この規則は、警察官が犯罪の捜査を行うに当つて守るべき心構え、捜査の方法、手続 その他捜査に関し必要な事項を定めることを目的とする。
犯罪捜査規範
制定に関する表明
第1章 総則
第1節 捜査の心構え
捜査は、事案の真相を明らかにして事件を解決するとの強固な信念をもつて迅速適確に行わなければならない。
捜査を行うに当つては、個人の基本的人権を尊重し、かつ、公正誠実に捜査の権限を行使しなければならない。
捜査を行うに当たつては、警察法(昭和29年法律第162号)、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号。以下「刑訴法」という。)その他の法令 及び規則を厳守し、個人の自由 及び権利を不当に侵害することのないように注意しなければならない。
捜査を行うに当たつては、証拠によつて事案を明らかにしなければならない。
捜査を行うに当たつては、先入観にとらわれず、根拠に基づかない推測を排除し、被疑者 その他の関係者の供述を過信することなく、基礎的捜査を徹底し、物的証拠を始めとするあらゆる証拠の発見収集に努めるとともに、鑑識施設 及び資料を十分に活用して、捜査を合理的に進めるようにしなければならない。
捜査を行うに当つては、すべての情報資料を総合して判断するとともに、広く知識技能を活用し、かつ、常に組織の力により、捜査を総合的に進めるようにしなければならない。
捜査は、安易に成果を求めることなく、犯罪の規模、方法 その他諸般の状況を冷静周密に判断し、着実に行わなければならない。
捜査は、それが刑事手続の一環であることにかんがみ、公訴の実行 及び公判の審理を念頭に置いて、行わなければならない。
特に、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号)第2条第1項に規定する事件に該当する事件の捜査を行う場合は、国民の中から選任された裁判員に分かりやすい立証が可能となるよう、配慮しなければならない。
捜査を行うに当たつては、自己の能力を過信して独断に陥ることなく、上司から命ぜられた事項を忠実に実行し、常に警察規律を正しくし、協力一致して事案に臨まなければならない。
捜査を行うに当たつては、秘密を厳守し、捜査の遂行に支障を及ぼさないように注意するとともに、被疑者、被害者(犯罪により害を被つた者をいう。以下同じ。)その他事件の関係者の名誉を害することのないように注意しなければならない。
捜査を行うに当たつては、前項の規定により秘密を厳守するほか、告訴、告発、犯罪に関する申告 その他犯罪捜査の端緒 又は犯罪捜査の資料を提供した者 その他捜査の関係者(第11条(被害者等の保護等)第2項において「資料提供者等」という。)の名誉 又は信用を害することのないように注意しなければならない。
捜査を行うに当つては、常に言動を慎み、関係者の利便を考慮し、必要な限度をこえて迷惑を及ぼさないように注意しなければならない。
捜査を行うに当たつては、被害者 又はその親族(以下 この節において「被害者等」という。)の心情を理解し、その人格を尊重しなければならない。
捜査を行うに当たつては、被害者等の取調べにふさわしい場所の利用 その他の被害者等にできる限り不安 又は迷惑を覚えさせないようにするための措置を講じなければならない。
捜査を行うに当たつては、被害者等に対し、刑事手続の概要を説明するとともに、当該事件の捜査の経過 その他被害者等の救済 又は不安の解消に資すると認められる事項を通知しなければならない。
ただし、捜査 その他の警察の事務 若しくは公判に支障を及ぼし、又は関係者の名誉 その他の権利を不当に侵害するおそれのある場合は、この限りでない。
警察官は、犯罪の手口、動機 及び組織的背景、被疑者と被害者等との関係、被疑者の言動 その他の状況から被害者等に後難が及ぶおそれがあると認められるときは、被疑者 その他の関係者に、当該被害者等の氏名 又はこれらを推知させるような事項を告げないようにするほか、必要に応じ、当該被害者等の保護のための措置を講じなければならない。
前項の規定は、資料提供者等に後難が及ぶおそれがあると認められる場合について準用する。
警察官は、捜査専従員であると否とを問わず、常に捜査関係法令の研究 および捜査に関する知識技能の習得に努め、捜査方法の工夫改善に意を用いなければならない。
警察官は、捜査を行うに当り、当該事件の公判の審理に証人として出頭する場合を考慮し、および将来の捜査に資するため、その経過 その他参考となるべき事項を明細に記録しておかなければならない。
警察官は、被疑者、被害者 その他事件の関係者と親族 その他特別の関係にあるため、その捜査について疑念をいだかれるおそれのあるときは、上司の許可を得て、その捜査を回避しなければならない。
第2節 捜査の組織
捜査を行うに当つては、捜査に従事する者の団結と統制を図り、他の警察諸部門 および関係警察と緊密に連絡し、警察の組織的機能を最高度に発揮するように努めなければならない。
警察本部長(警視総監 または道府県警察本部長をいう。以下同じ。)は、捜査の合理的な運営と公正な実施を期するため、犯罪の捜査について、全般の指揮監督に当るとともに、職員の合理的配置、その指導教養の徹底、資材施設の整備等捜査態勢の確立を図り、もつてその責に任ずるものとする。
刑事部長、警備部長 その他犯罪の捜査を担当する部課長は、警察本部長を補佐し、その命を受け犯罪の捜査の指揮監督に当るものとする。
警察署長は、その警察署に関し、犯罪の捜査の指揮監督に当るとともに、捜査の合理的な運営と公正な実施について、警察本部長に対しその責に任ずるものとする。
前3条に規定する犯罪の捜査の指揮については、常にその責任を明らかにしておかなければならない。
警察本部長 または警察署長が直接指揮すべき事件 および事項 ならびに指揮の方法 その他事件指揮簿の様式等は、警察本部長の定めるところによる。
捜査主任官は、第16条から前条まで(警察本部長、捜査担当部課長、警察署長、捜査指揮)の規定により指揮を受け、当該事件の捜査につき、次に掲げる職務を行うものとする。
押収物 及びその換価代金の出納を承認し、これらの保管の状況を常に把握すること。
第3章第5節(捜査方針)の規定により捜査方針を立てること。
前号の報告、取調べ状況報告書の確認、被疑者の供述 及びその状況を記録した記録媒体の再生 その他の方法により、被疑者の取調べの状況を把握すること。
留置施設に留置されている被疑者(第136条の2(引き当たり捜査の際の注意)第1項において「留置被疑者」という。)に関し同項の計画を作成する場合において、留置主任官(被留置者の留置に関する規則(平成19年国家公安委員会規則第11号)第4条第1項に規定する留置主任官をいう。第136条の2第1項において同じ。)と協議すること。
被疑者の取調べ その他の捜査の適正な遂行 並びに被疑者の逃亡 及び自殺 その他の事故の防止について捜査員に対する指導教養を行うこと。
前各号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属させられ、又は警察本部長 若しくは警察署長から特に命ぜられた事項
警察本部長 又は警察署長は、第1項の規定により捜査主任官を指名する場合には、当該事件の内容 並びに所属の職員の捜査能力、知識経験 及び職務遂行の状況を勘案し、前項に規定する職務を的確に行うことができると認められる者を指名しなければならない。
捜査主任官が交代する場合には、関係書類、証拠物等の引継ぎを確実に行うとともに、捜査の状況 その他必要な事項を明らかにし、事後の捜査に支障を来すことのないようにしなければならない。
警察官以外の捜査関係職員が、警察官を助けて職務を行う場合には、この規則の規定に従わなければならない。
重要犯罪 その他事件の発生に際し、特に、捜査を統一的かつ強力に推進する必要があると認められるときは、捜査本部を設置するものとする。
捜査本部を設置した事件の捜査については、すべて捜査本部長の統制に従うものとし、他の警察署において当該事件に関する捜査資料を得たときは、速やかに捜査本部に連絡しなければならない。
警察官は、犯罪に関係があると認められる事項 その他捜査上参考となるべき事項を知つたときは、速やかに、上司に報告しなければならない。
警察署長は、その管轄区域において発生した事件 その他捜査上参考となるべき事項のうち重要なものについては、速やかに、警察本部長に報告しなければならない。
警察官は、検察官 または他の捜査機関との捜査に関する連絡 または協力については、あらかじめ順序を経て警察本部長 または警察署長に報告して、その指揮を受けなければならない。
捜査に関し、新聞 その他の報道機関等に発表を行うときは、警察本部長 若しくは警察署長(捜査本部を設置した場合においては捜査本部長)又はその指定する者がこれに当たらなければならない。
犯罪の捜査に関する指導教養は、幹部、専従員 および一般警察官の別に応じ、実務に即して行い、その実効を期さなければならない。
第3節 手配および共助
警察官は、別に定がある場合のほか、この節の規定するところに従い、捜査に関し、相互に協力しなければならない。
捜査のため必要があるときは、他の警察に対し、共助の依頼(被疑者の逮捕、呼出し 若しくは取調べ、盗品等(盗品 その他財産に対する罪に当たる行為によつて領得された物をいう。以下同じ。)その他の証拠物の手配、押収、捜索 若しくは検証、参考人の呼出し 若しくは取調べ、職員の派遣 その他の措置を依頼することをいう。以下同じ。)をすることができる。
他の警察から、共助の依頼を受けたときは、誠実かつ速やかにこれに当たらなければならない。
共助の依頼をするに当たつては、依頼の趣旨、内容 その他の必要な事項を明確にし、及び依頼を受けた警察の事務の遂行に支障を及ぼさないようにしなければならない。
犯罪の捜査につき、他の警察に対して緊急の措置を依頼する必要があるときは、直ちに、緊急事件手配書(別記様式第1号)により、緊急配備 その他の必要な措置を求めるものとする。
容疑者 および捜査資料 その他参考事項について通報を求める手配を、事件手配とする。
逮捕状の発せられている被疑者の逮捕を依頼し、逮捕後身柄の引渡しを要求する手配を、指名手配とする。
指名手配は、指名手配書(別記様式第2号)により行わなければならない。
急速を要し逮捕状の発付を受けるいとまのないときは、指名手配書による手配を行つた後、速やかに逮捕状の発付を得て、その有効期間を通報しなければならない。
第29条(緊急事件手配)の規定による緊急事件手配により、氏名等の明らかな被疑者の逮捕を依頼した場合には、当該緊急事件手配を指名手配とみなす。
この場合においては、逮捕状の発付を得た後、改めて第1項の規定による手続をとるものとする。
指名手配を行うに当つては、被疑者を逮捕した場合における身柄の処置につき、次のいずれであるかを明らかにしなければならない。
第1種手配(身柄の護送を求める場合の手配をいう。)
第2種手配(身柄を引取に行く場合の手配をいう。)
指名手配をした場合においては、常に逮捕状の有効期間に注意し、有効期間経過後もなお手配継続の必要があるものについては、逮捕状の再発付を受け、その有効期間を通報しなければならない。
被疑者が発見された場合に身柄の引渡を求めず、かつ、その事件の処理を当該警察にゆだねる旨の手配を、指名通報とする。
指名通報は、被疑者の氏名等が明らかであり、かつ、犯罪事実が確実なものについて、指名通報書(別記様式第2号)により行わなければならない。
指名通報のあつた事件については、あらかじめ、通報を発した警察に、逮捕状の有無、容疑事実の内容、関係書類 その他の捜査資料の有無等を照会して処理するものとする。
指名通報を行つた被疑者については、事件処理に必要な証拠資料、関係書類等を完全に整備しておき、被疑者を発見した警察から要求があつたときは、すみやかに、第78条(事件の移送および引継)第2項の規定による事件引継書とともに証拠資料、関係書類等を、その警察に送付しなければならない。
警察が、その捜査中の事件の盗品等につき、他の警察に対してその発見を求める手配を、盗品等手配とする。
盗品等手配を行うに当たつては、発見すべき盗品等の名称、銘柄、品種、特徴等を明らかにすることに努め、必要があるときは、写真を添付する等有効適切な措置を講じなければならない。
古物営業法(昭和24年法律第108号)第19条第1項 又は質屋営業法(昭和25年法律第158号)第20条第1項に規定する品触れ(以下「品触れ」という。)は、これを次の3種に区分するものとする。
特別重要品触れ(捜査本部に係る事件について発する品触れをいう。)
重要品触れ(前号の事件以外の重要な事件について発する品触れをいう。)
普通品触れ(その他の事件について発する品触れをいう。)
品触れは、前項の区分を明らかにして発しなければならない。
前条第2項の規定は、品触れについて準用する。
品触れを発したときは、品触原簿(別記様式第3号)及び品触取扱簿(別記様式第4号)により、それぞれ、その状況を明確にしておかなければならない。
第29条(緊急事件手配)、第30条(事件手配)、第31条(指名手配)、第34条(指名通報)及び第35条(盗品等手配)に規定する手配 又は通報については、その実効を期するため、犯罪の種別、軽重、緊急の度合い等に応じ、手配の範囲、種別 及び方法を合理的に定め、いやしくも、濫用にわたることのないように注意しなければならない。
第29条(緊急事件手配)、第30条(事件手配)、第31条(指名手配)、第34条(指名通報)及び第35条(盗品等手配)に規定する手配 又は通報に係る事件について、被疑者を逮捕し、又は事件を解決したときは、速やかに、かつ、確実に、その手配 又は通報の解除を行わなければならない。
逮捕状の有効期間が経過し、逮捕状の再発付を受けない場合も、また、前項と同様とする。
前2項のほか、共助の依頼をし、又は品触を発した場合において、その必要がなくなつたときは、第1項の規定に準じ、必要な手続をとらなければならない。
警察署長は、他の警察に関連する犯罪事件について、その被疑者、証拠物 その他捜査上参考となるべき事項を発見したときは、直ちに、適当な措置をとるとともに、その旨を当該警察に通報しなければならない。
警察署長は、前項の通報のほか、重要事件、他に波及するおそれのある事件 その他犯罪の捜査 または予防上参考となるべき事件について、関係警察に通報するものとする。
警察署長は、第29条(緊急事件手配)、第30条(事件手配)、第31条(指名手配)、第34条(指名通報)及び第35条(盗品等手配)の規定による手配 又は通報をする場合においては、原則として、あらかじめ警察本部長に報告した後、直接に、又は警察本部長を通じて行わなければならない。
