執行協力は、請求犯罪が重大犯罪である場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを行うことができる。
国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律
第四節 執行協力
没収刑のための保全に係る執行協力については、請求犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき。
ただし、当該事件について、国際刑事裁判所において、規程第十七条1の規定により事件を受理する旨の決定をし、又は公判手続を開始しているときは、この限りでない。
没収刑のための保全に係る執行協力については、請求犯罪に係る事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。
ただし、当該事件について、国際刑事裁判所において、規程第十七条1の規定により事件を受理する旨の決定をし、又は有罪の判決の言渡しをしているときは、この限りでない。
没収刑のための保全に係る執行協力については、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において、日本国の法令によれば当該執行協力の請求に係る財産が没収保全をすることができる財産に当たるものでないとき(当該請求に係る財産が、請求犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産である場合には、その者 又は その一般承継人に帰属することを理由として没収保全をすることができる財産に当たるものでないときを除く。)。
被害回復命令のための保全であってその内容 及び性質を考慮して日本国の法令によれば没収の保全に相当するものに係る執行協力については、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において、日本国の法令によれば当該執行協力の請求に係る財産が没収保全をすることができる財産に当たるものでないとき(当該請求に係る財産が、重大犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産であって、被害回復命令によりその者 又は その一般承継人に返還すべきものである場合には、それらの者に帰属することを理由として没収保全をすることができる財産に当たるものでないときを除く。)。
被害回復命令のための保全であってその内容 及び性質を考慮して日本国の法令によれば追徴の保全に相当するものに係る執行協力については、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において、日本国の法令によれば当該執行協力の請求に係る財産が追徴保全をすることができる財産に当たるものでないとき。
執行協力は、請求犯罪が規程第七十条1に規定する犯罪である場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを行うことができる。
請求犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、日本国の法令によれば これについて刑罰を科すことができないと認められるとき。
没収刑のための保全に係る執行協力については、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において、日本国の法令によれば当該執行協力の請求に係る財産が没収保全をすることができる財産に当たるものでないとき(当該請求に係る財産が、請求犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産である場合には、その者 又は その一般承継人に帰属することを理由として没収保全をすることができる財産に当たるものでないときを除く。)。
法務大臣は、外務大臣から第四条の規定により執行協力の請求に関する書面の送付を受けたときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、相当と認める地方検察庁の検事正に対し、関係書類を送付して、執行協力に必要な措置をとるよう命ずるものとする。
前条第一項各号 又は第二項各号のいずれかに該当すると認めるとき。
執行協力の請求が組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)第五十九条第一項の規定による共助、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)第二十一条の規定による共助 又は捜査共助の要請と競合し、かつ、規程の定めるところによりその要請を優先させることができる場合において、当該要請に係る措置をとることが相当であると認めるとき。
執行協力の請求に応ずることにより、請求犯罪以外の罪に係る事件で日本国の検察官、検察事務官 若しくは司法警察職員によって捜査され 又は日本国の裁判所に係属しているものについて、その捜査 又は裁判を妨げるおそれがあり、直ちに当該請求に応ずることが相当でないと認めるとき。
法務大臣は、次の各号のいずれかに該当する場合には、あらかじめ、外務大臣と協議するものとする。
