不動産等(不動産 又は人の居住する船舶等をいう。以下この条 及び次条において同じ。)の引渡し又は明渡しの強制執行は、執行官が債務者の不動産等に対する占有を解いて債権者にその占有を取得させる方法により行う。
民事執行法
第三節 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行
執行官は、前項の強制執行をするため同項の不動産等の占有者を特定する必要があるときは、当該不動産等に在る者に対し、当該不動産等 又はこれに近接する場所において、質問をし、又は文書の提示を求めることができる。
第一項の強制執行は、債権者 又はその代理人が執行の場所に出頭したときに限り、することができる。
執行官は、第一項の強制執行をするに際し、債務者の占有する不動産等に立ち入り、必要があるときは、閉鎖した戸を開くため必要な処分をすることができる。
執行官は、第一項の強制執行においては、その目的物でない動産を取り除いて、債務者、その代理人 又は同居の親族 若しくは使用人 その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければならない。
この場合において、その動産をこれらの者に引き渡すことができないときは、執行官は、最高裁判所規則で定めるところにより、これを売却することができる。
執行官は、前項の動産のうちに同項の規定による引渡し又は売却をしなかつたものがあるときは、これを保管しなければならない。
この場合においては、前項後段の規定を準用する。
前項の規定による保管の費用は、執行費用とする。
第五項(第六項後段において準用する場合を含む。)の規定により動産を売却したときは、執行官は、その売得金から売却 及び保管に要した費用を控除し、その残余を供託しなければならない。
第五十七条第五項の規定は、第一項の強制執行について準用する。
執行官は、不動産等の引渡し又は明渡しの強制執行の申立てがあつた場合において、当該強制執行を開始することができるときは、次項に規定する引渡し期限を定めて、明渡しの催告(不動産等の引渡し 又は明渡しの催告をいう。以下この条において同じ。)をすることができる。
ただし、債務者が当該不動産等を占有していないときは、この限りでない。
引渡し期限(明渡しの催告に基づき第六項の規定による強制執行をすることができる期限をいう。以下この条において同じ。)は、明渡しの催告があつた日から一月を経過する日とする。
ただし、執行官は、執行裁判所の許可を得て、当該日以後の日を引渡し期限とすることができる。
執行官は、明渡しの催告をしたときは、その旨、引渡し期限 及び第五項の規定により債務者が不動産等の占有を移転することを禁止されている旨を、当該不動産等の所在する場所に公示書 その他の標識を掲示する方法により、公示しなければならない。
執行官は、引渡し期限が経過するまでの間においては、執行裁判所の許可を得て、引渡し期限を延長することができる。
この場合においては、執行官は、引渡し期限の変更があつた旨 及び変更後の引渡し期限を、当該不動産等の所在する場所に公示書 その他の標識を掲示する方法により、公示しなければならない。
明渡しの催告があつたときは、債務者は、不動産等の占有を移転してはならない。
ただし、債権者に対して不動産等の引渡し又は明渡しをする場合は、この限りでない。
明渡しの催告後に不動産等の占有の移転があつたときは、引渡し期限が経過するまでの間においては、占有者(第一項の不動産等を占有する者であつて債務者以外のものをいう。以下この条において同じ。)に対して、第一項の申立てに基づく強制執行をすることができる。
この場合において、第四十二条 及び前条の規定の適用については、当該占有者を債務者とみなす。
明渡しの催告後に不動産等の占有の移転があつたときは、占有者は、明渡しの催告があつたことを知らず、かつ、債務者の占有の承継人でないことを理由として、債権者に対し、強制執行の不許を求める訴えを提起することができる。
この場合においては、第三十六条、第三十七条 及び第三十八条第三項の規定を準用する。
明渡しの催告後に不動産等を占有した占有者は、明渡しの催告があつたことを知つて占有したものと推定する。
第六項の規定により占有者に対して強制執行がされたときは、当該占有者は、執行異議の申立てにおいて、債権者に対抗することができる権原により目的物を占有していること、又は明渡しの催告があつたことを知らず、かつ、債務者の占有の承継人でないことを理由とすることができる。
明渡しの催告に要した費用は、執行費用とする。
