犯罪捜査規範

# 昭和三十二年国家公安委員会規則第二号 #

第1節 捜査の心構え

分類 規則
カテゴリ   警察
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和六年国家公安委員会規則第四号による改正
最終編集日 : 2024年 08月20日 10時53分


1項

この規則は、警察官が犯罪の捜査を行うに当つて守るべき心構え、捜査の方法、手続 その他捜査に関し必要な事項を定めることを目的とする。

1項

捜査は、事案の真相を明らかにして事件を解決するとの強固な信念をもつて迅速適確に行わなければならない。

2項

捜査を行うに当つては、個人の基本的人権を尊重し、かつ、公正誠実に捜査の権限を行使しなければならない。

1項

捜査を行うに当たつては、警察法昭和29年法律第162号)、刑事訴訟法昭和23年法律第131号。以下「刑訴法」という。)その他の法令 及び規則を厳守し、個人の自由 及び権利を不当に侵害することのないように注意しなければならない。

1項

捜査を行うに当たつては、証拠によつて事案を明らかにしなければならない。

2項

捜査を行うに当たつては、先入観にとらわれず、根拠に基づかない推測を排除し、被疑者 その他の関係者の供述を過信することなく、基礎的捜査を徹底し、物的証拠を始めとするあらゆる証拠の発見収集に努めるとともに、鑑識施設 及び資料を十分に活用して、捜査を合理的に進めるようにしなければならない。

1項

捜査を行うに当つては、すべての情報資料を総合して判断するとともに、広く知識技能を活用し、かつ、常に組織の力により、捜査を総合的に進めるようにしなければならない。

1項

捜査は、安易に成果を求めることなく、犯罪の規模、方法 その他諸般の状況を冷静周密に判断し、着実に行わなければならない。

1項

捜査は、それが刑事手続の一環であることにかんがみ、公訴の実行 及び公判の審理を念頭に置いて、行わなければならない。


特に、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律平成16年法律第63号第2条第1項に規定する事件に該当する事件の捜査を行う場合は、国民の中から選任された裁判員に分かりやすい立証が可能となるよう、配慮しなければならない。

1項

捜査を行うに当たつては、自己の能力を過信して独断に陥ることなく、上司から命ぜられた事項を忠実に実行し、常に警察規律を正しくし、協力一致して事案に臨まなければならない。

1項

捜査を行うに当たつては、秘密を厳守し、捜査の遂行に支障を及ぼさないように注意するとともに、被疑者、被害者(犯罪により害を被つた者をいう。以下同じ。)その他事件の関係者の名誉を害することのないように注意しなければならない。

2項

捜査を行うに当たつては、前項の規定により秘密を厳守するほか、告訴、告発、犯罪に関する申告 その他犯罪捜査の端緒 又は犯罪捜査の資料を提供した者 その他捜査の関係者(第11条被害者等の保護等第2項において「資料提供者等」という。)の名誉 又は信用を害することのないように注意しなければならない。

1項

捜査を行うに当つては、常に言動を慎み、関係者の利便を考慮し、必要な限度をこえて迷惑を及ぼさないように注意しなければならない。

1項

捜査を行うに当たつては、被害者 又はその親族(以下 この節において「被害者等」という。)の心情を理解し、その人格を尊重しなければならない。

2項

捜査を行うに当たつては、被害者等の取調べにふさわしい場所の利用 その他の被害者等にできる限り不安 又は迷惑を覚えさせないようにするための措置を講じなければならない。

1項

捜査を行うに当たつては、被害者等に対し、刑事手続の概要を説明するとともに、当該事件の捜査の経過 その他被害者等の救済 又は不安の解消に資すると認められる事項を通知しなければならない。


ただし、捜査 その他の警察の事務 若しくは公判に支障を及ぼし、又は関係者の名誉 その他の権利を不当に侵害するおそれのある場合は、この限りでない。

1項

警察官は、犯罪の手口、動機 及び組織的背景、被疑者と被害者等との関係、被疑者の言動 その他の状況から被害者等に後難が及ぶおそれがあると認められるときは、被疑者 その他の関係者に、当該被害者等の氏名 又はこれらを推知させるような事項を告げないようにするほか、必要に応じ、当該被害者等の保護のための措置を講じなければならない。

2項

前項の規定は、資料提供者等に後難が及ぶおそれがあると認められる場合について準用する。

1項

警察官は、捜査専従員であると否とを問わず、常に捜査関係法令の研究 および捜査に関する知識技能の習得に努め、捜査方法の工夫改善に意を用いなければならない。

1項

警察官は、捜査を行うに当り、当該事件の公判の審理に証人として出頭する場合を考慮し、および将来の捜査に資するため、その経過 その他参考となるべき事項を明細に記録しておかなければならない。

1項

警察官は、被疑者、被害者 その他事件の関係者と親族 その他特別の関係にあるため、その捜査について疑念をいだかれるおそれのあるときは、上司の許可を得て、その捜査を回避しなければならない。