは、日本の法令)によれば、当事者の行為能力の制限以外の事由により、その効力を有しないこと。
申立人が、仲裁人の選任手続 又は仲裁手続において、日本の法令(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)により必要とされる通知を受けなかったこと。
申立人が、仲裁手続において防御することが不可能であったこと。
仲裁判断が、仲裁合意 又は仲裁手続における申立ての範囲を超える事項に関する判断を含むものであること。
仲裁廷の構成 又は仲裁手続が、日本の法令(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)に違反するものであったこと。
仲裁手続における申立てが、日本の法令によれば、仲裁合意の対象とすることができない紛争に関するものであること。
仲裁判断の内容が、日本における公の秩序 又は善良の風俗に反すること。
前項の申立ては、仲裁判断書(第四十一条から前条までの規定による仲裁廷の決定の決定書を含む。)の写しの送付による通知がされた日から三箇月を経過したとき、又は第四十六条の規定による執行決定が確定したときは、することができない。
第一項の申立てに係る事件についての第五条第四項 又は第五項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
裁判所は、口頭弁論 又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、第一項の申立てについての決定をすることができない。
裁判所は、第一項の申立てがあった場合において、同項各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるとき(同項第一号から第六号までに掲げる事由にあっては、申立人が当該事由の存在を証明した場合に限る。)は、仲裁判断を取り消すことができる。
第一項第五号に掲げる事由がある場合において、当該仲裁判断から同号に規定する事項に関する部分を区分することができるときは、裁判所は、仲裁判断のうち当該部分のみを取り消すことができる。
第一項の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第八章 仲裁判断の承認及び執行決定等
仲裁判断(仲裁地が日本国内にあるかどうかを問わない。以下この章において同じ。)は、確定判決と同一の効力を有する。
ただし、当該仲裁判断に基づく民事執行をするには、次条の規定による執行決定がなければならない。
前項の規定は、次に掲げる事由のいずれかがある場合(第一号から第七号までに掲げる事由にあっては、当事者のいずれかが当該事由の存在を証明した場合に限る。)には、適用しない。
仲裁合意が、当事者の行為能力の制限により、その効力を有しないこと。
仲裁合意が、当事者が合意により仲裁合意に適用すべきものとして指定した法令(当該指定がないときは、仲裁地が属する国の法令)によれば、当事者の行為能力の制限以外の事由により、その効力を有しないこと。
当事者が、仲裁人の選任手続 又は仲裁手続において、仲裁地が属する国の法令の規定(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)により必要とされる通知を受けなかったこと。
当事者が、仲裁手続において防御することが不可能であったこと。
仲裁判断が、仲裁合意 又は仲裁手続における申立ての範囲を超える事項に関する判断を含むものであること。
仲裁廷の構成 又は仲裁手続が、仲裁地が属する国の法令の規定(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)に違反するものであったこと。
仲裁地が属する国(仲裁手続に適用された法令が仲裁地が属する国以外の国の法令である場合にあっては、当該国)の法令によれば、仲裁判断が確定していないこと、又は仲裁判断がその国の裁判機関により取り消され、若しくは効力を停止されたこと。
仲裁手続における申立てが、日本の法令によれば、仲裁合意の対象とすることができない紛争に関するものであること。
仲裁判断の内容が、日本における公の秩序 又は善良の風俗に反すること。
前項第五号 に掲げる事由がある場合において、当該仲裁判断から同号に規定する事項に関する部分を区分することができるときは、当該部分 及び当該仲裁判断のその他の部分をそれぞれ独立した仲裁判断とみなして、同項の規定を適用する。
仲裁判断に基づいて民事執行をしようとする当事者は、債務者を被申立人として、裁判所に対し、執行決定(仲裁判断に基づく民事執行を許す旨の決定をいう。以下同じ。)を求める申立てをすることができる。
前項の申立てをするときは、仲裁判断書の写し、当該写しの内容が仲裁判断書と同一であることを証明する文書 及び仲裁判断書(日本語で作成されたものを除く。以下この項において同じ。)の日本語による翻訳文を提出しなければならない。
ただし、裁判所は、相当と認めるときは、被申立人の意見を聴いて、仲裁判断書の全部 又は一部について日本語による翻訳文を提出することを要しないものとすることができる。
第一項の申立てを受けた裁判所は、前条第二項第七号に規定する裁判機関に対して仲裁判断の取消し 又はその効力の停止を求める申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、第一項の申立てに係る手続を中止することができる。
この場合において、裁判所は、同項の申立てをした者の申立てにより、被申立人に対し、担保を立てるべきことを命ずることができる。
第一項の申立てに係る事件は、第五条第一項 及び第二項の規定にかかわらず、次に掲げる裁判所の管轄に専属する。
第五条第一項各号に掲げる裁判所
