この法律は、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和 及び安全に重要な影響を与える事態(以下「重要影響事態」という。)に際し、合衆国軍隊等に対する後方支援活動等を行うことにより、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力 及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という。)の効果的な運用に寄与することを中核とする重要影響事態に対処する外国との連携を強化し、我が国の平和 及び安全の確保に資することを目的とする。
重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律
政府は、重要影響事態に際して、適切かつ迅速に、後方支援活動、捜索救助活動、重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律(平成十二年法律第百四十五号)第二条に規定する船舶検査活動(重要影響事態に際して実施するものに限る。以下「船舶検査活動」という。)その他の重要影響事態に対応するため必要な措置(以下「対応措置」という。)を実施し、我が国の平和 及び安全の確保に努めるものとする。
対応措置の実施は、武力による威嚇 又は武力の行使に当たるものであってはならない。
後方支援活動 及び捜索救助活動は、現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われている現場では実施しないものとする。
ただし、第七条第六項の規定により行われる捜索救助活動については、この限りでない。
外国の領域における対応措置については、当該対応措置が行われることについて当該外国(国際連合の総会 又は安全保障理事会の決議に従って当該外国において施政を行う機関がある場合にあっては、当該機関)の同意がある場合に限り実施するものとする。
内閣総理大臣は、対応措置の実施に当たり、第四条第一項に規定する基本計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。
関係行政機関の長は、前条の目的を達成するため、対応措置の実施に関し、相互に協力するものとする。
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
合衆国軍隊等
重要影響事態に対処し、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行うアメリカ合衆国の軍隊 及びその他の国際連合憲章の目的の達成に寄与する活動を行う外国の軍隊 その他これに類する組織をいう。
後方支援活動
合衆国軍隊等に対する物品 及び役務の提供、便宜の供与 その他の支援措置であって、我が国が実施するものをいう。
捜索救助活動
重要影響事態において行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者について、その捜索 又は救助を行う活動(救助した者の輸送を含む。)であって、我が国が実施するものをいう。
関係行政機関
次に掲げる機関で政令で定めるものをいう。
内閣府 並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項 及び第二項に規定する機関 、デジタル庁 並びに国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関
内閣府設置法第四十条 及び第五十六条 並びに国家行政組織法第八条の三に規定する特別の機関
後方支援活動として行う自衛隊に属する物品の提供 及び自衛隊による役務の提供(次項後段に規定するものを除く。)は、別表第一に掲げるものとする。
捜索救助活動は、自衛隊の部隊等(自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八条に規定する部隊等をいう。以下同じ。)が実施するものとする。
この場合において、捜索救助活動を行う自衛隊の部隊等において、その実施に伴い、当該活動に相当する活動を行う合衆国軍隊等の部隊に対して後方支援活動として行う自衛隊に属する物品の提供 及び自衛隊による役務の提供は、別表第二に掲げるものとする。
内閣総理大臣は、重要影響事態に際して次に掲げる措置のいずれかを実施することが必要であると認めるときは、当該措置を実施すること 及び対応措置に関する基本計画(以下「基本計画」という。)の案につき閣議の決定を求めなければならない。
前条第二項の後方支援活動
前号に掲げるもののほか、関係行政機関が後方支援活動として実施する措置であって特に内閣が関与することにより総合的かつ効果的に実施する必要があるもの
基本計画に定める事項は、次のとおりとする。
重要影響事態に関する次に掲げる事項
事態の経緯 並びに我が国の平和 及び安全に与える影響
我が国が対応措置を実施することが必要であると認められる理由
前号に掲げるもののほか、 対応措置の実施に関する基本的な方針
前項第一号 又は第二号に掲げる後方支援活動を実施する場合における次に掲げる事項
当該後方支援活動に係る基本的事項
当該後方支援活動の種類 及び内容
当該後方支援活動を実施する区域の範囲 及び当該区域の指定に関する事項
当該後方支援活動を自衛隊が外国の領域で実施する場合には、当該後方支援活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の規模 及び構成 並びに装備 並びに派遣期間
その他当該後方支援活動の実施に関する重要事項
捜索救助活動を実施する場合における次に掲げる事項
当該捜索救助活動に係る基本的事項