第百六十八条第一項に規定する動産以外の動産(有価証券を含む。)の引渡しの強制執行は、執行官が債務者からこれを取り上げて債権者に引き渡す方法により行う。
第百二十二条第二項、第百二十三条第二項 及び第百六十八条第五項から第八項までの規定は、前項の強制執行について準用する。
第三者が強制執行の目的物を占有している場合においてその物を債務者に引き渡すべき義務を負つているときは、物の引渡しの強制執行は、執行裁判所が、債務者の第三者に対する引渡請求権を差し押さえ、請求権の行使を債権者に許す旨の命令を発する方法により行う。
第百四十四条、第百四十五条(第四項を除く。)、第百四十七条、第百四十八条、第百五十五条第一項 及び第三項 並びに第百五十八条の規定は、前項の強制執行について準用する。
次の各号に掲げる強制執行は、執行裁判所がそれぞれ当該各号に定める旨を命ずる方法により行う。
作為を目的とする債務についての強制執行
債務者の費用で第三者に当該作為をさせること。
不作為を目的とする債務についての強制執行
債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすべきこと。
前項の執行裁判所は、第三十三条第二項第一号 又は第六号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める裁判所とする。
執行裁判所は、第一項の規定による決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。
執行裁判所は、第一項の規定による決定をする場合には、申立てにより、債務者に対し、その決定に掲げる行為をするために必要な費用をあらかじめ債権者に支払うべき旨を命ずることができる。
第一項の強制執行の申立て又は前項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
第六条第二項の規定は、第一項の規定による決定を執行する場合について準用する。
作為 又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を変更することができる。
執行裁判所は、前二項の規定による決定をする場合には、申立ての相手方を審尋しなければならない。
第一項の規定により命じられた金銭の支払があつた場合において、債務不履行により生じた損害の額が支払額を超えるときは、債権者は、その超える額について損害賠償の請求をすることを妨げられない。
第一項の強制執行の申立て又は第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
前条第二項の規定は、第一項の執行裁判所について準用する。
第百六十八条第一項、第百六十九条第一項、第百七十条第一項 及び第百七十一条第一項に規定する強制執行は、それぞれ第百六十八条から第百七十一条までの規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が前条第一項に規定する方法により行う。
この場合においては、同条第二項から第五項までの規定を準用する。
前項の執行裁判所は、第三十三条第二項各号(第一号の二、第一号の三 及び第四号を除く。)に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該債務名義についての執行文付与の訴えの管轄裁判所とする。
子の引渡しの強制執行は、次の各号に掲げる方法のいずれかにより行う。
執行裁判所が決定により執行官に子の引渡しを実施させる方法
第百七十二条第一項に規定する方法
前項第一号に掲げる方法による強制執行の申立ては、次の各号のいずれかに該当するときでなければすることができない。
第百七十二条第一項の規定による決定が確定した日から二週間を経過したとき(当該決定において定められた債務を履行すべき一定の期間の経過がこれより後である場合にあつては、その期間を経過したとき)。
前項第二号に掲げる方法による強制執行を実施しても、債務者が子の監護を解く見込みがあるとは認められないとき。
子の急迫の危険を防止するため直ちに強制執行をする必要があるとき。
執行裁判所は、第一項第一号の規定による決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。
ただし、子に急迫した危険があるときその他の審尋をすることにより強制執行の目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