指名手配のあつた被疑者を逮捕した警察(以下「逮捕警察」という。)は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、被疑者の身柄をその指名手配をした警察(以下「手配警察」という。)に引渡さなければならない。
逮捕警察が、手配を受けた犯罪より法定刑が重い別の犯罪をその管轄区域において犯した被疑者を逮捕したとき。
逮捕警察が、手配被疑者に関連する犯罪で、既にその正犯 又は共同正犯である被疑者の一部を逮捕しているとき。
同一被疑者について、2以上の手配警察がある場合には、次の各号に定める手配警察にその身柄を引き渡さなければならない。
手配を受けた犯罪について、その法定刑に軽重があるとき(次号に規定する場合に該当する場合を除く。)は、重い犯罪を手配した警察
手配を受けた犯罪で、既にその正犯 又は共同正犯である被疑者の一部を逮捕している警察があるときはその警察
前2号に規定する場合のほかは、先に手配をした警察
前2項に規定する身柄引渡しの原則により難い事情があるときは、警察本部長の決するところによる。
指名手配により逮捕した被疑者の身柄を引き渡すに当たつては、被疑者引渡書(別記様式第5号)を作成しなければならない。
被疑者の護送 その他犯罪の捜査のため必要があるときは、他の警察に対し、被疑者の留置の依頼をすることができる。
警察官は、他の警察の管轄区域において犯罪の捜査を行うに当たつては、所轄警察に連絡するようにしなければならない。
第4節 検察官との関係
警察官は、捜査に関し、検察官と互に協力しなければならない。
警察本部長 または警察署長は、その捜査する事件について、公訴を実行するため、あらかじめ連絡しておく必要があると認めるときは、すみやかに、犯罪事実の概要 その他の参考となるべき事項を検察官に連絡しなければならない。
警察官は、司法警察職員捜査書類基本書式例 その他の刑訴法第193条第1項の規定に基づき検察官から示された一般的指示があるときは、これに従つて捜査を行わなければならない。
警察官は、他の司法警察職員との間において捜査の調整につき、刑訴法第193条第2項の規定による検察官の一般的指揮を必要とする特別の事情があるときは、すみやかに順を経て警察本部長に報告しなければならない。
警察本部長は、前項に規定する報告を受けた場合において、必要があると認められるときは、すみやかに、その旨を検察官に申し出なければならない。
刑訴法第193条第2項の規定に基き、検察官から一般的指揮が与えられたときは、警察官はこれに従つて捜査を行わなければならない。
刑訴法第193条第3項の規定により検察官が自ら捜査する犯罪について、その補助を求められたときは、警察官はすみやかに、これに従つて必要な捜査を行い、かつ、その結果を報告しなければならない。
第5節 特別司法警察職員等との関係
刑訴法第190条の規定により別に法律で定められた司法警察職員 またはこれに準ずる者(以下「特別司法警察職員等」という。)との共助に関しては、共助協定 その他の特別の定があるときはその規定するところによるほか、この節の規定によるものとする。
警察官は、特別司法警察職員等の職務の範囲に属する犯罪を特別司法警察職員等に先んじて知つた場合において、その捜査を特別司法警察職員等にゆだねることなく、自ら捜査することを適当と認めるときは、警察本部長 または警察署長に報告して、その指揮を受け、捜査するものとする。
この場合においては、当該特別司法警察職員等と連絡を密にし、その専門的知識による助言等を受けたときは、充分これを尊重して捜査を行うようにしなければならない。
警察官は、特別司法警察職員等の職務の範囲に属する犯罪を特別司法警察職員等に先んじて知つた場合において、その捜査を特別司法警察職員等にゆだねることを適当と認めるときは、自ら急速を要する処置を行つた後、警察本部長 または警察署長に報告して、その指揮を受け、すみやかに必要な捜査資料を添えて、これを特別司法警察職員等に移すものとする。
前項の規定により、捜査をゆだねた後においても、当該特別司法警察職員等から捜査のために協力を求められた場合においては、できる限り、これに応じて協力するものとする。
警察官は、特別司法警察職員等が、その職務の範囲に属する犯罪を捜査する場合において、その事件が職務の範囲に属しない犯罪事件と関連するため、またはその他の理由により、警察官にその捜査を引き継ぐべき旨の申出を受けたときは、警察本部長 または警察署長に報告して、その指揮を受け、自らもその捜査を行うものとする。
この場合において、必要があるときは、当該特別司法警察職員等に対し、証拠物の引渡 その他捜査のための協力を求めるとともに、事後の捜査の経過 および結果を連絡するものとする。
警察官は、特別司法警察職員等の職務の範囲に属する犯罪を捜査する場合において、その捜査が当該特別司法警察職員等の行う捜査と競合するときは、警察本部長 または警察署長に報告して、その指揮を受け、当該特別司法警察職員等とその捜査に関し、必要な事項を協議するものとする。
第6節 捜査書類
捜査を行うに当つては、司法警察職員捜査書類基本書式例による調書 その他必要な書類を明確に作成しなければならない。
書類の作成に当つては、事実をありのままに、かつ、簡潔明瞭に表現することを旨とし、推測、誇張等にわたつてはならない。
書類には、特別の定がある場合を除いては、年月日を記載して署名押印し、所属官公署を表示しなければならない。
書類(裁判所 又は裁判官に対する申立て、意見の陳述、通知 その他これらに類する訴訟行為に関する書類を除く。)には、毎葉に契印するものとする。
ただし、その謄本 又は抄本を作成する場合には、契印に代えて、これに準ずる措置をとることができる。
書類を作成するに当たつては、文字を改変してはならない。
文字を加え、又は削るときは、その範囲を明らかにして、訂正した部分に押印しなければならない。
ただし、削つた部分は、これを読むことができるように字体を残さなければならない。
本人が文盲である等やむを得ない理由で書類を代書した場合には、代書事項が本人の意思と相違がないことを確かめた上、代書の理由を記載して署名押印しなければならない。
第2章 捜査の端緒
第1節 端緒のは握
警察官は、新聞紙 その他の出版物の記事、インターネットを利用して提供される情報、匿名の申告、風説 その他広く社会の事象に注意するとともに、警ら、職務質問等の励行により、進んで捜査の端緒を得ることに努めなければならない。
職務質問に当り、必要があると認められるときは、直ちに、指名手配 その他の手配 または通報の有無、被害届の有無、鑑識資料の有無等を、電話 その他適当な方法により、警視庁 もしくは道府県警察本部 または警察署に照会しなければならない。
警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。
前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第6号)に記入を求め 又は警察官が代書するものとする。
この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。
犯罪事件を受理したときは、警察庁長官(以下「長官」という。)が定める様式の犯罪事件受理簿に登載しなければならない。
第2節 告訴、告発および自首
司法警察員たる警察官は、告訴、告発 または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。
司法巡査たる警察官は、告訴、告発 または自首をする者があつたときは、直ちに、これを司法警察員たる警察官に移さなければならない。
自首を受けたとき または口頭による告訴 もしくは告発を受けたときは、自首調書 または告訴調書 もしくは告発調書を作成しなければならない。
告訴 または告発の口頭による取消しを受けたときは、告訴取消調書 または告発取消調書を作成しなければならない。
書面による告訴 または告発を受けた場合においても、その趣旨が不明であるとき または本人の意思に適合しないと認められるときは、本人から補充の書面を差し出させ、またはその供述を求めて参考人供述調書(補充調書)を作成しなければならない。
被害者の委任による代理人から告訴を受ける場合には、委任状を差し出させなければならない。
被害者以外の告訴権者から告訴を受ける場合には、その資格を証する書面を差し出させなければならない。
被害者以外の告訴権者の委任による代理人から告訴を受ける場合には、前2項の書面をあわせ差し出させなければならない。
前3項の規定は、告訴の取消を受ける場合について準用する。
告訴 または告発があつた事件については、特にすみやかに捜査を行うように努めるとともに、次に掲げる事項に注意しなければならない。
当該事件の犯罪事実以外の犯罪がないかどうか。
自首のあつた事件について捜査を行うに当つては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
当該犯罪 または犯人が既に発覚していたものでないかどうか。
自首が当該事件について他に存する真犯人を隠すためのものでないかどうか。
自首者が、自己が犯した他の犯罪を隠すために、ことさらに当該事件につき自首したものでないかどうか。
警察本部長 または警察署長は、告訴 または告発のあつた事件が、管轄区域外の犯罪であるため当該警察においてこれを処理することができないとき、またはこれを処理することが適当でないと認められるときは、関係警察に対してすみやかに移送の手続をとらなければならない。
前項の規定による移送をしたときは、すみやかに、告訴人 または告発人にその移送先を通知しなければならない。
警察官は、親告罪に係る犯罪があることを知つた場合において、直ちにその捜査を行わなければ証拠の収集 その他事後における捜査が著しく困難となるおそれがあると認めるときは、未だ告訴がない場合においても、捜査しなければならない。
この場合においては、被害者 またはその家族の名誉、信用等を傷つけることのないよう、特に注意しなければならない。
親告罪に係る犯罪につき捜査を行い、事件を検察官に送付した後、告訴人から告訴の取消を受けたときは、直ちに、その旨を検察官に通知し、必要な書類を追送しなければならない。
請求をまつて論ずる犯罪については、直ちにその捜査を行わなければ証拠の収集 その他事後における捜査が著しく困難となると認められる場合を除いては、請求があつてから、捜査するものとする。
国税通則法(昭和37年法律第66号)、関税法(昭和29年法律第61号)、地方税法(昭和25年法律第226号)その他の法律により通告処分の認められている犯則事件のあることを知つたときは、警察本部長 又は警察署長に報告してその指揮を受け、速やかに、その旨を当該事件につき調査の権限を有する職員(以下「調査職員」という。)に通知するものとする。
調査職員から、調査のため臨検、捜索 又は差押えを行うに当たり、援助の要求を受けたときは、必要な援助をしなければならない。
犯則事件について調査職員から告発を受けたときは、その捜査を行わなければならない。
この場合においても、常に調査職員と緊密に連絡をとるものとする。
犯則事件について、直ちにその捜査を行わなければ証拠の収集 その他事後における捜査が著しく困難となるおそれがあると認められるときは、未だ調査職員の告発がない場合においても、捜査し、その結果を調査職員に通知しなければならない。
第3章 捜査の開始
第1節 捜査の着手
警察官は、犯罪があると思料するときは、捜査の着手に先だち、順を経て、警察本部長 または警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。
ただし、急速を要する場合においては、必要な処置を行つた後、すみやかに報告するものとする。
捜査の着手については、犯罪の軽重 および情状、犯人の性格、事件の波及性 および模倣性、捜査の緩急等諸般の事情を判断し、捜査の時期 または方法を誤らないように注意しなければならない。
警察本部長 又は警察署長は、管轄権のない事件 又は当該警察において捜査することが適当でないと認められる事件については、速やかにこれを犯罪地 又は被疑者の住居地を管轄する警察 その他の適当な警察に移送 又は引継ぎしなければならない。
前項の規定による移送 又は引継ぎは、事件引継書(別記様式第5号)により行わなければならない。
第2節 捜査資料
捜査資料の収集は、捜査専従員のみによつて行われるのでなく、全警察職員の組織的な活動によつて行われるよう努めなければならない。
前項の規定により収集した捜査資料 及びその写しは、適切に管理しなければならない。
第1項の規定により収集された捜査資料 及びその写しを保管する必要がなくなつたときは、還付すべきものを除き、これらを確実に破棄しなければならない。
前2項の規定により、保管し、又は破棄される捜査資料が電磁的記録をもつて作成されたものである場合は、電磁的記録の特性を踏まえ、当該電磁的記録に記録された情報が漏えいしないための的確な措置を講じなければならない。
捜査に資するため、広く犯罪に関係ある社会的諸事情、犯罪を犯すおそれのある者 その他捜査上注意を要すると認められる者の動向等捜査に必要な基礎資料は、常に収集整備しておかなければならない。
捜査を行うに当つては、犯罪に関する有形 または無形の資料、内偵による資料 その他諸般の情報等確実な資料を収集し、これに基いて捜査を進めなければならない。
特に被疑者の逮捕 その他の強制処分を行うに当つては、事前にできる限り多くの確実な資料を収集しておかなければならない。
指掌紋、手口、写真 その他の鑑識資料は、常に収集整備することに努め、捜査を行うに当たつては、それらの多角的利用を図らなければならない。
捜査を行つたときは、そのつど捜査の過程に反省検討を加え、これによつて得たあらゆる参考資料を収集して、事後の捜査に活用するように努めなければならない。
第3節 犯罪現場
警察官は、現場臨検を必要とする犯罪の発生を知つたときは、捜査専従員たると否とを問わず、すみやかにその現場に臨み、必要な捜査を行わなければならない。
前項の場合において他に捜査主任官 その他の者による現場臨検が行われるときは、確実に現場を保存するよう努めなければならない。
警察官は、現場を臨検した場合において負傷者があるときは、救護の処置をとらなければならない。