当該捜索救助活動を実施する区域の範囲 及び当該区域の指定に関する事項
当該捜索救助活動の実施に伴う前条第三項後段の後方支援活動の実施に関する重要事項(当該後方支援活動を実施する区域の範囲 及び当該区域の指定に関する事項を含む。)
当該捜索救助活動 又は その実施に伴う前条第三項後段の後方支援活動を自衛隊が外国の領域で実施する場合には、これらの活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の規模 及び構成 並びに装備 並びに派遣期間
その他 当該捜索救助活動の実施に関する重要事項
船舶検査活動を実施する場合における重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律第四条第一項に規定する事項
前三号に掲げるもののほか、自衛隊が実施する対応措置のうち重要なものの種類 及び内容 並びにその実施に関する重要事項
第三号から 前号までに掲げるもののほか、関係行政機関が実施する対応措置のうち特に内閣が関与することにより総合的かつ効果的に実施する必要があるものの実施に関する重要事項
対応措置の実施について地方公共団体 その他の国以外の者に対して協力を求め 又は協力を依頼する場合におけるその協力の種類 及び内容 並びにその協力に関する重要事項
対応措置の実施のための関係行政機関の連絡調整に関する事項
前条第二項の後方支援活動 又は捜索救助活動 若しくは その実施に伴う同条第三項後段の後方支援活動を外国の領域で実施する場合には、当該外国(第二条第四項に規定する機関がある場合にあっては、当該機関)と協議して、実施する区域の範囲を定めるものとする。
第一項 及び前項の規定は、基本計画の変更について準用する。
基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施する後方支援活動、捜索救助活動 又は船舶検査活動については、内閣総理大臣は、これらの対応措置の実施前に、これらの対応措置を実施することにつき国会の承認を得なければならない。
ただし、緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで当該後方支援活動、捜索救助活動 又は船舶検査活動を実施することができる。
前項ただし書の規定により国会の承認を得ないで後方支援活動、捜索救助活動 又は船舶検査活動を実施した場合には、内閣総理大臣は、速やかに、これらの対応措置の実施につき国会の承認を求めなければならない。
政府は、前項の場合において不承認の議決があったときは、速やかに、当該後方支援活動、捜索救助活動 又は船舶検査活動を終了させなければならない。
防衛大臣 又は その委任を受けた者は、基本計画に従い、第三条第二項の後方支援活動としての自衛隊に属する物品の提供を実施するものとする。
防衛大臣は、基本計画に従い、第三条第二項の後方支援活動としての自衛隊による役務の提供について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、防衛省の機関 又は自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。
防衛大臣は、前項の実施要項において、実施される必要のある役務の提供の具体的内容を考慮し、防衛省の機関 又は自衛隊の部隊等がこれを円滑かつ安全に実施することができるように当該後方支援活動を実施する区域(以下この条において「実施区域」という。)を指定するものとする。
防衛大臣は、実施区域の全部 又は一部において、自衛隊の部隊等が第三条第二項の後方支援活動を円滑かつ安全に実施することが困難であると認める場合 又は外国の領域で実施する当該後方支援活動についての第二条第四項の同意が存在しなくなったと認める場合には、速やかに、その指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。
第三条第二項の後方支援活動のうち我が国の領域外におけるものの実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長 又はその指定する者は、当該後方支援活動を実施している場所 又はその近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合 又は付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合には、当該後方支援活動の実施を一時休止するなどして当該戦闘行為による危険を回避しつつ、前項の規定による措置を待つものとする。
第二項の規定は、同項の実施要項の変更(第四項の規定により実施区域を縮小する変更を除く。)について準用する。
防衛大臣は、基本計画に従い、 捜索救助活動について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。
防衛大臣は、前項の実施要項において、実施される必要のある捜索救助活動の具体的内容を考慮し、自衛隊の部隊等がこれを円滑かつ安全に実施することができるように当該捜索救助活動を実施する区域(以下この条において「実施区域」という。)を指定するものとする。
捜索救助活動を実施する場合において、戦闘参加者以外の遭難者が在るときは、これを救助するものとする。
前条第四項の規定は、実施区域の指定の変更 及び活動の中断について準用する。
前条第五項の規定は、我が国の領域外における捜索救助活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長 又はその指定する者について準用する。
この場合において、
同項中
「前項」とあるのは、
「次条第四項において準用する前項」と
読み替えるものとする。
