農林水産大臣は、民間事業者に次条第一項の樹木採取区において生育している樹木を採取する権利(以下「樹木採取権」という。)を設定することができる。
国有林野の管理経営に関する法律
第二章の二 樹木採取権
前項の樹木には、樹木採取権に基づき樹木が採取された後に当該採取跡地に植栽(人工下種を含む。以下同じ。)された樹木を含まないものとする。
農林水産大臣は、樹木採取権の設定に際し、当該設定を受けた者(以下「樹木採取権者」という。)から権利設定料を徴収するものとする。
農林水産大臣は、前項の規定による指定をしたときは、遅滞なく、当該樹木採取区を表示する図面と併せてこれらを公示しなければならない。
樹木採取区を変更し、又はその指定を解除するときも、同様とする。
農林水産大臣は、前条第一項の規定による指定をしたときは、農林水産省令で定めるところにより、次に掲げる事項をあらかじめ公表して、樹木採取権の設定を受けることを希望する者を公募するものとする。
樹木料(樹木採取区において採取される樹木の対価をいう。以下同じ。)の算定の基礎となるべき額 及び算定方法
第八条の十四第二項第一号の樹木の採取に関する基準
前各号に掲げるもののほか、次条第一項の規定による申請をするために必要な事項として農林水産省令で定めるもの
第八条の六第一項の規定により指定された樹木採取区において樹木採取権の設定を受けることを希望する者は、農林水産大臣にその旨を申請しなければならない。
前項の規定による申請をしようとする者は、農林水産省令で定めるところにより、申請書を農林水産大臣に提出しなければならない。
前条第二項の申請書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
経営管理(森林について自然的経済的社会的諸条件に応じた適切な経営 又は管理を持続的に行うことをいう。以下同じ。)を効率的かつ安定的に行う能力 及び経営管理を確実に行うに足りる経理的基礎を有することを明らかにするために必要な事項として農林水産省令で定めるもの
第八条の七の規定により公表された樹木料の算定の基礎となるべき額を勘案して提示する樹木料の算定の基礎となる額(以下「申請額」という。)
木材利用事業者等(木材の安定供給の確保に関する特別措置法(平成八年法律第四十七号)第四条第一項に規定する木材利用事業者等をいう。以下同じ。)及び木材製品利用事業者等(同項に規定する木材製品利用事業者等をいう。以下同じ。)との取引関係、同項に規定する木材生産流通改善施設の所在地、種類 及び規模(当該木材生産流通改善施設を整備しようとする場合に限る。)並びに木材の用途の拡大 その他の木材の需要の開拓 その他これらの者との連携による木材の安定的な取引関係の確立に関する事項として農林水産省令で定めるもの
前各号に掲げるもののほか、事業の実施による雇用の増大 その他の樹木採取区の所在する地域における産業の振興に対する寄与に関する事項 その他の樹木採取権者の選定に関し必要となる事項として農林水産省令で定めるもの
前条第二項の者が木材の安定供給の確保に関する特別措置法第四条第一項の認定(木材利用事業者等 及び木材製品利用事業者等と共同して作成した事業計画(同項に規定する事業計画をいう。以下 この項において同じ。)に係るものに限る。)を受けた者である場合であつて、当該認定に係る事業計画(同条第三項第二号ロの森林の区域に前条第一項の規定による申請に係る樹木採取区が含まれるものに限る。)の写しを提出したときは、前項の規定にかかわらず、同項第六号に掲げる事項の記載を省略することができる。
農林水産大臣は、農林水産省令で定めるところにより、第八条の八第一項の規定による申請をした者(以下「申請者」という。)が次に掲げる基準に適合しているかどうかを審査しなければならない。
前三号に掲げるもののほか、国有林野の適切かつ効率的な管理経営の実施の確保に支障を及ぼすおそれがあるものでないこと。
農林水産大臣は、前項の規定により審査した結果、申請者が同項各号に掲げる基準に適合していると認められるときは、申請額、事業の実施体制、樹木採取区の所在する地域における産業の振興に対する寄与の程度 その他農林水産省令で定める事項を勘案して、その適合していると認められた全ての申請者の申請書について評価し、樹木採取権の設定を受ける者を選定するものとする。
次の各号のいずれかに該当する者は、第八条の七の規定による公募に応じることができない。
この法律 又は森林法に規定する罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者
第十七条第一項の規定により第十条に規定する分収造林契約を解除され、その解除の日から二年を経過しない者
第八条の二十二第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定により樹木採取権を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者