前項第二号 又は第三号のいずれかに該当することを理由として、執行協力に係る協力をしないこととするとき。
前項第一号(前条第一項第一号 及び第二号に係る部分に限る。)、第四号 又は第五号のいずれかに該当することを理由として、前項の規定による命令を留保するとき。
第六条第四項の規定は、第一項の規定による命令 その他執行協力に関する措置をとる場合について準用する。
前条第一項の規定による命令を受けた検事正は、その庁の検察官に執行協力に必要な措置をとらせ、執行協力の実施に係る財産を保管しなければならない。
前項の検察官は、執行協力の請求が罰金刑、没収刑 又は被害回復命令の確定裁判の執行に係るものであるときは、裁判所に対し、執行協力をすることができる場合に該当するかどうかについて審査の請求をしなければならない。
この場合において、当該請求が被害回復命令の確定裁判の執行に係るものであるときは、当該被害回復命令の内容 及び性質を考慮し、これが日本国の法令によれば没収 又は追徴の確定裁判のいずれに相当するかについて、意見を付さなければならない。
裁判所は、審査の結果に基づいて、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める決定をしなければならない。
前条第二項の審査の請求が不適法であるとき却下する決定
裁判所は、被害回復命令の確定裁判に係る執行協力の請求について、前項第二号に定める決定をするときは、当該被害回復命令の内容 及び性質に応じ、当該確定裁判が日本国の法令によれば没収 又は追徴の確定裁判のいずれに相当するかを示さなければならない。
裁判所は、没収刑の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、第一項第二号に定める決定をするときは、滅失、毀損 その他の事由により当該確定裁判を執行することができない場合にこれに代えて当該確定裁判を受けた者から追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。
被害回復命令の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、同号に定める決定をする場合において、前項の規定により当該確定裁判が没収の確定裁判に相当する旨を示すべきときも、同様とする。
裁判所は、没収刑の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、第一項第二号に定める決定をする場合において、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において日本国の法令によれば 当該請求に係る財産が没収の裁判をすることができる財産に当たるものでないと認めるとき(当該請求に係る財産が、請求犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産である場合には、その者 又は その一般承継人に帰属することを理由として没収の裁判をすることができる財産に当たるものでないと認めるときを除く。)は、その旨 及び当該確定裁判の執行に代えて当該確定裁判を受けた者から追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。
裁判所は、被害回復命令の確定裁判に係る執行協力の請求について、第一項第二号に定める決定をする場合(第二項の規定により当該確定裁判が没収の確定裁判に相当する旨を示すべきときに限る。)において、請求犯罪につき日本国において刑罰を科すとした場合において日本国の法令によれば 当該請求に係る財産が没収の裁判をすることができる財産に当たるものでないと認めるとき(当該請求に係る財産が、重大犯罪に係る行為によりその被害を受けた者から得た財産であって、被害回復命令によりその者 又は その一般承継人に返還すべきものである場合には、それらの者に帰属することを理由として没収の裁判をすることができる財産に当たるものでないと認めるときを除く。)は、その旨 及び当該確定裁判の執行に代えて当該確定裁判を受けた者から追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。
裁判所は、没収刑の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、第一項第二号に定める決定をする場合において、当該確定裁判に係る目的とされている財産を有し又は その財産の上に地上権、抵当権 その他の権利を有すると思料するに足りる相当な理由のある者が、自己の責めに帰することのできない理由により、当該確定裁判に係る手続において自己の権利を主張することができなかったと認めるときは、その旨 及び当該確定裁判の執行に代えて当該確定裁判を受けた者から追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。
被害回復命令の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、同号に定める決定をする場合(第二項の規定により当該確定裁判が没収の確定裁判に相当する旨を示すべきときに限る。)においても、同様とする。