前項の場合において、ひん死の重傷者があるときは、応急救護の処置をとるとともに、その者から犯人の氏名、犯行の原因、被害者の氏名、目撃者等を聴取しておかなければならない。
前項の重傷者が死亡したときは、その時刻を記録しておかなければならない。
現場の保存に当つては、できる限り現場を犯罪の行われた際の状況のまま保存するように努め、現場における捜査が適確に行われるようにしなければならない。
負傷者の救護、証拠物件の変質 および散逸の予防等特にやむを得ない事情のある場合を除いては、警察官であつても、みだりに現場に入つてはならない。
警察官は、犯罪の行われた地点だけでなく広く現場保存の範囲を定め、捜査資料の発見に資するようにしなければならない。
警察官は、保存すべき現場の範囲を定めたときは、直ちに、これを表示する等適切な処置をとり、みだりに出入する者のないようにしなければならない。
この場合において、現場 またはその附近に居合わせた者があるときは、その者の氏名、住居等を明確にしておくようにしなければならない。
現場において発見された捜査資料で、光線、雨水等により変質、変形 または消失するおそれのあるものについてはおおいをする等適当な方法により、その原状を保存するように努めなければならない。
負傷者の救護 その他やむを得ない理由のため現場を変更する必要があるとき または捜査資料を原状のまま保存することができないときは、写真、見取図、記録 その他の方法により原状を明らかにする処置をとらなければならない。
現場において捜査を行うに当たつては、現場鑑識 その他の科学的合理的な方法により、次に掲げる事項を明らかにするよう努め、犯行の過程を全般的に把握するようにしなければならない。
現場に通ずる道路 及びその状況
家屋 その他現場附近にある物件 及びその状況
現場において捜査を行うに当たつては、捜査主任官が、これに従事する捜査員の任務分担を定め、組織的に行うようにしなければならない。
遺留品、現場指掌紋等の資料を発見したときは、年月日時 及び場所を記載した紙片に被害者 又は第三者の署名を求め、これを添付して撮影する等証拠力の保全に努めなければならない。
第4節 緊急配備
警察本部長 または警察署長は、管轄区域内に発生した犯罪について、犯人捕そくのため緊急の必要がある場合においては、この節に定めるところに従つて、緊急配備をしなければならない。
管轄区域外に発生した犯罪について必要がある場合も、また同様とする。
警察本部長 または警察署長は、緊急配備の目的を達成するため、あらかじめ綿密適正な緊急配備計画を立て、所属警察官に周知させておかなければならない。
前項の計画を立てる場合において必要があるときは、隣接警察 その他関係機関と密接な連絡をとらなければならない。
緊急配備は、前条の規定による計画に基き、犯人の数、車両利用の状況、凶器の有無 その他犯罪の規模および態様を考慮し、配備につくべき区域、警察官数、特に警戒すべき地域 または地点等を定めて行うものとする。
緊急配備を行うに当つては、まず、交通の要所 その他の重要地点に警察官を配置し、事後、逐次配備網を伸縮する等事態に即応して行わなければならない。
第5節 捜査方針
捜査を行うに当つては捜査方針を立て、その方針に基いて捜査を行わなければならない。
捜査方針は、現場における捜査等により収集した有形無形の捜査資料、平素収集しておいた基礎資料等すべての資料を総合的に検討し、合理的に判断して、立てなければならない。
捜査方針の実施に当つては、捜査に従事する者の数、技能等を考慮して、その合理的編成を行い、具体的にその任務を授けなければならない。
捜査方針を立て、またはこれに検討を加えるため必要があると認められるときは、随時捜査会議を開き、なるべく多くの者の意見を聞くように努めなければならない。
第4章 任意捜査
任意捜査を行うに当り相手方の承諾を求めるについては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
承諾を強制し、またはその疑を受けるおそれのある態度 もしくは方法をとらないこと。
捜査を行うに当つては、聞込、尾行、密行、張込等により、できる限り多くの捜査資料を入手するように努めなければならない。
刑訴法第197条第3項の規定による通信履歴の電磁的記録を消去しないことの求め 及び当該求めの取消し 並びに同条第4項の規定による期間の延長をするときは、警察本部長 又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。
通信履歴の電磁的記録を消去しないことの求め 及び当該求めの取消し 並びに期間の延長は、司法警察員たる警察官が行わなければならない。
捜査のため、被疑者 その他の関係者に対して任意出頭を求めるには、電話、呼出状(別記様式第7号)の送付 その他適当な方法により、出頭すべき日時、場所、用件 その他必要な事項を呼出人に確実に伝達しなければならない。
この場合において、被疑者 又は重要な参考人の任意出頭については、警察本部長 又は警察署長に報告して、その指揮を受けなければならない。
被疑者 その他の関係者に対して任意出頭を求める場合には、呼出簿(別記様式第8号)に所要事項を記載して、その処理の経過を明らかにしておかなければならない。
逮捕状の発付されている場合であつても、その後の事情により逮捕状による逮捕の必要がないと認められるに至つたときは、任意捜査の方法によらなければならない。
この場合においては、逮捕状は、その有効期間内であつても、直ちに裁判官に返還しなければならない。
前項の場合において、刑訴法第201条の2第2項の規定による逮捕状に代わるものの交付があるときは、当該逮捕状に代わるものをも直ちに裁判官に返還しなければならない。
犯罪の現場 その他の場所、身体 又は物について事実発見のため必要があるときは、実況見分を行わなければならない。
実況見分は、居住者、管理者 その他関係者の立会を得て行い、その結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。
実況見分調書には、できる限り、図面 及び写真を添付しなければならない。
前3項の規定により、実況見分調書を作成するに当たつては、写真をはり付けた部分にその説明を付記するなど、分かりやすい実況見分調書となるよう工夫しなければならない。
実況見分調書は、客観的に記載するように努め、被疑者、被害者 その他の関係者に対し説明を求めた場合においても、その指示説明の範囲をこえて記載することのないように注意しなければならない。
被疑者、被害者 その他の関係者の指示説明の範囲をこえて、特にその供述を実況見分調書に記載する必要がある場合には、刑訴法第198条第3項から第5項まで および同法第223条第2項の規定によらなければならない。
この場合において、被疑者の供述に関しては、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げ、かつ、その点を調書に明らかにしておかなければならない。
被疑者の供述により凶器、盗品等 その他の証拠資料を発見した場合において、証明力確保のため必要があるときは実況見分を行い、その発見の状況を実況見分調書に明確にしておかなければならない。
女子の任意の身体検査は、行つてはならない。
ただし、裸にしないときはこの限りでない。
人の住居 又は人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶につき捜索をする必要があるときは、住居主 又は看守者の任意の承諾が得られると認められる場合においても、捜索許可状の発付を受けて捜索をしなければならない。
所有者、所持者 又は保管者の任意の提出に係る物を領置するに当たつては、なるべく提出者から任意提出書を提出させた上、領置調書を作成しなければならない。
この場合においては、刑訴法第120条の規定による押収品目録交付書を交付するものとする。
任意の提出に係る物を領置した場合(次項に規定する場合に該当する場合を除く。)において、その所有者がその物の所有権を放棄する旨の意思を表示したときは、任意提出書にその旨を記載させ、又は所有権放棄書の提出を求めなければならない。
任意の提出に係る物を領置した場合において、その物が電磁的記録に係る記録媒体であり、当該記録媒体の所有者でない提出者が当該電磁的記録について所有に属するものとみなされる権利(刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和38年法律第138号)第1条の2の規定により所有に属するものとみなされる場合における権利をいう。)を放棄する旨の意思を表示したときは、任意提出書にその旨を記載させ、又は電磁的記録に係る権利放棄書の提出を求めなければならない。
被疑者 その他の者の遺留物を領置するに当つては、居住者、管理者 その他関係者の立会を得て行うようにしなければならない。
前項の領置については、実況見分調書 その他によりその物の発見された状況等を明確にした上、領置調書を作成しておかなければならない。
領置をするに当たつては、指掌紋 その他の附着物を破壊しないように注意するとともに、その物をできる限り原状のまま保存するため適当な方法を講じ、滅失、毀損、変質、変形、混合 又は散逸することのないように注意しなければならない。
領置物について廃棄、換価、還付 又は仮還付の処分をするときは、警察本部長 又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。
ただし、急速に廃棄処分をする必要がある場合においては、処分後速やかに警察本部長 又は警察署長にその旨を報告するものとする。
還付 又は仮還付の処分をするに当たつては、相手方から(仮)還付請書を徴しておくとともに、先に仮還付した物について更に還付の処分をする必要があるときは、還付通知書(別記様式第9号)を交付して行うものとする。
運搬 又は保管に不便な領置物について、看守者を置き、又は所有者 その他の者に、その者の承諾を得て保管させる場合も第1項の場合と同様とする。
この場合は、なるべくその者から保管請書を徴しておかなくてはならない。
廃棄(刑訴法第499条第4項の規定によるものに限る。)、換価、還付 及び仮還付の処分は、司法警察員たる警察官が行わなければならない。
領置物の還付に関して刑訴法第499条第2項の規定による公告をするときは、警察本部長 又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。
前項の公告は、司法警察員たる警察官が行わなければならない。
領置物について廃棄 又は換価の処分を行うに当たつては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
特に必要があると認められるときは、当該領置物の性状、価格等を鑑定に付しておくこと。
この場合においては、再鑑定のためその物の一部保存について配意すること。
危険を生じ、滅失 又は破損するおそれがあり、保管に不便なものである等廃棄 又は換価の処分を行うべき相当な理由があることを明確にしておくこと。
廃棄 又は換価の処分をしたときは、それぞれ廃棄処分書(別記様式第10号)又は換価処分書(別記様式第11号)を作成しておかなければならない。
通告処分の認められている犯則事件に関する領置物について廃棄 又は換価の処分をするに当つては、あらかじめ、調査職員に連絡しなければならない。
領置物の還付 または仮還付の処分をするに当つては、還付 または仮還付を受ける者が正当の権限を有する者であるかどうかについて調査を行い、事後に紛議の生ずることがないようにしなければならない。
領置物の廃棄、換価、還付 または仮還付の処分をするに当つては、その物に係る領置調書中にその旨を記載しておかなければならない。
事件の捜査が長期にわたる場合においては、領置物は証拠物件保存簿(別記様式第12号)に記載して、その出納を明確にしておかなければならない。
第5章 逮捕
逮捕権は、犯罪構成要件の充足 その他の逮捕の理由、逮捕の必要性、これらに関する疎明資料の有無、収集した証拠の証明力等を充分に検討して、慎重適正に運用しなければならない。
刑訴法第199条第2項の規定による逮捕状(以下「通常逮捕状」という。)の請求(当該請求と同時に同法第201条の2第1項の規定による逮捕状に代わるものの交付の請求をする場合にあつては、当該逮捕状に代わるものの交付の請求を含む。次項において同じ。)は、公安委員会が指定する警部以上の階級にある司法警察員(以下「指定司法警察員」という。)が、責任をもつてこれに当たらなければならない。
指定司法警察員が通常逮捕状の請求をするに当たつては、順を経て警察本部長 又は警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。
ただし、急速を要し、指揮を受けるいとまのない場合には、請求後、速やかに その旨を報告するものとする。
刑訴法第210条第1項の規定による逮捕状(以下「緊急逮捕状」という。)の請求は、指定司法警察員 又は当該逮捕に当たつた警察官がこれを行うものとする。
ただし、指定司法警察員がいないときは、他の司法警察員たる警察官が請求しても差し支えない。
被疑者を緊急逮捕した場合は、逮捕の理由となつた犯罪事実がないこと 若しくはその事実が罪とならないことが明らかになり、又は身柄を留置して取り調べる必要がないと認め、被疑者を釈放したときにおいても、緊急逮捕状の請求をしなければならない。
逮捕状を請求するに当つて、当該事件が親告罪に係るものであつて、未だ告訴がないときは、告訴権者に対して告訴するかどうかを確かめなければならない。
通常逮捕状を請求するときは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること 及び逮捕の必要があることを疎明する被害届、参考人供述調書、捜査報告書等の資料を添えて行わなければならない。
ただし、刑訴法第199条第1項ただし書に規定する罰金、拘留 又は科料に当たる罪について通常逮捕状を請求するときは、更に、被疑者が定まつた住居を有しないこと 又は正当な理由がなく任意出頭の求めに応じないことを疎明する資料を添えて行わなければならない。
緊急逮捕状を請求するときは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があつたこと、逮捕の必要があつたこと 及び急速を要し逮捕状を求めることができない理由があつたことを疎明する逮捕手続書、被害届 その他の資料を添えて行わなければならない。
