環境基本法

# 平成五年法律第九十一号 #

第一章 総則

分類 法律
カテゴリ   環境保全
@ 施行日 : 令和三年九月一日 ( 2021年 9月1日 )
@ 最終更新 : 令和三年法律第三十六号による改正
最終編集日 : 2023年 02月10日 12時57分


1項

この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者 及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在 及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。

1項

この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

2項

この法律において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化 又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少 その他の地球の全体 又は その広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。

3項

この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動 その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態 又は水底の底質が悪化することを含む。第二十一条第一項第一号において同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康 又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産 並びに人の生活に密接な関係のある動植物 及び その生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。

1項

環境の保全は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること 及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在 及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。

1項

環境の保全は、社会経済活動 その他の活動による環境への負荷をできる限り低減すること その他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。

1項

地球環境保全が人類共通の課題であるとともに国民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であること 及び我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみ、地球環境保全は、我が国の能力を生かして、及び国際社会において我が国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に推進されなければならない。

1項

国は、前三条に定める環境の保全についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

1項

地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策 及び その他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

1項

事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理 その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。

2項

事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工 又は販売 その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品 その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られることとなるように必要な措置を講ずる責務を有する。

3項

前二項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工 又は販売 その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品 その他の物が使用され 又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源 その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。

4項

前三項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減 その他環境の保全に自ら努めるとともに、国 又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。

1項

国民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。

2項

前項に定めるもののほか、国民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、国 又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。

1項

事業者 及び国民の間に広く環境の保全についての関心と理解を深めるとともに、積極的に環境の保全に関する活動を行う意欲を高めるため、環境の日を設ける。

2項

環境の日は、六月五日とする。

3項

国 及び地方公共団体は、環境の日の趣旨にふさわしい事業を実施するように努めなければならない。

1項

政府は、環境の保全に関する施策を実施するため必要な法制上 又は財政上の措置 その他の措置を講じなければならない。

1項

政府は、毎年、国会に、環境の状況 及び政府が環境の保全に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。

2項

政府は、毎年、前項の報告に係る環境の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。