植物防疫法

# 昭和二十五年法律第百五十一号 #
略称 : 植防法 

第五章 指定有害動植物の防除

分類 法律
カテゴリ   農業
@ 施行日 : 令和五年四月一日 ( 2023年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第三十六号による改正
最終編集日 : 2024年 06月06日 20時23分


1項

この章 及び次章で「指定有害動植物」とは、有害動物 又は有害植物であつて、国内における分布が局地的でなく、又は局地的でなくなるおそれがあり、かつ、急激にまん延して農作物に重大な損害を与える傾向があるため、その防除につき特別の対策を要するものとして、農林水産大臣が指定するものをいう。

2項

この章で「総合防除」とは、有害動物 又は有害植物の防除のうち、その発生 及び増加の抑制 並びにこれが発生した場合における駆除 及びまん延の防止を適時で経済的なものにするために必要な措置を総合的に講じて行うものをいう。

1項

農林水産大臣は、指定有害動植物の総合防除を推進するための基本的な指針(以下「総合防除基本指針」という。)を定めるものとする。

2項
総合防除基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 号
指定有害動植物の総合防除の推進の意義 及び基本的な方向
二 号
指定有害動植物の種類ごとの総合防除の内容に関する基本的な事項
三 号
指定有害動植物の種類ごとの発生の予防 及び当該指定有害動植物が発生した場合における駆除 又はまん延の防止の方法に関し農業者が遵守すべき事項に関する基本的な事項
四 号

第二十三条第一項に規定する発生予察事業の対象とする指定有害動植物 その他当該発生予察事業に関する事項

五 号

第二十四条第一項に規定する異常発生時の基準に関する事項

六 号

第二十四条第一項に規定する異常発生時防除の内容に関する基本的な事項

七 号
その他必要な事項
3項

農林水産大臣は、最新の科学的知見 並びに指定有害動植物の我が国における発生の状況 及び動向を踏まえ、少なくとも五年ごとに総合防除基本指針に再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。

4項
農林水産大臣は、総合防除基本指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、都道府県知事 及び有害動物 又は有害植物の性質に関し専門の学識経験を有する者の意見を聴かなければならない。
5項

農林水産大臣は、総合防除基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、都道府県知事に通知しなければならない。

1項

都道府県知事は、総合防除基本指針に即して、かつ、地域の実情に応じて、指定有害動植物の総合防除の実施に関する計画(以下「総合防除計画」という。)を定めるものとする。

2項
総合防除計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 号
指定有害動植物の総合防除の実施に関する基本的な事項
二 号
指定有害動植物の種類ごとの総合防除の内容
三 号

第二十四条第一項に規定する異常発生時防除の内容 及び実施体制に関する事項

四 号
指定有害動植物の防除に係る指導の実施体制 並びに市町村 及び農業者の組織する団体 その他の農業に関する団体との連携に関する事項
五 号
その他必要な事項
3項

都道府県知事は、指定有害動植物のまん延を防止するため必要があると認めるときは、総合防除計画に、前項各号に掲げる事項のほか、指定有害動植物の種類ごとの発生の予防 及び当該指定有害動植物が発生した場合における駆除 又はまん延の防止の方法に関し農業者が遵守すべき事項(第二十四条第一項に規定する異常発生時防除に係るものを含む。第二十四条の二 及び第二十四条の三第一項において「遵守事項」という。)を定めることができる。

4項
都道府県知事は、総合防除計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、関係市町村長 及び農業者の組織する団体 その他の農業に関する団体の意見を聴くよう努めなければならない。
5項

都道府県知事は、総合防除計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、農林水産省令で定めるところにより、農林水産大臣に報告しなければならない。

1項

農林水産大臣は、総合防除基本指針に基づき、発生予察事業(有害動物 又は有害植物の防除を適時で経済的なものにするため、有害動物 又は有害植物の繁殖、気象、農作物の生育等の状況を調査して、農作物についての有害動物 又は有害植物による損害の発生を予察し、及びそれに基づく情報を関係者に提供する事業をいう。以下同じ。)を行うものとする。