逮捕状に代わるものの交付の請求をするときは、当該請求に係る者が刑訴法第201条の2第1項第1号 又は第2号に掲げる者のいずれかに該当することを疎明する被害届、参考人供述調書、捜査報告書等の資料をも添えて行わなければならない。
逮捕状の請求(当該請求と同時に逮捕状に代わるものの交付の請求をする場合にあつては、当該逮捕状に代わるものの交付の請求を含む。第125条において同じ。)に当たつては、なるべく その事件の捜査に当たつた警察官が裁判官のもとに出頭しなければならない。
裁判官から特に当該逮捕状を請求した者の出頭を求められたときは、当該請求者が自ら出頭して、陳述し、又は書類 その他の物の提示に当たらなければならない。
逮捕状の発付を受けた後、逮捕前において、引致場所 その他の記載の変更を必要とする理由が生じたときは、当該逮捕状を請求した警察官 又はこれに代わるべき警察官が、当該逮捕状を発付した裁判官 又はその者の所属する裁判所の他の裁判官に対し、書面(引致場所の変更を必要とするときは、引致場所変更請求書)により逮捕状(逮捕状の発付と同時に逮捕状に代わるものの交付がある場合にあつては、逮捕状 及び当該逮捕状に代わるもの)の記載の変更を請求するものとする。
ただし、やむをえない事情があるときは、他の裁判所の裁判官に対して請求することができる。
逮捕状の請求をしたときは、令状等請求簿(別記様式第13号)により請求の手続、発付後の状況等を明らかにしておかなければならない。
逮捕を行うに当たつては、感情にとらわれることなく、沈着冷静を保持するとともに、必要な限度を超えて実力を行使することがないように注意しなければならない。
逮捕を行うに当たつては、あらかじめ、その時期、方法等を考慮しなければならない。
警察本部長 又は警察署長は、逮捕を行うため必要な態勢を確立しなければならない。
被疑者を逮捕したときは、直ちにその身体について凶器を所持しているかどうかを調べなければならない。
多数の被疑者を同時に逮捕するに当たつては、個々の被疑者について、人相、体格 その他の特徴、その犯罪事実 及び逮捕時の状況 並びに当該被疑者と証拠との関連を明確にし、逮捕、押収 その他の処分に関する書類の作成、取調べ 及び立証に支障を生じないようにしなければならない。
刑訴法第201条の2第3項の規定により逮捕状に代わるものを被疑者に示すときは、当該逮捕状に代わるものの交付の請求に係る個人特定事項(同条第1項に規定する個人特定事項をいう。第189条第3項において同じ。)が被疑者に知られることがないように注意しなければならない。
逮捕した被疑者が逃亡し、自殺し、又は暴行する等のおそれがある場合において必要があるときは、確実に手錠を使用しなければならない。
前項の規定により、手錠を使用する場合においても、苛酷にわたらないように注意するとともに、衆目に触れないように努めなければならない。
逮捕した被疑者を連行し、又は護送するに当たつては、被疑者が逃亡し、罪証を隠滅し、自殺し、又はこれを奪取されることのないように注意しなければならない。
前項の場合において、必要があるときは、他の警察に対し、被疑者の仮の留置を依頼することができる。
警察官は、刑訴法第214条の規定により現行犯人を引き渡す者があるときは、直ちにこれを受け取り、逮捕者の氏名、住所 および逮捕の事由を聞き取らなければならない。
前項の犯人を受け取つた警察官が司法巡査であるときは、すみやかにこれを司法警察員に引致しなければならない。
司法警察員は、被疑者を逮捕し、又は逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちにその者について次に掲げる処置をとつた後、被疑者の留置の要否 又は釈放について、警察本部長 又は警察署長の指揮を受けなければならない。
前号に掲げる処置をとるに当たつて、弁護士、弁護士法人(弁護士・外国法事務弁護士共同法人を含む。第132条において同じ。)又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨 及びその申出先を教示すること。
司法警察員は、前項第2号に掲げる処置をとるに当たつては、被疑者に対し、次に掲げる事項を教示しなければならない。
引き続き勾留を請求された場合において、貧困 その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは、裁判官に対して弁護人の選任を請求することができること。
裁判官に対して弁護人の選任を請求する場合は、刑訴法第36条の2に規定する資力申告書を提出しなければならないこと。
被疑者の資力が50万円以上であるときは、あらかじめ、第1号の勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に弁護人の選任の申出をしていなければならないこと。
被疑者が留置されている場合において、留置の必要がなくなつたと認められるときは、司法警察員は、警察本部長 又は警察署長の指揮を受け、直ちに被疑者の釈放に係る措置をとらなければならない。
被疑者の留置の要否を判断するに当たつては、その事案の軽重 及び態様 並びに逃亡、罪証隠滅、通謀等捜査上の支障の有無 並びに被疑者の年齢、境遇、健康 その他諸般の状況を考慮しなければならない。
逮捕した被疑者については、引致後速やかに、指掌紋を採取し、写真 その他鑑識資料を確実に作成するとともに、指掌紋照会 並びに余罪 及び指名手配の有無を照会しなければならない。
取調べの過程において、新たな事実を発見した場合においても、余罪 及び指名手配の有無を照会しなければならない。
逮捕された被疑者が弁護人選任の申出をした場合において、当該弁護士、弁護士法人 若しくは弁護士会 又は父兄 その他の者にその旨を通知したときは、弁護人選任通知簿(別記様式第14号)に記載して、その手続を明らかにしておかなければならない。
弁護人の選任については、弁護人と連署した選任届を当該被疑者 または刑訴法第30条第2項の規定により独立して弁護人を選任することができる者から差し出させるものとする。
被疑者の弁護人の選任届は、各被疑者について通じて3人をこえてこれを受理してはならない。
ただし、3人をこえて弁護人を選任することについて管轄地方裁判所 または簡易裁判所の許可がある場合は、この限りでない。
弁護人の選任に当つては、警察官から特定の弁護人を示唆し、または推薦してはならない。
被疑者の弁解を録取するに当つて、その供述が犯罪事実の核心に触れる等弁解の範囲外にわたると認められるときは、弁解録取書に記載することなく、被疑者供述調書を作成しなければならない。
被疑者の身柄とともに事件を送致する場合において、遠隔の地で被疑者を逮捕したため、または逮捕した被疑者が病気、でい酔等により保護を必要とするため その他やむを得ない事情により、刑訴法第203条第1項に規定する時間の制限に従うことができなかつたときは、遅延事由報告書を作成して、これを送致書に添付しなければならない。
被疑者を逮捕したときは、逮捕の年月日時、場所、逮捕時の状況、証拠資料の有無、引致の年月日時等逮捕に関する詳細を記載した逮捕手続書を作成しなければならない。
前項の場合において、被疑者が現行犯人であるときは、現に罪を行い、もしくは現に罪を行い終つたと認められた状況、または刑訴法第212条第2項各号の一に当る者が罪を行い終つてから間がないと明らかに認められた状況を逮捕手続書に具体的に記載しなければならない。
留置被疑者を同行させて警察施設の外において行われる実況見分 その他の捜査は、あらかじめ捜査主任官が留置主任官と協議して作成し、警察本部長 又は警察署長の承認を受けた計画に基づいて行わなければならない。
前項の計画は、同行する被疑者、日時、場所 及び行程、当該捜査に従事する者 及びその任務分担、被疑者の逃亡 その他の事故を防止するために留意すべき事項 その他捜査を適正に遂行し、及び事故を防止するため必要な事項について定めるものとする。
捜査員は、自らが犯罪の捜査に従事している場合における当該犯罪について留置されている被留置者に係る留置業務に従事してはならない。
第6章 捜索・差押え等
第1節 通則
刑訴法第218条第1項の規定による捜索、差押え、記録命令付差押え、検証 又は身体検査の令状の請求は、指定司法警察員がこれを行うものとする。
ただし、やむを得ないときは、他の司法警察員が請求しても差し支えない。
前項の令状を請求するに当たつては、順を経て警察本部長 又は警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。
ただし、急速を要し、指揮を受けるいとまのない場合には、請求後速やかに、その旨を報告するものとする。
第1項の令状を請求したときは、令状等請求簿により、請求の手続、発付後の状況等を明らかにしておかなければならない。
捜索、差押え、記録命令付差押え、検証 又は身体検査の令状を請求するに当たつては、捜査に必要かつ十分な範囲を定め、捜索すべき場所、身体 若しくは物、差し押さえるべき物、記録させ 若しくは印刷させるべき電磁的記録 及びこれを記録させ 若しくは印刷させるべき者、検証すべき場所、身体 若しくは物 又は検査すべき身体の部位等を明確にして行わなければならない。
刑訴法第218条第2項の規定による差押えの令状を請求するに当たつては、前項に規定する事項のほか、差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を明確にして行わなければならない。
捜索、差押え、記録命令付差押え、検証 又は身体検査の令状を請求するに当たつては、被疑者供述調書、参考人供述調書、捜査報告書 その他犯罪の捜査のため当該処分を行う必要があることを疎明する資料を添えて行わなければならない。
被疑者以外の者の身体、物 又は住居 その他の場所について、捜索許可状を裁判官に請求するに当たつては、差し押さえるべき物の存在を認めるに足りる状況があることを疎明する資料を添えて行わなければならない。
郵便物、信書便物 又は電信に関する書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するもの(被疑者から発し、又は被疑者に対して発したものを除く。)について差押許可状を裁判官に請求するに当たつては、その物が当該事件に関係があると認めるに足りる状況があることを疎明する資料を添えて行わなければならない。
捜索、差押え、記録命令付差押え 又は検証を行うに当たつては、必要以上に関係者の迷惑になることのないように特に注意しなければならない。
捜索、差押え、記録命令付差押え 又は検証を行うに当たつては、やむを得ない理由がある場合を除くほか、建造物、器具等を損壊し、又は書類 その他の物を乱すことがないように注意するとともに、これを終えたときは、できる限り原状に復しておくようにしなければならない。
令状により捜索、差押え、記録命令付差押え、検証 又は身体検査を行うに当たつては、当該処分を受ける者に対して、令状を示さなければならない。
やむを得ない理由によつて、当該処分を受ける者に令状を示すことができないときは、立会人に対してこれを示すようにしなければならない。
被疑者を逮捕する場合において必要があるときは、逮捕の現場において刑訴法第220条の規定による捜索、差押 または検証を行い、捜査資料を発見入手するように努めなければならない。
公務所内で捜索、差押え、記録命令付差押え 又は検証を行うに当たつては、その長 又はこれに代わるべき者に通知してこれに立ち会わせなければならない。
前項の規定による場合を除いて、人の住居 又は人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶内で捜索、差押え、記録命令付差押え 又は検証を行うに当たつては、住居主 若しくは看守者 又はこれらの者に代わるべき者を立ち会わせなければならない。
これらの者を立ち会わせることができないときは、隣人 又は地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。
ただし、刑訴法第220条の規定により被疑者を捜索する場合において急速を要するときは、この限りでない。
女子の身体について捜索を行う場合には、18歳以上の女子を立ち会わせなければならない。
ただし、急速を要する場合は、この限りでない。
女子の身体を検査する場合には、医師 又は18歳以上の女子を立ち会わせなければならない。
捜索、差押え、記録命令付差押え 又は検証を行うに当たつて捜査上特に必要があるときは、被疑者 その他の関係者を立ち会わせるようにしなければならない。
前項の場合においては、常にこれらの者の言語 および挙動に注意し、新たな捜査資料を入手することに努めなければならない。
第2節 捜索
捜索を行うに当つては、公務所内 または人の居住し、もしくは人の看守する邸宅、建造物 もしくは船舶内以外の場所でこれを行う場合にも、なるべく第三者の立会を得て行うようにしなければならない。
前項の場合において、第三者の立会が得られないときは、他の警察官の立会を得て捜索を行うものとする。
捜索を行うに当つては、捜査主任官 またはこれに代るべき者は、捜索すべき場所 その他について各人の分担を定め、綿密周到に行うようにしなければならない。
捜索を行うに当つては、立会人 または特に許可を受けた者以外の者は、その場所から退去させ、およびその場所に出入させないようにしなければならない。
前項の許可を受けないでその場所にある者に対しては、退去を強制し または看守者を附して、捜索の実施を妨げさせないようにしなければならない。
ただし、必要な限度をこえて実力を行使することのないようにしなければならない。
差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であつて、捜索を行うに当たつて必要があるときは、刑訴法第222条第1項において準用する同法第111条の2の規定に基づき、処分を受ける者に対し、電子計算機の操作 その他の必要な協力を求めるものとする。
捜索に着手した後、一時これを中止する場合においては、その場所を閉鎖し、または看守者を附して事後の捜索の続行に支障がないようにしておかなければならない。
捜索を行つた場合は、捜索の状況を明らかにした捜索調書(被疑者捜索調書を含む。)を作成しなければならない。
捜索に際し、処分を受ける者に捜索許可状を示すことができなかつたとき、立会人を得ることができなかつたとき、又は女子の身体について捜索を行う場合に急速を要し、18歳以上の女子の立会いが得られなかつたときは、捜索調書にその旨を記載し、その理由を明らかにしておかなければならない。
