家庭裁判所は、婚姻の取消し 又は離婚の訴えに係る婚姻の当事者間に成年に達しない子がある場合には、当該訴えに係る訴訟についての第六条 及び第七条の規定の適用に当たっては、その子の住所 又は居所を考慮しなければならない。
人事訴訟法
第二章 婚姻関係訴訟の特例
第一節 管轄
第二節 附帯処分等
裁判所は、申立てにより、夫婦の一方が他の一方に対して提起した婚姻の取消し 又は離婚の訴えに係る請求を認容する判決において、子の監護者の指定 その他の子の監護に関する処分、財産の分与に関する処分 又は厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第七十八条の二第二項の規定による処分(以下「附帯処分」と総称する。)についての裁判をしなければならない。
前項の場合においては、裁判所は、同項の判決において、当事者に対し、子の引渡し 又は金銭の支払 その他の財産上の給付 その他の給付を命ずることができる。
前項の規定は、裁判所が婚姻の取消し 又は離婚の訴えに係る請求を認容する判決において親権者の指定についての裁判をする場合について準用する。
裁判所は、第一項の子の監護者の指定 その他の子の監護に関する処分についての裁判 又は前項の親権者の指定についての裁判をするに当たっては、子が十五歳以上であるときは、その子の陳述を聴かなければならない。
裁判所は、前条第一項の附帯処分についての裁判 又は同条第三項の親権者の指定についての裁判をするに当たっては、事実の調査をすることができる。
裁判所は、相当と認めるときは、合議体の構成員に命じ、又は家庭裁判所 若しくは簡易裁判所に嘱託して前項の事実の調査(以下単に「事実の調査」という。)をさせることができる。
前項の規定により受命裁判官 又は受託裁判官が事実の調査をする場合には、裁判所 及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。
裁判所が審問期日を開いて当事者の陳述を聴くことにより事実の調査をするときは、他の当事者は、当該期日に立ち会うことができる。
ただし、当該他の当事者が当該期日に立ち会うことにより事実の調査に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、この限りでない。
事実の調査の手続は、公開しない。
ただし、裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。
裁判所は、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることができる。
急迫の事情があるときは、裁判長が、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることができる。
家庭裁判所調査官は、事実の調査の結果を書面 又は口頭で裁判所に報告するものとする。
家庭裁判所調査官は、前項の規定による報告に意見を付することができる。
民事訴訟法第二十三条 及び第二十五条(忌避に関する部分を除く。)の規定は、家庭裁判所調査官について準用する。
家庭裁判所調査官について除斥の申立てがあったときは、その家庭裁判所調査官は、その申立てについての裁判が確定するまでその申立てがあった事件に関与することができない。
訴訟記録中事実の調査に係る部分(以下この条において「事実調査部分」という。)についての民事訴訟法第九十一条第一項、第三項 又は第四項の規定による閲覧 若しくは謄写、その正本、謄本 若しくは抄本の交付 又はその複製(以下この条において「閲覧等」という。)の請求は、裁判所が次項 又は第三項の規定により許可したときに限り、することができる。
裁判所は、当事者から事実調査部分の閲覧等の許可の申立てがあった場合においては、その閲覧等を許可しなければならない。
ただし、当該事実調査部分中閲覧等を行うことにより次に掲げるおそれがあると認められる部分については、相当と認めるときに限り、その閲覧等を許可することができる。
当事者間に成年に達しない子がある場合におけるその子の利益を害するおそれ
当事者 又は第三者の私生活 又は業務の平穏を害するおそれ
当事者 又は第三者の私生活についての重大な秘密が明らかにされることにより、その者が社会生活を営むのに著しい支障を生じ、又はその者の名誉を著しく害するおそれ
裁判所は、利害関係を疎明した第三者から事実調査部分の閲覧等の許可の申立てがあった場合においては、相当と認めるときは、その閲覧等を許可することができる。
第二項の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
前項の規定による即時抗告が人事訴訟に関する手続を不当に遅延させることを目的としてされたものであると認められるときは、原裁判所は、その即時抗告を却下しなければならない。
前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第三項の申立てを却下した裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
事実調査部分については、民事訴訟法第百三十三条の二 及び第百三十三条の三の規定は、適用しない。
婚姻の取消し 又は離婚の訴えに係る訴訟において判決によらないで当該訴えに係る婚姻が終了した場合において、既に附帯処分の申立てがされているときであって、その附帯処分に係る事項がその婚姻の終了に際し定められていないときは、受訴裁判所は、その附帯処分についての審理 及び裁判をしなければならない。
第三節 和解並びに請求の放棄及び認諾
離婚の訴えに係る訴訟における和解(これにより離婚がされるものに限る。以下この条において同じ。)並びに請求の放棄 及び認諾については、第十九条第二項の規定にかかわらず、民事訴訟法第二百六十六条(第二項中請求の認諾に関する部分を除く。)及び第二百六十七条の規定を適用する。
ただし、請求の認諾については、第三十二条第一項の附帯処分についての裁判 又は同条第三項の親権者の指定についての裁判をすることを要しない場合に限る。
離婚の訴えに係る訴訟においては、民事訴訟法第二百六十四条 及び第二百六十五条の規定による和解をすることができない。
離婚の訴えに係る訴訟における民事訴訟法第八十九条第二項 及び第百七十条第三項の期日においては、同法第八十九条第三項 及び第百七十条第四項の当事者は、和解 及び請求の認諾をすることができない。
第四節 履行の確保
第三十二条第一項 又は第二項(同条第三項において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による裁判で定められた義務については、当該裁判をした家庭裁判所(上訴裁判所が当該裁判をした場合にあっては、第一審裁判所である家庭裁判所)は、権利者の申出があるときは、その義務の履行状況を調査し、義務者に対し、その義務の履行を勧告することができる。
前項の家庭裁判所は、他の家庭裁判所に同項の規定による調査 及び勧告を嘱託することができる。
第一項の家庭裁判所 及び前項の嘱託を受けた家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に第一項の規定による調査 及び勧告をさせることができる。
前三項の規定は、第三十二条第一項 又は第二項の規定による裁判で定めることができる義務であって、婚姻の取消し 又は離婚の訴えに係る訴訟における和解で定められたものの履行について準用する。
第三十二条第二項の規定による裁判で定められた金銭の支払 その他の財産上の給付を目的とする義務の履行を怠った者がある場合において、相当と認めるときは、当該裁判をした家庭裁判所(上訴裁判所が当該裁判をした場合にあっては、第一審裁判所である家庭裁判所)は、権利者の申立てにより、義務者に対し、相当の期限を定めてその義務の履行をすべきことを命ずることができる。
この場合において、その命令は、その命令をする時までに義務者が履行を怠った義務の全部 又は一部についてするものとする。
前項の家庭裁判所は、同項の規定により義務の履行を命ずるには、義務者の陳述を聴かなければならない。
前二項の規定は、第三十二条第二項の規定による裁判で定めることができる金銭の支払 その他の財産上の給付を目的とする義務であって、婚姻の取消し 又は離婚の訴えに係る訴訟における和解で定められたものの履行について準用する。
第一項(前項において準用する場合を含む。)の規定により義務の履行を命じられた者が正当な理由なく その命令に従わないときは、その義務の履行を命じた家庭裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
民事訴訟法第百八十九条の規定は、第四項の決定について準用する。