この規則は、被疑者取調べの監督に関し必要な事項を定めることにより、被疑者取調べの適正化に資することを目的とする。
被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則
制定に関する表明
警察法施行令(昭和二十九年政令第百五十一号)第十三条第一項の規定に基づき、被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則を次のように定める。
第一章 総則
被疑者取調べの監督は、厳正かつ公平を旨として行わなければならない。
被疑者取調べの監督に当たっては、被疑者 又は被告人(以下単に「被疑者」という。)その他の関係者の人権に配慮しなければならない。
被疑者取調べの監督に当たっては、必要な限度を超えて取調べ警察官 その他の関係者の業務に支障を及ぼし、又は犯罪捜査の不当な妨げとならないよう注意しなければならない。
この規則において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
被疑者取調べ
取調べ室(これに準ずる場所を含む。以下同じ。)において警察官が行う被疑者の取調べをいう。
監督対象行為
被疑者取調べに際し、当該被疑者取調べに携わる警察官が、被疑者に対して行う次に掲げる行為をいう。
やむを得ない場合を除き、身体に接触すること。
直接 又は間接に有形力を行使すること(イに掲げるものを除く。)。
殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること。
一定の姿勢 又は動作をとるよう不当に要求すること。
便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。
人の尊厳を著しく害するような言動をすること。
被疑者取調べに関し次項に規定する職務を行う者(以下「取調べ監督官」という。)は、警視庁、道府県警察本部 又は方面本部(以下「警察本部」という。)に置かれる取調べ室に係るものについては警察本部の被疑者取調べの監督業務を担当する課(課に準ずるものを含む。以下「取調べ監督業務担当課」という。)の警察官のうちから警視総監、道府県警察本部長 又は方面本部長(以下「警察本部長」という。)が指名する者とし、警察署に置かれる取調べ室に係るものについては警察署の総務課 又は警務課(課の置かれていない警察署にあっては、係を含む。)の警察官のうちから警察署長が指名する者とする。
取調べ監督官は、警察本部長 又は警察署長の指揮を受け、次に掲げる職務を行うものとする。
第六条第一項の規定に基づき被疑者取調べの状況の確認を行うこと。
第六条第三項 又は同条第四項の規定に基づき被疑者取調べの中止の要求 その他の必要な措置をとること。
第八条の規定により巡察官が行う巡察に協力すること。
第十条の規定により取調べ調査官が行う調査に協力すること。
その他法令の規定によりその権限に属させられ、又は警察本部長 若しくは警察署長から特に命ぜられた事項
取調べ監督官の職務を行う者 及びその職務を補助する者は、その担当する被疑者取調べに係る被疑者に係る犯罪の捜査に従事してはならない。
取調べ監督官と捜査主任官(犯罪捜査規範(昭和三十二年国家公安委員会規則第二号)第二十条(犯罪捜査規範第二百七十五条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する捜査主任官をいう。以下同じ。)は、被疑者取調べの監督に関し、相互に緊密な連絡を保たなければならない。
第二章 被疑者取調べの監督
取調べ監督官は、事件指揮簿(犯罪捜査規範第十九条第二項に規定する事件指揮簿をいう。)及び取調べ状況報告書(犯罪捜査規範第百八十二条の二第一項に規定する取調べ状況報告書をいう。以下同じ。)の閲覧 その他の方法により被疑者取調べの状況の確認を行うものとする。
取調べ監督官は、前項の確認を行った場合において、必要があると認めるときは、当該被疑者取調べに係る捜査主任官に対し、当該確認の結果を通知するとともに、当該確認の結果を明らかにしておかなければならない。
取調べ監督官は、第一項の確認を行った際 現に監督対象行為があると認める場合には、当該被疑者取調べに係る捜査主任官に対し、被疑者取調べの中止 その他の措置を求めることができる。
この場合において、捜査主任官は、速やかに、必要な措置を講ずるものとし、その結果を当該取調べ監督官に通知しなければならない。
前項の場合において、捜査主任官が現場にいないとき 又は捜査主任官から要請があったときは、取調べ監督官は、自ら被疑者取調べの中止 その他の措置を講ずることができる。
この場合において、当該措置を講じたときは、速やかに、その旨を捜査主任官に通知しなければならない。
警察職員は、被疑者取調べについて苦情の申出を受けたときは、速やかに、当該被疑者取調べを担当する取調べ監督官にその旨 及びその内容を通知しなければならない。
警察本部長は、必要があると認めるときは、取調べ監督業務担当課の警察官のうちから巡察官を指名し、取調べ室を巡察させるものとする。
この場合において、巡察官は、第六条第一項に規定する被疑者取調べの状況の確認を行うものとする。
前項に規定するもののほか、第六条第二項から第四項までの規定は、巡察官が行う巡察について準用する。
警察本部の犯罪捜査を担当する課(課に準ずるものを含む。)の長 又は警察署長(以下「警察署長等」という。)は、その指揮に係る被疑者取調べに関し、取調べ状況報告書の写しの送付 その他の方法により、当該被疑者取調べの状況について、取調べ監督業務担当課の長を経由して、警察本部長に報告しなければならない。