捜索をした結果、証拠物 または没収すべき物がない場合において、当該処分を受けた者から請求があつたときは、すみやかに捜索証明書を作成して交付しなければならない。
第3節 差押え及び記録命令付差押え
第109条(任意提出物の領置)第1項後段、第2項 及び第3項 並びに第110条第2項から第117条まで(遺留物の領置、原状のままの領置、廃棄等の処分、還付の公告、廃棄処分等と証拠との関係、調査職員への連絡、領置物の還付等の相手方の調査、領置調書への記載、証拠物件保存簿)の規定は、差押え 及び記録命令付差押えを行う場合について準用する。
この場合において、
第110条第2項 及び第116条中
「領置調書」とあるのは、
「差押調書 又は記録命令付差押調書」と
読み替えるものとする。
次に掲げる処分を行つた場合は、これらの処分を受けた者に対しても押収品目録交付書を交付しなければならない。
刑訴法第222条第1項において準用する同法第110条の2の規定による処分を行つた場合
記録命令付差押え 又は刑訴法第218条第2項の規定による処分を行うに当たり記録媒体を警察官が用意した場合
第145条(第三者の立会)の規定は、差押えを行う場合について、第147条(執行中の退去 および出入禁止)、第147条の2(協力要請)及び第148条(捜索中止の場合の処置)の規定は、差押え 又は記録命令付差押えを行う場合について、それぞれ準用する。
第149条(捜索調書)第2項の規定は、差押調書 又は記録命令付差押調書の作成について準用する。
犯罪に関係があると認められる物を発見した場合において、その物の所有者 又は保管者から任意の提出を受ける見込みがないと認めたときは、直ちにその物に対する差押許可状の発付を請求するとともに、その隠匿、散逸等を防止するため適切な処置をとらなければならない。
犯罪に関係があると認められる電磁的記録を発見した場合において、その電磁的記録に係る記録媒体の所有者 若しくは保管者 又はその電磁的記録を保管する者 その他その電磁的記録を利用する権限を有する者からその電磁的記録に係る記録媒体 又はその電磁的記録を記録 若しくは印刷させた記録媒体について任意の提出を受ける見込みがないと認めたときは、直ちにその電磁的記録に係る記録媒体に対する差押許可状 又はその電磁的記録に対する記録命令付差押許可状の発付を請求するとともに、その隠匿、散逸等を防止するため適切な処置をとらなければならない。
差押物について、刑訴法第222条第1項において準用する同法第123条第3項の規定による交付 又は複写の許可をするときは、警察本部長 又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。
前項の交付 又は複写の許可は、司法警察員たる警察官が行わなければならない。
第1項の交付 又は複写の許可をするに当たつては、相手方から交付請書 又は複写電磁的記録請書を徴しておくものとする。
差押えを受けた者が第1項の交付 又は複写の許可を受ける権利を放棄する旨の意思を表示した場合は、電磁的記録に係る権利放棄書の提出を求めなければならない。
第1項の交付 又は複写の許可に関して刑訴法第499条の2第1項において準用する同法第499条第2項の規定による公告をするときは、警察本部長 又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。
前項の公告は、司法警察員たる警察官が行わなければならない。
第4節 検証
犯罪の現場 その他の場所、身体 または物の検証については、事実発見のため身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊 その他必要な処分をすることができる。
死体の検証、墳墓の発掘等を行うに当つては、礼を失わないように注意し、配偶者、直系の親族 または兄弟姉妹があるときは、これらの者に、その旨を通知し、なるべく その立会を得るようにしなければならない。
前項の場合において、死体の被服、附着物、墳墓内の埋葬物等で捜査上必要があると認められるものについては、遺族から任意提出を受け、または差押許可状により差押を行わなければならない。
第104条第3項から第106条まで(実況見分、実況見分調書記載上の注意、被疑者の供述に基づく実況見分)の規定は、検証を行う場合について準用する。
この場合において、
これらの規定中
「実況見分調書」とあるのは
「検証調書 又は身体検査調書」と
読み替えるものとする。
検証を行う場合において他の処分と同時に身体の検査をするときは、別に身体検査調書を作成することなく、検証調書に身体の検査に関する事項をもあわせて記載することができる。
第145条(第三者の立会)、第147条(執行中の退去および出入禁止)、第147条の2(協力要請)、第148条(捜索中止の場合の処置)及び第149条(捜索調書)第1項の規定は検証を行う場合について、第149条(捜索調書)第2項の規定は検証調書の作成について、それぞれ準用する。
この場合において、
第149条第1項の規定中
「捜索調書」とあるのは、
「検証調書 又は身体検査調書」と
読み替えるものとする。
身体検査に際し、やむを得ない理由により立会人を得ることができなかつたときは、その事情を身体検査調書に明らかにしておかなければならない。
身体検査を行うに当たつては、刑訴法第218条第6項の規定により裁判官の付した条件を厳格に遵守するほか、性別、年齢、健康状態、場所的関係 その他諸般の状況を考慮してこれを受ける者の名誉を害しないように注意し、かつ、穏当な方法で行わなければならない。
身体検査を行うに当つては、必要があると認められるときは、医師 その他専門的知識を有する者の助力を得て行わなければならない。
負傷者の負傷部位について身体検査を行うときは、その状況を撮影等により明確に記録する等の方法をとり、できる限り短時間のうちに終了するように努めなければならない。
刑訴法第222条第7項の規定により、正当の理由がなく身体検査を拒んだ者に対する過料処分 またはその者にその拒絶により生じた費用の賠償を命ずべき処分を裁判所に請求するには、過料処分等請求書を作成して行わなければならない。
第7章 没収保全等の請求
第119条(通常逮捕状の請求等)の規定は、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成3年法律第94号。以下この条において「麻薬特例法」という。)第19条第3項、不正競争防止法(平成5年法律第47号)第35条第3項 及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11年法律第136号。以下この条において「組織的犯罪処罰法」という。)第23条第1項の没収保全(麻薬特例法第19条第1項、不正競争防止法第35条第1項 及び組織的犯罪処罰法第22条第1項の没収保全命令による処分の禁止をいう。次条第1項 及び第165条において同じ。)及び附帯保全(麻薬特例法第19条第2項、不正競争防止法第35条第2項 及び組織的犯罪処罰法第22条第2項の附帯保全命令による処分の禁止をいう。次条第2項 及び第165条において同じ。)の請求について準用する。
没収保全の請求をするに当たつては、処分を禁止すべき財産が法令の規定により没収することができる財産に当たると思料するに足りる相当な理由があること 及び当該財産を没収するため没収保全をする必要があることを疎明する被疑者調書、参考人調書、捜査報告書等の資料を添えて行わなければならない。
附帯保全の請求をするに当たつては、処分を禁止すべき権利がその上に存在する財産の没収により当該権利が消滅すると思料するに足りる相当な理由があり当該財産を没収するため附帯保全をする必要があること 又は当該権利が仮装のものであると思料するに足りる相当な理由があることを疎明する被疑者調書、参考人調書、捜査報告書等の資料を添えて行わなければならない。
没収保全 又は附帯保全の請求をしたときは、没収保全等請求簿(別記様式第15号)により請求の手続、関係書類の送付月日等を明らかにしておかなければならない。
第8章 取調べ
取調べに当たつては、予断を排し、被疑者 その他関係者の供述、弁解等の内容のみにとらわれることなく、あくまで真実の発見を目標として行わなければならない。
取調べを行うに当たつては、被疑者の動静に注意を払い、被疑者の逃亡 及び自殺 その他の事故を防止するように注意しなければならない。
取調べを行うに当たつては、事前に相手方の年令、性別、境遇、性格等を把握するように努めなければならない。
取調べに当たつては、冷静を保ち、感情にはしることなく、被疑者の利益となるべき事情をも明らかにするように努めなければならない。
取調べに当たつては、言動に注意し、相手方の年令、性別、境遇、性格等に応じ、その者にふさわしい取扱いをする等 その心情を理解して行わなければならない。
警察官は、常に相手方の特性に応じた取調べ方法の習得に努め、取調べに当たつては、その者の特性に応じた方法を用いるようにしなければならない。
取調べを行うに当たつては、強制、拷問、脅迫 その他供述の任意性について疑念をいだかれるような方法を用いてはならない。
取調べを行うに当たつては、自己が期待し、又は希望する供述を相手方に示唆する等の方法により、みだりに供述を誘導し、供述の代償として利益を供与すべきことを約束し、その他供述の真実性を失わせるおそれのある方法を用いてはならない。
取調べは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜に 又は長時間にわたり行うことを避けなければならない。
この場合において、午後10時から午前5時までの間に、又は1日につき8時間を超えて、被疑者の取調べを行うときは、警察本部長 又は警察署長の承認を受けなければならない。
精神 又は身体に障害のある者の取調べを行うに当たつては、その者の特性を十分に理解し、取調べを行う時間や場所等について配慮するとともに、供述の任意性に疑念が生じることのないように、その障害の程度等を踏まえ、適切な方法を用いなければならない。
被疑者の取調べを行うに当たつては、あらかじめ、自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げなければならない。
前項の告知は、取調べが相当期間中断した後再びこれを開始する場合 又は取調べ警察官が交代した場合には、改めて行わなければならない。
共犯者の取調べは、なるべく各別に行つて、通謀を防ぎ、かつ、みだりに供述の符合を図ることのないように注意しなければならない。
取調べを行うに当たり、対質尋問を行う場合には、特に慎重を期し、一方が他方の威圧を受ける等のことがないようその時期 及び方法を誤らないように注意しなければならない。
捜査上特に必要がある場合において、証拠物を被疑者に示すときは、その時期 及び方法に適切を期するとともに、その際における被疑者の供述を調書に記載しておかなければならない。
相手方の現在する場所で臨床の取調べを行うに当たつては、相手方の健康状態に十分の考慮を払うことはもちろん、捜査に重大な支障のない限り、家族、医師 その他適当な者を立ち会わせるようにしなければならない。
取調べにより被疑者の供述があつたときは、その供述が被疑者に不利な供述であると有利な供述であるとを問わず、直ちにその供述の真実性を明らかにするための捜査を行い、物的証拠、情況証拠 その他必要な証拠資料を収集するようにしなければならない。
被疑者の供述については、事前に収集した証拠 及び前項の規定により収集した証拠を踏まえ、客観的事実と符合するかどうか、合理的であるかどうか等について十分に検討し、その真実性について判断しなければならない。
事実を明らかにするため被疑者以外の関係者を取り調べる必要があるときは、なるべく、その事実を直接に経験した者から供述を求めるようにしなければならない。
重要な事項に係るもので伝聞にわたる供述があつたときは、その事実を直接に経験した者について、更に取調べを行うように努めなければならない。
被疑者以外の者を取り調べる場合においては、その者が死亡、精神 又は身体の故障 その他の理由により公判準備 又は公判期日において供述することができないおそれがあり、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるときは、捜査に支障のない限り被疑者、弁護人 その他適当な者を取調べに立ち会わせ、又は検察官による取調べが行われるように連絡する等の配意をしなければならない。
刑訴法第226条 又は同法第227条の規定による証人尋問の必要があると認められるときは、証人尋問請求方連絡書に、同法第226条 又は同法第227条に規定する理由があることを疎明すべき資料を添えて、検察官に連絡しなければならない。
この場合において、証明すべき事実 及び尋問すべき事項は、特に具体的かつ明瞭に記載するものとする。
取調べを行つたときは、特に必要がないと認められる場合を除き、被疑者供述調書 又は参考人供述調書を作成しなければならない。
被疑者 その他の関係者が、手記、上申書、始末書等の書面を提出した場合においても、必要があると認めるときは、被疑者供述調書 又は参考人供述調書を作成しなければならない。
本籍、住居、職業、氏名、生年月日、年齢 及び出生地(被疑者が法人であるときは名称 又は商号、主たる事務所 又は本店の所在地 並びに代表者の氏名 及び住居、被疑者が法人でない団体であるときは名称、主たる事務所の所在地 並びに代表者、管理人 又は主幹者の氏名 及び住居)
位記、勲章、褒賞、記章、恩給 又は年金の有無(もしあるときは、その種類 及び等級)
前科の有無(もしあるときは、その罪名、刑名、刑期、罰金 又は科料の金額、刑の執行猶予の言渡し 及び保護観察に付されたことの有無、犯罪事実の概要 並びに裁判をした裁判所の名称 及びその年月日)
起訴猶予 又は微罪処分の有無(もしあるときは、犯罪事実の概要、処分をした庁名 及び処分年月日)
保護処分を受けたことの有無(もしあるときは、その処分の内容、処分をした庁名 及び処分年月日)
現に他の警察署 その他の捜査機関において捜査中の事件の有無(もしあるときは、その罪名、犯罪事実の概要 及び当該捜査機関の名称)
現に裁判所に係属中の事件の有無(もしあるときは、その罪名、犯罪事実の概要、起訴の年月日 及び当該裁判所の名称)
被害者との親族 又は同居関係の有無(もし親族関係のあるときは、その続柄)
盗品等に関する罪の被疑者については、本犯と親族 又は同居の関係の有無(もし親族関係があるときは、その続柄)