東京地方裁判所 及び大阪地方裁判所(仲裁地、被申立人の普通裁判籍の所在地 又は請求の目的 若しくは差し押さえることができる被申立人の財産の所在地が日本国内にある場合に限る。)
第一項の申立てに係る事件についての第五条第四項 又は第五項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
裁判所は、次項 又は第八項の規定により第一項の申立てを却下する場合を除き、執行決定をしなければならない。
裁判所は、第一項の申立てがあった場合において、前条第二項各号に掲げる事由のいずれかがあると認める場合(同項第一号から第七号までに掲げる事由にあっては、被申立人が当該事由の存在を証明した場合に限る。)に限り、当該申立てを却下することができる。
前条第三項の規定は、同条第二項第五号に掲げる事由がある場合における前項の規定の適用について準用する。
第四十四条第四項 及び第七項の規定は、第一項の申立てについての決定について準用する。
暫定保全措置命令(仲裁地が日本国内にあるかどうかを問わない。以下この章において同じ。)の申立てをした者は、当該暫定保全措置命令を受けた者を被申立人として、裁判所に対し、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める決定(以下「執行等認可決定」という。)を求める申立てをすることができる。
暫定保全措置命令のうち第二十四条第一項第三号に掲げる措置を講ずることを命ずるもの当該暫定保全措置命令に基づく民事執行を許す旨の決定
暫定保全措置命令のうち第二十四条第一項第一号、第二号、第四号 又は第五号に掲げる措置を講ずることを命ずるもの当該暫定保全措置命令に違反し、又は違反するおそれがあると認めるときに第四十九条第一項の規定による金銭の支払命令を発することを許す旨の決定
前項の申立てをするときは、暫定保全措置命令の命令書の写し、当該写しの内容が暫定保全措置命令の命令書と同一であることを証明する文書 及び暫定保全措置命令の命令書(日本語で作成されたものを除く。以下この項において同じ。)の日本語による翻訳文を提出しなければならない。
ただし、裁判所は、相当と認めるときは、被申立人の意見を聴いて、暫定保全措置命令の命令書の全部 又は一部について日本語による翻訳文を提出することを要しないものとすることができる。
第一項の申立てを受けた裁判所は、仲裁廷 又は裁判機関(仲裁地が属する国の法令(当該暫定保全措置命令に適用された法令が仲裁地が属する国以外の国の法令である場合にあっては、当該法令)により当該国の裁判機関がその権限を有する場合に限る。)に対して暫定保全措置命令の取消し、変更 又はその効力の停止を求める申立てがあったことを知った場合において、必要があると認めるときは、同項の申立てに係る手続を中止することができる。
この場合において、裁判所は、同項の申立てをした者の申立てにより、被申立人に対し、担保を立てるべきことを命ずることができる。
第一項の申立てに係る事件は、第五条第一項 及び第二項の規定にかかわらず、次に掲げる裁判所の管轄に専属する。
第五条第一項各号に掲げる裁判所
東京地方裁判所 及び大阪地方裁判所(仲裁地、被申立人の普通裁判籍の所在地 又は請求の目的 若しくは差し押さえることができる被申立人の財産の所在地が日本国内にある場合に限る。)
第一項の申立てに係る事件についての第五条第四項 又は第五項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
裁判所は、次項 又は第八項の規定により第一項の申立てを却下する場合を除き、執行等認可決定をしなければならない。
裁判所は、第一項の申立てがあった場合において、次の各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるとき(第一号から第八号までに掲げる事由にあっては、被申立人が当該事由の存在を証明した場合に限る。)に限り、当該申立てを却下することができる。
仲裁合意が、当事者が合意により仲裁合意に適用すべきものとして指定した法令(当該指定がないときは、仲裁地が属する国の法令)によれば、当事者の行為能力の制限以外の事由により、その効力を有しないこと。
当事者が、仲裁人の選任手続 又は仲裁手続(暫定保全措置命令に関する部分に限る。次号 及び第六号において同じ。)において、仲裁地が属する国の法令の規定(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)により必要とされる通知を受けなかったこと。
仲裁廷の構成 又は仲裁手続が、仲裁地が属する国の法令の規定(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)に違反するものであったこと。
暫定保全措置命令が、仲裁廷 又は第三項に規定する裁判機関により、取り消され、変更され、又はその効力を停止されたこと。
前項第五号に掲げる事由がある場合において、当該暫定保全措置命令から同号に規定する事項に関する部分を区分することができるときは、当該部分 及び当該暫定保全措置命令のその他の部分をそれぞれ独立した暫定保全措置命令とみなして、同項の規定を適用する。
執行等認可決定は、確定しなければその効力を生じない。
第四十四条第四項 及び第七項の規定は、第一項の申立てについての決定について準用する。
暫定保全措置命令(第二十四条第一項第三号に掲げる措置を講ずることを命ずるものに限る。)は、前条の規定による執行等認可決定がある場合に限り、当該暫定保全措置命令に基づく民事執行をすることができる。