取調べ監督業務担当課の長 又は警察署長は、その指揮に係る被疑者取調べの監督に関し、第六条第三項 又は同条第四項(前条第二項の規定により準用する場合を含む。)の措置が講じられたときは、当該措置の内容について、警察本部長に(警察署長にあっては、取調べ監督業務担当課の長を経由して警察本部長に)報告しなければならない。
警察本部長は、被疑者取調べについての苦情、前条の報告 その他の事情から合理的に判断して被疑者取調べにおいて監督対象行為が行われたと疑うに足りる相当な理由のあるときは、取調べ監督業務担当課の警察官のうちから調査を担当する者(以下「取調べ調査官」という。)を指名して、当該被疑者取調べにおける監督対象行為の有無の調査を行わせなければならない。
取調べ調査官は、調査を実施するため必要があると認めるときは、当該調査に係る被疑者取調べを指揮する警察署長等に対し、説明 若しくは資料の提出を求め、又は指定する日時 及び場所に当該被疑者取調べに係る捜査主任官、取調べ警察官 その他の警察職員を出頭させ、説明をさせるよう求めることができる。
取調べ調査官は、調査が終了した後、速やかに、調査結果報告書(別記様式)を作成し、当該調査結果報告書の内容を警察本部長に報告するとともに、必要があると認めるときは、関係部署に通知しなければならない。
警視総監 及び道府県警察本部長は都道府県公安委員会に対し、方面本部長は方面公安委員会に対し、毎年度少なくとも一回、被疑者取調べの監督の実施状況を報告しなければならない。
関東管区警察局に置かれる取調べ室に係る取調べ監督官は、関東管区警察局総務監察部警務課の警察官のうちから関東管区警察局長が指名する者とする。
前項の取調べ室において行われる被疑者取調べに関する第四条第二項、第八条第一項 及び第九条第二項の規定の適用については、
第四条第二項中
「警察本部長」とあるのは
「関東管区警察局長」と、
第八条第一項 及び第九条第二項中
「警察本部長」とあるのは
「関東管区警察局長」と、
「取調べ監督業務担当課」とあるのは
「関東管区警察局総務監察部警務課」と
する。
関東管区警察局の警察官(警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)第六十一条の三第一項の規定による指示により派遣された者を含む。)が行う被疑者取調べに関する第九条第一項 及び第十条の規定の適用については、
第九条第一項中
「警察本部の犯罪捜査を担当する課(課に準ずるものを含む。)の長 又は警察署長(以下「警察署長等」という。)」とあるのは
「関東管区警察局サイバー特別捜査部企画分析課長 又は特別捜査課長」と、
「取調べ監督業務担当課」とあるのは
「関東管区警察局総務監察部警務課」と、
「警察本部長」とあるのは
「関東管区警察局長」と、
第十条第一項中
「警察本部長」とあるのは
「関東管区警察局長」と、
「取調べ監督業務担当課」とあるのは
「関東管区警察局総務監察部警務課」と、
同条第二項中
「警察署長等」とあるのは
「関東管区警察局サイバー特別捜査部企画分析課長 又は特別捜査課長」と、
同条第三項中
「警察本部長」とあるのは
「関東管区警察局長」と
する。
警察庁長官(以下「長官」という。)は国家公安委員会に対し、毎年度少なくとも一回、被疑者取調べの監督の実施状況を報告しなければならない。
第三章 雑則
長官は、この規則の適正な施行を期するため、その指名する職員に、次の各号に掲げる事項に関し、実地にその状況を点検させ、及び必要な指導を行わせることができる。
第四条から第十一条までに規定する事項の実施状況に関すること。
被疑者取調べの監督業務に関する教養 その他の当該業務の円滑な運営に関すること。
前項の規定による点検は、関係者からの聴取り、書類の閲覧、実地の視察 その他適当な方法により実施するものとする。
第一項の規定による点検 及び指導(以下「指導等」という。)は、原則として毎年度一回、皇宮警察本部 及び関東管区警察局 並びに全ての都道府県警察に対して実施するものとする。
前三項に定めるもののほか、指導等の実施に関し必要な事項の細目は、長官が定める。
長官は、国家公安委員会に対し、毎年度少なくとも一回、この規則の施行状況を報告しなければならない。
第二条から第十一条までの規定は、皇宮護衛官が行う被疑者取調べについて準用する。
この場合において、
「取調べ警察官」とあるのは
「取調べ皇宮護衛官」と、
「警察官」とあるのは
「皇宮護衛官」と、
「警視庁、道府県警察本部 又は方面本部(以下「警察本部」という。)」とあるのは
「皇宮警察本部」と、
「警視総監、道府県警察本部長 又は方面本部長(以下「警察本部長」という。)」とあるのは
「皇宮警察本部長」と、
「警察署」とあるのは
「護衛署」と、
「警察署長」とあるのは
「護衛署長」と、
「犯罪捜査規範(昭和三十二年国家公安委員会規則第二号)第二十条(犯罪捜査規範第二百七十五条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する捜査主任官」とあるのは
「皇宮警察本部長が定めるところにより犯罪捜査規範(昭和三十二年国家公安委員会規則第二号)第二十条に規定する捜査主任官に相当する職務を行う者」と、
「犯罪捜査規範第十九条第二項に規定する事件指揮簿」とあるのは
「皇宮警察本部長が定めるところにより犯罪捜査規範第十九条第二項に規定する事件指揮簿に相当する書類」と、
「犯罪捜査規範第百八十二条の二第一項に規定する取調べ状況報告書」とあるのは
「皇宮警察本部長が定めるところにより犯罪捜査規範第百八十二条の二第一項に規定する取調べ状況報告書に相当する書類」と、
「警察署長等」とあるのは
「護衛署長等」と、
「警視総監 及び道府県警察本部長」とあるのは
「警察庁長官」と、
「都道府県公安委員会」とあるのは
「国家公安委員会」と
読み替えるものとする。