犯行後、国外にいた場合には、その始期 及び終期
未成年者、成年被後見人 又は被保佐人であるときは、その法定代理人 又は保佐人の氏名 及び住居(法定代理人 又は保佐人が法人であるときは名称 又は商号、主たる事務所 又は本店の所在地 並びに代表者の氏名 及び住居)
参考人供述調書については、捜査上必要な事項を明らかにするとともに、被疑者との関係をも記載しておかなければならない。
刑訴法第60条の勾留の原因たるべき事項 又は同法第89条に規定する保釈に関し除外理由たるべき事項があるときは、被疑者供述調書 又は参考人供述調書に、その状況を明らかにしておかなければならない。
供述調書を作成するに当たつては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
形式に流れることなく、推測 又は誇張を排除し、不必要な重複 又は冗長な記載は避け、分かりやすい表現を用いること。
犯意、着手の方法、実行行為の態様、未遂既遂の別、共謀の事実等犯罪構成に関する事項については、特に明確に記載するとともに、事件の性質に応じて必要と認められる場合には、主題ごと 又は場面ごとの供述調書を作成するなどの工夫を行うこと。
必要があるときは、問答の形式をとり、又は供述者の供述する際の態度を記入し、供述の内容のみならず供述したときの状況をも明らかにすること。
供述者が略語、方言、隠語等を用いた場合において、供述の真実性を確保するために必要があるときは、これを そのまま記載し、適当な注を付しておく等の方法を講ずること。
供述を録取したときは、これを供述者に閲覧させ、又は供述者が明らかにこれを聞き取り得るように読み聞かせるとともに、供述者に対して増減変更を申し立てる機会を十分に与えなければならない。
被疑者の供述について前項の規定による措置を講ずる場合において、被疑者が調書(司法警察職員捜査書類基本書式例による調書に限る。以下 この項において同じ。)の毎葉の記載内容を確認したときは、それを証するため調書毎葉の欄外に署名 又は押印を求めるものとする。
供述調書の作成に当たつては、警察官 その他適当な者に記録 その他の補助をさせることができる。
この場合においては、その供述調書に補助をした者の署名押印を求めなければならない。
取調べを行うに当たつて弁護人 その他適当と認められる者を立ち会わせたときは、その供述調書に立会人の署名押印を求めなければならない。
供述者が、供述調書に署名することができないときは警察官が代筆し、押印することができないときは指印させなければならない。
前項の規定により、警察官が代筆したときは、その警察官が代筆した理由を記載して署名押印しなければならない。
供述者が供述調書に署名 又は押印を拒否したときは、警察官がその旨を記載して署名押印しておかなければならない。
捜査上の必要により、学識経験者 その他の通訳人を介して取調べを行つたときは、供述調書に、その旨 及び通訳人を介して当該供述調書を読み聞かせた旨を記載するとともに、通訳人の署名押印を求めなければならない。
捜査上の必要により、学識経験者 その他の翻訳人に被疑者 その他の関係者が提出した書面 その他の捜査資料たる書面を翻訳させたときは、その翻訳文を記載した書面に翻訳人の署名押印を求めなければならない。
被疑者 又は被告人を取調べ室 又はこれに準ずる場所において取り調べたとき(当該取調べに係る事件が、第198条の規定により送致しない事件と認められる場合を除く。)は、当該取調べを行つた日(当該日の翌日の午前零時以降まで継続して取調べを行つたときは、当該翌日の午前零時から当該取調べが終了するまでの時間を含む。次項において同じ。)ごとに、速やかに取調べ状況報告書(別記様式第16号)を作成しなければならない。
前項の場合において、逮捕 又は勾留(少年法(昭和23年法律第168号)第43条第1項の規定による請求に基づく同法第17条第1項の措置を含む。)により身柄を拘束されている被疑者 又は被告人について、当該逮捕 又は勾留の理由となつている犯罪事実以外の犯罪に係る被疑者供述調書を作成したときは、取調べ状況報告書に加え、当該取調べを行つた日ごとに、速やかに余罪関係報告書(別記様式第17号)を作成しなければならない。
取調べ状況報告書 及び余罪関係報告書を作成した場合において、被疑者 又は被告人がその記載内容を確認したときは、それを証するため当該取調べ状況報告書 及び余罪関係報告書の確認欄に署名押印を求めるものとする。
第181条の規定は、前項の署名押印について準用する。
この場合において、
同条第3項中
「その旨」とあるのは、
「その旨 及び その理由」と
読み替えるものとする。
次の各号のいずれかに掲げる事件について、逮捕 若しくは勾留されている被疑者の取調べを行うとき 又は被疑者に対し弁解の機会を与えるときは、刑訴法第301条の2第4項各号のいずれかに該当する場合を除き、取調べ等の録音・録画(取調べ 又は弁解の機会における被疑者の供述 及びその状況を録音 及び録画を同時に行う方法により記録媒体に記録することをいう。次項 及び次条において同じ。)をしなければならない。
短期1年以上の有期の懲役 又は禁錮に当たる罪であつて故意の犯罪行為により被害者を死亡させたものに係る事件
逮捕 又は勾留されている被疑者が精神に障害を有する場合であつて、その被疑者の取調べを行うとき 又は被疑者に対し弁解の機会を与えるときは、必要に応じ、取調べ等の録音・録画をするよう努めなければならない。
取調べ等の録音・録画をしたときは、速やかに録音・録画状況報告書(別記様式第18号)を作成しなければならない。
取調べ室は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
扉を片側内開きとするなど被疑者の逃走 及び自殺 その他の事故の防止に適当な構造 及び設備を有すること。
外部から取調べ室内が容易に望見されないような構造 及び設備を有すること。
適当な換気、照明 及び防音のための設備を設けるなど適切な環境で被疑者が取調べを受けることができる構造 及び設備を有すること。
第9章 証拠収集等への協力及び訴追に関する合意
司法警察員は、次に掲げる事項を行うに当たつては、順を経て警察本部長に報告し、その指揮を受けなければならない。
刑訴法第350条の6第1項の規定による検察官との協議
刑訴法第350条の6第2項に規定する同法第350条の4の協議における必要な行為
刑訴法第350条の6第2項の規定による供述の求めは、取調べと明確に区別して行わなければならない。
第10章 鑑識
鑑識は、予断を排除し、先入観に影響されることなく、あくまでも客観的に事実を明確にすることを目的としなければならない。
鑑識を行うに当たつては、前項の目的を達するため、周密を旨とし、微細な点に至るまで看過することのないように努めるとともに、鑑識の対象となつた捜査資料が、公判審理において証明力を保持し得るように処置しておかなければならない。
捜査資料について迅速正確な鑑識を行うことができるようにするため、あらかじめ、自動車塗膜、農薬、医薬品 その他品質、形状、商標等によつて分類することのできる物件で必要なものを収集し、鑑識基礎資料として分類保存しておくように努めなければならない。
鑑識のため捜査資料を送付するに当たつては、変形、変質、滅失、散逸、混合等のことがないように注意するとともに、郵送の場合には、その外装、容器等につき細心の注意を払わなければならない。
特に必要があるときは、直接持参する等の方法をとらなければならない。
重要な鑑識資料の受渡しに当たつては、相互に、資料の名称、個数、受渡年月日 及び受渡人氏名を明確にしておかなければならない。
血液、精液、だ液、臓器、毛髪、薬品、爆発物等の鑑識に当たつては、なるべくその全部を用いることなく一部をもつて行い、残部は保存しておく等再鑑識のための考慮を払わなければならない。
捜査のため、死体の解剖、指掌紋 又は筆跡の鑑別、電子情報処理組織 及び電磁的記録の解析等専門的知識を要する鑑定を科学警察研究所 その他の犯罪鑑識機関 又は適当な学識経験者に嘱託するに当たつては、警察本部長 又は警察署長の指揮を受けなければならない。
鑑定を嘱託するに当たつては、鑑定嘱託書により、次に掲げる事項を具して、行わなければならない。
被疑者の住居、氏名、年齢 及び性別
鑑定資料の採取年月日 及び採取時の状態
事件内容の概要 その他参考事項
鑑定嘱託書に前項第4号に掲げる事項を記載するに当たつては、鑑定人に予断 又は偏見を生ぜしめないため当該鑑定に必要な範囲にとどめることに注意するとともに、その他鑑定嘱託書中に鑑定人に予断 又は偏見を生ぜしめるような事項を記載してはならない。
当該事件について口頭で必要な説明を加える場合もまた同様とする。
鑑定のため、人の住居 又は人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶内に入り、身体を検査し、死体を解剖し、墳墓を発掘し、又は物を破壊する必要があるときは、鑑定処分許可状の発付を受け、これを鑑定人に交付して鑑定を行わせるものとする。
被疑者の心神 又は身体に関する鑑定を嘱託する場合において、鑑定留置の処分を必要とするときは、裁判官にその処分を請求して鑑定留置状の発付を受け、これに基づいて病院 その他鑑定留置状所定の場所に被疑者を留置して鑑定を行わせるものとする。
前項の場合において、刑訴法第201条の2第1項第1号 又は第2号に掲げる者の個人特定事項について、必要と認めるときは、鑑定留置の処分の請求と同時に、裁判官に対し、同法第224条第3項において読み替えて準用する同法第207条の2第1項の規定による鑑定留置状に代わるものの交付の請求をするものとする。
第137条(令状の請求)の規定は、鑑定処分の許可の請求、鑑定留置の処分の請求、鑑定留置状に代わるものの交付の請求 及び鑑定留置期間の延長 又は短縮の請求について準用する。
鑑定留置状により被疑者を病院 その他の場所に留置した場合には、当該病院 その他の場所の管理者と緊密な連絡を取り、必要があるときは、看守者を付するための措置を講ずる等被疑者の自殺、逃亡 その他の事故を防止するように努めなければならない。
鑑定のため必要があるときは、鑑定人に書類 及び証拠物を閲覧 若しくは謄写させ、被疑者 その他関係者の取調べに立ち会わせ、又はこれらの者に対し質問をさせることができる。
鑑定を嘱託する場合には、鑑定人から、鑑定の日時、場所、経過 及び結果を関係者に容易に理解できるよう簡潔平明に記載した鑑定書の提出を求めるようにしなければならない。
ただし、鑑定の経過 及び結果が簡単であるときは、鑑定人から口頭の報告を求めることができるものとし、この場合には、その供述調書を作成しておかなければならない。
鑑定人が数人あるときは、共同の鑑定書の提出を求めることができる。
鑑定書の記載に不明 又は不備の点があるときは、これを補充する書面の提出を求めて鑑定書に添付しなければならない。
第11章 送致及び送付
捜査を行つた事件について送致 又は送付の手続をとるに当たつては、警察本部長 又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。
第12章(少年事件に関する特則)に規定する場合を除き、関連する事件は、原則として、一括して送致 又は送付するものとする。
事件を送致 又は送付するに当たつては、犯罪の事実 及び情状等に関する意見を付した送致書 又は送付書を作成し、関係書類 及び証拠物を添付するものとする。
警察官は、事件の送致 又は送付後においても、常にその事件に注意し、新たな証拠の収集 及び参考となるべき事項の発見に努めなければならない。
事件の送致 又は送付後において、新たな証拠物 その他の資料を入手したときは、速やかにこれを追送しなければならない。
事件の送致 又は送付後において、当該事件に係る被疑者につき、余罪のあることを発見したときは、検察官に連絡するとともに、速やかにその捜査を行い、これを追送致(付)しなければならない。
捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
前条の規定により送致しない事件については、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業 及び住居、罪名 並びに犯罪事実の要旨を1月ごとに一括して、微罪処分事件報告書(別記様式第19号)により検察官に報告しなければならない。
第198条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。
親権者、雇主 その他被疑者を監督する地位にある者 又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
事件を送致し、又は送付したときは、長官が定める様式の犯罪事件処理簿により、その経過を明らかにしておかなければならない。
第12章 少年事件に関する特則
少年事件の捜査については、この章に規定するもののほか、一般の例によるものとする。
少年事件の捜査については、家庭裁判所における審判 その他の処理に資することを念頭に置き、少年(少年法第2条第1項に規定する少年をいう。以下同じ。)の健全な育成を期する精神をもつて、これに当たらなければならない。
少年事件の捜査を行うに当たつては、少年の特性にかんがみ、特に他人の耳目に触れないようにし、取調べの言動に注意する等温情と理解をもつて当たり、その心情を傷つけないように努めなければならない。
少年事件の捜査を行うに当たつては、犯罪の原因 及び動機 並びに当該少年の性格、行状、経歴、教育程度、環境、家庭の状況、交友関係等を詳細に調査しておかなければならない。
少年事件の捜査を行うに当たつて必要があるときは、家庭裁判所、児童相談所、学校 その他の関係機関との連絡を密にしなければならない。
少年の被疑者の呼出し 又は取調べを行うに当たつては、当該少年の保護者 又はこれに代わるべき者に連絡するものとする。
ただし、連絡することが当該少年の福祉上不適当であると認められるときは、この限りでない。
少年の被疑者については、なるべく身柄の拘束を避け、やむを得ず、逮捕、連行 又は護送する場合には、その時期 及び方法について特に慎重な注意をしなければならない。
少年事件について、新聞 その他の報道機関等に発表するときは、当該少年の氏名 又は住居を告げ、その他その者を推知することができるようなことはしてはならない。
