この法律は、特定求職者に対し、職業訓練の実施、当該職業訓練を受けることを容易にするための給付金の支給 その他の就職に関する支援措置を講ずることにより、特定求職者の就職を促進し、もって特定求職者の職業 及び生活の安定に資することを目的とする。
職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律
第一章 総則
この法律において「特定求職者」とは、公共職業安定所に求職の申込みをしている者(雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第四条第一項に規定する被保険者である者 及び同法第十五条第一項に規定する受給資格者である者を除く。)のうち、労働の意思 及び能力を有しているものであって、職業訓練 その他の支援措置を行う必要があるものと公共職業安定所長が認めたものをいう。
第二章 特定求職者に対する職業訓練の実施
厚生労働大臣は、特定求職者について、その知識、職業経験 その他の事情に応じた職業訓練を受ける機会を十分に確保するため、次条第二項に規定する認定職業訓練 その他の特定求職者に対する職業訓練の実施に関し重要な事項を定めた計画(以下「職業訓練実施計画」という。)を策定するものとする。
職業訓練実施計画に定める事項は、次のとおりとする。
特定求職者の数の動向に関する事項
特定求職者に対する職業訓練の実施目標に関する事項
特定求職者に対する職業訓練の効果的な実施を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項
厚生労働大臣は、職業訓練実施計画を定めるに当たっては、あらかじめ、関係行政機関の長 その他の関係者の意見を聴くものとする。
厚生労働大臣は、職業訓練実施計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
前二項の規定は、職業訓練実施計画の変更について準用する。
厚生労働大臣は、職業訓練を行う者の申請に基づき、当該者の行う職業訓練について、次の各号のいずれにも適合するものであることの認定をすることができる。
職業訓練実施計画に照らして適切なものであること。
就職に必要な技能 及び これに関する知識を十分に有していない者の職業能力の開発 及び向上を図るために効果的なものであること。
その他厚生労働省令で定める基準に適合するものであること。
厚生労働大臣は、前項の認定に係る職業訓練(以下「認定職業訓練」という。)が同項各号のいずれかに適合しないものとなったと認めるときは、当該認定を取り消すことができる。
厚生労働大臣は、第一項の規定による認定に関する事務を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」という。)に行わせるものとする。
国は、認定職業訓練が円滑かつ効果的に行われることを奨励するため、認定職業訓練を行う者に対して、予算の範囲内において、必要な助成 及び援助を行うことができる。
機構は、認定職業訓練を行う者に対し、当該認定職業訓練の実施に必要な指導 及び助言を行うことができる。
第三章 職業訓練受講給付金
国は、第十二条第一項の規定により公共職業安定所長が指示した認定職業訓練等(認定職業訓練、国、都道府県 及び市町村 並びに独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置する公共職業能力開発施設の行う職業訓練(職業能力開発総合大学校の行うものを含む。)並びに雇用保険法第十五条第三項の政令で定める訓練 又は講習をいう。第十一条第二号において同じ。)を特定求職者が受けることを容易にするため、当該特定求職者に対して、職業訓練受講給付金を支給することができる。
職業訓練受講給付金の支給に関し必要な基準は、厚生労働省令で定める。
偽りその他不正の行為により職業訓練受講給付金の支給を受けた者がある場合には、政府は、その者に対して、支給した職業訓練受講給付金の全部 又は一部を返還することを命ずることができ、また、厚生労働大臣の定める基準により、当該偽りその他不正の行為により支給を受けた職業訓練受講給付金の額の二倍に相当する額以下の金額を納付することを命ずることができる。
前項の場合において、認定職業訓練を行う者が偽りの届出、報告 又は証明をしたことによりその職業訓練受講給付金が支給されたものであるときは、政府は、当該認定職業訓練を行う者に対し、その職業訓練受講給付金の支給を受けた者と連帯して、同項の規定による職業訓練受講給付金の返還 又は納付を命ぜられた金額の納付をすることを命ずることができる。
労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)第二十七条 及び第四十一条第二項の規定は、前二項の規定により返還 又は納付を命ぜられた金額の納付を怠った場合に準用する。
職業訓練受講給付金の支給を受けることとなった者の当該支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。
租税 その他の公課は、職業訓練受講給付金として支給を受けた金銭を標準として課することができない。
第四章 就職支援計画の作成等
公共職業安定所長は、特定求職者の就職を容易にするため、当該特定求職者に関し、次の各号に掲げる措置が効果的に関連して実施されるための計画(以下「就職支援計画」という。)を作成するものとする。
前二号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定めるもの
公共職業安定所長は、特定求職者に対して、就職支援計画に基づき前条各号に掲げる措置(次項 及び次条において「就職支援措置」という。)を受けることを指示するものとする。
公共職業安定所長は、前項の規定による指示を受けた特定求職者の就職支援措置の効果を高めるために必要があると認めたときは、その者に対する指示を変更することができる。
