引渡犯罪人の引渡しは、引渡犯罪が重大犯罪である場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを行うことができる。
国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律
第一款 引渡犯罪人の引渡し
引渡犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき。
ただし、当該事件について、国際刑事裁判所において、規程第十七条1の規定により事件を受理する旨の決定をし、又は公判手続を開始しているときは、この限りでない。
引渡犯罪に係る事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。
ただし、当該事件について、国際刑事裁判所において、規程第十七条1の規定により事件を受理する旨の決定をし、又は有罪の判決の言渡しをしているときは、この限りでない。
引渡犯罪について国際刑事裁判所において有罪の判決の言渡しがある場合を除き、引渡犯罪人が引渡犯罪を行っていないことが明らかに認められるとき。
引渡犯罪人の引渡しは、引渡犯罪が規程第七十条1に規定する犯罪である場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを行うことができる。
引渡犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、当該行為が日本国の法令により死刑 又は無期 若しくは長期三年以上の懲役 若しくは禁錮に処すべき罪に当たるものでないとき。
引渡犯罪について国際刑事裁判所において有罪の判決の言渡しがある場合を除き、引渡犯罪人がその引渡犯罪に係る行為を行ったことを疑うに足りる相当な理由がないとき。
引渡犯罪人の犯した引渡犯罪以外の罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又は その事件について引渡犯罪人が日本国の裁判所において刑に処せられ、その執行を終わらず、若しくは執行を受けないこととなっていないとき。
法務大臣は、外務大臣から第四条の規定により引渡犯罪人の引渡しに係る協力の請求に関する書面の送付を受けたときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、東京高等検察庁検事長に対し、関係書類を送付して、引渡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するかどうかについて東京高等裁判所に審査の請求をすべき旨を命ずるものとする。
明らかに前条第一項各号 又は第二項各号のいずれかに該当すると認めるとき。
当該協力の請求が逃亡犯罪人引渡法(昭和二十八年法律第六十八号)第三条に規定する逃亡犯罪人の引渡しの請求 又は同法第二十三条第一項に規定する犯罪人を仮に拘禁することの請求と競合し、かつ、規程の定めるところによりこれらの請求を優先させることができる場合において、当該逃亡犯罪人の引渡し 又は犯罪人を仮に拘禁することが相当であると認めるとき。
当該協力の請求に応ずることにより、引渡犯罪以外の罪に係る事件で日本国の検察官、検察事務官 若しくは司法警察職員によって捜査されているもの 又は引渡犯罪以外の罪に係る事件(引渡犯罪人以外の者が犯したものに限る。)で日本国の裁判所に係属しているものについて、その捜査 又は裁判を妨げるおそれがあり、直ちに当該請求に応ずることが相当でないと認めるとき。
法務大臣は、前項の規定による命令 その他引渡犯罪人の引渡しに関する措置をとるため必要があると認めるときは、引渡犯罪人の所在 その他必要な事項について調査を行うことができる。
東京高等検察庁検事長は、前条第一項の規定による命令を受けたときは、引渡犯罪人が仮拘禁許可状により拘禁され、又は仮拘禁許可状による拘禁を停止されている場合を除き、東京高等検察庁の検察官をして、東京高等裁判所の裁判官があらかじめ発する拘禁許可状により、引渡犯罪人を拘禁させなければならない。
逃亡犯罪人引渡法第五条第二項 及び第三項、第六条 並びに第七条の規定は、前項の拘禁許可状による引渡犯罪人の拘禁について準用する。
この場合において、
同法第五条第三項中
「請求国の名称、有効期間」とあるのは、
「有効期間」と
読み替えるものとする。
東京高等検察庁の検察官は、第二十条第一項の規定による命令があったときは、引渡犯罪人の現在地が分からない場合を除き、速やかに、東京高等裁判所に対し、引渡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するかどうかについて審査の請求をしなければならない。
逃亡犯罪人引渡法第八条第一項後段、第二項 及び第三項の規定は、引渡犯罪人の引渡しに係る前項の審査の請求について準用する。
東京高等裁判所は、審査の結果に基づいて、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める決定をしなければならない。
前条第一項の審査の請求が不適法であるとき却下する決定
逃亡犯罪人引渡法第九条の規定は前条第一項の審査の請求に係る東京高等裁判所の審査について、同法第十条第二項 及び第三項の規定は前項の決定について、同法第十一条の規定は第二十条第一項の規定による命令の取消しについて、同法第十二条の規定は引渡犯罪人の釈放について、同法第十三条の規定は当該審査に係る裁判書の謄本について、それぞれ準用する。
この場合において、
同法第九条第三項ただし書中
「次条第一項第一号 又は第二号」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成十九年法律第三十七号)第二十三条第一項第一号 又は第三号」と、
同法第十一条第一項中