ただし、特定少年(少年法第62条第1項に規定する特定少年をいう。次条 及び第215条第2号において同じ。)のとき犯した罪に係る事件であつて当該罪により公訴を提起された者に係るもの(刑訴法第461条の請求がされたもの(刑訴法第463条第1項 若しくは第2項 又は第468条第2項の規定により通常の規定に従い審判をすることとなつたものを除く。)を除く。)については、この限りでない。
少年事件について捜査した結果、その犯罪が罰金以下の刑に当たるものであるときは、これを家庭裁判所に送致し、禁錮以上の刑に当たるものであるときは、これを検察官に送致し、又は送付しなければならない。
ただし、当該少年事件が特定少年に係るものであるときは、刑の軽重にかかわらず、これを検察官に送致し、又は送付しなければならない。
送致 又は送付に当たり、その少年(特定少年を除く。)の被疑者について、罰金以下の刑に当たる犯罪と禁錮以上の刑に当たる犯罪とがあるときは、これらを共に一括して、検察官に送致し、又は送付するものとする。
他の被疑者に係る事件と関連する少年事件の送致 又は送付については、次の各号に定めるところによるものとする。
少年事件が少年事件以外の事件(以下「非少年事件」という。)と関連する場合において、これらを共に検察官に送致し、又は送付するときは、各別の記録として送致し、又は送付すること。
ただし、少年事件に関する書類が非少年事件についても必要であるときは、その謄本 又は抄本を添付すること。
数個の少年事件が関連する場合において、これらを共に検察官に送致し、又は送付するときは、各別の記録とすることを要しないこと。
少年事件が非少年事件と関連し、又は数個の少年事件が関連し、その一方を検察官に送致し、又は送付し、他方を家庭裁判所に送致する場合において、一方の事件に関する書類が他方の事件についても必要であるときは、検察官に送致し、又は送付する事件の記録に、他の事件に関する書類の謄本 又は抄本を添付すること。
少年事件が非少年事件と関連し、又は数個の少年事件が関連し、これらを各別に送致し、又は送付する場合において、共通の証拠物があるときは、次の各号に定めるところによるものとする。
少年事件と非少年事件とが関連する場合には、非少年事件に証拠物を添付すること。
この場合においては、少年事件の記録にその旨を記載すること。
ただし、少年事件のみが重要と認められるときは、少年事件に証拠物を添付すること。
数個の少年事件のみが関連する場合には、検察官へ送致し、又は送付する事件に証拠物を添付すること。
この場合においては、家庭裁判所に送致する事件の記録にその旨を記載すること。
少年事件を送致 又は送付するに当たつては、少年事件送致書(家庭裁判所へ送致するものについては、別記様式第20号。ただし、当該都道府県警察の管轄区域を管轄する地方検察庁(以下「管轄地方検察庁」という。)の検事正が少年の交通法令違反事件の捜査書類の様式について特例を定めた場合において、当該都道府県警察の警察本部長がその管轄区域を管轄する家庭裁判所(以下「管轄家庭裁判所」という。)と協議してその特例に準じて別段の様式を定めたときは、その様式)又は少年事件送付書を作成し、これに身上調査表(別記様式第21号)その他の関係書類 及び証拠物を添付するものとする。
捜査した少年事件について、その事実が極めて軽微であり、犯罪の原因 及び動機、当該少年の性格、行状、家庭の状況 及び環境等から見て再犯のおそれがなく、刑事処分 又は保護処分を必要としないと明らかに認められ、かつ、検察官 又は家庭裁判所からあらかじめ指定されたものについては、被疑少年ごとに少年事件簡易送致書 及び捜査報告書(家庭裁判所へ送致するものについては、別記様式第22号。ただし、管轄地方検察庁の検事正が少年の交通法令違反事件の捜査書類の様式について特例を定めた場合において、当該都道府県警察の警察本部長が管轄家庭裁判所と協議し その特例に準じて別段の様式を定めたときは、その様式)を作成し、これに身上調査表 その他の関係書類を添付し、1月ごとに一括して検察官 又は家庭裁判所に送致することができる。
前項の規定による処理をするに当たつては、第200条(微罪処分の際の処置)に規定するところに準じて行うものとする。
捜査の結果、次の各号のいずれかに該当するときは、少年警察活動規則(平成14年国家公安委員会規則第20号)第3章の定めるところによる。
被疑者が少年法第3条第1項第2号に規定する少年であることが明らかとなつたとき。
被疑者が罪を犯した事実がないことが明らかとなつた場合であつて、その者が少年法第3条第1項第3号に規定する少年(特定少年を除く。)であるとき。
第13章 交通法令違反事件に関する特則
道路交通法(昭和35年法律第105号)又はこれに基づく命令(以下「交通法令」という。)の違反事件の捜査については、この章に規定するもののほか、一般の例によるものとする。
交通法令違反事件の捜査を行うに当たつては、事案の特性にかんがみ、犯罪事実を現認した場合であつても、逃亡 その他の特別の事情がある場合のほか、被疑者の逮捕を行わないようにしなければならない。
交通法令違反事件の被疑者の供述調書には、おおむね、次の事項を明らかにしておかなければならない。
ただし、被疑者が犯罪事実現認報告書記載の犯罪について自白し、かつ、犯罪事実が証拠により明白で争いのないものについては、第1号に掲げる事項 及びその自白を明らかにしておけば足りるものとする。
本籍、住居、職業、氏名、生年月日、年齢 及び出生地(被疑者が法人であるときは名称 又は商号、主たる事務所 又は本店の所在地 並びに代表者の氏名 及び住居、被疑者が法人でない団体であるときは名称、主たる事務所の所在地 並びに代表者、管理人 又は主幹者の氏名 及び住居)
少年の交通法令違反事件の送致は、交通法令違反少年事件送致書(家庭裁判所へ送致するものについては、別記様式第23号。ただし、管轄地方検察庁の検事正が少年の交通法令違反事件の捜査書類の様式について特例を定めた場合において、当該都道府県警察の警察本部長が管轄家庭裁判所と協議してその特例に準じて別段の様式を定めたときは、その様式)によることができる。
この場合においては、身上調査表を添付することを要しない。
ただし、犯罪事実、犯罪の原因及び動機、当該少年の性格、行状及び環境、家庭の状況等から、特に刑罰又は保護処分を必要とすると認められるときは、この限りでない。
交通法令違反事件については、犯罪事件受理簿 及び犯罪事件処理簿に代えて、長官が定める様式の交通法令違反事件簿を作成し、これにより第19条(捜査指揮)第1項 及び第193条(送致 及び送付の指揮)に規定する指揮の責任 及び事件の送致 又は送付 その他の経過を明らかにしておかなければならない。
第14章 国際犯罪に関する特則
国際犯罪(外国人に係る犯罪 又は国民の国外犯、大公使館に係る犯罪 その他の外国に係る犯罪をいう。以下同じ。)の捜査については、条約、協定 その他の特別の定めがあるときはこれによるものとし、これらの特別の定めがないときは、この章の規定によるほか、一般の例によるものとする。
国際犯罪の捜査を行うに当たつては、国際法規 及び国際上の慣例を遵守しなければならない。
国際犯罪のうち重要なものについては、あらかじめ、警察本部長に報告し、この指揮を受けて捜査に着手しなければならない。
ただし、急速を要する場合には、必要な処分を行つた後、速やかに警察本部長の指揮を受けなければならない。
警察本部長は、国際犯罪の捜査に関し、外国の捜査機関 又は国際刑事警察機構に対する協力要請を行う必要があると認めるときは、警察庁を通じてこれを行うものとする。
国際犯罪の捜査を行うに当たつては、次に掲げる者の身体、名誉、文書 その他の不可侵等の特権を害することのないように注意しなければならない。
大公使 若しくは大公使館員 又はこれらの者の家族
前項に掲げる者の使用人を逮捕し、又は取調べを行う必要があると認められるときは、館外における現行犯人逮捕 その他緊急やむを得ない場合を除き、あらかじめ警察本部長の指揮を受けなければならない。
被疑者が外交特権を有する者であるかどうかが疑わしい場合には、速やかに、警察本部長の指揮を受けなければならない。
大公使館 及び大公使 又は大公使館員の居宅、別荘 若しくはこの宿泊する場所については、当該大公使 又は大公使館員の請求がある場合のほか、これに立ち入つてはならない。
ただし、重大な犯罪を犯した者を追跡中、その者がこれらの場所に入つた場合で猶予することができないときは、大公使、大公使館員 又はこれらに代わるべき権限を有する者の同意を得て捜索を行うことができる。
外国軍艦については、当該軍艦の艦長の請求がある場合のほか、これに立ち入つてはならない。
重大な犯罪を犯した者が逃走して我が国の領海にある外国軍艦内に入つた場合には、速やかに警察本部長の指揮を受けなければならない。
ただし、急速を要するときは、当該軍艦の艦長に対し、その者の任意の引渡しを求めることができる。
外国軍艦に属する軍人 又は軍属がその軍艦を離れ、我が国の領域内において犯罪を犯した場合には、速やかに警察本部長の指揮を受けなければならない。
ただし、現行犯 その他急速を要するときは、逮捕 その他捜査上必要な処置をとつた後、速やかに警察本部長の指揮を受けるものとする。
次に掲げる者に係る事件の捜査を行うに当たつては、その者の身体の不可侵の特権を害することのないように注意しなければならない。
本務領事官(重大な犯罪の被疑者であり、かつ、その者について裁判官があらかじめ令状を発している場合における本務領事官 及び第3項に規定する領事官を除く。)
領事伝書使(当該任務を遂行している場合における領事伝書使に限る。)
次に掲げる者に係る事件でその者が領事任務の遂行に当たつて行つた行為に係るものの捜査を行うに当たつては、その者が我が国の刑事裁判権からの免除を享受することを妨げないように注意しなければならない。
領事官(次項に規定する領事官を除く。)
領事機関(総領事館、領事館、副領事館 又は代理領事事務所をいう。以下同じ。)の事務技術職員(我が国の国民である者 又は我が国に通常居住している者を除く。)
前2項の規定は、領事官であつて我が国の国民であるもの 又は我が国に通常居住しているものに係る事件でその者が任務の遂行に当たつて行つた公の行為に係るものの捜査について準用する。
第226条(大公使等に関する特則)第3項の規定は、前3項の場合について準用する。
この場合において、
同項中
「外交特権」とあるのは、
「領事上の特権 又は免除」と
読み替えるものとする。
領事機関の構成員 又は領事伝書使を逮捕し、又は取り調べる必要があると認められるときは、あらかじめ、警察本部長の指揮を受けなければならない。
ただし、現行犯人逮捕 その他緊急やむを得ない場合において、第1項 及び第2項(第3項において準用する場合を含む。)に規定する特権 及び免除を害しないと認められるときは、この限りでない。
本務領事官を長とする領事機関の公館については、当該領事機関の長 又はこれに代わるべき権限を有する者の請求 又は同意がある場合を除き、これに立ち入らないものとする。
領事機関の公館 又は領事官の居宅において捜査を行う必要があると認められるときは、急速を要する場合を除き、あらかじめ、警察本部長の指揮を受けなければならない。
領事機関の公文書(名誉領事官を長とする領事機関の公文書で 他の文書と区別して保管されているもの以外のものを除く。)に係る捜査については、文書の不可侵の特権を害することのないように注意しなければならない。
我が国の領海にある外国船舶内における犯罪であつて、次の各号のいずれかに該当する場合には、捜査を行うものとする。
乗組員以外の者 又は我が国の国民に関係があるとき。
外国人の取調べを行い、又は外国人の身柄を拘束するに当たつては、言語、風俗、習慣等の相違を考慮し、当該外国人に係る刑事手続に関し我が国の刑事手続に関する基本的事項についての当該外国人の理解に資するよう適切を期すること等により無用の誤解を生じないように注意しなければならない。
外国人の身柄を拘束したときは、遅滞なく、その者に対し、次の事項を告知するものとする。
当該領事機関に対しその者の身柄が拘束されている旨を通報することを要請することができること。
当該領事機関に対し我が国の法令に反しない限度において信書を発することができること。
前項第1号の規定による要請があつたとき 又は条約 その他の国際約束により要請の有無にかかわらず通報を行うこととされているときは、遅滞なく、当該領事機関に対し同項に規定する者の身柄が拘束されている旨を通報するものとする。
前項の通報を行つたときは、その日時 及び当該通報の相手方を書面に記録しておかなければならない。
外国人であつて日本語に通じないものに対し、当該外国人の理解する言語に通じた警察官以外の警察官が取調べ その他捜査のため必要な措置を行う場合においては、通訳人を介してこれを行うものとする。
ただし、現行犯逮捕、緊急逮捕 その他の直ちに通訳人を付することが困難であるときは、この限りでない。
前項本文の規定により通訳人を介して取調べを行おうとする場合においては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
通訳人が被疑者、被害者 その他事件の関係者と親族 その他特別の関係にないかどうかを申し立てさせることにより取調べの適正を期すること。
通訳人に秘密を厳守させ、及び捜査の遂行に支障を及ぼし 又は被疑者、被害者 その他事件の関係者の名誉を害することのないように配意させること。
国際犯罪の被疑者供述調書には、第178条(供述調書の記載事項)に掲げる事項のほか、おおむね次に掲げる事項を明らかにしておかなければならない。
旅券 又は在留カード、特別永住者証明書 その他身分の証明に関する書類の有無(在留カード 又は特別永住者証明書を有するときは、その番号、交付年月日、有効期間の満了の日等)
家族の有無 及びその住居
外国人であつて日本語に通じないものに対し取調べを行い、又は第130条(司法警察員の処置)第1項に掲げる処置をとつたときは、日本語の供述調書 又は弁解録取書を作成するものとし、特に必要がある場合には、外国語の供述書を提出させるものとする。
外国人が口頭をもつて告訴、告発 又は自首をしようとする場合において、日本語に通じないときは、告訴、告発 又は自首の調書は、前項の規定に準じて作成するものとする。
外国人に対し逮捕状 その他の令状により処分を行い、又は外国人から差し押さえた物件 若しくはその承諾を得て領置した物件に関して押収品目録交付書を交付するときは、なるべく翻訳文を添付しなければならない。