前条第二項の規定による審査に関しては、没収刑の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、当該請求に係る財産を有し若しくは その財産の上に地上権、抵当権 その他の権利を有すると思料するに足りる相当な理由のある者 又は これらの財産 若しくは権利について没収刑のための保全がされる前に強制競売の開始決定、強制執行による差押え 若しくは仮差押えの執行がされている場合における差押債権者 若しくは仮差押債権者が、当該審査請求事件の手続への参加を許されていないときは、第一項第二号に定める決定をすることができない。
被害回復命令の確定裁判であってその内容 及び性質を考慮して日本国の法令によれば 没収の確定裁判に相当すると認めるものに係る同号に定める決定についても、同様とする。
組織的犯罪処罰法第五十九条第三項 及び第六十二条第三項の規定は没収刑の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について第一項第二号に定める決定をする場合(被害回復命令の確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、同号に定める決定をする場合において、第二項の規定により当該確定裁判が没収の確定裁判に相当する旨を示すべきときを含む。)について、同条第五項 及び第七項から第九項までの規定は執行協力の請求に係る前条第二項の規定による審査について、組織的犯罪処罰法第六十三条の規定は前条第二項の審査の請求に係る決定に対する抗告について、それぞれ準用する。
次の各号に掲げる確定裁判の執行に係る執行協力の請求について、前条第一項第二号に定める決定が確定したときは、当該確定裁判は、執行協力の実施に関しては、それぞれ、当該各号に定める日本国の裁判所が言い渡した確定裁判とみなす。
没収刑 及び前条第二項の規定により没収の確定裁判に相当する旨が示された被害回復命令の確定裁判(次号に掲げるものを除く。)没収の確定裁判
没収刑 又は前条第二項の規定により没収の確定裁判に相当する旨が示された被害回復命令であって、同条第四項から第六項までの規定により追徴すべき日本円の金額が示されたものの確定裁判 追徴の確定裁判
前条第二項の規定により追徴の確定裁判に相当する旨が示された被害回復命令の確定裁判 追徴の確定裁判
前項第二号に掲げる確定裁判についての執行協力を実施する場合において、その没収刑 又は被害回復命令の目的とされている財産について、滅失、毀損 その他の事由により当該確定裁判を執行することができないときは、同項の規定にかかわらず、当該確定裁判は、これを受けた者から前条第三項の規定により示された金額を追徴する旨の日本国の裁判所が言い渡した確定裁判とみなす。
検察官は、第一項第二号に掲げる確定裁判についての執行協力の実施に係る財産で、国際刑事裁判所への送付に適さないものについては、これを売却することができる。
この場合において、その代価は、当該確定裁判についての執行協力の実施に係る財産とみなす。
検事正は、罰金刑、没収刑 又は被害回復命令の確定裁判の執行に係る執行協力の実施を終えたときは、速やかに、その執行協力の実施に係る財産を法務大臣に引き渡さなければならない。
組織的犯罪処罰法第六十五条の規定は、第一項に規定する執行協力の請求に係る前条第一項第二号に定める決定の取消しについて準用する。
この場合において、
組織的犯罪処罰法第六十五条第二項中
「没収」とあるのは
「罰金、没収」と、
同条第三項中
「第六十三条」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成十九年法律第三十七号)第四十一条第八項において準用する第六十三条」と
読み替えるものとする。
検察官は、執行協力の請求が、没収刑のための保全に係るものであるとき、又は被害回復命令のための保全に係るものであってその内容 及び性質を考慮して日本国の法令によれば 没収の保全に相当するものであると認めるときは、裁判官に、没収保全命令を発して当該請求に係る財産についてその処分を禁止することを請求しなければならない。
この場合において、検察官は、必要と認めるときは、附帯保全命令を発して当該財産の上に存在する地上権、抵当権 その他の権利の処分を禁止することを請求することができる。
第四十条第二項の審査の請求があった後は、前項の没収刑 又は被害回復命令のための保全に関する処分は、その審査の請求を受けた裁判所が行う。
裁判所 又は裁判官は、前条第一項前段の規定による請求を受けた場合において、第三十八条第一項各号 及び第二項各号のいずれにも該当しないと認めるときは、没収保全命令を発して、当該請求に係る財産について、この節の定めるところにより、その処分を禁止するものとする。
裁判所 又は裁判官は、地上権、抵当権 その他の権利がその上に存在する財産について没収保全命令を発した場合 又は発しようとする場合において、当該権利が没収刑の執行によって消滅すると思料するに足りる相当な理由がある場合であってその執行のため必要があると認めるとき、又は当該権利が仮装のものであると思料するに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官の請求により、附帯保全命令を別に発して、当該権利の処分を禁止することができる。