「第三条の」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第四条の」と、
「請求国」とあるのは
「国際刑事裁判所」と、
「受け、又は第三条第二号に該当するに至つた」とあるのは
「受けた」と、
同条第二項中
「第四条第一項の」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二十条第一項の」と、
「第四条第一項各号」とあるのは
「同条第一項各号」と、
「第八条第三項」とあるのは
「同法第二十二条第二項において準用する第八条第三項」と、
同法第十二条中
「第十条第一項第一号 若しくは第二号」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二十三条第一項第一号 若しくは第三号」と
読み替えるものとする。
東京高等裁判所は、前条第二項において準用する逃亡犯罪人引渡法第九条の審査において、引渡犯罪人から、引渡犯罪に係る事件が外国の裁判所に係属すること 又は当該事件について外国の裁判所において確定判決を経たことを理由として、当該引渡犯罪人の引渡しが認められない旨の申立てがされた場合には、国際刑事裁判所において当該事件につき規程第十七条1の規定により事件を受理するかどうかが決定されるまでの間、決定をもって、審査の手続を停止することができる。
東京高等検察庁検事長は、前項の申立てがあったときは、速やかに、法務大臣に対し、その旨の報告をしなければならない。
法務大臣は、前項の報告を受けたときは、外務大臣に対し、第一項の申立てがあった旨の通知をするものとする。
外務大臣は、前項の通知を受けたときは、国際刑事裁判所に対し、第一項の申立てがあった旨の通報をするとともに、引渡犯罪につき規程第十七条1の規定による事件を受理するかどうかの決定に関し、国際刑事裁判所と協議するものとする。
東京高等検察庁の検察官は、第一項の規定により審査の手続が停止された場合において、必要と認めるときは、引渡犯罪人の拘禁の停止をすることができる。
この場合において、必要と認めるときは、当該引渡犯罪人を親族 その他の者に委託し、又は当該引渡犯罪人の住居を制限するものとする。
東京高等検察庁の検察官は、前項の規定による拘禁の停止がされている場合において、国際刑事裁判所において引渡犯罪につき規程第十七条1の規定により事件を受理する旨の決定があったときは、その拘禁の停止を取り消さなければならない。
逃亡犯罪人引渡法第二十二条第三項から第六項までの規定は、前項の規定により引渡犯罪人の拘禁の停止を取り消した場合について準用する。
第一項の規定により審査の手続が停止された場合における前条第二項において準用する逃亡犯罪人引渡法第九条第一項の規定の適用については、
同項中
「二箇月」とあるのは、
「二箇月(国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二十四条第一項の規定により審査の手続が停止された期間を除く。)」と
する。
法務大臣は、第二十三条第一項第二号の決定があった場合において、第二十条第一項第二号から第五号までのいずれにも該当しないと認めるときは、東京高等検察庁検事長に対し引渡犯罪人の引渡しを命ずるとともに、引渡犯罪人にその旨を通知しなければならない。
この場合において、当該引渡犯罪人が拘禁許可状により拘禁されているときは、その引渡しの命令は、当該決定があった日から十日以内にしなければならない。
法務大臣は、前項に規定する決定があった場合において、第二十条第一項第二号 又は第三号のいずれかに該当すると認めるときは、直ちに東京高等検察庁検事長 及び引渡犯罪人にその旨を通知するとともに、東京高等検察庁検事長に対し拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の釈放を命じなければならない。
東京高等検察庁の検察官は、前項の規定による命令があったときは、直ちに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人を釈放しなければならない。
法務大臣は、第一項に規定する決定があった場合において、第二十条第一項第四号 又は第五号のいずれかに該当すると認めるときは、東京高等検察庁検事長に対し、その旨を通知するとともに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の拘禁の停止をするよう命じなければならない。
東京高等検察庁の検察官は、前項の規定による拘禁の停止の命令があったときは、直ちに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の拘禁の停止をしなければならない。
この場合においては、前条第五項後段の規定を準用する。
法務大臣は、第四項の規定による拘禁の停止の命令をした後において、第二十条第一項第四号 及び第五号のいずれにも該当しないこととなったときは、第一項の規定による引渡しの命令をしなければならない。
東京高等検察庁の検察官は、前項の引渡しの命令があったときは、第五項の規定による拘禁の停止を取り消さなければならない。
逃亡犯罪人引渡法第二十二条第三項から第六項までの規定は、前項の規定により引渡犯罪人の拘禁の停止を取り消した場合について準用する。
法務大臣は、前条第一項に規定する場合(引渡犯罪が重大犯罪である場合に限る。)において、次の各号のいずれかに該当し、かつ、直ちに引渡犯罪人の引渡しをすることが相当でないと認めるときは、同項の規定にかかわらず、その引渡しの命令を延期することができる。
引渡犯罪人の犯した引渡犯罪以外の罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき。
