国際受刑者移送法

# 平成十四年法律第六十六号 #

第二章 受入移送

分類 法律
カテゴリ   刑事
@ 施行日 : 令和四年四月一日 ( 2022年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和三年法律第四十七号による改正
最終編集日 : 2023年 07月02日 10時53分


1項

受入移送は、次の各号いずれかに該当する場合を除き、これをすることができる。

一 号

受入受刑者の同意がないとき

二 号

受入受刑者が十四歳に満たないとき

三 号

受入移送犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が日本国の法令によれば禁錮以上の刑が定められている罪に当たるものでないとき

四 号

受入移送犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について、日本国の裁判所において言い渡された無罪の裁判が確定したとき、日本国の裁判所において禁錮以上の刑に処せられ その刑の全部 若しくは一部の執行を受けたとき若しくはその刑の全部の執行を受けないこととなっていないとき。

1項

前条第一号の同意は、次の各号いずれかに掲げる職員が確認するものとする。


この場合において、当該職員は、受入受刑者をして、第十六条 及び第十七条の規定に関する事項 その他法務省令で定める事項を記載した書面に、当該職員の面前で、署名押印させるものとする。

一 号

法務大臣の委任を受けた外国に駐在する日本国の大使、公使 若しくは領事官 又はこれらの者が指定する職員

二 号

法務大臣が指定する職員

1項

法務大臣は、裁判国から受入移送の要請があった場合において、第五条各号いずれにも該当せず、かつ、要請に応ずることが相当であると認めるときは、東京地方検察庁検事正に対し関係書類を送付して、受入移送をすることができる場合に該当するかどうかについて東京地方裁判所に審査の請求をすることを命じなければならない。

2項

裁判国から受入移送の要請がない場合において、法務大臣が、第五条各号いずれにも該当せず、かつ、裁判国に対し受入移送の要請をすることが相当であると認めるときも、前項と同様とする。

3項

法務大臣は、前項の規定に基づき審査の請求をすることを命じようとするときは、あらかじめ外務大臣の意見を聴かなければならない。

1項

東京地方検察庁の検察官は、前条第一項 又は第二項の命令があったときは、速やかに、東京地方裁判所に対し、受入移送をすることができる場合に該当するかどうかについて審査の請求をしなければならない。

2項

前項の審査の請求は書面で行い、当該書面に関係書類を添付しなければならない。

1項

東京地方裁判所は、前条の審査の請求を受けたときは、速やかに、審査を開始し、決定をするものとする。

1項

東京地方裁判所は、前条の規定による審査の結果に基づいて、次の区別に従い、決定をしなければならない。

一 号

審査の請求が不適法であるときは、これを却下する決定

二 号

受入移送をすることができない場合に該当するときは、その旨の決定

三 号

受入移送をすることができる場合に該当するときは、その旨の決定

2項

東京地方裁判所は、前項の決定をしたときは、速やかに、東京地方検察庁の検察官に裁判書の謄本を送達するとともに、関係書類を返還しなければならない。

1項

東京地方検察庁検事正は、前条第二項の規定により、裁判書の謄本が東京地方検察庁の検察官に送達されたときは、速やかに、関係書類とともに、これを法務大臣に提出しなければならない。

1項

法務大臣は、裁判国から受入移送の要請がない場合において、第十条第一項第三号の決定があり、かつ、相当であると認めるときは、裁判国に対し受入移送の要請をすることができる。

1項

法務大臣は、裁判国から受入移送の要請があった場合において第十条第一項第三号の決定があったとき、又は前条の規定により裁判国に対し受入移送の要請をした場合において裁判国から要請に応ずる旨の通知があったときは、東京地方検察庁検事正に対し、当該要請に係る受入移送を命じなければならない。


ただし、受入移送を命ずることが相当でないと認めるときは、この限りでない。

1項

法務大臣は、第十二条の規定により裁判国に対して受入移送の要請をしたとき及び前条の規定により受入移送の命令をしたときは、当該受入受刑者に書面でその旨を通知しなければならない。


裁判国から要請があった場合 又は第六条の規定に基づき受入受刑者の同意を確認した場合において、受入移送をしないこととしたときも、同様とする。

1項

第十三条の命令は書面によるものとし、当該書面に関係書類の謄本を添付しなければならない。

2項

前項の書面には、受入受刑者の氏名、年齢、裁判国の名称、受入移送犯罪の名称、外国刑の刑期、引渡しを受ける日 及び場所 並びに引致すべき刑事施設を記載し、法務大臣が記名押印しなければならない。

1項

第十三条の命令により裁判国から受入受刑者の引渡しを受けたときは、次の各号に掲げる受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の区分に応じ、当該各号に掲げる種類の共助刑を執行することにより、受入移送犯罪に係る外国刑の確定裁判の執行の共助をするものとする。