執行裁判所は、第一項第一号の規定による決定において、執行官に対し、債務者による子の監護を解くために必要な行為をすべきことを命じなければならない。
第百七十一条第二項の規定は第一項第一号の執行裁判所について、
同条第四項の規定は同号の規定による決定をする場合について、それぞれ準用する。
第二項の強制執行の申立て又は前項において準用する第百七十一条第四項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
執行官は、債務者による子の監護を解くために必要な行為として、債務者に対し説得を行うほか、債務者の住居 その他債務者の占有する場所において、次に掲げる行為をすることができる。
その場所に立ち入り、子を捜索すること。
この場合において、必要があるときは、閉鎖した戸を開くため必要な処分をすること。
債権者 若しくはその代理人と子を面会させ、又は債権者 若しくはその代理人と債務者を面会させること。
その場所に債権者 又はその代理人を立ち入らせること。
執行官は、子の心身に及ぼす影響、当該場所 及びその周囲の状況 その他の事情を考慮して相当と認めるときは、前項に規定する場所以外の場所においても、債務者による子の監護を解くために必要な行為として、当該場所の占有者の同意を得て又は次項の規定による許可を受けて、前項各号に掲げる行為をすることができる。
執行裁判所は、子の住居が第一項に規定する場所以外の場所である場合において、債務者と当該場所の占有者との関係、当該占有者の私生活 又は業務に与える影響 その他の事情を考慮して相当と認めるときは、債権者の申立てにより、当該占有者の同意に代わる許可をすることができる。
執行官は、前項の規定による許可を受けて第一項各号に掲げる行為をするときは、職務の執行に当たり、当該許可を受けたことを証する文書を提示しなければならない。
第一項 又は第二項の規定による債務者による子の監護を解くために必要な行為は、債権者が第一項 又は第二項に規定する場所に出頭した場合に限り、することができる。
執行裁判所は、債権者が第一項 又は第二項に規定する場所に出頭することができない場合であつても、その代理人が債権者に代わつて当該場所に出頭することが、当該代理人と子との関係、当該代理人の知識 及び経験 その他の事情に照らして子の利益の保護のために相当と認めるときは、前項の規定にかかわらず、債権者の申立てにより、当該代理人が当該場所に出頭した場合においても、第一項 又は第二項の規定による債務者による子の監護を解くために必要な行為をすることができる旨の決定をすることができる。
執行裁判所は、いつでも前項の決定を取り消すことができる。
執行官は、第六条第一項の規定にかかわらず、子に対して威力を用いることはできない。
子以外の者に対して威力を用いることが子の心身に有害な影響を及ぼすおそれがある場合においては、当該子以外の者についても、同様とする。
執行官は、第一項 又は第二項の規定による債務者による子の監護を解くために必要な行為をするに際し、債権者 又はその代理人に対し、必要な指示をすることができる。
執行裁判所 及び執行官は、第百七十四条第一項第一号に掲げる方法による子の引渡しの強制執行の手続において子の引渡しを実現するに当たつては、子の年齢 及び発達の程度 その他の事情を踏まえ、できる限り、当該強制執行が子の心身に有害な影響を及ぼさないように配慮しなければならない。
意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決 その他の裁判が確定し、又は和解、認諾、調停 若しくは労働審判に係る債務名義が成立したときは、債務者は、その確定 又は成立の時に意思表示をしたものとみなす。
ただし、債務者の意思表示が、債権者の証明すべき事実の到来に係るときは第二十七条第一項の規定により執行文が付与された時に、反対給付との引換え 又は債務の履行 その他の債務者の証明すべき事実のないことに係るときは次項 又は第三項の規定により執行文が付与された時に意思表示をしたものとみなす。
債務者の意思表示が反対給付との引換えに係る場合においては、執行文は、債権者が反対給付 又はその提供のあつたことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
債務者の意思表示が債務者の証明すべき事実のないことに係る場合において、執行文の付与の申立てがあつたときは、裁判所書記官は、債務者に対し一定の期間を定めてその事実を証明する文書を提出すべき旨を催告し、債務者がその期間内にその文書を提出しないときに限り、執行文を付与することができる。