前号に規定する事件について、引渡犯罪人が日本国の裁判所において刑に処せられ、その執行を終わらず、又は執行を受けないこととなっていないとき。
法務大臣は、前項の規定により引渡犯罪人の引渡しの命令を延期するときは、東京高等検察庁検事長に対し、その旨を通知するとともに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の拘禁の停止をするよう命じなければならない。
東京高等検察庁の検察官は、前項の規定による命令があったときは、直ちに、拘禁許可状により拘禁されている引渡犯罪人の拘禁の停止をしなければならない。
この場合においては、第二十四条第五項後段の規定を準用する。
法務大臣は、第二項の規定による拘禁の停止の命令をした後において、第一項各号のいずれにも該当しないこととなったとき、又は当該引渡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認める事由がなくなったときは、東京高等検察庁検事長に対し、前条第一項の規定による引渡しの命令をしなければならない。
東京高等検察庁の検察官は、前項の引渡しの命令があったときは、第三項の規定による拘禁の停止を取り消さなければならない。
逃亡犯罪人引渡法第二十二条第三項から第六項までの規定は、前項の規定により引渡犯罪人の拘禁の停止を取り消した場合について準用する。
東京高等検察庁検事長は、前項の申立てがあったとき 又は東京高等検察庁の検察官が職権で拘禁の停止をしようとするときは、法務大臣に対し、その旨の報告をしなければならない。
法務大臣は、前項の報告を受けたときは、外務大臣に対し、その旨の通知をするものとする。
外務大臣は、前項の通知を受けたときは、国際刑事裁判所に対し、引渡犯罪人の拘禁の停止に関する意見を求めるものとする。
東京高等検察庁の検察官は、第一項の規定により拘禁の停止をするかどうかの判断に当たっては、前項の意見を尊重するものとする。
ただし、急速を要し、当該意見を聴くいとまがないときは、これを待たないで当該拘禁の停止をすることができる。
第二十四条第五項後段の規定は、第一項の規定により拘禁の停止をする場合について準用する。
東京高等検察庁の検察官は、必要と認めるときは、いつでも、第一項の規定による拘禁の停止を取り消すことができる。
逃亡犯罪人引渡法第二十二条第三項から第六項までの規定は、前項の規定により引渡犯罪人の拘禁の停止を取り消した場合について準用する。
次の各号のいずれかに該当するときは、第二十四条第五項、第二十五条第五項、第二十六条第三項 又は前条第一項の規定により停止されている拘禁は、その効力を失う。
引渡犯罪人に対し、第二十三条第一項第一号 又は第三号の決定の裁判書の謄本が送達されたとき。
引渡犯罪人に対し、第二十三条第二項において準用する逃亡犯罪人引渡法第十一条第二項の規定による通知があったとき。
引渡犯罪人に対し、第二十五条第二項の規定により法務大臣から第二十条第一項第二号 又は第三号のいずれかに該当する旨の通知があったとき。
第二十五条第一項の規定による命令に基づく引渡犯罪人の引渡しは、当該命令の日(拘禁の停止がされているときは、当該拘禁の停止の取消しにより引渡犯罪人が拘禁された日)から三十日以内にしなければならない。
第二十五条第一項の規定による命令があった後に第二十七条第一項の規定により拘禁の停止がされた場合における前項の規定の適用については、当該拘禁の停止がされていた期間は、同項の期間に算入しないものとする。
法務大臣は、次の各号のいずれかに該当する場合には、あらかじめ、外務大臣と協議するものとする。
第二十条第一項第一号(第十九条第一項に係る部分に限る。)に該当することを理由として、第二十条第一項の規定による命令を留保するとき。
第二十条第一項第二号 又は第三号のいずれかに該当することを理由として、引渡犯罪人の引渡しに係る協力をしないこととするとき。
第二十条第一項第四号 又は第五号のいずれかに該当することを理由として、同項の規定による命令を留保し、又は第二十五条第四項の規定による措置をとるとき。
第二十六条第一項の規定により引渡犯罪人の引渡しの命令を延期するとき。
逃亡犯罪人引渡法第十六条第一項から第三項まで、第十七条第一項、第十八条 及び第十九条の規定は、第二十五条第一項の規定による引渡しの命令に係る引渡犯罪人の引渡しについて準用する。
この場合において、
同法第十八条中
「前条第五項 又は第二十二条第六項の規定による報告」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二十五条第八項、第二十六条第六項 又は第二十七条第八項において準用する第二十二条第六項の規定による報告(同法第二十七条第八項において準用する場合にあっては、同法第二十五条第一項の規定による引渡しの命令があった後に拘禁の停止の取消しがされた場合における報告に限る。)」と、
同法第十九条中
「請求国」とあるのは
「国際刑事裁判所」と
読み替えるものとする。
前項において準用する逃亡犯罪人引渡法第十六条第一項の引渡状 及び同条第三項の受領許可状には、引渡犯罪人の氏名、引渡犯罪名、引渡しの場所、引渡しの期限 及び発付の年月日 並びに国際刑事裁判所の言い渡した拘禁刑の執行中に逃亡した引渡犯罪人の引渡しにあっては国際刑事裁判所が引渡先として指定する外国の名称を記載し、法務大臣が記名押印しなければならない。
前条第一項において準用する逃亡犯罪人引渡法第十七条第一項の規定による指揮を受けた刑事施設の長 又は その指名する刑事施設の職員は、引渡犯罪人を、引渡状に記載された引渡しの場所に護送し、国際刑事裁判所の指定する者であって受領許可状を有するものに引き渡さなければならない。
前条の規定により引渡犯罪人の引渡しを日本国内において受けた者は、速やかに、当該引渡犯罪人を国際刑事裁判所 又は第三十一条第二項に規定する引渡先として指定された外国に護送するものとする。