裁判所は、暫定保全措置命令(第二十四条第一項第一号、第二号、第四号 又は第五号に掲げる措置を講ずることを命ずるものに限る。以下この条において同じ。)について確定した執行等認可決定がある場合において、当該暫定保全措置命令を受けた者(以下この条において「被申立人」という。)がこれに違反し、又は違反するおそれがあると認めるときは、当該暫定保全措置命令の申立てをした者(第六項において「申立人」という。)の申立てにより、当該暫定保全措置命令の違反によって害されることとなる利益の内容 及び性質 並びにこれが害される態様 及び程度を勘案して相当と認める一定の額の金銭の支払(被申立人が暫定保全措置命令に違反するおそれがあると認める場合にあっては、被申立人が当該暫定保全措置命令に違反したことを条件とする金銭の支払)を命ずることができる。
裁判所は、前項の規定にかかわらず、同項の規定による金銭の支払命令(以下この条において「違反金支払命令」という。)を、執行等認可決定と同時にすることができる。この場合においては、違反金支払命令は、執行等認可決定が確定するまでは、確定しないものとする。
第一項の申立てに係る事件は、第五条第一項 及び第二項の規定にかかわらず、執行等認可決定をした裁判所 及び第四十七条第一項の申立て(同項第二号に係るものに限る。次項において同じ。)に係る事件が係属する裁判所の管轄に専属する。
裁判所は、第二項前段の規定に基づき、違反金支払命令を執行等認可決定と同時にした場合において、執行等認可決定を取り消す裁判が確定したとき 又は第四十七条第一項の申立てが取り下げられたときは、職権で、違反金支払命令を取り消さなければならない。
違反金支払命令が発せられた後に、仲裁廷 又は第四十七条第三項に規定する裁判機関により、暫定保全措置命令が取り消され、変更され、又はその効力を停止されたときは、違反金支払命令を発した裁判所は、被申立人の申立てにより、違反金支払命令を取り消すことができる。
第四十七条第三項の規定は第一項の申立てについて、第四十四条第四項 及び第七項の規定は第一項 及び前項の申立てについての決定について、それぞれ準用する。
第九章 雑則
仲裁人は、当事者が合意により定めるところにより、報酬を受けることができる。
前項の合意がないときは、仲裁廷が、仲裁人の報酬を決定する。
この場合において、当該報酬は、相当な額でなければならない。
仲裁廷は、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁手続の費用の概算額として仲裁廷の定める金額について、相当の期間を定めて、当事者に予納を命ずることができる。
仲裁廷は、前項の規定により予納を命じた場合において、その予納がないときは、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁手続を中止し、又は終了することができる。
当事者が仲裁手続に関して支出した費用の当事者間における分担は、当事者が合意により定めるところによる。
前項の合意がないときは、当事者が仲裁手続に関して支出した費用は、各自が負担する。
仲裁廷は、当事者間に合意があるときは、当該合意により定めるところにより、仲裁判断 又は独立の決定において、当事者が仲裁手続に関して支出した費用の当事者間における分担 及びこれに基づき一方の当事者が他方の当事者に対して償還すべき額を定めることができる。
独立の決定において前項に規定する事項を定めた場合においては、当該決定は、仲裁判断としての効力を有する。
第三十九条の規定は、前項の決定について準用する。
第十章 罰則
仲裁人が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求 若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
仲裁人になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求 若しくは約束をしたときは、仲裁人となった場合において、五年以下の懲役に処する。
仲裁人が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求 若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
仲裁人が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。
仲裁人が、その職務上不正な行為をしたこと 又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求 若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求 若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
仲裁人であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと 又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求 若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
犯人 又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。
その全部 又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第五十三条から第五十五条までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み 若しくは約束をした者は、三年以下の懲役 又は二百五十万円以下の罰金に処する。
第五十三条から第五十六条までの規定は、日本国外において第五十三条から第五十五条までの罪を犯した者にも適用する。
前条の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条の例に従う。