2項

都道府県は、農林水産大臣が都道府県の承諾を得て定める計画に従い、前項の規定による発生予察事業に協力しなければならない。

1項

農林水産大臣は、前条第一項の規定による発生予察事業の実施により得た資料に基づき、又はその他の事情に鑑み、指定有害動植物が異常な水準で発生したと認められる場合(以下この項において「異常発生時」という。)であつて、その急激なまん延を防止するため特に必要があると認めるときは、関係都道府県知事に、総合防除基本指針 及び当該都道府県の総合防除計画に即して、当該指定有害動植物の異常発生時の防除に関する措置(以下「異常発生時防除」という。)を行うよう指示することができる。

2項

都道府県知事は、前項の規定による指示を受けたときは、総合防除基本指針 及び当該都道府県の総合防除計画に即して、速やかに、当該指定有害動植物の異常発生時防除を行うべき区域 及び期間 その他必要な事項を定めなければならない。

3項

都道府県知事は、前項に規定する事項を定め、又はこれを変更したときは、速やかにこれを告示するとともに、その旨を農林水産大臣に報告しなければならない。

1項

都道府県知事は、第二十二条の三第三項の規定により指定有害動植物について遵守事項を定めた場合において、当該指定有害動植物の防除が適正に行われることを確保するため必要があるときは、農業者に対し、当該遵守事項に即した防除を行うために必要な指導 及び助言を行うものとする。

1項

都道府県知事は、前条の規定による指導 又は助言をした場合において、なお遵守事項に即した防除が行われないため、指定有害動植物がまん延することにより農作物に重大な損害を与えるおそれがあると認める場合(異常発生時防除に係る遵守事項に即した防除が行われない場合にあつては、指定有害動植物の急激なまん延を防止するために必要があると認める場合)には、改善すべき事項を記載した文書の提示 その他の農林水産省令で定める方法により、当該農業者に対し、期限を定めて、遵守事項に即した防除を行うべきことを勧告することができる。

2項

都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に従わない場合において、特に必要があると認めるときは、改善すべき事項を記載した文書の提示 その他の農林水産省令で定める方法により、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

1項

都道府県知事は、前二条の規定の施行に必要な限度において、その職員に、農作物の栽培地に立ち入り、必要な調査をさせ、又は関係者に質問させることができる。


この場合において、その職員は、あらかじめ、当該栽培地の占有者に通知しなければならない。

2項

第十条の十八第二項の規定は、前項の規定により農作物の栽培地に立ち入ろうとする職員について準用する。

1項

国は、地方公共団体、農業者 又はその組織する団体であつて、第二十四条第三項の規定による告示で定められた異常発生時防除を行うべき区域 及び期間において、総合防除計画に基づき防除を行つたものに対し、予算の範囲内において、防除に必要な薬剤(薬剤として用いることができる物を含む。以下同じ。)及び噴霧機、散粉機、煙霧機 その他防除に必要な器具(以下「防除用器具」という。)の購入に要した費用の二分の一以内の補助金を交付することができる。

2項

前項の補助金の交付を受けようとする者は、農林水産大臣に対し、補助金交付申請書を農林水産省令で定める書類と共に提出しなければならない。

3項

農林水産大臣は、前項の提出書類を審査し、適当と認めるときは、補助金の交付を決定するものとする。

1項

国は、指定有害動植物の防除のため特に必要があるときは、地方公共団体、農業者 又はその組織する団体であつて、第二十四条第三項の規定による告示で定められた異常発生時防除を行うべき区域 及び期間において、総合防除計画に基づき防除を行おうとするものに対し、防除に必要な薬剤を譲与し、若しくは時価より低い対価で譲渡し、又は防除用器具を無償で貸し付けることができる。

2項

前項の規定による譲与、譲渡 及び貸付に関し必要な事項は、農林水産大臣が定める。

3項

農林水産大臣は、前項の場合には、財務大臣と協議しなければならない。

4項

農林水産大臣は、第一項の規定による譲与、譲渡 及び貸付の目的に供するため、常に、これに必要な薬剤 及び防除用器具の整備に努めなければならない。

1項

何人も、自己 又は他人のために財産上の不当の利益を図る目的をもつて、農作物についての指定有害動植物のまん延による広範囲の損害の発生に関し、風説を流布してはならない。