この法律は、中小企業者の経営の安定に悪影響を及ぼすおそれのある大企業者の事業の開始 又は拡大に関し、一般消費者等の利益の保護に配慮しつつ、その事業活動を調整することにより、中小企業の事業活動の機会を適正に確保し、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律
この法律において「中小企業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者(次項第二号に掲げる者を除く。)をいう。
資本金の額 又は出資の総額が三億円以下の会社 並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社 及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業 その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
資本金の額 又は出資の総額が一億円以下の会社 並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社 及び個人であつて、卸売業に属する事業を主たる事業として営むもの
資本金の額 又は出資の総額が五千万円以下の会社 並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社 及び個人であつて、サービス業に属する事業を主たる事業として営むもの
資本金の額 又は出資の総額が五千万円以下の会社 並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社 及び個人であつて、小売業に属する事業を主たる事業として営むもの
この法律において「大企業者」とは、次の各号の一に該当する者をいう。
前項各号のいずれかに該当する者以外の者(会社 及び個人に限る。)であつて事業を営むもの
前項各号のいずれかに該当する会社であつて、前号に掲げる者がその会社に対し、その総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除き、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株主を含む。)又は総社員の議決権の二分の一以上に相当する議決権を単独で有する関係 その他その事業活動を実質的に支配することが可能なものとして主務省令で定める関係を持つているもの
大企業者は、事業の開始 又は拡大に際しては、当該事業と同種の事業を営んでいる中小企業者の利益を不当に侵害することのないように配慮しなければならない。
大企業者の事業の開始 又は拡大に際し、当該事業と同種の事業を営んでいる中小企業者と当該大企業者との間において事業活動の調整に関する問題が生じたときは、その双方の当事者は、早期に、かつ、誠意をもつて、自主的な解決を図るように努めなければならない。
中小企業団体(特定の事業を行う者であることをその直接 又は間接の構成員(以下単に「構成員」という。)の資格とし、かつ、その構成員の大部分が中小企業者である団体であつて政令で定める要件に該当するものをいう。以下同じ。)は、大企業者が当該特定の事業と同種の事業につき当該中小企業団体の構成員たる相当数の中小企業者の経営の安定に悪影響を及ぼすおそれのある事業の開始 又は拡大の計画を有していると認めるときは、主務省令で定めるところにより、主務大臣に対し、当該計画の内容に関し、その開始 又は拡大の時期、規模 その他の主務省令で定める事項について調査するよう申し出ることができる。
前項の規定による申出であつて都道府県の区域を超えない区域をその地区とする中小企業団体がするものは、当該区域を管轄する都道府県知事を経由してしなければならない。
主務大臣は、第一項の規定による申出があつた場合において、当該申出に相当の理由があると認めるときは、当該申出に係る事項について必要な調査を行い、その結果を当該中小企業団体に通知するものとする。
中小企業団体は、大企業者が当該中小企業団体の構成員の資格に係る特定の事業と同種の事業につき事業の開始 又は拡大をすることが当該中小企業団体の構成員たる相当数の中小企業者が現に供給している物品 又は役務に対する需要の減少をもたらすことによりこれらの中小企業者の経営の安定に著しい悪影響を及ぼす事態が生ずるおそれがあると認めるときは、主務省令で定めるところにより、主務大臣に対し、次条第一項の規定による勧告をするよう申し出ることができる。
前項の規定による申出であつて都道府県の区域を超えない区域をその地区とする中小企業団体がするものは、当該区域を管轄する都道府県知事を経由してしなければならない。
都道府県知事は、前項の規定により当該都道府県知事を経由してされた申出について、その申出に係る大企業者の当該事業の開始 又は拡大の計画の実施がその申出をした中小企業団体の構成員たる中小企業者の経営の安定に及ぼす影響等に関し、主務大臣に対し、意見を申し出ることができる。
この場合において、都道府県知事は、当該中小企業団体の構成員たる中小企業者の経営の安定に及ぼす影響等に関し、都道府県中小企業調停審議会の意見を聴くことができる。