前項において準用する前条第五項の規定にかかわらず、既に遭難者が発見され、自衛隊の部隊等がその救助を開始しているときは、当該部隊等の安全が確保される限り、当該遭難者に係る捜索救助活動を継続することができる。
第一項の規定は、同項の実施要項の変更(第四項において準用する前条第四項の規定により実施区域を縮小する変更を除く。)について準用する。
前条の規定は、捜索救助活動の実施に伴う第三条第三項後段の後方支援活動について準用する。
前二条に定めるもののほか、防衛大臣 及びその他の関係行政機関の長は、法令 及び基本計画に従い、対応措置を実施するものとする。
関係行政機関の長は、法令 及び基本計画に従い、地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる。
前項に定めるもののほか、 関係行政機関の長は、法令 及び基本計画に従い、 国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる。
政府は、前二項の規定により協力を求められ 又は協力を依頼された国以外の者が、その協力により損失を受けた場合には、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずるものとする。
内閣総理大臣は、次の各号に掲げる事項を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。
基本計画の決定 又は変更があったときは、その内容
基本計画に定める対応措置が終了したときは、その結果
第六条第二項(第七条第八項において準用する場合を含む。第五項 及び第六項において同じ。)の規定により後方支援活動としての自衛隊の役務の提供の実施を命ぜられ、又は第七条第一項の規定により捜索救助活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、自己 又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員(自衛隊法第二条第五項に規定する隊員をいう。第六項において同じ。)若しくは その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命 又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器(自衛隊が外国の領域で当該後方支援活動 又は当該捜索救助活動を実施している場合については、第四条第二項第三号ニ 又は第四号ニの規定により基本計画に定める装備に該当するものに限る。以下この条において同じ。)を使用することができる。
前項の規定による武器の使用は、当該現場に上官が在るときは、その命令によらなければならない。
ただし、生命 又は身体に対する侵害 又は危難が切迫し、その命令を受けるいとまがないときは、この限りでない。
第一項の場合において、当該現場に在る上官は、統制を欠いた武器の使用によりかえって生命 若しくは身体に対する危険 又は事態の混乱を招くこととなることを未然に防止し、当該武器の使用が同項 及び次項の規定に従いその目的の範囲内において適正に行われることを確保する見地から必要な命令をするものとする。
第一項の規定による武器の使用に際しては、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条 又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。
第六条第二項の規定により後方支援活動としての自衛隊の役務の提供の実施を命ぜられ、又は第七条第一項の規定により捜索救助活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、外国の領域に設けられた当該部隊等の宿営する宿営地(宿営のために使用する区域であって、囲障が設置されることにより他と区別されるものをいう。以下 この項において同じ。)であって合衆国軍隊等の要員が共に宿営するものに対する攻撃があった場合において、当該宿営地以外にその近傍に自衛隊の部隊等の安全を確保することができる場所がないときは、当該宿営地に所在する者の生命 又は身体を防護するための措置をとる当該要員と共同して、第一項の規定による武器の使用をすることができる。
この場合において、同項から 第三項まで 及び次項の規定の適用については、
第一項中
「現場に所在する他の自衛隊員(自衛隊法第二条第五項に規定する隊員をいう。第六項において同じ。)若しくは その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」とあるのは
「その宿営する宿営地(第五項に規定する宿営地をいう。次項 及び第三項において同じ。)に所在する者」と、
「その事態」とあるのは
「第五項に規定する合衆国軍隊等の要員による措置の状況をも踏まえ、その事態」と、
第二項 及び第三項中
「現場」とあるのは
「宿営地」と、
次項中
「自衛隊員」とあるのは
「自衛隊員(同法第二条第五項に規定する隊員をいう。)」と
する。
自衛隊法第九十六条第三項の規定は、第六条第二項の規定により後方支援活動としての自衛隊の役務の提供(我が国の領域外におけるものに限る。)の実施を命ぜられ、又は第七条第一項の規定により捜索救助活動(我が国の領域外におけるものに限る。)の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官については、自衛隊員以外の者の犯した犯罪に関しては適用しない。
この法律に特別の定めがあるもののほか、この法律の実施のための手続 その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。