ただし、当該外国人の理解する言語に通じた警察官がこれを行い、又は第233条(通訳の嘱託)第1項の規定により通訳人を介して行うときは、この限りでない。
拘禁許可状 その他逃亡犯罪人引渡法(昭和28年法律第68号)に基づく令状により逃亡犯罪人を拘束した場合には、東京高等検察庁の検察官に引致しなければならない。
警察本部長は、平素から、捜査上の必要に応じて通訳人を迅速かつ確実に付することができるよう、通訳人としての必要な知識 及び技能を有する者の把握に努めるとともに、これらの者に対し刑事手続について理解させるための機会を設けるよう努めなければならない。
第15章 群衆犯罪に関する特則
群衆犯罪の捜査については、この章に規定するもののほか、一般の例によるものとする。
群衆犯罪の捜査については、常に一般社会の情勢 及び群衆犯罪の主体となるおそれのある団体、集団等の実態と その動向を正しく把握し、群衆犯罪の捜査が適確に行われるように心掛けなければならない。
群衆犯罪の捜査を行うに当たつては、実行行為者のみにとどまることなく、首謀者、謀議参与者 その他事件の背後にある共犯関係者を的確に把握するように努めなければならない。
群衆犯罪の現場においてその被疑者を逮捕するに当たつては、相手方の勢力、情勢の推移等を慎重に考慮し、逮捕の時期、方法 及び範囲を誤ることのないよう、現場指揮官の統制の下に行わなければならない。
群衆犯罪が発生した場合は、随時、その実行状況 その他現場の状況を明らかにし、被疑者の犯行を確認する等証拠の収集保全に努めなければならない。
群衆犯罪の被疑者を逮捕した場合においては、逮捕に当たつた警察官は、それぞれ自己の逮捕した被疑者につき、その人相、体格 その他の特徴、犯罪事実の概要、逮捕の時、場所 及び状況等を明確に記憶しておいて、事後の取調べに支障を生じないようにしておかなければならない。
前項に規定する目的を達するため、必要があるときは、被疑者を逮捕した直後において、被疑者を逮捕した警察官とともに撮影しておく等適当な方法をとらなければならない。
被疑者を逮捕する場合において、当該被疑者と関係のある物件を差し押さえたときは、その間の関係を明らかにするため、これらをともに撮影する等適当な方法をとらなければならない。
群衆犯罪の被疑者を多数同時に逮捕した場合において、通謀、奪還等を防止するため必要があるときは、被疑者の分散留置 その他の適切な措置が講ぜられるようにしなければならない。
群衆犯罪の被疑者の取調べを行うに当たつては、特に取調べに当たる警察官相互の連絡を密接にし、事件の全ぼうを明らかにするように努めなければならない。
第16章 暴力団犯罪に関する特則
暴力団犯罪の捜査については、この章に規定するもののほか、一般の例によるものとする。
暴力団については、平素からその組織の実態と動向 及びその活動の状況を正確に把握し、暴力団犯罪の捜査が適確に行われるように心掛けなければならない。
暴力団犯罪の捜査については、暴力団対策に係るものであることを念頭に置いて、これに効果的かつ計画的に当たらなければならない。
暴力団犯罪の捜査を行うに当たつては、実行行為者のみにとどまることなく、暴力団の首領 その他の幹部等の当該事件への関与の有無についても確実に捜査を行い、事件の全ぼうを明らかにするように努めなければならない。
暴力団の視察内偵 その他暴力団犯罪の捜査による有形 又は無形の資料等の収集 及び管理に当たつては、これを組織的に行うようにしなければならない。
暴力団犯罪の被疑者供述調書には、第178条(供述調書の記載事項)第1項に掲げる事項のほか、おおむね次に掲げる事項を明らかにしておかなければならない。
被疑者が当該暴力団の構成員であるときは当該暴力団における地位 その他被疑者と当該暴力団との関係 及び当該暴力団に係る被疑者の活動の実態
暴力団犯罪の参考人供述調書には、第178条第2項に定める事項のほか、当該暴力団の活動の実態、当該犯罪の当該暴力団に係る組織的背景等をできる限り明らかにするように努めなければならない。
暴力団の視察内偵 その他暴力団犯罪の捜査を行つた結果、被疑者 その他の関係者が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)の規定に違反する行為 その他の不当な行為を行つたことが明らかとなつた場合においては、同法の規定による命令 その他必要な措置が講ぜられるように、その旨を警察本部長 又は警察署長に報告するものとする。
第17章 保釈者等の視察
警察署長は、検察官から、その管轄区域内に居住する者について、保釈し、又は勾留の執行を停止した者の通知を受けたときは、その者に係る事件の捜査に従事した警察官 その他適当な警察官を指定して、その行動を視察させなければならない。
前項に規定する視察は、1月につき、少なくとも1回行うものとする。
前条に規定する視察に当たり、その者について次の各号の一に該当する理由があるときは、これを前条に規定する通知をした検察官に速やかに通知しなければならない。
被害者 その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
住居、旅行、治療等に関する制限 その他保釈 又は勾留の執行停止について裁判所 又は裁判官の定めた条件に違反したとき。
第253条(保釈者等の視察)に規定する視察は、穏当適切な方法により行うものとし、視察中の者 又はその家族の名誉 及び信用を不当に害することのないように注意しなければならない。
第253条(保釈者等の視察)に規定する視察を行つたときは、視察簿(別記様式第24号)により、これを明らかにしておかなければならない。
第18章 令状の執行
検察官から、勾引状、勾留状、観護状、差押状、記録命令付差押状、捜索状、検証状、身体検査令状、鑑定留置状、収容状 又は再収容状 その他の令状の執行の指揮を受けたときは、速やかに執行しなければならない。
やむを得ない理由によつて、前項に規定する執行が遅延するときは、速やかにその旨を指揮をした検察官に報告しなければならない。
証人に対する勾引状の執行は、当該令状に指定された日時に引致するようにしなければならない。
勾引状の執行を受けた証人を護送する途中において必要があるときは、一時最寄りの警察署の保護室等に留置することができる。
前項の護送 又は留置中においては、証人が逃亡を図り、若しくは暴行をし、又は自殺のおそれが極めて強い等真にやむを得ない場合を除き、手錠等は、使用しないものとする。
検察官から、勾引状、勾留状、差押状、記録命令付差押状、捜索状、検証状、身体検査令状 又は鑑定留置状の執行の指揮を受けた場合において、その有効期間内に執行することができなかつたときは、令状にその理由を記載し、これを指揮をした検察官に返還しなければならない。
前項の場合において、執行を受けるべき者に示すものとして、勾引状に代わるもの、勾留状に代わるもの 又は鑑定留置状に代わるものの交付があるときは、当該勾引状に代わるもの、勾留状に代わるもの 又は鑑定留置状に代わるものをも検察官に返還しなければならない。
検察官から、勾引状、勾留状 又は鑑定留置状の執行の指揮を受けた場合において、執行を受けるべき者が、心神喪失の状態にあるとき、又はその執行により著しく健康を害するおそれがあるとき その他特に執行を不適当と認める理由があるときは、速やかに、指揮をした検察官にその旨を報告して、指揮を受けなければならない。
検察官の指揮により警察官が収容状(刑訴法の規定による場合に限る。以下同じ。)を発した場合において、これを執行したときは、その原本を指揮をした検察官に送付しなければならない。
検察官から収容状の執行の指揮を受けた場合において、これを執行することができずに3月を経過し、かつ、当分の間、なお執行する見込みのないときは、速やかに、指揮をした検察官に、その理由 及び参考となるべき事項を報告し、収容状を返還しなければならない。
検察官の指揮により警察官が発した収容状を執行することができずに3月を経過し、かつ、当分の間、なお執行する見込みのないときも、また、同様とする。
収容状に指定されている者について、心神喪失の状態にあり、又は刑訴法第482条各号のいずれかに該当する事由があり、かつ、逃亡のおそれがないと認められるときは、速やかに、その旨を指揮をした検察官に報告して指揮を受けなければならない。
第257条(検察官の指揮による執行)、第259条(有効期間内に執行不能の場合)及び第260条(勾引状等執行不適の場合)の規定は、検察官から刑訴法第98条(同法第167条の2第2項 及び第343条第2項において準用する場合を含む。)及び第271条の8第5項(同条第6項 及び同法第343条第2項において準用する場合を含む。)の規定による保釈 若しくは勾留執行停止の取消しの決定 若しくは失効、勾留執行停止の期間満了 又は鑑定留置の処分の取消し 若しくは期間満了の場合において収容の指揮を受けた場合について準用する。
第257条(検察官の指揮による執行)、第259条(有効期間内に執行不能の場合)及び第260条(勾引状等執行不適の場合)の規定は、刑訴法第70条第1項ただし書(同法第136条、第153条 及び第167条第5項において準用する場合を含む。)又は第108条第1項ただし書(同法第125条第4項(同法第513条第6項において準用する場合を含む。)及び第513条第6項において準用する場合を含む。)の規定により、裁判長 又は裁判官から、勾引状、勾留状、差押状、記録命令付差押状、捜索状、検証状、身体検査令状 又は鑑定留置状の執行の指揮を受けた場合について準用する。
警察官は、検察官 又は裁判長 若しくは裁判官の指揮を受けて、差押状、記録命令付差押状 又は捜索状を執行する場合は、他の警察官を立ち会わせなければならない。
第257条(検察官の指揮による執行)、第259条(有効期間内に執行不能の場合)及び第260条(勾引状等執行不適の場合)の規定は、少年法第13条 又は同法第26条(同法第65条第4項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により、家庭裁判所から、同行状の執行の指揮を受けた場合について準用する。
この場合において、
これらの規定中
「検察官」とあるのは、
「家庭裁判所」と
読み替えるものとする。
第257条(検察官の指揮による執行)、第259条(有効期間内に執行不能の場合)第1項 及び第260条(勾引状等執行不適の場合)の規定は、更生保護法(平成19年法律第88号)第63条第6項(同法第73条の3第4項において準用する場合を含む。)の規定により保護観察に付されている者に対する引致状の執行に当たる場合について準用する。
この場合において、
第257条 及び第259条第1項中
「検察官」とあるのは
「地方更生保護委員会 又は保護観察所の長」と、
「指揮」とあるのは
「嘱託」と、
第260条中
「検察官」とあるのは
「地方更生保護委員会 又は保護観察所の長」と、
「の指揮」とあるのは
「の嘱託」と、
「指揮をした」とあるのは
「嘱託をした」と、
「報告して、指揮を受けなければ」とあるのは
「通知しなければ」と
読み替えるものとする。
勾引状 その他の令状を執行するに当たつては、必要な限度を超えて実力を行使し、又は相手方の名誉を不当に傷つけることのないように注意しなければならない。
第19章 雑則
警察官は、他の都道府県警察の管轄区域において現行犯人を逮捕したときは、原則として、逮捕地を管轄する都道府県警察に引き渡さなければならない。
未検挙事件については、継続して捜査を行うとともに、その捜査記録を取りまとめて保存しておかなければならない。
書類を受理したときは、直ちに欄外 その他適当な箇所に受理の年月日を記入し、必要があるものについては、その時刻を記入しておくものとする。
重要 又は特異な事件等必要があると認められるときは、捜査書類の写しを作成して保存しておかなければならない。
逮捕状 その他法令による強制処分に関する事故 その他捜査に関する紛議等があつたときは、捜査事故簿(別記様式第25号)によりその経緯 及び措置等を明らかにしておかなければならない。
関東管区警察局の警察官(警察法第61条の3第1項の規定による指示により派遣された者を含む。)が行う捜査に関する次の表の左欄に掲げる規定の適用については、同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の右欄に掲げる字句とする。
第16条の見出し、第17条、第20条第2項各号列記以外の部分、第22条第2項、第47条、第182条の6、第225条、第226条第2項 及び第3項(第230条第4項において準用する 場合を含む。)、第228条第2項、第229条、第230条第5項 及び第7項 並びに第238条 | 警察本部長 | 関東管区警察局長 |
第16条 | 警察本部長(警視総監 または道府県警察本部長をいう。以下同じ。) | 関東管区警察局長 |
第17条の見出し 及び第20条第2項各号列記以外の部分 | 捜査担当部課長 | 関東管区警察局サイバー特別捜査隊長 |
第17条 | 刑事部長、警備部長 その他犯罪の捜査を担当する部課長 | 関東管区警察局サイバー特別捜査隊長 |
第19条第2項、第24条、第45条第2項、第51条、第52条第1項、第53条、第54条、第69条第1項 及び第76条 | 警察本部長 または警察署長 | 関東管区警察局長 |
第19条第2項 | 警察本部長の | 関東管区警察局長の |
第20条第1項 及び第3項、第73条第1項、第78条第1項、第101条の2第1項 並びに第102条第1項、第112条第1項 及び第112条の2第1項(これらの規定を第151条第1項において準用する 場合を含む。)並びに第119条第2項(第163条において準用する 場合を含む。)、第120条第2項、第126条第3項、第130条第1項 及び第3項、第136条の2第1項、第137条第2項(第189条第5項において準用する 場合を含む。)、第154条の2第1項 及び第5項、第168条第3項、第187条、第193条 並びに第252条 | 警察本部長 又は警察署長 | 関東管区警察局長 |
第20条第2項第8号 及び第25条 | 警察本部長 若しくは警察署長 | 関東管区警察局長 |
第60条 | 警視庁 もしくは道府県警察本部 または警察署 | 関東管区警察局 |
第69条第1項 | 管轄区域外の犯罪であるため当該警察において これを処理することができない | 管轄権のない事件である |
第182条の6の見出し | 本部長 | 関東管区警察局長 |
道警察本部長は、長官が定めるところにより、この規則の規定によるその職務を方面本部長に行わせることができる。