公共職業安定所長は、第一項の規定による指示を受けた特定求職者の就職の支援を行う必要がなくなったと認めるときは、遅滞なく、当該特定求職者に係る指示を取り消すものとする。
職業安定機関、認定職業訓練を行う者、公共職業能力開発施設の長 その他関係者は、前条第一項の規定による指示を受けた特定求職者の就職支援措置の円滑な実施を図るため、相互に密接に連絡し、及び協力するように努めなければならない。
前条第一項の規定による指示を受けた特定求職者は、その就職支援措置の実施に当たる職員の指導 又は指示に従うとともに、自ら進んで、速やかに職業に就くように努めなければならない。
第五章 雑則
職業訓練受講給付金の支給を受け、又はその返還を受ける権利 及び第八条第一項 又は第二項の規定により納付をすべきことを命ぜられた金額を徴収する権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によって消滅する。
厚生労働大臣は、この法律の施行のため必要があると認めるときは、認定職業訓練を行う者 又は認定職業訓練を行っていた者(以下「認定職業訓練を行う者等」という。)に対して、報告を求めることができる。
厚生労働大臣は、この法律の施行のため必要があると認めるときは、特定求職者 又は特定求職者であった者(以下「特定求職者等」という。)に対して、報告を求めることができる。
機構は、第四条第一項の規定による認定に関する事務に関し必要があると認めるときは、認定職業訓練を行う者等に対し、報告を求めることができる。
厚生労働大臣は、この法律の施行のため必要があると認めるときは、当該職員に、認定職業訓練を行う者等の事務所に立ち入り、関係者に対して質問させ、又は帳簿書類(その作成 又は保存に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成 又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。)の検査をさせることができる。
前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
厚生労働大臣は、機構に、第一項の規定による質問 又は立入検査(認定職業訓練が第四条第一項各号に掲げる要件に適合して行われていることを調査するために行うものに限る。)を行わせることができる。
機構は、前項の規定により同項に規定する質問 又は立入検査をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該質問 又は立入検査の結果を厚生労働大臣に通知しなければならない。
第二項の規定は、第三項の規定による立入検査について準用する。
第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第六条第一項に規定する船員となろうとする者に関しては、
第二条中
「公共職業安定所に」とあるのは
「地方運輸局(運輸監理部 並びに厚生労働大臣が国土交通大臣に協議して指定する運輸支局 及び地方運輸局、運輸監理部 又は運輸支局の事務所を含む。以下同じ。)に」と、
同条、第七条第一項、第十一条 及び第十二条中
「公共職業安定所長」とあるのは
「地方運輸局の長」と
する。
この法律に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。
前項の規定により都道府県労働局長に委任された権限は、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所長に委任することができる。
この法律に規定するもののほか、この法律の実施のため必要な手続 その他の事項は、厚生労働省令で定める。
第六章 罰則
認定職業訓練を行う者等が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。
第十五条第一項 又は第三項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした場合
第十六条第一項の規定による質問(同条第三項の規定により機構が行うものを含む。)に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同条第一項の規定による検査(同条第三項の規定により機構が行うものを含む。)を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合
特定求職者等が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以下の懲役 又は二十万円以下の罰金に処する。
第十五条第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした場合
第十六条第一項の規定による質問(同条第三項の規定により機構が行うものを含む。)に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同条第一項の規定による検査(同条第三項の規定により機構が行うものを含む。)を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合
法人(法人でない団体で代表者 又は管理人の定めのあるものを含む。以下この条において同じ。)の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関して、第二十条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人 又は人に対しても同条の罰金刑を科する。
前項の規定により法人でない団体を処罰する場合においては、その代表者 又は管理人がその訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人 又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。