組織的犯罪処罰法第二十二条第三項、第四項 及び第六項 並びに第二十三条第六項の規定は、第一項の没収保全命令 又は前項の附帯保全命令について準用する。
この場合において、
組織的犯罪処罰法第二十二条第三項中
「被告人」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二条第十号に規定する没収刑 又は被害回復命令の裁判を受けるべき者」と、
「公訴事実」とあるのは
「同条第十二号に規定する請求犯罪」と、
同条第四項中
「第一項 若しくは第二項」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第四十四条第一項 若しくは第二項」と、
組織的犯罪処罰法第二十三条第六項中
「第一項 又は第四項」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第四十三条第一項」と
読み替えるものとする。
第一項の没収保全命令 又は第二項の附帯保全命令については、国際刑事裁判所において規程第六十一条1に規定する審理が行われる前であっても、これをすることができる。
組織的犯罪処罰法第二十三条第七項 及び第六十八条の規定は、前項の場合における没収保全命令について準用する。
この場合において、
組織的犯罪処罰法第二十三条第七項中
「公訴の提起があった」とあるのは
「国際刑事裁判所に関するローマ規程第六十一条1に規定する審理が開始された」と、
「被告人」とあるのは
「当該審理の対象とされる者」と、
組織的犯罪処罰法第六十八条第一項中
「没収 又は追徴のための保全の共助の要請が公訴の提起されていない」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二条第十号に規定する没収刑 又は被害回復命令のための保全に係る同号に規定する執行協力の請求が国際刑事裁判所に関するローマ規程第六十一条1に規定する審理が開始されていない」と、
「要請国」とあるのは
「国際刑事裁判所」と、
「公訴が提起された」とあるのは
「当該審理が開始された」と、
同条第二項中
「要請国」とあるのは
「国際刑事裁判所」と、
「公訴を提起できない」とあるのは
「国際刑事裁判所に関するローマ規程第六十一条1に規定する審理を行うことができない」と
読み替えるものとする。
前項において準用する組織的犯罪処罰法第六十八条第二項の規定による更新の裁判は、検察官に告知された時にその効力を生ずる。
検察官は、執行協力の請求が、被害回復命令のための保全に係るものであってその内容 及び性質を考慮して日本国の法令によれば 追徴の保全に相当するものであると認めるときは、裁判官に、追徴保全命令を発して被害回復命令の裁判を受けるべき者に対しその財産の処分を禁止することを請求しなければならない。
第四十三条第二項の規定は、前項の被害回復命令のための保全に関する処分について準用する。
裁判所 又は裁判官は、前条第一項の規定による請求を受けた場合において、第三十八条第一項各号 及び第二項各号のいずれにも該当しないと認めるときは、追徴保全命令を発して、被害回復命令の裁判を受けるべき者に対し、その財産の処分を禁止するものとする。
組織的犯罪処罰法第二十二条第四項、第二十三条第六項 及び第四十二条第二項から第四項までの規定は、前項の追徴保全命令について準用する。
この場合において、
組織的犯罪処罰法第二十二条第四項中
「第一項 若しくは第二項」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第四十六条第一項」と、
組織的犯罪処罰法第二十三条第六項中
「第一項 又は第四項」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第四十五条第一項」と、
組織的犯罪処罰法第四十二条第三項 及び第四項中
「被告人」とあるのは
「国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第二条第十号に規定する被害回復命令の裁判を受けるべき者」と、
同項中
「公訴事実」とあるのは
「同条第十二号に規定する請求犯罪」と
読み替えるものとする。
この節に特別の定めがあるもののほか、裁判所 若しくは裁判官のする審査、処分 若しくは令状の発付、検察官 若しくは検察事務官のする処分 又は裁判所の審査への利害関係人の参加については組織的犯罪処罰法第三章、第四章(第二十二条、第二十三条、第三十二条、第三十三条、第四十二条、第四十三条、第四十七条 及び第四十八条を除く。)及び第六十九条から第七十二条まで、刑事訴訟法(第一編第二章 及び第五章から第十三章まで、第二編第一章、第三編第一章 及び第四章 並びに第七編に限る。)、刑事訴訟費用に関する法令 並びに刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和三十八年法律第百三十八号)の規定を、執行協力の請求を受理した場合における措置については逃亡犯罪人引渡法第八条第二項 並びに第十一条第一項 及び第二項の規定を、それぞれ その性質に反しない限り、準用する。
この節に定めるもののほか、没収保全命令による処分の禁止と滞納処分との手続の調整について必要な事項で、滞納処分に関するものは、政令で定める。