法人であつて、その業務を行う役員のうちに前各号のいずれかに該当する者があるもの
農林水産大臣は、第八条の十第二項の規定により選定した者に対し、その申請に係る樹木採取権の設定をするものとする。
農林水産大臣は、前項の設定をしようとするときは、関係都道府県知事に協議しなければならない。
農林水産大臣は、第一項の設定をし、又は当該設定をしないことの決定をしたときは、遅滞なく、同項の樹木採取権に係る全ての申請者に対し、その旨の通知をするものとする。
農林水産大臣は、第一項の設定を受けた者に対し、その申請に係る権利設定料について、納付期限を定めて、その納付を命ずるものとする。
前項の権利設定料の納付方法は、政令で定める。
樹木採取権者は、農林水産大臣が指定する期間内に、事業を開始しなければならない。
樹木採取権者は、やむを得ない理由により前項の期間内に事業を開始することができないときは、期間を定め、理由を付して、農林水産大臣の認可を受けなければならない。
樹木採取権者は、引き続き一年以上 その事業を休止しようとするときは、期間を定め、理由を付して、農林水産大臣の認可を受けなければならない。
樹木採取権者は、前項の認可を受けて休止した事業を開始したときは、遅滞なく、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。
樹木採取権者は、事業を開始する前に、農林水産省令で定めるところにより、農林水産大臣と、次に掲げる事項をその内容に含む契約(以下「樹木採取権実施契約」という。)を締結しなければならない。
樹木を採取する箇所 及びその箇所ごとの面積に関する事項
第四項の規定により納付すべき樹木料の算定 及び納付に関する事項
前項第一号の施業の計画(次号において「施業計画」という。)が、国有林野の公益的機能の維持増進 及び木材の持続的かつ計画的な供給の観点から農林水産大臣が樹木採取区ごとに定める樹木の採取に関する基準に適合すること。
前号に掲げるもののほか、施業計画が樹木採取区の所在する国有林野に係る地域管理経営計画に適合すること。
第八条の八第二項の申請書の内容に即していること。
樹木採取権実施契約は、五年ごとに、五年を一期として締結しなければならない。
ただし、国有林野の適切かつ効率的な管理経営の実施を確保するため必要があるときは、その期間よりも短い期間とすることができる。
樹木採取権者は、樹木採取権実施契約に基づき、あらかじめ、農林水産省令で定めるところにより、国に樹木料を納付しなければ、樹木採取区における樹木を採取してはならない。
樹木採取権は、物権とみなし、この法律に別段の定めがある場合を除き、不動産に関する規定を準用する。
樹木採取権は、法人の合併 その他の一般承継、譲渡、滞納処分、強制執行、仮差押え 及び仮処分 並びに抵当権の目的となるほか、権利の目的となることができない。
樹木採取権は、分割し、又は併合することができない。
樹木採取権の移転(法人の合併 その他の一般承継によるものを除く。以下この条において同じ。)をしようとするときは、当該樹木採取権の移転を受けようとする者は、農林水産大臣に申請して、その許可を受けなければならない。
前項の規定による申請をしようとする者は、農林水産省令で定めるところにより、第八条の九第一項各号に掲げる事項を記載した申請書を、農林水産大臣に提出しなければならない。
農林水産大臣は、第二項の許可をしようとするときは、関係都道府県知事に協議しなければならない。
農林水産大臣は、第二項の規定による申請が、次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、その申請を許可してはならない。
その申請をした者が、第八条の十第一項各号に掲げる基準に適合し、かつ、第八条の十一各号のいずれにも該当しないこと。
その申請に係る第八条の九第一項第一号の事業の基本的な方針 及び申請額が、樹木採取権の移転をしようとする者の第八条の八第二項の申請書に記載された同号の事業の基本的な方針 及び申請額に照らして適当なものであること。
抵当権の設定が登録されている樹木採取権については、その抵当権者の同意がなければ、これを放棄することができない。
第二項の許可を受けないで、又は前項の同意を得ないでした樹木採取権の移転 又は放棄は、その効力を生じない。
法人の合併 その他の一般承継によつて樹木採取権を取得した者は、農林水産省令で定めるところにより、取得の日から三月以内に、第八条の九第一項各号に掲げる事項を記載した書類を添えて、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。