一 号

外国刑が懲役に相当する刑であるとき

当該受入受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせること。

二 号

前号に掲げる場合に該当しないとき

当該受入受刑者を刑事施設に拘置すること。

2項

受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑が二以上あるときは、これらを一の共助刑として執行する。


この場合における共助刑の種類は、当該外国刑のすべてが懲役に相当する刑であるときは、前項第一号に掲げるものとし、当該外国刑のいずれかが懲役に相当する刑でないときは、同項第二号に掲げるものとする。

1項

共助刑の期間は、次の各号に掲げる受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の区分に応じ、当該各号に掲げるものとする。

一 号

外国刑(二以上あるときは、そのいずれか)が無期であるとき

無期

二 号

前号に掲げる場合に該当しないとき

次の 又はに掲げる裁判国において当該外国刑の執行が開始された日(二以上あるときは、当該日のうち最も早い日。以下同じ。)から受入受刑者の拘禁をすることができるとされる最終日までの日数(裁判国においてその執行としての拘禁をしていないとされる日数を除く)の区分に応じ、当該 又はに定める期間

裁判国において当該外国刑の執行が開始された日から三十年を経過する日までの日数を超えるとき

当該三十年を経過する日までの日数

裁判国において当該外国刑の執行が開始された日から三十年を経過する日までの日数を超えないとき

当該最終日までの日数

2項

受入受刑者が十八歳に満たないときに共助刑に係る外国刑(二以上あるときは、それらの全て)の言渡しを受けた者である場合における前項の規定の適用については、

同項第二号
三十年」とあるのは、
二十年」と

する。

1項

共助刑の刑期は、裁判国において受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の執行が開始された日(二以上あるときは、当該日のうち最も早い日)の午前零時に応当する日本国における時刻の属する日から起算する。

2項

裁判国において受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の執行としての拘禁をしていないとされる日数 及び第十三条の命令により裁判国から受入受刑者の引渡しを受けた後に当該受入受刑者を拘禁していない日数は、共助刑の刑期に算入しない。

1項

東京地方検察庁の検察官は、第十三条の命令があったときは、受入収容状を発しなければならない。

2項

前項の受入収容状には、第十五条第二項に掲げる事項を記載し、東京地方検察庁の検察官が記名押印しなければならない。

3項

第一項の受入収容状は、勾引状と同一の効力を有するものとし、東京地方検察庁の検察官の指揮によって刑事施設の長 又はその指名する刑事施設の職員が執行する。

4項

刑事訴訟法昭和二十三年法律第百三十一号第七十三条第一項前段 及び第七十四条の規定は、第一項の受入収容状の執行について準用する。


この場合において、

これらの規定中
被告人」とあるのは
国際受刑者移送法第二条第九号の受入受刑者」と、

同法第七十三条第一項前段中
勾引状」とあり、
及び同法第七十四条
勾引状 又は勾留状」とあるのは
国際受刑者移送法第十九条第一項の受入収容状」と、

同法第七十三条第一項前段中
裁判所 その他の場所」とあるのは
「刑事施設」と

読み替えるものとする。

1項

共助刑の執行は、東京地方検察庁の検察官が指揮する。

2項

前項の指揮は書面で行い、当該書面に第十五条第一項の書面の謄本 及び関係書類の謄本を添付しなければならない。

1項

共助刑の執行に関しては、第十六条第一項第一号の共助刑の執行を受ける者を懲役に処せられた者と、同項第二号の共助刑の執行を受ける者を禁錮に処せられた者と、同項第一号の共助刑を懲役と、同項第二号の共助刑を禁錮とそれぞれみなして、刑法明治四十年法律第四十五号第二十二条第二十四条第二十八条第二十九条第三十一条から第三十三条まで 及び第三十四条第一項刑事訴訟法第四百七十四条第四百八十条から第四百八十二条まで第四百八十四条から第四百八十九条まで第五百二条から第五百四条まで 及び第五百七条少年法昭和二十三年法律第百六十八号第二条第一項第二十七条第一項第五十六条第五十七条第六十一条第六十七条第四項第五十六条第一項 及び第二項に係る部分に限る)及び第六十八条本文 並びに更生保護法平成十九年法律第八十八号第三条第四条第二項第十一条から第十四条まで第十六条第二十三条から第三十条まで第三十三条第三十四条第一項第三十五条から第四十条まで第四十八条第四十九条第一項第五十条第一項第五十一条第五十二条第二項 及び第三項第五十三条第二項 及び第三項第五十四条第二項第五十五条から第五十八条まで第六十条から第六十五条の四まで第七十五条から第七十七条まで第八十二条第八十四条から第八十八条まで 並びに第九十一条から第九十八条までの規定を適用する。


この場合において、

刑法第二十八条
三分の一」とあるのは
三分の一国際受刑者移送法第二条第七号の裁判国(以下「裁判国」という。)において同法第二条第十一号の受入移送犯罪(以下「受入移送犯罪」という。)に係る確定裁判において言い渡された同法第二条第一号の外国刑(以下「外国刑」という。)の執行としての拘禁をしたとされる日数を含む。)」と、