主務大臣は、第一項の規定による申出があつたときは、その旨を当該申出に係る大企業者に通知するものとする。
主務大臣は、前条第一項の規定による申出があつた場合において、当該申出をした中小企業団体 及び当該申出に係る大企業者の間において同項に規定する事態の発生を回避することが困難であり、かつ、当該事態の発生を回避することにより中小企業の事業活動の機会を適正に確保する必要があると認められるときは、中小企業政策審議会の意見を聴いて、当該大企業者に対し、当該事業の開始 若しくは拡大の時期を繰り下げ、又は当該事業の規模を縮小すべきことを勧告することができる。
前項の規定による勧告の内容は、前条第一項に規定する事態の発生を回避するために必要な限度を超えないものであり、かつ、一般消費者 及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないものでなければならない。
主務大臣は、第一項の規定による勧告をした場合において、大企業者がその勧告に従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
主務大臣は、第一項の規定による勧告をするとき 又はしないこととするときは、あらかじめ、経済産業大臣の意見を聴かなければならない。
主務大臣は、第一項の規定による勧告をしたときはその旨 及びその勧告の内容を、同項の規定による勧告をしないこととしたときはその旨 及びその理由を、前条第一項の規定による申出をした中小企業団体に通知するものとする。
中小企業政策審議会は、前条第一項の規定により意見を聴かれた場合において、その意見を定めようとするときは、第六条第一項の規定による申出をした中小企業団体 及び当該申出に係る大企業者 並びに主務省令で定めるところにより選定した一般消費者、関連事業者 その他の利害関係者の意見を聴かなければならない。
主務大臣は、第六条第一項の規定による申出に係る大企業者が当該申出に係る事業の開始 又は拡大についての計画を実施することにより第七条第一項に規定する措置を執らせることが著しく困難となる事態が生ずると認めるときは、中小企業政策審議会の意見を聴いて、当該大企業者に対し、同項の規定による勧告が行われるまでの間の応急の措置として六月以内の期間を定めて、当該事態の発生を回避するために必要な限度を超えない範囲内において、当該計画の実施を一時停止すべきことを勧告することができる。
この場合において、当該期間内に同項の規定による勧告をすることができない特別の事情があると認められるときは、中小企業政策審議会の意見を聴いて、六月を超えない範囲内において当該期間を延長することを妨げない。
第七条第三項の規定は、前項の規定による勧告に準用する。
主務大臣は、第七条第一項の規定による勧告をするときは、中小企業政策審議会の意見を聴いて、当該勧告に係る第六条第一項の規定による申出をした中小企業団体に対し、当該勧告に係る事業と同種の事業に係る中小企業の競争力の強化 及び一般消費者の利益の増進のために当該中小企業団体の構成員たる中小企業者が講ずべき設備の近代化、技術の向上、事業の共同化 その他のその事業活動の改善のための方策を示して必要な指導を行うものとする。
主務大臣は、第七条第一項の規定による勧告を受けた大企業者が、同条第三項の規定によりその勧告に従わなかつた旨を公表された後において、なお正当な理由がなくてその勧告に係る措置を執らなかつた場合において、第六条第一項に規定する事態が生ずることにより同項の規定による申出をした中小企業団体の構成員たる中小企業者の相当部分の事業の継続が著しく困難となるおそれがあると認められるときは、中小企業政策審議会の意見を聴いて、当該大企業者に対し、当該勧告に係る措置を執るべきことを命ずることができる。
第七条第四項の規定は、前項の規定による命令に準用する。
第八条の規定は、第一項の規定により中小企業政策審議会が意見を聴かれた場合に準用する。
主務大臣は、第七条、第九条 及び第十一条の規定の施行に必要な限度において、第六条第一項の規定による申出に係る大企業者に対し、その業務に関し報告させることができる。
この法律の規定は、小売業(飲食店業を除く。)又はその業種について第六条第一項に規定する事態の発生が回避されることとなる措置が他の法令において講じられている業種で政令で定めるものに属する事業につき、大企業者が事業の開始 又は拡大をする場合には、適用しない。
この法律における主務大臣は、大企業者が開始し 又は拡大しようとする事業を所管する大臣とする。
この法律における主務省令は、主務大臣の発する命令とする。
第五条第二項 及び第六条第二項の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。
第十一条第一項の規定による命令に違反した者は、三百万円以下の罰金
に処する。
第十三条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、十万円以下の罰金
に処する。
法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対して各本条の刑を科する。