農林水産大臣は、前項の規定による届出が、次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その旨をその届出をした者に通知し、当該基準に適合しないと認めるときは、樹木採取権を譲渡するために通常必要と認められる期間として農林水産省令で定める期間内に譲渡すべき旨をその届出をした者に通知しなければならない。
その届出をした者が、第八条の十第一項各号に掲げる基準に適合し、かつ、第八条の十一各号のいずれにも該当しないこと。
その届出に係る第八条の九第一項第一号の事業の基本的な方針 及び申請額が、被承継人の第八条の八第二項の申請書に記載された同号の事業の基本的な方針 及び申請額に照らして適当なものであること。
樹木採取権の存続期間は、五十年以内とする。
前項の規定による登録は、登記に代わるものとする。
第一項の規定による登録に関する処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章 及び第三章の規定は、適用しない。
樹木採取権登録簿については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)の規定は、適用しない。
樹木採取権登録簿に記録されている保有個人情報(個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第六十条第一項に規定する保有個人情報をいう。)については、同法第五章第四節の規定は、適用しない。
前各項に規定するもののほか、登録に関し必要な事項は、政令で定める。
農林水産大臣は、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、樹木採取権を取り消すことができる。
樹木採取権者が次のいずれかに該当するとき。
第八条の十一第一号、第二号、第四号 又は第五号に該当することとなつたとき。
第八条の十二第四項の納付期限までに権利設定料を納付しなかつたとき。
第八条の十三第一項 若しくは第二項の規定に違反して事業を開始しないとき、又は同条第三項の規定に違反して引き続き一年以上休業したとき。
ホに掲げる場合のほか、第八条の十四第二項第一号の樹木の採取に関する基準に適合しない樹木の採取をしたときその他の樹木採取権実施契約において定められた事項について重大な違反があつたとき。
第八条の十四第四項の規定による樹木料の納付をしないで樹木採取区における樹木を採取したとき。
第八条の十八第一項の規定による届出をしなかつたとき。
第八条の十八第二項の期間内に樹木採取権の譲渡がされないとき。
正当な理由がなく、前条の指示に従わないとき。
第八条の二十四において準用する第十三条各号に掲げる事項の実施を怠つたとき。
農林水産大臣は、前項の規定により、抵当権の設定が登録されている樹木採取権を取り消そうとするときは、あらかじめ、その旨を当該抵当権に係る抵当権者に通知しなければならない。
国は、前条第一項(第二号に係る部分に限る。以下この条において同じ。)の規定による樹木採取権の取消し 又は前条第三項の規定による樹木採取権の消滅(国の責めに帰すべき事由がある場合に限る。)によつて損失を受けた樹木採取権者 又は樹木採取権者であつた者(以下この条において単に「樹木採取権者」という。)に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
前項の規定による損失の補償については、国と樹木採取権者とが協議しなければならない。
前項の規定による協議が成立しない場合においては、国は、自己の見積もつた金額を樹木採取権者に支払わなければならない。
前項の補償金額に不服がある樹木採取権者は、その決定の通知を受けた日から六月以内に、訴えをもつて、その増額を請求することができる。
前項の訴えにおいては、国を被告とする。
前条第一項の規定により取り消された樹木採取権 又は同条第三項の規定により消滅した樹木採取権(国の責めに帰すべき事由により消滅した場合に限る。)の上に抵当権があるときは、当該抵当権に係る抵当権者から供託をしなくてもよい旨の申出がある場合を除き、国は、その補償金を供託しなければならない。
前項の抵当権者は、同項の規定により供託した補償金に対してその権利を行うことができる。
国は、第一項の規定による補償の原因となつた損失が前条第一項の規定による樹木採取権の取消しによるものであるときは、当該補償金額の全部 又は一部をその理由を生じさせた者に負担させることができる。
樹木採取権者については、第十三条の規定を準用する。
この場合において、
同条中
「分収林」とあるのは、
「樹木採取区」と
読み替えるものとする。
農林水産大臣は、樹木採取区内の採取跡地において国有林野事業として行う植栽の効率的な実施を図るため、当該樹木採取区に係る樹木採取権者に対し、当該植栽をその樹木の採取と一体的に行うよう申し入れるものとする。
この章に定めるもののほか、樹木採取権に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。