十年」とあるのは
十年裁判国において受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の執行としての拘禁をしたとされる日数を含む。)」と、

同法第三十二条
刑の言渡しが確定した後」とあるのは
国際受刑者移送法第十三条の命令により裁判国から引渡しを受けた後」と、

刑事訴訟法第四百七十四条
二以上の」とあるのは
国際受刑者移送法第二条第二号の共助刑(以下「共助刑」という。)と」と、

その重いもの」とあり、及び「重い刑」とあるのは
「共助刑」と、

他の刑」とあるのは
「主刑」と、

同法第四百八十条 及び第四百八十二条
刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁」とあるのは
「東京地方検察庁」と、

同法第四百八十七条
刑名」とあるのは
「共助刑の種類」と、

同法第五百二条
裁判の執行を受ける者」とあるのは
「共助刑の執行を受ける者」と、

言渡をした裁判所」とあるのは
「東京地方裁判所」と、

少年法第二十七条第一項
保護処分の継続中、本人に対して有罪判決が確定した」とあり、
及び同法第五十七条
保護処分の継続中、懲役、禁錮 又は拘留の刑が確定した」とあるのは
国際受刑者移送法第二条第二号の共助刑の執行を受ける者が保護処分の継続中である」とし、

その他これらの規定の適用に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。

1項

十八歳に満たないときに共助刑に係る外国刑(二以上あるときは、それらの全て)の言渡しを受けた受入受刑者については、次の期間(裁判国において当該外国刑の執行としての拘禁をしたとされる日数を含む。)を経過した後、仮釈放をすることができる。

一 号

無期の共助刑については七年

二 号

有期の共助刑については、その刑期の三分の一

1項

刑事施設の長は、第二十条第一項の指揮があった場合において、受入受刑者が第二十一条の規定により適用される刑法第二十八条 又はこの法律第二十二条に掲げる期間を既に経過しているときは、速やかに、その旨を地方更生保護委員会に通告しなければならない。

1項

第二十二条に規定する受入受刑者が無期の共助刑についての仮釈放後、その処分を取り消されないで十年を経過したときは、共助刑の執行を受け終わったものとする。

2項

第二十二条に規定する受入受刑者が有期の共助刑についての仮釈放後、その処分を取り消されないで仮釈放前に共助刑の執行を受けた期間(裁判国において受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の執行としての拘禁をしたとされる日数を含む。)と同一の期間 又は共助刑の刑期を経過したときは、そのいずれか早い時期において、共助刑の執行を受け終わったものとする。

1項

中央更生保護審査会は、法務大臣に対し、受入受刑者に対する共助刑の執行の減軽 又は免除の実施について申出をすることができる。

2項

法務大臣は、前項の申出があったときは、当該受入受刑者に対して共助刑の執行の減軽 又は免除をすることができる。

3項

法務大臣は、前項の規定により共助刑の執行の減軽 又は免除をしたときは、共助刑の執行の減軽状 又は共助刑の執行の免除状を当該受入受刑者に下付しなければならない。

4項

恩赦法昭和二十二年法律第二十号第十一条 及び更生保護法第九十条の規定は、共助刑の執行の減軽 又は免除について準用する。


この場合において、

恩赦法第十一条
有罪の言渡」とあるのは
国際受刑者移送法第十三条の命令」と、

大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除 又は復権」とあるのは
同法第二十五条第二項の規定による共助刑の執行の減軽又は免除」と、

更生保護法第九十条第一項
前条の申出」とあり、
及び同条第二項
特赦、減刑 又は刑の執行の免除の申出」とあるのは
国際受刑者移送法第二十五条第一項の申出」と

読み替えるものとする。

1項

裁判国において受入移送犯罪に係る外国刑の確定裁判(二以上あるときは、それらのすべて)が取り消された場合 その他その執行ができなくなった場合において、裁判国からその旨の通知があったときは、法務大臣は、第十三条の命令を撤回し、直ちに、東京地方検察庁検事正に当該受入受刑者の釈放を命じなければならない。

2項

東京地方検察庁の検察官は、前項の規定による釈放の命令があったときは、直ちに、当該受入受刑者を釈放しなければならない。

3項

第一項に規定する場合を除き、裁判国から、受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑について、減刑 その他の事由により当該外国刑の種類 又は裁判国において受入受刑者の拘禁をすることができるとされる最終日を変更する旨の通知があったときは、当該通知に基づき、第十六条 及び第十七条の定めるところに従い、共助刑の種類 及び期間を変更するものとする。

1項

法務大臣は、受入受刑者が次の各号いずれかに該当する場合には、速やかに、裁判国にその旨を通知しなければならない。

一 号

共助刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなったとき。

二 号

共助刑の執行が終わる前に死亡し、又は逃走したとき。